漫望のなんでもかんでも

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まろ0301

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2018.01.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
カズオ・イシグロ氏の「文学白熱授業」を見た。歴史と忘却、記憶という事を氏は様々な角度から語った。第二次大戦中に多くのフランス人がドイツに協力し、レジスタンスの闘士達を売った。ユダヤ人を告発した。しかし、戦後、ド・ゴールは、「すべてのフランス人が、ナチに対して勇敢にたたかった」という神話を作り出し、フランス人たちはそれを信じた。どこの誰が、ナチに協力し、レジスタンスの闘士を売ったかを知っていながらだ。

 大通りの真ん中を赤ん坊を抱えて丸刈りにされた若い女性が周囲の人たちから罵倒されながら歩いている写真もある。鮮烈である。
 しかし、上に記したような事実もあった。
 これらのことは「なかったこと」にされた。イシグロ氏は、神話を作り出し、みんながそれを信じたふりをしないとフランスは内乱状態になったかもしれないと語っていた。氏は、冷戦終結の後に起ったユーゴ内戦に衝撃を受け、憎しみを煽る手段として歴史が使われたことを別のところで述べている。
 「許そう、しかし忘れない」と言う言葉をどこかで耳にしたことがある。だがこれは、困難なことである。
 たまたま読んでいる『法然』(日本の名著 中公)の解説の中で、塚本善隆氏は、法然の父が敵の襲撃を受けて瀕死の重傷を負いながら法然に言い残した言葉を紹介している。概略を記す。

 お前は復讐をしてはいけない。これは前世からの私の宿縁なのだ。傷を負って初めて人に与えてきた傷の痛みが分かった。お前が復讐を遂げれば相手の子もまたお前を狙うだろう。それでは際限がない。敵を憎むことを止めて出家してくれ、一段高い立場から敵をも抱いてともに救われる道を求めよ。そしてわたしを弔ってくれ。

憎しみの連鎖は、どこかで断たなければ永遠に続く。事が歴史的記憶であるだけに考えさせられる。政治は歴史を利用しようとする。歴史学は自立した学問であり、何かの目的のためにあるわけではない。研究対象も、叙述も歴史家にまかされている。





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Last updated  2018.01.05 21:23:39
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象さん123 @ Re:騙す、騙される(11/21) 斎藤知事の件では私も驚きました。 民主主…
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