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Nov 20, 2014
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 永禄五年二月初旬に蓑笠を纏い、厳重に足拵えをし草鞋を履いた

女性が、甲斐古府中の城下町に姿を現した。

 女性の履物を現在は草鞋(わらじ)と云われているが、当時は わらぐつ

呼ばれていた。雪の季節にはかかせぬ、便利に履物であった。

 女性は城下町の繁忙ぶりを物珍しそうに、笠の下から覗き見ている。

 三日月眉に切れ長の眼の女性は美しく、町行く人々が好奇な眼差しで

振り返っている。権高に見える美貌が、少ししゃくれ気味の鼻がそうした

感じを消し去り、温か味のある美顔に変えていた。

 女性はお弓であった。彼女は信虎の命で信玄に会いに来たのだ。

 この古府中には甲斐武田家の居館、躑躅ケ崎館があった。左程、要害の

城郭ではなく、三方を山に囲まれていた。南は甲府の景観が一望でき、館の

北東半里の山中に要害の城が築かれ、領内を治める館と館を防衛する山城を

有する、典型的な城下町であった。

 それ故に館の防備は簡素で外濠が、館の防衛線の最前線の役目をしているが、

左程、深い濠でもなく石垣も体裁程度の規模であった。

 この地に移ってから武田勢の合戦は常に、他領での戦いであった。

戦国最強の軍団を擁する、信玄にとり「人は石垣、人は城」と考え、厳重な

城塞などは無用の長物であったのだ。


 それ故に城下は商人や職人達が整然と軒を並べ、商いは盛況を極めていた。

 お弓は物珍しくそれらを眺め、雑踏に身を任せ歩を進めている。

 彼女は歩きつつ笠を持ち上げ、北の方角を見つめた。

 城下町は南に面し、北側は家臣団の屋敷町である。

 そこには山本勘助の屋敷もあった。

 お弓は成長したお麻に会いたいと思ったのだ。

 そうした思いを胸に秘め、彼女は館の門前に辿り着いた。

 門衛の足軽に信虎より与った証拠の品を見せ案内(あない)を請うた。

 驚いた足軽が慌てふたむき館に姿を消し、身形の立派な武士が現われた。

「駿府の大殿の使いの者とはそちか?、御屋形さまがお待ちかねじゃ」

 茅葺き屋根の館の内部に案内され、長廊下を伝って主殿に導かれた。

 座所には中年の武将が脇息に身をもたせていた、まるで信虎に生き写し

そのままである。

 お弓が目を見張った。

「余が信玄じゃ。遠路はるばる駿府よりよくぞ参った」

 声に張りがあり、腹に響くような声をあげ眼に精気が漲っている。

「お弓と申しまする」  

「河野より聞いておる。そこは寒い、もそっと中に入れ」

 信玄が豪放磊落に言葉をかけ、しげしげとお弓を見つめ驚嘆した。

 死んだ勘助の娘に瓜ふたつではないか。

「父上の書状を見せよ」 

 お弓が小腰を屈め丁重に書状を差し出した。

「拝見いたす」  

 書状を手にし、深々と辞儀をして読み下している。

 流石は信玄さま、お弓が信玄の態度に感心の面持で眺め入っている。

「父上の書状、確かに信玄拝見した。・・・どうかいたしたか?」

 信玄の眸子の奥に好意が感じられる。

「余りにも大殿に似ておられますので驚いております」

「似て当然じゃ、親子じゃからな。二、三質問いたす」

「はい」  

 お弓が信玄の言葉に平伏した。

「まず、本願寺の件じゃが、余はまだ時期尚早と考えておる」

 弓が信虎との寝物語で聞いた事を述べた。

 信玄は太い腕を組んでじっと聞き入っている。

「尾張の織田信長には、そんな臭いがすると仰せられたか?」  

「はい」

「余も今川義元殿を討ち取った力量には感服いたしておる」

 信玄が髭跡の濃い、顎を擦ってお弓をじっと凝視した。

「申しあげます。あの田楽狭間で今川義元さまが休息なされた刻限を、

お知らせした者は、大殿さまの忍びにございます」

「何とー、あれも父上のお指図か?」  

 お弓が黙して肯いた。

 信玄は初めて父、信虎の謀略の凄まじさを知らされたのだ。

 このような事を一腰元風情に洩らされるとは、この女子は父上の愛妾じゃな。

 素早く看破した信玄である。

「そちから、もう一度話が聞きたい。三日ほどこの館に逗留いたせ」

 お弓は立派な一室を離れに与えられ、長旅の疲れを癒している。

 先刻の信玄の顔が蘇っている。大殿に似ている相貌ながら、気迫の鋭さ、

人に接する温かみの違いを悟っている。

 海内一の弓取りとは、あのような武将を云うものじゃ。と感じ入っていた。

 その頃、信玄は飯富兵部と馬場信春の重臣とで、父の信虎の書状を広げ語り

あっていた。

「驚きましたな、駿府の大殿が義元さまの討死に一枚咬んでおられたとは」

 馬場信春が驚嘆の面差しをしている。

 飯富兵部は信虎を甲斐から追放した時の様子を思い描いている。

「父上の深慮遠謀は倅の余も叶わぬ」  

 信玄が太い息を吐き出した。 


「両名に申し聞かす。西上野が強固に成るまでは関東から兵は引かぬ。

じゃが、後は父上の申された通りに事を処すると決めた。良いの」

「はっ」

 二人の重臣が声を揃えた。 

「申し上げます」

 主殿の外から警護の家臣の声が響いた。

「何事か」

「真田幸隆さま、火急の用でお目通りを願って居られます」

「なんと・・・幸隆が参っておるか。通せ」

「はっ」

 家臣の返答と同時に、柔和な顔付の真田幸隆が姿を現した。

「如何、致されましたぞ」

 飯富兵庫が訊ねた。幸隆は三人の傍らに腰を据え。信玄を見つめ、

「御屋形、尾張に潜む忍びより火急の知らせが参っておりまする」

幸隆が緊張した口調で告げた。 

「なんぞ悪い知らせにござるか?」

 馬場信春が、もの柔らかく訊ねた。

「さる十五日に岡崎の松平元康が、清須城を訪れたとの知らせにござる」

「なに、真田殿それはまことの事にござるか?」  

 馬場信春が念押しした。

「真のことであろう。織田信長と松平元康は何を話し合ったであろうかの」

 信玄は先刻のお弓から告げられた話しと重ね合わせている。

「元康が清須同盟を提案し、信長が受けた模様にございます」

「父上の仰せどおりとなったか」  

 信玄が肉太い頬をなでさすって呟いた。

「大殿の書状にも、織田信長が最大の強敵となると記されておりましたな」

 飯富兵部が口をきり、何事か思案している。

「三人とも良く聞くのじゃ、信長は美濃を支配いたすであろう。京への道じゃ」

 信玄が信長の行動を予測し言葉を発した。

「岡崎の松平元康、今川家に敵対し三河、遠江の地を狙いましょうな」

飯富兵部がずばりと核心をついた。流石は武田の重鎮である。

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Last updated  Nov 20, 2014 02:04:22 PM
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