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2023.03.01
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テーマ: 読書(8559)

本のタイトル・作者



たとえば、葡萄 [ 大島 真寿美 ]

本の目次・あらすじ


「もうこんな会社にいたくない」
三十を前に、勤めていた大手化粧品会社を自主退職した美月。
自分の人生を立て直すための無職、のはずが、コロナであれよあれよという間にハローワークは失業者で溢れた。
生活費を節約するため、母の旧友である市子の家に転がり込んだ美月。
そしてまた、山梨にいる母の友人たちを訪ね、美月は葡萄の香る地に魅せられていくーーー。

引用




「なんだろ、人生に?」


感想


2023年042冊目
★★★

だいたいが、東京でウダウダと駄弁っている「停滞」のお話。
コロナってこんなだったなーっていうその時の状況や閉塞感を思い出しながら読む感じ。


あの時感じていた「おかしさ」って、何が、とうまく言えなかったのだよね。
お金かけて作って、配って、でもほとんどの人が使わなかったあれ。
市子ちゃんの言葉に、美月は頷く。
うわべだけじゃなく芯まで美しくあることを見極めていかないと、いろんなことがでたらめになってしまう、と。

余談だけれど、先日たまたまつけたNHKで「 こころの時代〜宗教・人生〜 」をやっていて、その回が2021年3月28日初回放送の、
ウスビ・サコさんが登場する「なんでやねんと ええやんか」だった。
ウスビ・サコさんは、2018年に京都精華大学で、日本の大学で初のアフリカ(マリ)出身の学長になった方。
番組の中で、京都精華大学の大学展をサコさんが回る。
巨大なテキスタイル作品を作った学生が、サコさんに解説する。
アベノマスクがここで、トイレットペーパーがここで、と巨大な織物を指す。

その作品は、学長賞を獲った。

やり手の経営者である辻房恵という人物に対しても、
「出すべきところに出す、不必要には出さない、いんちきしない。それでいいんだよ」
と、市子ちゃんは評する。
これも、根底は同じことだと思った。


美月は美月で、自分が大手化粧品会社で当たり前のように出来るようになった「資料作成」というスキルが、他の人からしたら「仕事」として発注する価値のあることなのだと、香織の手伝いをしているうちに知ったし。

しかし何より、「ここでなんとかなる」「なんとか生きていける」「やってみてだめならまた考えれば良い」っていうマインドが芽生えたのが大きいんだろう。
それは、はじめコストやら無駄やらだめな理由をあげつらっていた美月が大きく変わったということだ。

この本は、主人公の美月が周りの血縁関係のない大人に恵まれていて(みんな自分というものを大切に生きてきた芯の通った一癖も二癖もある大人たち)、この「自分が子供の頃から知っているお母さんの友人たち」のキャラが濃いなあと思って読んでいた。
そうしたら、読み終わったあとに「この本には前編があります」と広告が載っていて、なんと十五年ほど前に書かれた『虹色天気雨』『ビターシュガー』という二作があるというではありませんか!
なにそれなにそれ。どうりで脇役のキャラ設定が濃いはずだよ。

そんな友人のひとり、カメラマンの土方さんが「ぐらぐらしていた時期にやっていたことが後から意味を持ち、だんだん統合されていくのが面白いのだ」ということを言っていて、これ
人生後半、上手にくだる [ 一田憲子 ]
でも同じことを仰っていたなと思い出した。確かほかのものでも読んだ気がする。
私も今、わりとぐらぐらしているんだけど、それも後から全て統合されていくのだろうか。
すべてのものに意味はあるのだと、思えるんだろうか。

これまでの関連レビュー


渦 妹背山婦女庭訓 魂結び [ 大島真寿美 ]
結 妹背山婦女庭訓 波模様 [ 大島真寿美 ]



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最終更新日  2023.03.01 00:00:17
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