深い陰影。琥珀色を基調とした照明。シルエットを多用した撮影技法。
映画の冒頭、娘の復讐を哀願する葬儀屋の主人を、ゴードン.ウィルスのキャメラがクローズアップで捉える。一方、暗い室内とは裏腹に、陽光が降りそそぐ野外では、娘の結婚披露パーティーが盛大に繰り広げられている。
金環蝕のようなマフィアの世界をたった二つのシーンで表現した見事な導入部だ。骨太な娯楽作品の醍醐味に観る者はしばし陶然とさせられる。
云うまでもないが、「ゴッドファーザー」には、マフィアのボスを意味する尊称だけではなく、教会の名付け親という意味も含まれている。往年の大スター、ジョニー.フォンティーンもそんな名付け子の一人だ。祝福に訪れた彼は、新作映画の主役の座を射止め華々しくカムバックしたいと、ドン.コルレオーネに泣きつく。だが、ジョニー.フォンティーンに憎悪を抱くハリウッドの超大物プロデューサーは、コルレオーネの要求を一蹴してしまう。
翌朝、豪壮な大邸宅の寝室に凄まじい悲鳴が轟き渡る。血塗れのシーツの上に60万ドルもする愛馬の首が惨たらしい姿で置かれていたからだ。闇の世界での隠然たる力を象徴するこのシーンを初めて観た時は、椅子から転げ落ちそうになったものだ。圧巻というのは、こんなシーンを指すのだろう。
ドン.コルレオーネの暗殺を謀った4大ファミリーとの血に塗られた抗争に巻き込まれていく三男マイケル。彼の人生が、ファミリーの愛憎と共に綴られていく。レンブラントを想起させるゴードン.ウィルスのキャメラ、悲哀を帯びたニノ.ロータの音楽、そして、フランシス.F.コッポラの堂々たる演出が三位一体となった一大叙事詩である。
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