320life

PR

プロフィール

ノマ@320life

ノマ@320life

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

2023.02.17
XML
テーマ: 読書(8290)

本のタイトル・作者



財布は踊る [ 原田 ひ香 ]

本の目次・あらすじ


幼い子供のいる専業主婦である葉月みづほは、倹約を重ねていた。
夢は、海外旅行。ハワイ。
そしてブランドの財布を買うのだ。
節約生活の結果、夢を叶えたみづほだったが、大盤振る舞いだった夫の旅行の請求がおかしいことに気付く。
―――月々三万円の、リボ払い。
知らない間に数百万円の借金を作っていた夫の返済のため、彼女は手に入れたばかりのイニシャル入りのブランド財布を売りに出す。

引用




雄太のことが嫌いになったりしたわけじゃない。そういうことではないのだ。
ただ、誰かに自分の人生を動かされたくないのだ。この男のせいで、貧乏になったりしたくない。ただ、それだけだった。


感想


2023年032冊目
★★★

ひとつの財布が、次々にお金で問題をかかえる人々の間を渡り歩いていく短編集。


リボ払い、奨学金、不動産投資、仮想通貨…。
コロナ融資などの時事ネタも入って、「はー」となる金銭エンタメ小説。
こういうことって、学校では習わないものね。
家庭教育なのだろうけど、家庭で経済が崩壊している場合は、誰からも教わらないまま大きくなる。

この本の登場人物では、奨学金を返すのが苦しくて、節約しているOL2人の話が一番好きかな。
自分はマックでシェイクを飲むことさえ躊躇するのに、同僚たちはランチも含め華やかな暮らしをしているように見える、というくだり。
わかる!!ってなった。
周りがさ、裕福に見えるんだよね。余裕あるように。
学生時代、アルバイトもしないでいい、サークル活動に明け暮れている環境の子を見て、「甘やかされてるなあ」と思っていた。
ただ、親元から出てきて私立大学って時点で奨学金の返済額やばいことになるの、明らかよな…。

私は大学受験のときに親が失業していて、「家から通える国公立大学」に絞って受験。

うちは失業云々関係なく、どのみち親が「高校卒業後は子どもにお金を出さない」という教育方針だったので、家にお金を入れる必要こそないものの、通学費から教科書代、医療費から何から、すべて自分で稼がないといけない。
授業とバイトで終わった4年間。
学費がもったいないので、1授業あたりの費用対効果がよくなるよう、なるべく多くの授業を受講した。
(私の大学での取得単位は253。通常の卒業必要単位124なので、4年間で2回卒業できるくらい授業を取った。)

ちなみに失業していても前年度の収入で見られるから無利子は借りられなくて有利子でした。

この本で、奨学金の返済猶予について、放送大学に入ったら学生猶予がきくというの、本当なのかな?
私は専門学校の授業内容が「学生」と認められなくて猶予してもらえなかったんだけど…。
今はもう全額返済したけど、あれがまだ続いていたらと思う。
決まった仕事がなかったら、何十年も続く奨学金の返済が生活を圧迫していただろう。

国公立大学だと学費が安く、免除になるケースも多い。
天涯孤独で自分一人で大学に通っている子とか、社会人を経てお金を貯めて通っている子とか、働きながら通っている子とか、いろんな環境の子がいた。
そんな子たちから見たら、私もまた親元でお金のかからない暮らしをしている、「甘やかされている」学生だったんだろう。

私は、自分の子どもには大学卒業まで学費を出そうと思ってる。
大学院までであっても、出そうと思ってる。そのためにお金を貯めて、投資もしてる。
だって、その時の「時間」はお金では買えないものだから。

社会人入学してきた人は、「お金がないから海外になんて行けない」と言う私に言った。
親に借金してでもやったほうがいいよ。
お金があるときには時間がない。
時間があるときにはお金がない。
お金の工面ができるなら、時間のある「今」それをやったほうがいい。
このときは、もう二度と戻らないから。

お金があるということは、余裕があること。
それは、選択が出来るということ。
選択の幅が広がるということだ。
お金の使い所として、それは正しいことだと思う。

そうしてお金があれば、「選べるようになれば」、はじめて自分で「選ぶ」ことが出来る。

主人公のみづほは、ヴィトンの財布をハワイで買う。
ずっと欲しかった憧れの財布。
それを手放し、彼女は数年後には不動産投資の女社長として有名になる。
最後に彼女はまた、財布と巡り合う。
でもその時、彼女はその財布がどうしても欲しくなり、けれどふと我に返り自分にはもう必要ないのだと気付くのだ。

ブランドにはその価値もあるけれど、一方で「名前」だけを、それを身に着けた自分のイメージだけを得ようとしているのであれば、意味がない。
内実伴ってこそ、はじめて価値があるんだろう。
そしてそのラッピングが自分に必要かも、お金があれば考えることが出来る。

私もずーっとブランドものになんて縁がなくて、正社員で就職して初めてボーナスが出て、「ブランド物の財布とかバッグとかを買ったほうが良いんじゃないか?」と思った。
雑誌でクロエのバッグを眺める日々。
けどある程度して、「私らしくないな」と思ってやめた。
買えるけど、別に欲しくない。
それは私っぽくないから。

私の財布は、2012年に買ったBECKERの極小三つ折り財布。
2018.08.03「 三つ折り極小財布
今でも、「私らしいなあ、好きだなあ」と思いながら毎日使っている。

お金に振り回していた主人公たちは、お金に向き合い、学び、コントロールが出来るようになることで、自分の足で歩き始める。

みづほが言う。
お金により、誰かに自分の人生を左右されたくないのだと。

お金は、選択肢。
歩きたい方へ、歩いていける力。
人生を制御し、進んでいける力。

これまでの関連レビュー


三千円の使いかた [ 原田ひ香 ]
古本食堂 [ 原田ひ香 ]



「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです。
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2023.02.17 00:00:16
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: