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2023.03.19
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テーマ: 読書(8559)

本のタイトル・作者



編めば編むほどわたしはわたしになっていった [ 三國 万里子 ]

本の目次・あらすじ


三國さん/腕時計/編みものこもの/たい焼き/父/母/ひろしおじ/魔法使いごっこ/たけばば/昼寝/人形遊び/ペーパードライバー/たけじじ/佐藤くん/早退癖/うさろうさん/キャンプ/妹と銀座/ヨソジイ/23歳/ナメクジ/風邪ひきとDS/苺/ままごと/編みもの作家/キダケ採り/蛇/不幸の手紙/小さいセーターを編む話

引用




生きやすくなったか、という問いへの答えも同じ。
そしてありがたいことに、それでも生きる意味があるか、という問いに対してわたしは「うん」と言うことができる。その理由は、ひとことでは言えない。
生きてみないとわからないことばかりだったし、知らないことを知ることによって強くなった。それを鈍感と呼ぶなら呼んでもいい。
でもそのおかげで今は人としっかり関わりたいと思えるし、ヒリヒリを押さえ込んで、意志の力で少しは周りの状況を変えていける。だからわたしはこれからも生きて、世界の中に入っていきたいと思う。というようなことは、言えるかもしれない。


感想


2023年056冊目
★★★★★

NHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」で紹介されていた本。
いやあ、これ良かったです。おすすめ。エッセイ好きは絶対好きだと思う。

この方は、編み物作家(ハンドニットのデザイナー)。
元々は、日がな一日家で編み物をしていて、夫と息子の2人だけに日常会話をする毎日。
このままだと自分から言葉が消えてしまいそうだ、と友人に送っていたエッセイを友人の一人が出版社に持ち込んでくれ、今回まとまったものがこの一冊。
思い出、記憶を物語にしたエッセイ集。


編みたいもの(書きたいもの)があり、ざっくりとした計画をもって、そこへ少しずつ手を動かして進んでいく。そうして編み(書き)終えると、今までの自分とは少し違う自分になっている。
うん。確かにこれ、一緒だ。

読み進めているときに、妹さんが登場するのだけど、それがあの!「なかしましほ」さんだと知ってびっくり。
2人めの育休中にクッキーづくりにハマり(あんまりにも暇だったのだ)、なかしましほさんのレシピも作った。
特にこの頃やたらめったら作っていたのがビスコッティ。
きょうの料理のなかしましほさんの「 ビスコッティ 」も参考に作ったなあ。
ほぼ日刊イトイ新聞の「 とてもくわしいおやつのレシピ 」も見て、スマイルクッキーいつか作りたいと思っていたの。
なかしましほさんのアイコンともいえるレシピ。

で、ご姉妹なんですね。

料理やお菓子作りって、レシピがある。
それは万人に開かれていて、自分の力でその道筋をたどり、同じものを再現することができる。
これってすごいこと。
たとえば文章を同じように書こうとしても書けない。絵だってそうだ。
でもレシピは、再現性がある。

足跡を辿れること。自分でそれができること。
三國さんも、『編みものこもの』という初の著書を出版された章で、編み図は楽譜や詩の音読のように、ご自身の体感したことを追体験してもらえるのだと書いてらした。

中学生になった頃、三國さんが学校に馴染めなくなっていたところ。
ステージが変わったけど新しい場所での振る舞い方が分からなかった、みんなオタマジャクシからカエルになったのに、自分だけ陸でエラ呼吸しているみたいだった、という描写。
ほんとうに、ストン、と胸に落ちる。
そうして自分が中学生だった頃のことを思い出して、重ね合わせる。
きっとみんな本当は新しい形態に馴染めずまだうまく息ができなくて、でもまるではじめからカエルだったみたいに粋がって声を張り上げていた。

なんというか、このエッセイの何が良いのかというと、「気取ってない」ところだと思う。
無理にかっこつけていないし、変に「だめな自分」を見せてもいない。
じんわり、良いのだ。
噛みごたえのある美味しさ。
それは素朴で、滋養があるもの。
なかしましほさんのクッキーや、三國さんの編みものみたいに。

シベリアはすごく寒くて、おしゃべりも聞こえなくて、春になるとその凍った声が原っぱで聞こえだすんだというおじいさんの話。

思春期の息子に話しかけるため、うさぎのぬいぐるみを使って声をかける「うさろう爺さんの見送り」をしていた話。

赤ん坊の要求に応え続ける毎日で、自分の中の個性が弱っていくような気がしたこと。
「疲れた」と言ってしまえば何かを裏切るような気がした話。

おばさんになったら鈍感になって生きることが簡単になるのか、それでも生きていると言えるのかと悩んだ子供時代の話。

夫が家事をやってくれるときに、「こびとがやるんだ」と言ってくれる話。

少女時代の文通の相手のことを時折思い出し、相手が元気であることを願う話。

どれもこれも、見た目が地味な石ころが、自分にとっては宝石みたいに光る。
じいっと見ているうちに、その色や形の唯一無二に魅せられる。
あるいはチョコレートも何もかかっていないシンプルなクッキー。
なあんだこれか、と口に入れたら驚くほど美味しい。
そんなお話ばかりです。



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最終更新日  2023.03.19 13:33:39
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