小説を書こう!

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2006.01.08
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「よっ」
 デスクでキーボードを打っていると、突然背中を叩かれた。驚いて振り返ると、そこには同じ会社で働く山道祐樹が笑って立っていた。
「メシ、行かない?」
「え? もう、そんな時間?」
 健二が腕時計を見ると午後十二時三十五分を差している。この会社では昼休みは十二時半から一時半までの一時間だった。
「よし、行くか」
 健二は立ち上がって、すでに歩き始めていた祐樹の背中を追った。
 山道祐樹は健二の同期入社十五人の中の一人だった。だけどこの営業所に配属された新人は健二と祐樹の二人だけだったのだ。同期全員で行った新人研修の際はそんなに親しく話したりはしなかったけど、いざ二人だけで見知らぬ場所に配属となったら、二人は昼食の時はもちろん、金曜日の仕事帰りに居酒屋で酒を飲むということも時々やるようになっっていた。
 会社の入っているビルを出て、二人は会社の近くのよく昼休みに行く定食屋に入った。そしていつものように一番奥のテーブルに向かい合って座る。
「実はさ…。昨日、手紙を読んだんだ」
「手紙? 誰からの?」
「小学生の頃、同級生だった子」
「え? 同窓会の誘いの手紙、とか?」
「いや。そうじゃないんだ…。その手紙…、読んだのは昨日だったんだけど、実はその手紙を貰ったのは昨日じゃないんだよ…」
「…?」
「実は、その手紙、十二年前に貰っていたんだ…」
「十二年前?」
「うん…。だけどその手紙を初めて読んだのが昨日だった…」
「どういうこと?」
 祐樹は興味を覚えたのか、少し体を前に乗り出してきた。
 健二は注文した定食が出てくるまでの空いた時間を利用して、昨日実家で見つけた石川の手紙についての話しをした。
「…って書いてあったんだよ」
「…ふうん、…そうなんだ」
「祐樹は、この手紙をどう思う?」
「どう思うって言われても…」
 祐樹は天ぷらを箸でつつきながら、少し考えるように目を細める。
「過去からのSOSか…」
「過去からのSOS?」
「そうだよ、その手紙はきっと、十二年前の…、ええと、石川さんだっけ? 十二年前の石川さんから、今の健二へのSOSなんだよ…。きっと…」
「石川から俺への、過去からのSOS…」
 二人の周りは同じく昼食に来ているサラリーマン達が大声で笑いながら話していて、騒々しい。祐樹は茶碗を取って、ご飯を口の中に書き入れるように食べている。健二もエビの天ぷらを箸でつまみ上げた。そしてそのエビを見つめながら小さく呟くように、誰へともなく、
「きっと、もう間に合わないんだろうな…」
 と言った。
「そうとは、限らないんじゃないかな」
「え…?」
「間に合わない、とは限らないんじゃないかな」
 健二はあっけに取られたような顔をして、目の前の祐樹の顔を見つめる。
「もしかしたら、まだ間に合うかもしれないよ…」
「え…、でも、だって…」
「もしかしたら、まだその石川さんは苦しんでいるのかもしれない。そしてお前に助けを求めているのかもしれないだろ」
「…」
「手紙に、石川さんの連絡先とかは書いてなかったのか?」
「…引っ越し先の叔母さんの住所と、そして電場番号が書かれていた…」
「普通、手紙に電話番号なんて書かないよ…。その十二年前の石川さんは電話が欲しかったんだよ…。お前からの電話が…」
「俺からの電話…」
 健二はまた箸につままれたままのエビを見た。だけど心の中では、祐樹の「まだ間に合うかもしれない」という言葉について考えていた。その言葉が正しいのかどうかは分からない。きっと、十二年もの年月が経っているのだから、もう何も自分にはできることはない気がする。だけど…。
「おい、エビ、食べないのか?」
「え? あ、ああ」
 祐樹の声に少し驚く。そして健二はエビを口の中に押し込んだ。






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Last updated  2008.11.13 07:23:21


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