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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し
(6)鯉料理
《ヒッタイトの足跡を訪ねる旅―第1回》 (2003年8月の旅の記録)
(6)鯉料理
運ばれてきたのは、長径40cmほどの楕円系の盆に盛られた体長30cmほどの太った鯉だった。
等間隔に切り目を入れ、粉をはたいて油で揚げたタヴァ(フライパンの意。転じてフライパンを使って揚げるように焼いた料理)といわれるものだ。
大雑把に身をはずし、骨がないのを確かめながら、まず子供たち、次ぎに夫と、それぞれの皿に取り分けていった。
決して魚の嫌いでない子供たちは、念のためにと注文しておいたキョフテもそっちのけで、美味しい美味しいと、よく食べている。
夫はといえば、なぜか手掴みで魚を食べたがる癖があり、夫の言い分ではその方が骨が取りやすいのだそうだが、油で手をベタベタにしながら、最後まできれいに食べ尽くしていた。
ぷっくりと身をつけた鯉は十分食べ応えがあり、揚げたての香ばしさに助けられて生臭さもさほど感じなかったが、それでもやはり湖の魚特有の泥臭さは鼻についた。
鯉は、実はヒッタイト人も食べていたということを、今読み進めている本の記述の中に見つけた。
最も近い黒海岸まで直線距離にして約210km。現在なら車で3~4時間の行程だが、当時は何日の行程だったのだろう。海の魚が新鮮なままに都であるハットゥシャまで運ばれることは、まず有り得なかったと考えられる。
その代わり、ちょっと足を伸ばせば行き当たる池や沼で獲れる鯉やナマズなどの淡水魚が食べられていたのだ。
今回の旅は、ヒッタイトの足跡を辿る旅。
ヒッタイトゆかりの地で、ヒッタイト人も食べた鯉料理に舌鼓を打つというのも、まったく悪くない経験だった。
つづく
(7)聖なる泉
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