2008年01月17日
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この人のここが嫌いだと思ったとき、それが自分を不愉快にさせるとき、基本的に私はそれを言わない。あの人が私を別に全然好きじゃないと気付いたとき、私に一切執着していないと気付いたとき、私はそれを言わない。 人に説教をするのは嫌いではない。ただしそれは、私が強者である場合に限る。友人関係で私が強者であるとき、客としてお金を握っているときなどに限る。 だとすれば恋人関係で私が何も言わないのは、私が弱者であるからだろうか。1年と少し前に私が何も言わなかったのは、私が弱者であったからだろうか。 私が人間として弱いという事実に間違いはない。しかし私が何も言わなかったのは、立場としての弱者であったからではない。 相手によって自分の中の様々なものが荒らされるという危惧。それを引きずる面倒。いつもそれらを防ぐために何も言わないのだと思う。 相手が私に不愉快な思いをさせる度に、私が何を言わずとも相手と私の間に薄い膜のようなものが張っていく。その膜は鋭く、ハサミのように相手と私の関係を裂いていく。 話し合いを、しない。喧嘩をしない。 それらをする意味も余地もある。でもそんなの私にはない。始まりか終わりしかない。 相手に対する執着は、膜が既に裂いている。分かり合おうと私はしない。私は私を不愉快にさせる者、私を好きでない者など嫌いだからだ。 イエスマンでなければいらない。相談ってなんだろう。自分の持った選択肢を、第三者に拡張してもらうためにするのか。新たな解決法を示唆してもらうためにするのか。多くの場合、それは違うと思う。相談事を持った当事者ならば、選択肢や解決法など突き詰めて考えているだろう。既に答えは持っているのだ。その答えを持つ自分の背中を押してもらうため、自信を持つため、最後の納得をするため、客観的な後押しを得るため、または憂さ晴らしをするため、相談を持ちかけるのではないだろうか。 恋人と付き合い始めるとき、きっと誰でも相手に対して勝手ないわば理想像を投影する。その理想が徐々に崩れ、すれ違いが生じていく。 相談についても理想像についても、誰でも相手にイエスマンを求めている。始めは。 相手がイエスマンでなくなったときの対応はおそらく人それぞれである。事実を飲み込み納得するのか。身を引くのか。軌道を修正し、イエスマンに戻すのか。中間を受け入れるのか。千差万別の答えがある。 私は相手がイエスマンでなくなったとき、相手に踏み込むことはしない。ごく自然に気持ちが引け、その後身を引く。 しかし私の身の引き方は、潔くない。付き合った相手を振ることほど面倒なことはないと思う。自分から身を引きたくなったとき、私はいつも振ってくれ振ってくれと痛切に思う。その方がよっぽど楽であるし、きれいだし、未練もなかなかさわやかに消えゆく。 振る方はそのタイミング、理由付け、配慮のプランを立てなければならず、更に自分が振りさえしなければずっと続いていたかもしれない関係、改善していったかもしれない関係、自分が受け入れられるようになったかもしれない関係など未来の可能性をも自らの判断で断ち切らなければならない。果たしてそれでいいのかという迷い、これから得をしたかもしれない可能性を断ち切る覚悟、相手への未練だけでなく自分の判断に対する未練、始めから終わりまで振られる方よりもよっぽど時間と労力がかかる。 それらを踏まえると、面倒すぎて振るのを潔く決意できない。上で私は相談について書いた。さっそくそれに矛盾するのだけど、第三者の意見でハッとさせられることもたまにはある。私は本当にまだまだ物を知らない。 何に対しても白か黒か0か100かといった物の考え方をする節が私にはある。対極且つ究極なる二つの選択肢、ここでいえば別れるか否かという選択肢のみを見据えていた私に、第三者は新たな選択肢を教えてくれた。その選択肢の存在を、私はなぜか今まできれいさっぱり忘れていた。自然消滅である。 恋人が私を好きでないことは確かなようだし、執着もされていないし、なるほどこれは成立するかもしれない。これならば何の面倒もなく身を引けるし、相手も丁度良いだろう。 ・・・せいぜいセックスに困るくらいじゃないの。というふうにいまだに考える自分を、少しかわいいと思う。様々なものが削げていく自分の中で、唯一残っている考えかもしれない。この考えをする自分に、なんだかほっとする。・・・ほんとにそうだと思うけどね。ってああほっとする。 自然消滅という選択肢に乗っかることにした。そういうことを考えていた数日の間、恋人からの連絡が一切なかった。一切なかったからこういうことに決めたのかもしれない。もちろんそれだけではないけれど、少なくともきっかけではあっただろう。しかしようやく自分の中で別れとそのなりゆきを決めた後、あっさりと連絡がきた。今朝のことである。眠っていて気が付かなかったので電話には出なかったのだけど、留守電が入っていた。 仕事が忙しくてなかなか連絡できずにいてごめん。今から仕事で沖縄に行ってきます。と入っていた。 起きてから留守電を聞き、だけどこちらから電話をかけるとかメールをするとかはしなかった。夕方、また彼から電話があった。気付いていたけれど無視した。そしてつい先程、この文章を書いている最中にも電話があった。けれど無視した。 何度かけても相手が電話に出ないのは、人を不安にさせる。少なくとも私はそうなる。彼はよっぽど鈍感なのでどうか知らないけれど。 現在は出張で離れているからいいものの、この対応を続けていれば、彼がこちらに戻ってきたとき、私の生死を危惧して私の部屋に乗り込んでくる可能性もなくはない。それはそれこそ面倒であるし、最低限のマナーとしても私が生存していることくらいは伝えなければならない。 だけど一言生きていますというのも変だし、でもそれ以外にいうことといえば別れを示唆することでなければずっと終われないし、しかしそれをいうのは面倒と決意を超越した上での勇気が必要であって・・・。 別れという方向に進んでいくのは自分としても関係としても間違いはないけれど、それがどのように進んでいくかはまだ曖昧である。たった今、これを機に話し合いという解決の仕方ができるようになれたらいいのにと思った自分はなぜだろう。





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最終更新日  2008年01月18日 03時14分53秒 コメント(18) | コメントを書く


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