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2014.02.23
平野遼作品の見方…2
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この自己造出の方法は<笛>(1974)においてすでに顕在化していました。
手つきのぎこちなさはあっても、方法論は確立されつつあったのです。
若年の誰もが体験することで、天才と呼ばれる先達のその尖端意識にあやかろうとした形跡も垣間見ることができるのですが、門の手前で立ち止まることなく、まるで忍者のように相手の内面をくぐり抜けてきたのでしょう。
それが現実の放浪とダブって不思議な効果をあげています。
ドラマティックというよりはミステリアスな自分との邂逅です。
生活の辛酸の度合について他人は介入する必要はありませんし、本人も語らなくてもいいのですが、若い平野遼は画家になる以外のすべての道=可能性を拒んで、薄明の中を哲学する猫の如く放浪しつつ、体得するために捨て、棄てたあとに見えない財産を得ていたのでしょう。
それが<笛>以降の<酒>(1955)や<立像>(1956年)などに確かな形象を与えています。
哲学する猫という比喩を私が使ったのは、放浪のスタイルをつかんでもらうためではなく、闇を恐れぬ眼をすでに持っていたと言いたかったからです。
暮らしの階段のあたりでは絶望しながらも、闇の存在と意味を問うことによって表現者の孤独に目醒めていったとき、哲学する猫は画家でありえたのです。
目に見える光を光と思う生活者の常識を否定した彼は、闇こそが微光を生む原基と見たてる非常識をつかみました。
芸術家にとってこの非常識ほど健康なパワーはありますまい。
そのパワーは事物の本性に思いをこらす夢想を育てました。
初期の<自画像>(1955)はその夢想の意味にやっとたどり着けた自己確認の表情ではないでしょうか。
その<自画像>について『相手を威嚇している眼でも、稗脱している眼でもない。
傲然と構えて己れの器量を誇示しているのでも、不退の決意を表しているのでもない。
なにか人間の行為や世の中の出来事に対し気に入らないことでもあるらしく、画家の表情は険悪そのもので、いまにも鬱屈した感情が爆発しそうな気配である』という見方があります。
『自分自身に対しても焦躁と不満を感じているからだろうか』と補足されていますが、そのように一見できる表情のきびしさを、私は違った視角でとらえます。
つまり『事物の本性に思いを凝らす夢想』のその意味にたどり着けた自己確認の表情は、決して自己満足のそれではなく、自分の存在を内視している批評の姿だと思えるのです。
外部が見えている深さをそのまま折り返して自分の内部を見すえている哲学する猫の静止した一瞬の表情だ、と私は判断します。
進歩でも成長でもありません。
始発の時点で究極のセオリーをつかんだのです。
30才の平野遼は10才のピカソが無意識のうちに宇宙の諸元素と結びついたように、すでに夢想を体得していました。
薄明の中で光による世界の啓示を受けたのですから、当然のことながら可視と不可視の同居する宇宙の諸元素の絶えることなき更新に、身をもって、魂をふりしぼって参画しなくてはなりません。
『存在の不安の中で、かすかに空間を緊張痙攣させる繊細なイメージのしぐさ』と『平野遼の空間には、蒙々たる土埃や濃霧がたちこめて見えることがあった。
その中で、存在が、ときには非在にまで追い詰められるような切迫した息づかいがあった』は、私を納得させます。
画家は人間すなわち自分と宇宙の諸元素とを結びつけ、あらゆる物質性とつながることによって夢想を構築しなくてはなりませんが、その営みはとかく人々に誤解されることにもなります。
元素的現実と格闘していけばいくほど、人はそれを非現実ととらえ、抽象という形で事実の重さから遊離していると非難されるのです。
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最終更新日 2014.02.23 19:06:09
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