波乗り舟の音のよきかな

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2021.11.16
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カテゴリ: 雑文
今回は「創作物のタイトルについて」お話をしてみようかなと思います。僕も一応創作を趣味にしています(いました?)ので、作品のタイトルに関しては一家言あるのです。先日、カッパ永久寺さんという、僕のフリーゲーム製作における大先輩がTwitterで自作のタイトルの意味や傾向についてTweetされていました。そこで、僕も自分が過去に発表した作品のタイトルについて思うことや、タイトルを付ける時に考えることについて書こうと思います。
まず、僕のフリーゲーム作品のタイトルをいくつか、意味というか命名の思いを紹介してみます。ところどころネタバレになってしまうかもしれません。
* * *
1『ドキッ! 女だらけの雪山殺人事件』
安っぽい昔の番組のパロディですが、これだけで明るいコメディのよう印象を与えられますね。誰も僕の作品を知らない状態の、第4回ウディコンに出展した作品です。僕がどういう作品を作る作者なのか誰も知らないわけで、当時あまり本格志向の推理作品がなかったので、「ギャグ作品と見せかけて本格志向の作品を出してやれ」と思ってこのタイトルをつけました。そして、プレイされれば分かると思いますが、タイトルがミスリードになっています。今思うと稚拙な作品で、今の僕が思う本格志向とは程遠いと思います。
2『死妖花』
第5回ウディコン出展作品です。とにかく、コンシューマゲーム『弟切草』に似た、その上で自分らしい作品を目指して作った作品です。『弟切草』が大好きで、小説とゲームはもちろん、作者長坂秀佳の作品はほとんど読んでいるほどのファンなのです。だからこそ、植物の名前をタイトルにしようと思いました。作成段階では『紫陽花』というタイトルでしたが、「ホラーゲームだ」とミスリードさせたかったので、おどろおどろしい印象を持たせるために『死妖花』という漢字を使いました。僕の作品だと思いながらやるので推理ゲームのように見えますが、予備知識なしで始めれば、プレイヤーによっては最後までホラーゲームであると誤認したまま進むというのを狙っていました。本作を紹介してくれる人の中には当時「ホラーゲーム」と紹介してくれている人がいましたが、僕は自分でこの作品を紹介する際は絶対に「ホラーゲーム」という記載はしないように気をつけていました。今も自分のサイトでは「アドベンチャーゲーム」と記載しています。ちなみに紫陽花は「あじさい」とも「しようか」とも読むらしいです。
赤松弥太郎氏が企画した「うんこゲー祭」に出展した作品です。ノリで作った作品なので、あまり覚えていませんが、密室モノを作ろうと思って作りました。当たり前ですが、人は死なないので「密室殺人」とはつけていません。扱う内容は下らないけれど、推理部分は堅実に作ろうと思った作品で、その落差が笑いになると確信していました。「推理モノとして、ちょっとカッコいいタイトルを」と思ってこのタイトルをつけました。
4『もしも・・・幽霊屋敷に泥棒が入ったら・・・』
第5回ウディフェス参加作品です。これは「ギャグとホラーは紙一重」というのは本当なのか、自分で実践してみようと思って作った作品で、何も考えずに話を考えながら作った作品です。ドリフターズのコントをゲームにしたようなものを目指して、タイトルも「もしもシリーズ」から取っています。そのため、「・・・」がタイトルに入っています。僕はゲーム作中の文章も小説の文章のルールに従って書いていますので、余韻を表すリーダは2倍リーダ「……」を使って書いています。全作品中このタイトルにだけ「・・・」を使っています。それは自分のルールよりも、ドリフターズのパロディを優先させたからです。
5『神林家殺人事件』
第7回ウディコン出展作品です。もう習作ではなくて本気の、自分のこれまでの全てを作品にぶつけたいという思いで作った作品で、「本格ミステリィゲーム」と堂々と宣言するに耐え得る内容であると自負できた作品です。だから直球の「○○家殺人事件」という誰がどうみても本格推理だと思うような正統なタイトルをつけることができたのです。この作品を逃したら、もうこのような王道のタイトルはつけられないと思って、このように命名しました。何故「神林」という苗字にしたかについては、ネタバレですが、「新潟県に多い苗字」あるいは「新潟県をルーツとする苗字」の一覧から探し、最も神秘的で作品の雰囲気に合うものを探して「神林」とつけました。
6『祭囃子が鳴り止むまで』
第6回ウディフェス参加作品です。これはフィーリングで、風流なタイトルをつけようと思ってつけました。タイトルを見ただけで切ない作品だと分かるような、良いタイトルなんじゃないかなと自画自賛しています。個人的にこの作品、好きなんです。第6回で当時最終回を迎えたウディフェス(その後復活したらしいですね)の最後に相応しい作品を出展しようと思って考えた作品です。だからこの「祭囃子」はウディフェスにもかかっているんです。「終わってしまう祭」の物語なんです。
7『何も事件は起こらなかった』
第12回ふりーむ!ゲームコンテスト出展作品です。「ホラーなのに何も事件が起こらないわけないだろ」と思ってプレイしてもらえたら良いなというタイトルです。作中のおまけでいろいろ書いているのでここでは詳細は書きません。いくつかの候補の中からこのタイトルにしたことで、最後のシーンが映えたかなと思います。ちゃんとタイトルが納得がいくもので、タイトル回収シーンを多くの人が褒めてくれました。実は2週間くらいで作った作品なのであまり思い入れは深くないのですが、有名実況者の方々がプレイしてくださったらしく、僕の作品の中では不思議とこの作品が人気なんですよね。
8『鵺の子』
ふりーむ!ゲーム開発企画「千文字喫茶」参加作品です。企画の性質上、タイトルもなるべく少ない文字数で作りたかったのです。2文字では良いタイトルが思い浮かばず、3文字になりました。スタジオジブリじゃないですけど、「の」を入れるだけでただの単語よりもタイトルが良い感じになるんですよ。
9『神童ノ哥』
第13回ふりーむ!ゲームコンテスト出展作品です。これはもうタイトルありきの作品でした。話を作るかなり初期の段階、ほぼ最初にタイトルを決めてそこから全てを考えていくという方法で出来た作品です。昔小説を書いていたこともありますが、たいていタイトルから話を作ると、僕は完成させることができないのです。それはゲーム製作も同じで、ほぼ唯一この作品だけが、タイトルを一番先に考えて完成させることが出来た作品です。作中で明確に回答を示していませんが、このタイトルこそがこの作品の最大の仕掛けであるので、ここでは意味を説明しません。もうこの作品にはこのタイトルしかあり得ない。そんな、僕の中では100点満点のタイトルなのです。神は「神(U+795e)」ではなく「神(U+fa19)」です。これはTwitter等の媒体によっては「神(U+795e)」しか表示されないので困りました。登場人物の名前も、人間関係の設定も、展開も何もかも、このタイトルから導き出されました。「哥」が入るので『哥欲祟』パロディがベースとなり、それを覆うようにフリーホラーゲームパロディ満載の作品になりました。極端な見方をすれば、『哥欲祟』パロディに始まるフリーホラゲのパロディは全て、「哥」の文字の真意を隠すためのミスリードとも言えます。また、晦渋な漢字や言葉を多用する作風も「神」や「哥」という「普通では使わない文字をタイトルに使う真意」を隠すためのミスリードです。
10『あの日あの夏あの祠』
ふりーむ!ゲーム開発企画「カイダン夏祭り」「ワンマップフェス3」参加作品です。これもフィーリングです。昔を懐かしむ系の切ない作品にはこれかなと思っての命名です。漫画『ドラえもん』の感動的な一編『あの日あの時あのダルマ』から取っています。『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』という有名な作品もありますので、「あの日」とついているだけでもう切ないイメージがあるかなと思います。
11『左眼ジャック事件』
第12回ウディコン出展作品です。これは「左眼」も「ジャック」もミスリードと言えばミスリードです。何で『左眼ジャック』だけではなく「事件」をつけたのかは語呂の問題もありましたが、「シリアスな話だよ」という僕なりのサインです。ただ、推理モノだとは思われたくないので紹介文に「推理モノではありません」と書かせていただきました。いつになるか分かりません(完成しないかもしれません)が、現在構想中の作品が2つありまして、どちらも『○○○○事件』という作品にしようと思っていましたので、それに合わせる形でこの作品のタイトルにも「事件」をつけました。
* * *
以上、鳥籠名義で発表した11作品のタイトルについて解説しました。
推理寄りの作品を作るならば、作品の仕掛けに密接に関わってくるタイトルをつけたいです。タイトルがミスリードになっている作品がちらほらあるのは、新本格派の影響です。
『神童ノ哥』の項でも書きましたが、タイトルから作り始めると僕は必ず失敗するのです。『神童ノ哥』が完成したのは時間をかけたからです。あの作品は2年間作り続けた、僕の作品の中で最長の製作期間の作品なのです。もう2度とあのような作り方はしたくありませんし、できないです。
ある程度、話の内容が固まったらタイトルをつけるのが僕のやり方です。有名な小説家などのインタビューを見ていると、タイトルからつけるという人が結構いるみたいですが、僕には真似できないなぁと思います。
タイトルの傾向ですが、まず単語や一般名詞はつけないようにしています。理由は検索できないからです。タイトルを見聞きしてダンロードしようとしてくれた人がいたとして、検索しても作品が出てこないようでは困ります。そのため、タイトルで検索すれば他の検索候補に埋もれないタイトルをつけようと思っています。口頭で言いやすく、長すぎず短すぎず、間違えにくいタイトルをつけたいと思っています。だから、英語のタイトルはつけたことがありません。ほとんどカタカナ語も使わないようにしていました。英語のタイトルはカッコいいですが検索しづらいですし、覚えづらい上に書きづらいです。何より、作者の母語が日本語であり、受け手の大半が日本語を母語とする人だからです。意味の不足なくニュアンスを伝えるためにも日本語のタイトルを創作作品にはつけたいと思っています。昔、小説を書いていた時は英語でサブタイトルをつけたことはあります。ライトノベルのような長いタイトルはつけたことがありませんが、いつかつけてみたいとは思います。逆に、短くても『死妖花』のような造語タイトルも魅力的だなと思います。
作品の内容に興味を持ってもらえるタイトル。作品を遊び終わってタイトルの真意が分かるような、あるいは納得してもらえるようなタイトル。本質的なんだけれど、ミスリードにもなっているようなタイトルが僕にとっては理想です。確かにそういう意味では『何も事件は起こらなかった』は優秀なタイトルだったかなと思います。
タイトルをつけることは頭を悩ませる行為ではありますが、創作の楽しみの1つです。名付ける行為はそれだけ思い入れがなければできません。それはキャラクターも同じで、思い入れのあるキャラクターには凝った名前を付けるというのは非常に共感できます。ついつい「そんな名前の奴は現実にはいないだろ」という名前を付けがちな人が多いですが、気持ちは分からないでもないです。逆に思い入れのないキャラクターの名前は適当につけます。作品のタイトルも同じで頭を悩ませるのは、それだけその作品自体に思い入れがあるからだと思います。





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最終更新日  2021.11.17 00:05:55 コメントを書く
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