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2023.03.21
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テーマ: 読書(8290)

本のタイトル・作者



パリの空の下で、息子とぼくの3000日 [ 辻仁成 ]

本の目次・あらすじ


まえがきに代えて 
2018 息子14歳  
2019 息子15歳
2020 息子16歳    
2021 息子17歳     
2022 息子18歳
あとがきに代えて

引用


パパはきっと期待をしなかったんだよ。期待を裏切られるのが嫌で……。でも、期待をすることの方が大事だ。たとえ裏切られても、期待し合える関係って僕は素敵だと思う(中略)むしろ、みんなに期待されたことで、自分の存在理由が、役割が、意味がわかった。期待の向こうに、ありがとう、があった。ありがとう、と言われると、またがんばろうって思える。それは、悪いことかな?人間らしい。パパ、他人に期待してもいいんだよ。期待しないだなんて、思うからうまくいかなくなるんだ。


感想


2023年058冊目
★★★★★


息子さんが14歳から18歳になるまでの4年間を綴った日記のような記録のようなエッセイ。

私、辻仁成さんの小説をたぶん読んだことなくて、エッセイばかり読んでいるのだけど、「こいつぅ」と思うこともある(賛同できないこともある)けれど、息子さんへの深い愛情と彼を(時にへたりながら)見守る姿勢、そして何より、思春期を迎えた息子さんの瑞々しい感性にはっとさせられる。
その中には、辻さんも「かっちーん」となるような、こちらの傷を抉るような、頭を殴るような、核心を突く発言もある。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー [ ブレイディ みかこ ]
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 [ ブレイディみかこ ]

が好きな人は、絶対これも好きだと思うな。
子どもたちの芽吹いていく若葉のような、新しいひとの世界への向き合い方。葛藤。その目から見えているもの。感じていること。成長。
そこに親は、かつての自分を思い出す。そして、今の自分を省みる。

違う人間を、違う時代に育てる。子育てって、発見の連続だ。
息子さんにとっては、「ネットこそが原っぱ」なのだという。
確かに今の子にとっては、ネットとリアルの差って地続きなんだろうな。


この子たちが思春期を迎えた時、その疾風怒濤の時代をどう乗り越えていくのか、また私がその時に彼らとどう向き合い、付き合っていけるのだろうかと考える。
この本は、その参考になる内容だと思った。

辻さんは、食事を非常に大切にしていらっしゃる。
素食は粗食でなく、礎食であり蘇食なのだと言う。
食べることは生きることだと。

傷ついたふたりだけの家族の、再生の一歩だった料理。
彼は、手作りのごはんを、祈るようにキッチンで作り続けた。
「苦しいこと、悲しいこと、辛いことがあったら、ジャンジャン炒めて、ガンガン食べるんだよ。人間は腹いっぱいになれば眠くなる。寝て起きたらもう嫌なことは消えてるからね」
それは、辻さんのお母さんが教えた、人生の教訓。
残さず食べたお皿が子育てのメダルなんだ、と辻さんは言う。

耳が痛いなあ。
忙しくて、時間がなくて、私はついついレトルトや冷凍に頼ってしまう。
冷凍のコロッケ(レンジでチンするだけ)にカット済の千切りキャベツのサラダ、冷凍の海鮮丼セット(冷蔵庫で解凍しておけば、炊きたてごはんに載せるだけで晩御飯が完成する)、レトルトカレー。
そういったものに助けてもらって、なんとか毎日ごはんを用意している。
もちろん何かを作りもするけれど、レンチン大活躍だし、半調理品の冷凍食品を「揚げるだけ」「炒めるだけ」ということも多い。
それでも、みんなが揃って「いただきます」をして、お腹いっぱい食べられたら、幸せだろう。
と、信じている。

辻さんは、「人生の80%は大変で、18%はまあまあで、2%は幸せ」だと言う。
どうかなあ。私は、「10%が大変で、80%がまあまあで、10%が幸せ」かな。
ほとんどは可もなく不可もない△の毎日。
◎も○もつけられない。✕というには✕だらけになっちゃう。だから△。
でも思えば、その△こそが幸福であるのかもしれない。

異国の地・フランスで、離婚して父親ひとり、息子ひとり。
父親は文筆業でフランス語も下手くそで、そんな中でサバイブしてきた親子。
なんというか長い長いトンネルを、まだ10歳の子どもの手を握って歩き始めて、不安で心細くて仕方なかったふたりが、その手を振り払ったり、罵り合ったりしながら、それでも付かず離れず一緒に歩き続けて、8年掛けてようやく抜けたトンネルの先、という感じ。
その先に見えた、目がくらむほどの、眩しい光。
18歳。
おとなになった息子は、手を振って駆けて行く。
その先に待つ誰かの元へ。
そのとき親は、どうするんだろう。
大きく手を振って、元気でやれと、送り出したあとで。
どこへ向かって歩き出すんだろう。

「決められたコースを歩くのが旅行、自分で道を切り開くのが旅」と、辻さんは言う。
行程のないその先を、どう歩こうかと思案する楽しみ。
子育ても、人生も、旅のようであるのだと思う。
これからの辻さんのエッセイも楽しみ。

これまでの関連レビュー


230. なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない [ 辻仁成 ]
222. 父ちゃんの料理教室 [ 辻仁成 ]



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最終更新日  2023.03.21 00:00:14
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