2009年08月31日
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届けもの
携帯がなる。「今、新宿駅にいる。今日は大阪まで出張なんだ」「はい知っていますよ」」昨日は福岡から帰ってきたのは夜の10時過ぎ、明日は大阪だから朝6時には起こしてくれ。という会話だけで寝てしまう。5時におきて朝ごはんの仕度。ぎりぎりまで寝ている。早く起こすと機嫌が悪いので5時30分に起こす。出張の準備は昨日のうちにしておいた。「あなた、ご飯」「ああ」疲れた体を持ち上げてゆっくりと仕度をする。目は半分閉じている。「味噌汁とご飯だけでいいや」新聞を広げ、お茶を飲む「もうこんな時間だと」独り言を言ってそさくさでかける。すでに2人の子どもはひとり立ちをして、札幌と広島で仕事をしている。父親とはたまには行き先がそちらの方だと会うらしい。夫の行ってきますの返事だけをして、また布団にもぐる。そして今の電話だ。
 「書斎の机の上に会社の封筒があるからそれを急いで持ってきてくれ、タクシーでも何でもいいから」ハイの返事も聞かずに切れる電話「いつもこうだわ」と言いながら出かける支度をする。書斎には滅多に入らない、一度あまりにも乱雑なので掃除したら「ここのあった書類はどうした。勝手にさわるとどこに何があるかわからない」といったのでそれからはゴミを捨てるぐらいにした。机の上に商事会社の名前が書いてある封筒が合った。それを取り上げるとその机のシートの下にカレンダーがあった。9月のカレンダー。何気なく見るとハートのマークがある。なんだろう。何かいいことでもあるのかしら。と思いながらも時間が気になり駅へ急ぐ。タクシーで新宿まで行くのに30分かかかるだろう。道の混雑具合もある。私鉄を使えば同じ30分だけれど確実に着く「忙しい人のわりにはこういうところの計算ができないない人なんだ」となんか少しほくそえむ。新宿に着いた。JRの方へ向かう「あ、どこにいるのかしら」すぐに携帯で呼び出すがつながらない。きっと会社と話をしているのあろう。それともハートマークと関係があるのかも。少しキッとした顔になった。「まったく」。結婚する前によく新宿で待ち合わせをした。「新宿にもハチ公前ってあればいいのになあ、こんなに混んでいてどこで待ち合わせしていいのかわからないよね」といつも口癖のように言っていた「じゃあ2人しかわからない場所を決めておこう」なんて言って2箇所決めていた。小田急線で来た場合には、中二階にある高野フルーツパーラーのところ。京王線できたときには、カレー屋の前。こう決めたのは20年前。「しょうがない」と携帯をカバンにしまう。桜上水から来た妻はカレー屋の前に行く。でもいない「まさか何か食べているんじゃないかな」と言いながら中を覗き込む。お金はない2人は良く此処で食べた。一番安いポークカレー。目の前のある福神漬けや漬物をカレーの具と同じぐらいに入れて食べた。250円が350円になっているがその頃と変わらないことも確認してしまう自分がいた。「たまには、カツカレー食べたいね」が2人の小さな目標だった。時間は刻々と過ぎている。大阪に行くのだからJRには乗る。でも一旦改札に入ってしまうともうどこにいるのかわからなくなる。気は急いた。丸の内線のある地下通路を使って西口の小田急線の方に向かう。おかしいなと思ったが携帯がならない。「ああ、もしかして」夫はいつも携帯の電源が切れてしまって大切な時には役に立たない。そうかもしれない、でも公衆電話があるのに、とその時あたりを見回すと公衆電話はあまり見当たらない。「おおい」という声がした高野フルーツパーラーの前にいた。「携帯電池切れちゃって」「カレー屋の前で待ち合わせじゃなかったの」といっても要領を得ない顔をしている。そのことは忘れているようだ。でももう一つの場所にしっかりいた。今度は封筒を確かめながら「良く此処がわかったなあ」という顔をする。つねってやろうと思った左手が白い箱を持っている「おおそうそうフルーツケーキ買ったんだ。今では此処は24時間の営業なんだってびっくりした」あの頃の私達にとっては高嶺の花であったタカノ。入ったことはない。「で、それは」「ああ忘れちゃ困るな、今日は結婚記念日じゃないか」
 毎日毎日一人で過す日も増えた。それでもなんだかんだ言っても夫は帰ってくる。会話も少ないけれど、お互いのことをよく知っている。「ありがとう」「昔は良くここへ来たものな」と余計なことも言ってしまうところも夫らしい。「行ってらっしゃい」「ああ」改札を通る時にsuicaの残高がないことに気がついた「ああ、まったく」妻がそっとsuicaを出す。「ああ、気がきくね」とニコッと笑う夫。充電器も忘れているだろう。と思って差し出すと「おおこれこれ」とまたまた喜ぶ。「そうだこのお礼に夕方には此処に着くからさあ、いつも食べていたかれー屋でいつものカツカレー食べような」まったく最後まで・・・「ハイ、待ち合わせは?」「そうだな。此処にしよう」改札口から少し離れたキオスクのとなりにあるコインロッカーの前だ。「おまえ良くこのロッカーに物を入れて、キーがないキーがないと騒いでいたもんな」
 思い出は遠くかすかに脳裏に残っている。楽しいこともたくさんあったのに、嫌なこともたくさんあったのに、なぜは思い出すのはほんのちょっとのことである。それが人生かもしれない。「じゃあ」と手を降る姿を追う自分。「まあいいか」と心で舌を出した。





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最終更新日  2009年08月31日 11時52分41秒
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