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2023.05.27
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テーマ: 読書(8559)

書名



見果てぬ王道 [ 川越 宗一 ]

引用



言ってから、なるほど学校は大事だと妙なことに気づいた。生きるに必要なことは生きているうちに会得できるが、必要でなかったことは覚えられないし、いつ必要になるかも分からない。いまのように。


感想


2023年113冊目
★★★

2021年12月6日  熱源 [ 川越宗一 ]

の川越さんの新刊ということで読んだ。
『熱源』はアイヌの人々のことを描いた作品で、これはとっても良かった。

今回は、中国で革命を目指す孫文を、金銭的に支え続けた実業家・梅屋庄吉の生涯を描いた作品。
帯に「あなたは革命を成す 私は革命を養う それが友との約束だった」「日中国交正常化50周年」とあり、ふうんと思って読み始めた。

正直、読むのがしんどかった。面白くなくて。
なんとか読み終えたけど、最後まで読めるだろうかと途中思った。


彼は長崎の貿易商の後継ぎとして育ち、商機を読むのがものすごく上手い。
大損も失敗もするけれど、切り替えも早いし、新規事業(米、写真、映画)でどんどん事業を拡大していく。
シネマ事業に至っては、50万円(日本の総理大臣の月給が800円)の利益を得る。
そしてそれを革命のために注ぎ込む。
「革命を成す(支える)」とは、武器を購うことであるのだな、と今回読んでいて思った。

アメリカへ向かおうとした船の中で、親しくなった中国人が病を得、生きたまま海に捨てられたのを救えなかったことを、庄吉は悔やみ続ける。
儒教では、人を愛する「仁」を説く。
力で人を従わせる者は「覇」、仁で人を集める者を「王」と呼ぶ。
「西洋の覇道に、東洋は王道をもって向き合うべし」
初対面の孫文が放った言葉に庄吉は胸を射られる。

その革命家である孫文が、ぼや〜んとしていて、作中の影が薄い(庄吉とすごく密接に関わっているわけではなく、金銭的援助はずっと続けているのだけど、折々にしか会うことはない)。


この本を読み進めていくことができたのは、庄吉のまわりの女性たちが魅力的だったから。
奔放な息子を叱咤激励し続けた、庄吉の母。
炭鉱から娼家に売られ、身請け先から金を持って逃げ、庄吉を拾ってビジネスパートナーとなった登米。
庄吉の両親の求めにより、売られるようにして養女となり、庄吉と夫婦になったトク。

彼女たちの強さが、この物語を引っ張っていっている。

この人、すごい。そして強い。

最期のときに、庄吉は笑う。
「なして女子んこつばっかい浮かぶかね、お父しゃんでも孫文先生でもなく」
私はこれが答えなんじゃないかと思った。

映画館を訪れたある女性が庄吉に言う。
私が身を売って得たお金は、郷里の弟を育て、戦地へ送った。
私は、国のお役に立てていたんですね。

登米は指摘する。
革命という華々しい言葉の下で、大望に押し潰される者がいる。

トクは、関東大震災のときに握り飯を作る。
やつれた孫文のために、自ら豚をつぶす。

私がこの物語の主流(庄吉と孫文)に共感出来なかったのは、彼らにはそれらがまるで響いていないからかな。
まるで空気みたいに、それは漂い、ひととき目の前にあるときだけ認識され、忘れ去られる。
そういう時代だったといえばそれまで。
あるいはその時代にしてはマシだったとも言えるかもしれないけれど。

「一天万乗(いってんばんじょう)の万歳爺(ワンソンイエ)」という言葉が分からなかったのだけれど、「一天万乗」とは「 (「乗」は古代中国で兵車を数える語。 天子の直轄領は、兵車一万両を出す広さとされていたところから) 天下を治める天子の位。 天子。 」(コトバンク)で、「万歳爺」は「家臣が皇帝を呼ぶときの名」(ウィキペディア)なのだそうだ。
「蓄妾(ちくしょう)」という言葉も、「妾を囲うこと」なのね。はじめて知った。



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最終更新日  2023.05.27 00:00:15
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