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2023.01.05
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テーマ: 読書(8290)
本のタイトル・作者


春のこわいもの [ 川上 未映子 ]

本の目次・あらすじ

青かける青
あなたの鼻がもう少し高ければ
花瓶
淋しくなったら電話をかけて
ブルー・インク
娘について

引用

わたし自身から、少しまえまでわたしにあった、なんとかまっとうに生きていくための筋力が少しずつなくなっていっているような感じがします。でもそれは、誰かに奪われたとか、もともと与えられていなかったとかそういうんじゃなくて、ぜんぶ自分でやっていることのような気がするんです。病気になったのはわたしのせいじゃないんだけどね。でも、自分が自分に、なんだか毎日、取り返しのつかないことをしているような、そんな気持ちがします。


感想

2023年002冊目
★★★

タイトルから、怪談っぽいお話だと思っていたら違った。

その人がその人であること、の輪郭をなぞるような物語たち。
ある人が見ているその人の像は、きっとその人が見たい角度からの像なのだろうな。
月の裏側にあるものを見ないまま。

自分の中にあるちょっとした意地悪な気持ち。
とてつもなく邪悪なわけではない。
ただ、すこし、幸せになってほしくなかっただけ。
それに力を貸したくなかっただけ。
気づかないふりをして、見過ごした体で。
あるいはときに積極的に足を引っ掛けるように。

「娘について」で、昔の友人から電話がかかってきて、主人公はドキリとする。
過去からの亡霊に、自分の中にある醜さを見せつけられるのではないかと。

相手を見ているわけではない。

私も、娘にいつか同じように思うことがあるのかなあ。
母もまた、私に思うことがあったのかな。

この子は恵まれている。私が持てなかったものをたくさん与えられて。
幸せになってほしい一方で、自分より幸せにならないことを願うような。

それが友であっても、同じで。

化け物が暗闇から染み出してくるような、それ。
こわいもの。

一番怖いのは、自分の中にあるそれを直視することだと思う。
自分が、とてもではないけれど、まっとうではないと認めること。
外向きにいつも見せているほど、きれいな人間ではないこと。
もちろん、まったくもって聖人君主ではないこと。

いつもは隠して、蓋をしている感情。
暗がり淵を覗き込んで。
鏡のような黒い水面に映るものと、目があったら。

それでもその先に、まだ透明の光を見られるかな。
自分を、信じられるだろうか。

これまでの関連レビュー

夏物語 [ 川上未映子 ]



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最終更新日  2023.01.05 04:55:28
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