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電離放射線を食品にあてると、放射線のもつエネルギーによって食品の成分である物質の分子から電子が分離分解され(いわゆる活性化=フリーラジカル)、化学的に不安定になって、その後に放射線分解生成物という成分の異なった物質が生じる。
そのなかには、毒性をもつものもあり得る。
つまり照射によって、成分が変わることによる危険性が生じるのである。
この危険性については、すでに海外から報告されている。
1998年、ドイツのカールスルーエ連邦栄養研究センターが、食品への放射線照射により2ドデシルシクロブタノンができ、それをラットに与えたところ、細胞内の遺伝子(DNA)を傷つけるという報告を出した。
日本で1967年から行われた照射ジャガイモ・タマネギなどをねずみに食べさせた実験でも、生殖器官である卵巣の重量低下、死亡率の増加、頸肋という奇形の発生などが発生していることが指摘されている。
放射線が人体に危険であることはよく知られている。
胸の集団レントゲン撮影も、リスクの方が大きいと、最近は行われなくなってきた。
食品照射で微生物を殺菌するとすれば、胸のレントゲン撮影のゆうに1億倍を越える放射線量を食品に照射することになる。
さらに、コバルト60のような放射性同位元素(放射性物質)を運搬し、照射施設で管理するのも大変なら、使用後に、放射線の出る能力の残る廃棄物をどうやって処理していくかも問題だ。
もう一つ大きな問題は、研究室ではともかくも、照射食品には実用的な検知法がないということだ。
食品そのものから、残留農薬や食品添加物を分析する方法はある。
ところが、照射された食品自体をとりあげて、それに放射線が当てられたかどうか(定性試験)、どのくらいの線量を照射したのか(定量試験)は、確立されていない。
表示が正しいかどうかを検査したり、違法な照射食品がないかどうか、実地の検疫所や流通現場で検査する方法がないのである。
さらに問題なのは、このように、目にみえない形で殺菌が行われることそれ自体であろう。
どんなに不衛生な扱いをされ菌が多いものでも、この照射施設を通りさえすれば菌は少なくなり、流通・検疫に適するものになる。
しかも、生のようにみえる。
照射により煮たり焼いたりした以上の成分的な変化を受けているにもかかわらず、何でもないようにみえるのだ。
スパイスの場合、93品目がスパイスの範疇に入れられることになると、ありとあらゆる加工食品に放射線照射したスパイスが入る可能性がある。
食品衛生法により、放射線照射食品に表示の義務づけはあるが、今の解釈では加工食品に及ぶ食品すべてに表示の義務づけはない。
食品照射の問題に対し、日本では1976年頃から反対運動が続けられてきた。
1988年前後からは、貿易との関連も強調されている。
私たち1人ひとりがこうした問題に注意を払っていきたいものだ。
放射線を照射すると、食品中で原子や分子から電子が除去され、電荷を帯びた粒子(フリーラジカル)が生成されます。
フリーラジカルは、対になっていない電子をもつ原子あるいは分子で、不安定な構造になっているために一般に非常に反応性が高く、まわりの物質と反応して安定な状態になろうとします。
フリーラジカルは食品照射によって生じますが、同じように加熱や光分解、粉砕、食品成分と酸素や過酸化物との反応などによっても生じます。
したがって、パンのトーストや揚げ物などのような調理でも、フリーラジカルは生成されるのです。
量的には、照射された乾燥食品よりも非照射のトーストのほうが、多くのフリーラジカルを含んでいると考えられています。
フリーラジカルは、口のなかで唾液などと混ざり、たがいに反応して消滅していきます。
したがって、フリーラジカルを含む照射食品を摂取しても、有害な影響を受けないということは、長期にわたる動物実験でも確かめられています。