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2020.12.09

209.THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本 [ ブレイディみかこ ]

テーマ：読書(8290)

カテゴリ：【読書】未分類

本のタイトル・作者

THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本（新潮文庫） [ ブレイディみかこ ]

本の目次・あらすじ

第１章　列島の労働者たちよ、目覚めよ
・キャバクラとネオリベ、そしてソウギ
・何があっても、どんな目にあわされても「働け！」
・労働する者のプライド
・フェミニズムと労働
・いまとは違う道はある

第２章　経済にデモクラシーを

・貧乏人に守りたい平和なんてない
・一億総中流と言う岩盤のイズム
・草の根のアクティヴィストが育たない国
・ミクロ（地べた）をマクロ（政治）に持ち込め
・いま世界でもっともデモクラシーが必要なのは

第３章　保育園から反緊縮運動をはじめよう
・保育士配置基準がヤバすぎる衝撃
・紛れもない緊縮の光景
・日本のアナキーは保育園に
・ブレアの幼児教育改革は経済政策だった
・保育園と労働運動は手に手を取って進む

・待機児童問題はたぶん英国でもはじまる

第４章　大空に浮かぶクラウド、地にしなるグラスルーツ
・日本のデモを見に行く
・交差点に降り立った伊藤野枝
・あれもデモ、これもデモ

・あうんストリートと山谷のカストロ
・反貧困ネットワークへのくすぶり
・新たなジェネレーションと国際連帯

第５章　貧困の時代とバケツの蓋
・川崎の午後の風景
・鵺の鳴く夜のアウトリーチ
・人権はもっと野太い
・あまりにも力なく折れていく
・どん底の手前の人々
・もっと楽になるための人権

エピローグ　カトウさんの話

あとがき

引用

「日本は革命ではなく、衰退で変わると思う」

感想

2020年読書：209冊目
おすすめ度：★★★

2016年2月、イギリスから一時帰国した著者の東京取材記。

いつもそこにいて見ているものが、他から見たら不思議だったり、奇妙だったりする。
『宝石商リチャード氏の謎鑑定　邂逅の珊瑚』の冒頭で、スリランカから帰国した正義が、そこに自動販売機があって、そしてその文字が読めて、中身がどんな味か知っていることにいちいち驚いていて、そうそう！と思った。
そういう視点を味わいたくて、本を読んでいるのかもしれない。
他の人の眼鏡をかけて、世界を見てみる。
いつもの世界が違って見えてくる。別の意味を帯びる。見えなかったものが見えてくる。

「第３章　保育園から反緊縮運動をはじめよう」が特に興味深かった。
世田谷の自主保育グループ「風の子」は、前にどこかで読んだな。どこだっけ。友の会関係？
古市憲寿『保育園義務教育化』だったっけ？
著者が英国で保育士の資格をとって働いていたこと、私の子供がまさに保育園児であるからということもあって、「イギリスではそうなんだ」という発見があった。
著者から見れば日本の保育士の３歳からの配置基準が不可能に思えること（１人で見る人数が多すぎる）、日本の保育園は希望する保育園に入れるわけではなく、役所を通じて振り分けられるので保育園内に階級が混在していること（社会主義的保育）。イギリスの保育が基本フルタイムではなく、保育料が非常に高額であること…。
良いところも、悪いところもある。お互いに、それぞれ。
ただ、今自分がいる場所のシステムが機能しなくなっていて、不都合や不具合があって、「何かへんだな」「不便だな」「おかしくないかな」と感じていても、その違和感を言葉に出来ないことが多い。「そういうものだから」と諦め半分で。
でも、比較することで見えてくるものがある。

そして、いろんな眼鏡があることを知れば知るほど、その眼鏡をひととき掛けてみるほど、自分の眼鏡の色付きっぷりを思い知って打ちのめされる。
自分の中にある、明白な差別意識。レイシズム。
頭の中で考えているものとは別の、感覚的な拒否感。感情的な尊卑。
ほんと、いやになる。
でもだからこそ、私は自分の眼鏡を外さないといけない。何度も何度も。