あたしはあたしの道をいく

2008.07.01
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カテゴリ: 本@浅田次郎

天切り松闇がたり(第4巻)

久しぶりに、天切り松シリーズ。

胸がすくわ、やっぱこのシリーズ。

ダイスキ。



今回の舞台は、第二次世界大戦中の話。

安吉親分も虎兄も歳をとってしまったし、栄治兄は結核で入院。

前巻で結核の昔馴染みを見舞って至近距離会話した栄治兄の話を思い出せば、

入院は当然っちゃ当然だけど、ショックだよねー >うう、黄不動が……

おこんも相変わらず美人だけど、年増になっちゃってるしさ。

松蔵もいっちょ前に成人してるしさ。





ついていけない。

否、ちょっとファン心理が拒否してる感じ。

うがー。



けどね、あの時代の風俗について書いてるのは、新鮮だった。

第二次世界大戦中、「鬼畜米英!」を合言葉に狂気の中へ突っ込んでったじゃない?

それは末期の話に過ぎないって。

大正デモクラシーから大戦狂気に移っていくまでの感じが、イマイチ分かんなかったの。

発端は世界大恐慌、なんてのは歴史の授業で習った気もするけどさ。

「アメリカがくしゃみをすれば、日本が風邪をひく」なんてのは、

戦後の日米関係を揶揄したものであって、戦前の話じゃないだろうに、

アメリカが風邪を引いて、日本が肺炎を起こした戦争ってのが分かんなかったのよね。





それから、国家総動員法とかいうヤツ。

なんでこんな法律!???

とか思ってたんだけど、もともとはちゃんと考えられてたのかも知れない、

なんてね、思った。



勿論、所詮小説だからね。





あたしは、歴史の授業も国風文化全盛の平安時代で足踏みしちゃって、

せいぜい鎌倉時代までしか付いていけなかっったオバカだからさ、

原爆以外の第二次世界大戦は小説でしか知らないんだけどさ。

(原爆は広島人の基本常識みたいなトコあるから、別格なの)



それでも、関東軍とか陸軍とかの狂気と、海軍の冷徹は同じ国の、

同じ天皇を戴く軍隊のものとは思えなかったのよね。

それも、何となく腑に落ちる、というか。

面白いな、って思った。



あー、あと。

満州国皇帝の弟に嫁いだ女性の話。

『流転の王妃の昭和史』って本を以前に読んだことがあって、

テレビドラマでも見て、かなりイメージが出来上がっていたから、

読み進めるのがちょっと怖かったんだけど、

全然イメージを壊されるものでなく、

むしろ、もう一度あの本を読み返したいと思ったくらい、良かった。

泣けました。


流転の王妃の昭和史

史実を題材に取るって、怖いことだね~。

話自体は虚構なんだけど、創作だから微妙に史実と重なってる。

なのに読者は、虚構も含めた全てを基に「史実」を認識していく。



たとえば、この小説では、

安吉親分以下の任侠全員が虚構で、

栄治兄に惚れた流転の王妃の話も虚構なのに、

国の思惑に翻弄されて溥傑に嫁いだ彼女が、真実愛されたことは史実。

黄不動を袖にして嫁いだ彼女の幸せが、ほっこりと読者の心に残る。



一つのことを知ろうと思ったら、小説でも何でもかまわないから何冊も読め、

って読んだのは、どこだったろう。

小説でも、同じ題材を基にいくつか読めば、共通項がある。

その全てに共通していれば、史実としてクロ?、一つしか無ければ史実としてシロ?、

そんな風に積み重ねていくことが出来るからって。

面白いね、そういう考え方。








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Last updated  2008.07.01 12:36:14
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