ダンドール・男的人形趣味

ダンドール・男的人形趣味

2013.09.14
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今でも思い描くことができる。
夏も終わりの、ある1日のことを。


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「こっちよ。」
新妻のコノミが、しきりと招く。
年齢差のある私は息を切らしながらもついて行く。
今日は結婚してから初めての旅行だ。
忙しい中、ようやくとれた、たった1日だけの休日。
「早くいらして。浅間山がとってもキレイ。」

コノミが一緒の、充実した時間を私は噛みしめた。


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小道を抜けると、突然視界が開けた。
コノミのバックには雄大な浅間山嶺が広がる。
「ね、きれいでしょう?」
「ああ、君もね。」
「えっ」
パッと頬を赤らめて、プイっと向こうを向いてしまう。
「コノミ、こっちを向いてくれよ。キミの顔が見たいんだ。」
「知らないわ。」


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展望台を反対側に下ると、湖がある。
水辺を二人で並んで歩く。

「ああ、君もね。」
「もう、そればっかり。」
ふくれた顔も可愛い。
実際、あの頃の私は若い新妻に、すっかり参ってしまっていたのだ。


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水辺を抜けると、小道は草原に続いていた。

「なあに?」
「はい、ポーズ」
コノミは照れながらも、帽子に手をやり、ポーズした。
カシャッ、シャッターを切る。

「そろそろ腹が減ったろう。麓に降りて飯にしよう。」
「おなかが減ったから食事にしたいわ。」
コノミはいたずらっぽく笑って、上品に(?)訂正した。


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展望台のある高台を下り、
村落の入り口に差し掛かった時だった。
世界が金色に包まれた。
「一面の田んぼ! なんてキレイ。」
「やあ、もうこんなに実っていたんだね。」
「あっ、浅間山!」
振り返った先、田んぼが広がる先に見える山嶺。
その上に浮かぶ白い雲。
広がる真っ青な空。
「金色の田んぼ、浅間山、空と雲。世界はこんなにも美しいのね。」


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コノミは上を見上げた。
その先に広がるのは空だけじゃない。
私達の未来も、ずっと広がっているはずだ。
大切な君に言っておこう。
世界は、君がいるから美しい。


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コノミは視線を下ろし、私を見てニッコリと笑った。
背景に金色の稲穂。
彼女の真っ赤なリボンが風に吹かれて、ひらひらと舞っていた・・・。


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あれは、もう遠い昔の話だ。
今でもはっきりと思い描くことができる。
夏も終わりの、あの1日のことを。





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Last updated  2013.09.14 18:21:22
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