この「MUSIC IS MY DESIRE」という曲は、PABLO MOSESの楽曲の中では珍しく、ちょっと洒落たエレピ?が導入されているのが非常に大きな特徴だ。時折入るチープなオルガンの音も効果的。ミディアムテンポで流暢なリズムにのって歌われるのは、あくまでも体温の低い淡々としたPABLO MOSES節だ。これが見事にマッチして摩訶不思議で、かつ絶妙な音空間を作り出している。もちろん私の大好きな曲で、全レゲエのベスト20に必ず入る。(だけどこの曲を他の方が褒めてるのを見たことは皆無。なんで?)
2.ETHIOPIAN / WHEN WILL BE THE END LP「EVERYTHING CRASH」収録 P.39掲載
さてインターネットではどうだろう?と「ETHIOPIAN EVERYTHING CRASH」で検索をかけてみてヒットしたページは、日本人によるものは一箇所だけのようだ。(単にヒットしないだけで実は沢山あるのかもしれないが。)因みにそのページを見ても、このアルバムについては取り上げていても「WHEN WILL BE THE END 」については全く記述なし。それどころかコレクターのお皿自慢中心というなんとも滑稽で哀れな内容に失望。とほほ、、、。
4.CULTURE / JAH PRETTY FACE LP「TWO SEVENS CLASH ('77)」収録 P.50掲載
1.Dubby Dubby 2.Leggo Dub 4.Winners Dub 5.Dub Down Babylonとどれもホーンの奏でる主旋律がのんびりと気持ちよい。それをメインにChannel One Sly Dunbar のドラムもタイトで気持ちよい。軽めのダブ処理や電話、車、鳩時計、チャイムといった町や家庭の音が随所に挿入されているのがこのアルバムの大きな特徴でもある。しかしどれもこれも曲調が似てるな。3.Doberman Skankもこれまたホーンの奏でる主旋律が良いが、犬の鳴き声を沢山挿入したアイディアが面白く秀逸である、中華ドラもいいね。そして犬の鳴き声がダブ処理されエコーしていくところなんて最高(笑)。
そしてこのアルバムの最大の聴き所は一番最後の9.Bubble Up Styleの何とも郷愁をそそるどこか懐かしい大甘なメロディだ。素晴らしいレイドバック感。小学校のプールから帰って体がだるくなり昼寝をしていた時に流れていたBGM、あるいはつげ義春/ねじ式、うる星やつら/ビューティフルドリーマーとかの永遠に時間が止まったかのような異次元の、でもどこか懐かしい世界がここにはある。ヴォーカルが無いからこそ、この素晴らしい異空間世界が味わえる。最高のダブ/インスト作品だ。
6.TWINKLE BROTHERS / BITE ME '80 「COUNTRYMEN (VIRGIN RECORDS CDFL29)」収録 P.58掲載
これは私の周りでは当時大騒ぎされていたアルバムで菅野和彦さんも「実にショッキングなアルバム。」と取り上げられている。彼はサウンド面での革新性に衝撃を受けたようだが私はむしろメロディの情感深い部分に感銘を受けた。1.I DON'T WANT TO BE LONELY ANY MORE 2.PATOO 3. NEVER GET BURN 4.FREE US (凄い!A面全部だ)と続く暗いけど温かく深く味わい深いメロディは当時のレゲエグループにはかなり珍しかったように思う。
5.FREE US DUBのオルガン、ホーン、ギター、ドラムなどに適度にエコーをかけた各種ダブ処理などは実に絶妙で、必要最小限まで差し引いた中にそれらを見事に散りばめた音世界は日本のわびさびの世界に通じる素晴らしいものだ。
9.BITE ME で聴けるメロディもA面同様素晴らしく奥深く味わい深いものなのだが、サウンドが少し明るめで、まるでヴァイブのようにポップに転がるギター?の音色、やわらかくリズムを刻むオルガン、幻想的に鳴り響くふにゃふにゃギターなどどれも優しく心地よい。途中明るく転調するメロディはこのアルバムで唯一明るい光が差し込む部分だが、その僅かな光源に希望を見出すように歌い上げる様子には胸を締め付けられる。
この時代のルーツレゲエは聴く人を選んでしまうほど個性的で一般性、大衆性をほとんど持たない。例えばこのTWINKLE BROTHERSのアルバムなどは同時代同レベルのソウルグループのそれと比べるとその知名度は圧倒的に不当に絶対的に低い。個人的には「SOUL GENERATION / BEYOND BODY AND SOUL」や「TERRY HUFF AND SPECIAL DELIVERY / THE LONELY ONE」クラスの黒人音楽ファンには『絶対』なアルバムだと思っているのだけれども、このアルバムはいつまでたってもそれらの10分の1ほども評価されることはないだろう。因みにこれだけ素晴らしいアルバムを作っておきながら彼らは観光客相手の営業音楽をやらねば食べていけなかったそうな。(アマゾンで試聴出来るようですので、どうかよろしく。)
7.DADAWAH / ZION LAND '75 「PEACE & LOVE (TROJAN CDTRL 400)」収録 P.37掲載
DADAWAH名義だが実際はラスマイケルのグループとのこと。そんな訳でRAS MICHAEL & THE SONS OF NEGUS / NYAHBINGHIとカップリングされ再発された。このアルバムも当時激レア高値盤としてならしていた。まさかCDで再発される時代がやってこようとは夢にも思わなかった。こういった現象はレゲエだけに止まらない事象だがそれでも世界的にレゲエの評価が格段に高まってきた証左とも言えるだろう。
12"「PASS THE KOUCHIE」のB面収録。CD「MIGHTY DIAMONDS / The Classic Recordings Of Jamaica's Finest Vocal Trio」にも収録されてます。Augustus Gussie Clarkeプロュース。派手さはないものの実にハートの温まるメロディを聴かせてくれる。そしてゆったりとしたリズムが実に心臓の鼓動と相性がよく、一旦聴き出すと延々1時間ぐらい心地よいマッサージを受けているかのような錯覚に陥るほど。抑制の効いたコーラスもいいし時折聴かれるヴァイブの音色などはまさに宝石の輝きだ。約6分の曲のうちの後半はまるまるオルガン中心の簡素なインストなのだが、これまた最高のリラックス効果をもたらしてくれ、聴いているといつの間にか深い眠りの世界へと誘ってくれる。この単調なリズムの繰り返しの持つ妙味を感じ取って頂きたい。(短いバージョンも存在したはずですので、購入に際してはご注意下さい。)
9.PRINCE LINCOLN & THE RASSES / PEOPLE'S MIND CD「NATURAL WILD '02(ORANGE STREET CDUB 19)」 P.61掲載
10.JACOB "KILLER" MILLER / ONCE UPON A TIME '80 LP「MIXED UP MOODS(TOP RANKING)」 P.97掲載
ジェイコブミラーの遺作。このアルバムは他にも「COME SEEK JAH」,「MR.OFFICER」,「CHAPTER A DAY」といった偏差値65クラスの素晴らしいルーツレゲエが収録されている。現在ではLP盤とは違い、画像のジャケでダブなどを加えた構成で発売されているようだ。
この曲はMarvin Gaye & Mary Wellsがオリジナルのようだが、原曲の物静かで柔らかな歌唱とはうって変わって、ここでは非常にDEEPでねちっこい歌となっている。リズムもタイトで生き生きとした躍動感があり、曲調も明るいので全く別曲に変身してしまっている。マービンゲイの原曲の存在など特に気にとめなかった方も、この曲を聴けばそのメロディラインの素晴らしさに新たに気づくことうけ合いであろう。
11.CARLTON AND THE SHOES / LOVE IS ALL '76「LOVE ME FOREVER」(STUDIO ONE PSOL 003)P.40掲載
ロックステディ/初期レゲエを代表する名作アルバムから。アルバムは76年リリースだが録音自体は68年頃に行われていた模様。他にもLove Me Forever, Never Give Your Heart Away, Sincerely Yours(ロックステディ偏差値72), Me And Youといった名曲がゴロゴロしているのだが、その中でも「LOVE IS ALL」はロックステディの頂点に君臨する名曲中の名曲だ。
基本は軽快でノリノリなロックステディのリズムで、骨太なベースは音が歪みまくっている。それがこのリズムのイキイキとした躍動感の表現に一役買っていて生命感を大いに感じさせる。チャキチャキして忙しいギターとチープな音色のオルガンの響きも素晴らしい。それらこの時期の黄金リズムにのってCARLTON AND THE SHOESの淡白で甘く優しいハーモニーがさわやかに響き渡るのだから堪らない。
因みに橋本徹氏はFREE SOUL 2001においてこのアルバムではなく、長らく幻の名盤とされていた激レア激高値盤のセカンド「THIS HEART OF MINE」からGIVE ME LITTLE MOREを選曲しているんだけど、そんなにいい曲ですか?これ。メロディも曲の出来もリズムもいまいちパッとしないし、この程度の曲ならどこにでも転がってるヨ。せいぜい偏差値55程度。氏の耳を節穴とは思っていないので、結論としては単にお皿自慢をしたかっただけだと思うな。
明るく元気
テンション
高揚感
疾走感
グルーブ
メロディ
器楽
瑞々しさ
ボーナス(音の歪み)
ポップ偏差値合計
7
7
9
10
10
9
10
8
5
75
12.MIGHTY DIAMONDS / CHO ME BRETHREN '78 「STAND UP TO YOUR JUDGEMENT」 STRICKTLY ROCKERS P.45掲載
MIGHTY DIAMONDSというと1ST「I NEED A ROOF」ばかりに脚光があたりがちだ。確かに「I NEED A ROOF」,「RIGHT TIME」,「GO SEEK YOUR RIGHTS」,「AFRICA」などの美しいメロディ&ハーモニーはレゲエファンばかりでなく甘茶ソウルファンなども虜にしてしまう名曲揃いだ。しかし逆に言えばどの曲も偏差値65程度の魅力に止まっていると思う。甘茶ソウルと言うにはメロディはいまひとつ突き抜けた魅力はないし、レゲエのリズムとしても取り立てて騒ぐほどの内容は無い。
そこでこの「CHO ME BRETHREN」である。収録アルバムの録音は76年とのことだから実質的に2ND LPと言える。1STで聴けた瑞々しく美しいメロディ&ハーモニーは引き続き健在。更にこの曲ではチャンネルワンの引き締まったリズムでアップテンポに迫り、全体を通して聴けるシンセの短いキャッチーなフレーズがかなり胸を締め付ける。淡々と歌い上げるリードとその旋律を外して絡みつくファルセットコーラスの妙味。甘茶ソウル同様テンポの早い胸キュンメロは私のツボ中のツボ。圧巻は間奏部分でエコーが深くなるシンセの「ンチャ、ンチャ」フレーズの振幅感だ。この間奏部分だけでも何度でも何度でも繰り返し聴きたくなる絶妙なプチダブ音空間、派手さは無いけど素晴らしすぎます。 このページ
で間奏の一部を含めて試聴できます。「JA WILL WORK IT OUT」も抜群の出来だが、また別の機会に。
画像はCD「THE BEST OF THE MIGHTY DIAMONDS 20 HITS」(GRAYLAN JJ020/MDRP001 CD)のジャケを開いた状態のもの。このCDはベストと謳っているものの実際はLP「STAND UP TO YOUR JUDGEMENT ('78)」と「TELL ME WHAT'S WRONG ('80)」を2ON1にカップリングしたもののようだ。曲順のクレジットが滅茶苦茶なのだが「CHO ME BRETHREN」は14曲目で「JA WILL WORK IT OUT」は11曲目。
13.AUGUSTUS PABLO / FAT GIRL JEAN '74 「THRILLER」収録 STRICKTLY ROCKERS P.131掲載
アルバムとしては「PABLO NUH JESTER」、「DUBBING IN A AFRICA」というタイトルでも同内容で出ていてチトややこしい。CD「ORIGINAL THRILLER」として再発されています。更には最近発売されたTROJANの「Dub Rarities Box Set」にも収録されているので捜せば試聴出来ると思います。
14.BLACK UHURU / SPONJI REGGAE (12"VERSION) '81 P.63掲載
傑作アルバム「RED」収録曲の12"VERSIONで、2CD「LIBERATION:THE ISLAND ANTHOLOGY」に収録されている。菅野和彦さんのアルバム「RED」に対するコメントは「マイケルローズのボーカルがロック的でうんざり」といった程度のサラリとしたものだが、このアルバムで聴けるSLY+ROBBIEのヘビーなリズムが当時のレゲエファンに与えた衝撃は大きく、ロックファンにも大受け、レゲエのファン拡大に大きく貢献した。菅野和彦さんは同じユフルの「GUESS WHO'S COMING TO DINNER」に対して「機械的かつ人間的な強烈なリズムは革命的」と評しているのだが、この表現はそっくりこの「SPONJI REGGAE」にも当て嵌まる。(フィリーダンサーにおけるMFSB/EARL YOUNGのドラミングに近い。)
1.Two Sevens Clash / Prophesy Reveal [feat. Bo Jangles] 06:09
2 I'm Not Ashamed [feat. I-Roy] 08:19 3 See Them A Come / Natty Pass Him G.C.E. [feat. Shorty The President] 06:28 (ポップ偏差値67)
4 Natty Dread Taking Over [feat. I-Roy] 06:15 5 Baldhead Bridge [feat. Ranking Joe] 07:15 (ポップ偏差値63)
6 Jah Love / Selassie I Cup [feat. Bo Jangles] 05:50 (ポップ偏差値65)
7 Zion Gate / Forty Leg Dread [feat. Prince Mohammed] 07:32 (ポップ偏差値63)
8 Disco Train [feat. Nicodemus] 08:55 9 Send Some Rain [feat. Clint Eastwood] 07:05 10 Burning All Illusion / The Same Knife [feat. Prince Far I] 05:47 11 Innocent Blood / Rock It Up [feat. U Brown] 06:03
21.SENSATIONS / THOSE GUYS & THIS YAH DUB 「HOTTEST HITS VOL.1」,「TREASURE ISLE DUB VOL.1」収録 P.106,141掲載
Hit After Hit '73 Everybody Plays The Fool '75 Night and Day aka The Chosen Few In Miami '76
これらの中に果たしてUK POLYDORに残された「YOU MEAN EVERYTHING TO ME」級の甘茶ソウルは存在するのか調べて見ました。
Hit After Hit (TROJAN TRLS 56)'73
1.You're A Big Girl Now (Ver 1) 2.You're A Big Girl Now (Ver 3) 3.Shaft 4.Stranger On The Shore 5.I'm Sorry (甘茶レゲエ)
6.Mexican Divorce 7.People Make The World Go Round (甘茶レゲエ)
8.Everybody Plays The Fool 9.Going Back Home 10.Melting Pot 11.Ebony Eyes 12.Do Your Thing
1.I Love The Way You Love 2.I Second That Emotion (甘茶レゲエ)
3.Make Way For The Young Folks 4.Hide And Seek 5.Reggae Stuff 6.My Thing (甘茶レゲエ)
7.Everybody Plays The Fool 8.Tears Of A Clown 9.Hang On Sloopy 10.Queen Majesty 11.La La At The End 12.I Love The Way You Love (Part 2)
これもほとんどがレゲエでやはり過去のヒット曲の寄せ集めと思われ、決して75年に録音された訳ではなさそう。やはり安易なソウル・カバーが多いですね。2はSMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES、6はSYLVIAの甘茶レゲエ・カバーですが特に妙味ある内容ではありません。まあ、こうした幾度ものカバーによって徐々に甘茶センスに磨きをかけていったというところでしょうか・
Night and Day aka The Chosen Few In Miami (TROJAN TRLS 131)'76
1. Night and Day 2. I Am a Man
3. In the Rain (甘茶レゲエ)
4. Wandering 5. Funky Buttercup 6. Candy, I'm So Doggone Mixed Up(甘茶偏差値63)
7. Why Can't We Live 8. Drift Away 9. Daniel 10. Hit Me With Music
11. Sun Will Shine 12. All Things Change 13. Music Maker 14. Don't Let Me Down 15. Girl I've Got a Date 16. Thinking of You 17. Self Destruct 18. Dancing Mood 19. Black Foxy Woman[Instrumental] 20. Young Girl 21. Reggae Rock Road 22. I'm Going Down for the Last Time [Take 1] 23. I'm Going Down for the Last Time [Version]
3作目は最近CDで再発され、13曲もボーナスが追加収録されました。レゲエと非レゲエ(ソウル、ファンク)が半々ぐらいの内容で、だいぶ洗練されてきています。(風の噂によると結構クラブDJに受けの良いファンクが入っているとか。)比較的サウンドがレゲエ色薄めの2などはソウルファンにも受け入れられそうな甘めの良曲。3はDRAMATICSの甘茶レゲエ・カバーだけど特に妙味なし。そして6が待望の甘茶ソウル。軽めのミディアム・リズムに、ストリングスやファルセットを交えた甘めのソウルで、その快活なリズムはフリーソウル・ファンにも受け入れ易そうな内容です。「YOU MEAN EVERYTHING TO ME」のようなコッテリとしたものではないけど、甘茶ファンならば一聴の価値ありでしょう。