温故知新

2004.07.08
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養護学校や療育所で、障碍児とその母親を診てきた知人の精神科医から聞いたことなのだが、

自分は愛され、望まれてここにいる存在だ、と実感できていない子供が多いそうだ。
むしろ、自分は邪魔な存在だ、と認識している子供が多かった、と、彼は振り返っていた。

私は娘を愛している。
娘のために、と、涙も枯れるような思いでやってきた。
だから、その話は私には関係ないこと、と、思ってきた。

しかし、そうではなかったのかもしれない。

実は、ここ数日、とある改革が私の中で行われていた。


もともと尋常でないほど父親っ子だったのだが、最近、輪をかけて激しくなってきていた。
夜、彼の腕枕で二人して仲良く眠る姿は、
さながら踏み込んではいけなかった浮気現場のようなラブラブぶりだった。

そんなある日から、とうとう二人いても、迷わず彼の方へ駆け寄るようになった。

最初は、父親が好きな時期なのね、ぐらいに思っていた私も、
さすがにこれは違うかも、と、思いはじめてきた。
そこで、冒頭の言葉を思い出したのだ。

彼女は私のことをどう思ってきたのだろう。

経管栄養の頃などはヒドかった。
自分がチューブを入れる作業が嫌だったのもあるが、
それよりも何よりも、彼女が辛かろう、と思って、

手を出したこともあった。

それと平行して、口の矯正具の出し入れ。
鼻の矯正具の出し入れ。
耳の補聴器。
一日に何回も彼女を拘束するハメになった。


私はそれを自分の技術の向上か、はたまた彼女の成長のように思ってきたのだが、
果たしてそうだったのだろうか。
あれは彼女の妥協、諦めだったのではないか。

もっとも母親が母性を満足させられ、子供との絆を感じる時は食事時間だ、
と、冒頭の精神科医は言っていたが、
それについては、皆無だったわけだ。
皆無どころか、その時間がもっともお互いの苦しみの時で、且つ、日に何度も訪れたわけだ。

通院。
入院。
療育。

その他にも、気分が悪いからと無視をして寝ていたり、
何が原因か、笑えなかったり、気分で怒ったり、嫌いになったり、扱ったり。

そんな時間以外で、私の肉体的精神的余裕があった時のみが、純粋な私と彼女の時間だったわけだ。

これでは彼女が、
私から愛されている、
必要とされている、
邪魔な存在だと思われていない、
と、確信するのは難しかったのではないか。

最近彼女が、我々の食事より少し手間をかけた程度の食事を摂れるようになったり、
聴覚が発達したり、
言葉も増えてきたり、
オペの見通しもたったことから、
こちらも余裕が出てきた。

足りなかった時間を埋めるためにも、
大げさなくらい、私が彼女を愛していることを伝える必要があるのではないか?
彼女のためにこんなにもやってきたのだから、母親なのだから、愛されて当然、
と、傲慢になってはいなかったか?

私は、彼女を少し意識するようにしてみた。

必要以上に怒らないように。
やりたがっていることは、やらせてあげた。
怒ったときも、必ず最後は抱いてあげた。
歌を歌いはじめたら、彼女が飽きるまでは付き合い、
本を持ってきたら、どんなに忙しくても読んであげた。

なんだ、そんなことか。

と、思われた方々は多いだろう。
が、私にとっては、やれてなかったことなのだ。
いや、正確には、もう少しやれている、と、思い込んでいたことなのだ。
彼女を意識して、こんなにやれていなかったことに、愕然としたぐらいだ。

そうすると、どうだろう。
面白いぐらいに彼女の態度は急変した。

まず、私から離れなくなった。
どこにいても、ピタリと身を寄せるようになった。

効果が見えれば面白いから、調子に乗って、色々、遊びを教えてみた。

これが、結構、覚えた。

食事も、私が作ったものに対して、食わず嫌いせず、信頼して食べるようになった。

…と、以上はあくまでも私の主観である。
もしかしたら、彼女が変わる時期に、たまたまタイミングが合わさったのかもしれないし、
そんな風に見えるだけかもしれない。

が、こうやって私が変わったことは悪いことではないはずだし、
こうやって考える余裕が出来た、ただその一点でも、大きな進歩だと言える。

もう早速、夕飯を作ろうと思っても、抱っこ、と、離れなかった彼女を、
抱いたりおぶったりしながら作業する、という、今までにない経験に泣きそうだけれど、
私に無理がくるまでは、これもある意味、育て直しと思って、接してあげたいと思っている。

たとえ、一日、二日でも。





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Last updated  2004.07.08 22:42:01
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