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2023.01.04
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テーマ: 読書(8290)
本のタイトル・作者


宙ごはん [ 町田 そのこ ]

本の目次・あらすじ

宙(そら)には、おかあさんが二人いる。
生みの母のカノさんと、育ての母のママだ。
ママたちがシンガポールへ引っ越すことになり、宙はカノさんと暮らすことを選んだ。
しかし画家のカノさんは、子育てにまったく不向きな女性で……。

引用

『野放図に枝葉広げて気持ちよく咲くのは楽に見えるかもしれないけどさ、大きくなってくるとなかなか大変なんだよ。枝が重くて折れちゃうこともあるし、栄養が足りなくなって枯れちゃうかもしれない。自分を守るために自分自身を剪定しなきゃいけないときって、あんのよ。でもそれは自分の芯、幹を守るためだから、幹は絶対失われないのよ。だから、大丈夫よ』


感想

2023年001冊目
★★★

面白かった。
美味しいごはんが出てきて、傷ついた人が癒えて治っていく話が好きなので、好みの感じだった。

でもなんか、ちょっときれいでよくでき過ぎた物語だなあという感じ。


そして、バトンは渡された [ 瀬尾まいこ ]
掬えば手には [ 瀬尾まいこ ]

が好きな人は好きな感じだと思う。

でも私、読んでいて思ったんだよね。
「おいしい」って、ある種の「正義」なんだろうなと。
可愛いが正義であるように。その弱さが守られるべきと庇護を求めるように。
ごはんを作る。食べさせる。
それは、どうしようもなく一義的で一方的な暴力なんだろう。

この本では、「おいしいものを食べさせること」が正義。
最後の章では(やっさぁぁぁぁぁぁぁん!!)、それが引き継がれていく。
でもそれ、問答無用で頬をひっぱたくくらいの力があると思うんだ。


美味しいものは、誰かを救う。
それはおとぎ話に過ぎないんだろう。

そこらへんを暴いたのが、先月読んだ

おいしいごはんが食べられますように [ 高瀬隼子 ]
川のほとりに立つ者は [ 寺地はるな ]


だからこそ、この本たちのあとだから、『宙ごはん』が嘘くさく見えたのかな。

だって、どうしようもない人のことは、助けない。
助けられないと見限っている。
そのうえで、恢復しそうなひとだけが救われる物語。

おいしいごはんを、「あなたのため」と作ってもらう。
それを受け取る。
癒やされて、救われる。
そうあるように求められている。
その文脈に乗るように。

拒否したらどうなるのかな。
私は、摂食障害のことを考える。
それは愛情の拒絶だと、むかし読んだ。

私は、あなたの作った料理を食べない。
一方的な「あなたのため」を受け取らない。
治ってやらない。

食事は、双方向のコミュニケーションでもある。
作る人と、食べる人。
意思疎通の断絶。

最終章で、加害者が被害者に謝罪をすることは「赦されること」の強要だとあった。
この本のテーマも、同じなんじゃないかな。
食べさせることは、「生きさせること」の強要ではないのかな。

それでも私が「食べること」の物語が好きなのは、生きることと食べることが分かちがたく繋がっているから。
食え。生きろ。戦え。目を背けるな。
食え。食って、生きてくれ。力をつけて、生き延びてくれ。
願うように作る。祈るように食わせる。

それが暴力でも、一方的でも。
それが相手の血肉になり、力となる。
それを信じる。

「アンパンマン」の正義は、食べ物を分け与えること。
空腹であることは、悪である。

映画「サマーウォーズ」で、おばあちゃんは言う。
「一番いけないのは、おなかが空いていることと、1人でいることだから」

誰かが自分のために、作ってくれる。
あなたのために祈る。
元気が出ますように。
すこやかであるように。
生きていけますように。

料理が作れるというのは、その力を身につけるということなんだろう。
宙は、ごはんを作ってもらう。
そうして料理を習い、作ってあげるようになる。
その力は、誰かを生かす。

これまでの関連レビュー

夜空に泳ぐチョコレートグラミー [ 町田そのこ ]
ぎょらん [ 町田そのこ ]
うつくしが丘の不幸の家 [ 町田そのこ ]
コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店 [ 町田そのこ ]
星を掬う [ 町田そのこ ]
コンビニ兄弟2 テンダネス門司港こがね村店 [ 町田そのこ ]



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最終更新日  2023.01.04 06:07:55
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