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Nov 22, 2014
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 元康からの同盟の使者が、清須を訪れた時、信長は小躍りしたという。

 今の信長の最大の脅威は、美濃の斎藤家であった。

 信長は美濃に出兵し森部の戦いで勝利し、漸く織田家は優位に立ち、

斎藤家は家中で分裂騒ぎが始まっていた。

 この時期、信長は北近江の浅井長政と同盟を結び、斎藤家への牽制を

強化しようと考えていたのだ。

 そこに降って湧いたように、岡崎の松平元康の使者を迎えたのだ。

 この同盟は元康が提案し、信長が了解したものであった。

 元康は東に向え、わしは美濃、北伊勢に勢力を伸ばす。

 信長の構想と元康の考えが一致したのだ。

 この同盟で松平家は今川家に乗っ取られた領土の回復が出来る。

 織田家は今川家の脅威を心配する事なく、美濃攻めにかかれる。

 それが信長の構想であった。

 信長と元康は不思議な縁で結ばれていた。

 元康が六歳の頃、父の広忠は織田家に対抗するため、今川家に従属し、

元康は今川家の人質として駿府へ送られる事となった。

 この時の元康の幼名が竹千代であった。

 併し、駿府への途中に立ち寄った田原城で義母の父、戸田康光の裏切り

に遭い、尾張の織田家へ送られる事に成ったが、父の広忠が今川家に従属

を貫いたため、人質として二年間、尾張に止め置かれた。

 この時期に信長と知り合ったのだ。こうした従属的な信長との関係は、

信長が本能寺で変死するまで続くのであった。

 信虎の危惧が現実となったのだ。その証として信長は、元康の嫡男の

竹千代と我が娘の、徳姫との婚約を約束した。

 これで松平家は織田家と縁戚を結び、信長の軍事力を背景として三河、

遠江へ軍勢を出兵させることが可能となった。

 この年の二月に元康は今川家の上郷城(かみのごう)を攻め、城主の

鵜殿長持を殺害し、その倅の長照、長忠を生け捕りとした。

 その捕虜と自分の妻と嫡男の竹千代と娘の亀姫との交換を申しで、

見事に成功させたのだ。

 ここに念願の今川家との手切れが出来た元康は、それを契機に義元から

貰った、元の一字を今川家につき返し、松平家康と名乗ることになった。

 こうして家康は正式に今川家と断絶したのだ。

 躑躅ケ崎館で会談中の四人は清須同盟の締結により、一ヶ月後にこのような

状況が訪れとは思わずにいる。 


「御屋形、北条の要請を受け関東で上杉輝虎と戦う事はお止め下され。

このままでは領民の苦しみが増し、領土が疲弊いたします」

 飯富兵部少輔虎昌が優れない顔つきで諫言した。

「飯富殿は上杉勢との合戦を止め、今川領を攻めよとの仰せかな」

 馬場美濃守信春が揶揄うように言ってのけた。

「それがしは今川家と事を構えよとは、申しておらぬ」

 飯富兵部が気色ばんで答えた。

「飯富殿とは思われぬお言葉じゃ、今川氏真殿は暗愚の聞こえが高い。

我等は矛先を転じ、駿河に討って出ることが先決にござるぞ」

 珍しく馬場信春の言葉がきつい。

「馬場美濃、この件は余に考えがある。しばし待て」  

 信玄が短い言葉で馬場信春を制した。

 飯富兵部は信玄の嫡男義信の傅役(もりやく)を仰せつかっていた、彼の

心中は、義信のことで一杯であった。

 それと言うのも義信の夫人は義元の娘であり、義元の室は信虎の娘であった。

 謂わば、叔母、従妹の関係で義信は、心から夫人を愛していた。

それ故に今川家の本拠地である、駿河進攻には日頃から反対を唱えていた。

信玄は義信の心境も判っている、それ故に余と義信の間で苦悩する飯富兵部

が憐れに思えたのだ。

「余の存念を申し聞かす。岡崎の小童が勝手な真似をせぬように今川殿に

与力いたし三河、遠江の守りを固める。更に父上の申されるよう三河一帯の

一向門徒衆を味方といたし、松平家に内紛を策す」

 信玄が言葉を止め、三人の重臣の顔色を見て再び口を開いた。

「暫くは関東で北条勢と共に、上杉輝虎との合戦に意を注ぐ」  

 信玄が毅然たる口調で断じた。

「そのような悠長な合戦は無駄にござる、一日も早い駿河進攻をお願いいたす」

「馬場、急くな我等には西上野(にしこうずけ)が必要なのじゃ。そこを確りと

確保いたし駿河に討って出る」  

 飯富兵部少輔虎昌の顔に安堵の色が見える。

「虎昌、それまでには義信を説得いたせ」  

「はっ」  

 飯富兵部が平伏した。

 翌日、お弓は再び信玄の呼び出しをうけた。濃い髭跡をみせ信玄が主殿で

待っていた。お弓の顔を見て直ぐに質問を発した。 

「よく眠れたかの」  

「はい、お蔭さまで安眠できました」

「織田と松平が同盟いたした」  

「真にございますか?」

 お弓の問いに信玄が大きく首肯した。

 矢張り大殿の眼力は確かじゃ、改めてお弓は信虎の凄味を知った。

「父上に伝えてもらいたい、書状の仰せ肝に銘じて忘れはいたさぬ。

じゃが我等は、暫く関東に精力を傾注いたす」  

「・・・-」  

 お弓が信玄を仰ぎ見た。

「訳を申す。上杉輝虎、我等の上洛にとりいささか邪魔じゃ。まず北条勢と

関東で上杉勢を叩く、これなくて上洛覚束ない。さらに今川家じゃが、縁戚の

関係もあり、氏真殿の動きを暫く眺める積りじゃ。三河、越中については父上の

申されるよう、一向門徒衆と手を結ぶ。このように父上に伝えてもらいたい」

「判りましてございます」  

 お弓が言葉短く答えた。

「尚、関東に執着する意味を申す。西上野は三国峠に近い要地じゃ、

由って上杉勢を叩き、西上野を確保するまでは関東から離れぬ」

 信玄が引き締まった顔付で言葉を選び、断言した。

「そのようにお伝い申しあげます」

 お弓が平伏して答えた。

「お弓、茶所の駿河のような美味い茶はないが、甲斐の茶も良いぞ」

 信玄が言葉をかけ、自ら茶を喫している。

「さてー」  

 信玄が言葉を切りお弓を眺めみた、心の内を見通すような眼差しである。

「そちにはまだ余に申す事がある筈じゃな」

 お弓が肯き、信虎が策す今川家重臣への調略の件を述べた。

「なにっ、まだ父上は身を犠牲とされ大それた策謀を為されておられるか」

 さしもの信玄の顔色も変わった。

「瀬名駿河守、関口兵部少輔に葛山備中守の三名じゃな?」

「はい、今の今川家は累卵の危うき情況にございます。いずれ内輪から

崩れるものと推測いたします、そこを利用しょうと為されておられます」

「・・・-」  

 信玄が瞑目し、腕を組んで考え込んだ。 

 お弓は信玄の言葉を待った。漸く眼を見開いた信玄がお弓を見据えた。

 身のすくむような鋭い眼差しである。

「余は考えを纏める、そのような大事を聞いては見逃せぬ」

 お弓が黙して面を伏せた。

「お弓、そちに会わせたき者がおる。心置きなく会って参れ」

 突然、信玄が話題を変え、声が平常に戻っている。

「・・・・・」

 声なくお弓が信玄を見上げた、これから何かが起こるような気がして、

胸が高鳴った。

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Last updated  Nov 22, 2014 05:33:45 PM
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