真名井 耕造 真名井生活研究所

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中学校教育指導要領 歴史的分野


〔歴史的分野〕

1 目 標

(1) 歴史的事象に対する関心を高め,我が国の歴史の大きな流れと各時代の特色を世界の歴史を背景に理解させ,それを通して我が国の文化と伝統の特色を広い視野に立って考えさせるとともに,我が国の歴史に対する愛情を深め,国民としての自覚を育てる。

(2) 国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産を,その時代や地域との関連において理解させ,尊重する態度を育てる。

(3) 歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ,我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせるとともに,他民族の文化,生活などに関心をもたせ,国際協調の精神を養う。

(4) 身近な地域の歴史や具体的な事象の学習を通して歴史に対する興味や関心を高め,様々な資料を活用して歴史的事象を多面的・多角的に考察し公正に判断するとともに適切に表現する能力と態度を育てる。

2 内 容

(1) 歴史の流れと地域の歴史

ア 我が国の歴史について,関心ある主題を設定しまとめる作業的な活動を通して,時代の移り変わりに気付かせるとともに,歴史を学ぶ意欲を高める。
イ 身近な地域の歴史を調べる活動を通して,地域への関心を高め,地域の具体的な事柄とのかかわりの中で我が国の歴史を理解させるとともに,歴史の学び方を身に付けさせる。


(2) 古代までの日本

ア 人類が出現し,やがて世界の古代文明が生まれたこと,また,日本列島で狩猟・採集を行っていた人々の生活が農耕の広まりとともに変化していったことを理解させる。
イ 国家が形成されていく過程のあらましを,東アジアとのかかわり,古墳の広まり,大和朝廷による統一を通して理解させる。その際,当時の人々の信仰,大陸から移住してきた人々の我が国の社会に果たした役割に気付かせる。
ウ 大陸の文物や制度を積極的に取り入れながら国家の仕組みが整えられ,その後,天皇・貴族の政治が展開されたことを,聖徳太子の政治と大化の改新,律令国家の確立,摂関政治を通して理解させる。
エ 国際的な要素をもった文化が栄え,後に文化の国風化が進んだことを理解させる。


(3) 中世の日本

ア 武士が台頭し武家政権が成立したこととその後の武家社会の展開を鎌倉幕府の成立,南北朝の争乱と室町幕府,応仁の乱後の社会的な変動を通して理解させるとともに,元寇,日明貿易,琉球の国際的な役割など,その間の東アジア世界とのかかわりに気付かせる。
イ 農業などの諸産業が発達し,畿内を中心とした都市や農村に自治的な仕組みが生まれたことを理解させるとともに,武士や民衆の活力を背景にして生み出された新たな文化の特色について考えさせる。


(4) 近世の日本

ア 戦国の動乱とその時期のヨーロッパ人の来航について理解させるとともに,その文化の伝来が我が国の社会に及ぼした影響について考えさせる。
イ 織田・豊臣による統一事業とその当時の対外関係のあらましを通して政治や社会の大きな変化を理解させるとともに,武将や豪商などの生活文化の展開に気付かせる。
ウ 江戸幕府の成立と大名統制,鎖国政策,身分制度の確立及び農村の様子を通して,江戸幕府の政治の特色について考えさせる。その際,鎖国下の対外関係に気付かせる。
エ 産業,交通などが発達し,町人文化が都市を中心に形成されたことを理解させるとともに,地方の生活文化について着目させ,現在との結び付きについて考えさせる。
オ 社会の変動や欧米諸国の接近に対応した幕府の政治改革と政治の行き詰まりを理解させるとともに,新しい学問・思想の動きについて気付かせる。


(5) 近現代の日本と世界

ア 市民革命や産業革命を経た欧米諸国のアジアへの進出を背景に,開国とその影響について理解させる。
イ 明治維新の経緯のあらましを理解させ,新政府の諸改革により近代国家の基礎が整えられたことに気付かせるとともに,人々の生活の大きな変化について考えさせる。
ウ 急速に近代化を進めた我が国の国際的地位の向上と大陸との関係のあらましを,自由民権運動と大日本帝国憲法の制定,日清・日露戦争,条約改正を通して理解させる。
エ 政府の富国強兵・殖産興業政策の下で進展した我が国の近代産業が産業革命を経て発展したことと,その中での国民生活の変化について理解させる。また,この時期に近代文化が形成され,都市を中心に文化の大衆化が進んだことに気付かせる。
オ 第一次世界大戦前後の国際情勢のあらましを理解させるとともに,民族運動の高まり,国際平和への努力,この時期の我が国の国民の政治的自覚の高まりに気付かせる。
カ 昭和初期から第二次世界大戦の終結までの我が国の政治・外交の動き,中国などアジア諸国との関係,欧米諸国の動きに着目させて,経済の混乱と社会問題の発生,軍部の台頭から戦争までの経過を理解させるとともに,戦時下の国民の生活に着目させる。また,大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させる。
キ 第二次世界大戦後,国際社会に復帰するまでの我が国の民主化と再建の過程や国際社会への参加について,世界の動きと関連させて理解させる。
ク 高度経済成長以降の我が国の動きを世界の動きと関連させてとらえさせ,経済や科学技術の急速な発展とそれに伴う国民の生活の向上や国際社会において我が国の役割が大きくなってきたことについて気付かせる。

3 内容の取扱い

(1) 内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。

ア 生徒の発達段階を考慮し,抽象的で高度な内容や複雑な社会構造などに深入りすることは避けるとともに,各時代の特色を表す歴史的事象を重点的に選んで指導内容を構成することにより,細かな知識を記憶するだけの学習に陥らないようにすること。なお,年代の表し方や時代区分についても基本的な理解を得させるようにすること。
イ 世界の歴史については,我が国の歴史を理解する際の背景として我が国の歴史と直接かかわる事柄を取り扱うにとどめること。
ウ 歴史的事象の指導に当たっては,地理的分野との連携を踏まえ,地理的条件にも着目して取り扱うよう工夫するとともに,公民的分野との関連にも配慮すること。
エ 国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物に対する生徒の興味・関心を育てる指導に努めるとともに,それぞれの人物が果たした役割や生き方などについて時代的背景と関連付けて考察させるようにすること。その際,身近な地域の歴史上の人物を取り上げることにも留意すること。
オ 日本人の生活や生活に根ざした文化については,各時代の政治や社会の動き及び各地域の地理的条件,身近な地域の歴史とも関連付けて指導するとともに,民俗学などの成果の活用や博物館,郷土資料館などの見学・調査を通じて,生活文化の展開を具体的に学ぶことができるようにすること。


(2) 内容の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アについては,小学校における学習を踏まえ,中学校の歴史学習の導入として実施することを原則とすること。取り上げる主題は幾つかの時代にまたがるものとし,各時代ごとの細かな事象への深入りを避けるようにすること。
イ イについては,内容の(2)以下とかかわらせて計画的に実施し,地域の特性に応じた時代を取り上げるようにするとともに,人々の生活や生活に根ざした文化に着目した取扱いを工夫すること。その際,博物館,郷土資料館などの活用も考慮すること。
ウ ア及びイについては,適切かつ十分な授業時数を配当すること。


(3) 内容の(2)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アの「世界の古代文明」については,中国の古代文明を例として取り上げ,生活技術の発達,文字の使用などに気付かせるようにすること。また,稲作が大陸から日本列島に伝わったことについて気付かせるようにすること。
イ イの「国家が形成されていく過程のあらまし」については,氏姓制度などの細かな事象に深入りしないようにすること。また,「東アジアとのかかわり」については,我が国との交流を扱い,東アジアにおける王朝の変遷などの詳細は取り扱わないこと。
ウ ウについては,律令国家の形成以後,それを変質させながら奈良の都や平安京において天皇・貴族の政治が行われたことをとらえさせる観点から取り扱うようにすること。その際,律令制の変質や律令政治の実態などに深入りしないようにすること。
エ エについては,代表的な事例を取り上げて,仏教の影響,文化を担った人々などに着目して取り扱い,網羅的な取扱いにならないようにすること。
オ 考古学などの成果を活用するとともに,神話・伝承などの学習を通して,当時の人々の信仰やものの見方などに気付かせるよう留意すること。


(4) 内容の(3)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アについては,武家政治の特色をとらえさせるようにし,「武家社会の展開」については,土地制度などの細かな史実や政治機構の詳細などに深入りしないようにすること。
イ イの「農村」については,徳政令,一揆について網羅的な取扱いにならないようにするとともに,それらの内容に深入りしないようにすること。
文化については,代表的な事例を取り上げてその特色を考えさせるようにし,網羅的な取扱いにならないようにすること。


(5) 内容の(4)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アの「ヨーロッパ人の来航」の背景については,新航路の開拓を中心に取り扱い,宗教改革については深入りしないようにすること。
イ イについては,それまでの時代との違いを理解させることを中心にし,細かな史実に深入りしないようにすること。
ウ ウの「鎖国下の対外関係」については,オランダ,中国との交易のほか,朝鮮との交流や琉球の役割についても扱うようにすること。また,北方との交易をしていたアイヌについても着目させるようにすること。
エ エの「産業,交通などが発達」したことについては,身近な地域の特色を生かして学習することを中心にし,網羅的な取扱いにならないようにすること。また,「町人文化」については,代表的な事例を取り上げて特色を考えさせるようにし,網羅的な取扱いにならないようにすること。「地方の生活文化」については,身近な地域の事例を取り上げるよう配慮すること。
オ オの「社会の変動」については,商業の発達,百姓一揆などを農村の変化との関連で取り扱うが,高度な内容や細かな史実に深入りしないようにすること。「欧米諸国の接近」については,国内の対応を扱うにとどめること。「幕府の政治改革と政治の行き詰まり」については,代表的な事例を通して指導するようにすること。


(6) 内容の(5)については,次のとおり取り扱うものとする。

ア アの「市民革命」や「産業革命」については,代表的な一,二の国の例を取り上げて扱うようにすること。「欧米諸国のアジアへの進出」については,近代社会の成立の下,新たな市場や原料,植民地を求めてアジアにも進出したものであることを欧米諸国の事例を選んで取り上げるようにすること。ただし,これらは我が国の歴史を理解するための背景として取り扱うにとどめ,各事象の詳細にわたらないようにすること。
イ イの「明治維新」については,複雑な国際情勢の中で独立を保ち,近代国家を形成していった政府や人々の努力に気付かせるようにすること。「新政府の諸改革」については,廃藩置県,学制・兵制・税制の改革,身分制度の廃止,領土の画定を扱うこと。
ウ ウの「大日本帝国憲法の制定」については,これにより当時アジアで唯一の立憲制の国家が成立し議会政治が始まったことの意義について気付かせるようにすること。また,「条約改正」については,欧米諸国との対等の外交関係を樹立するための人々の努力に気付かせるようにすること。
エ エの「産業革命」については,都市や農山漁村の生活に大きな変化が生じたことに気付かせるようにすること。また,「近代文化」については,学問,教育,科学技術,芸術などの発展を扱い,その進歩が著しかったことや伝統的な文化の上に欧米文化を受容して形成されたものであることを,代表的な事例を取り上げて気付かせるようにし,網羅的な取扱いにならないようにすること。
オ オの「第一次世界大戦前後の国際情勢のあらまし」については,大戦の背景,日本の参戦,ロシア革命,戦後の国際協調の動きを通して,世界の動きと我が国との関連を重点的にとらえさせるようにすること。また,「我が国の国民の政治的自覚の高まり」については,大正デモクラシーの時期の政党政治の発達,民主主義思想の普及,社会運動の展開を扱うが,詳細な経緯は取り扱わないこと。
カ カについては,世界の動きと我が国との関連を重点的にとらえさせるとともに,国際協調と国際平和の実現に努めることが大切であることに気付かせるようにすること。
キ キについては,国民が苦難を乗り越えて新しい日本の建設に努力したことに気付かせるようにすること。
ク クについては,節目となる歴史的事象を取り上げて扱うようにすること。



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