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2023.06.26
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テーマ: 読書(8559)

書名



自分流 光る個性の道を行く [ 辻仁成 ]

目次


1 今が苦しいとき
2 それがあなたの個性
3 見方を変えてみる
4 人生は広げすぎない
5 フランス人に学ぶ生き方

引用



「フランス的な光景です。みんなが自分の意見を言い合うのは、この国の価値観に合っています」
「うるさいとは思わないのですか?」
「うるさいですけど、自分が彼らの立場ならデモをするでしょう。いろんな価値観があってこの国は成立しているのだから、うるさいけれど、うるさいからこそ、それが自由というものなのです」


感想


2023年137冊目
★★★

なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない [ 辻仁成 ]
父ちゃんの料理教室 [ 辻仁成 ]
パリの空の下で、息子とぼくの3000日 [ 辻仁成 ]

など、最近よく読んでいる辻さんのエッセイ。
(しかし私は辻さんの小説を一作も読んだことがないのであった…)
この人の考え方、陰鬱で前向き(相反するようだけれど)で好きだな。

今回はエッセイなんだけど、日常を綴った日記的なものではなく、物事(テーマ)に沿った書き物。
遠くを見るのではなく、今のこの自分のいる場所を見つめようというメッセージが込められていた。
「生産をはじめてみましょう」というのは、最近私もよく思う。
何かを作ることって、大事だ。
自分で何かを作れること。

たとえば家事が嫌いだとしても、料理を作るのが苦痛だとしても、そこに含まれる何がしかの喜びまで否定してはいけないな、と思う。
泥だらけの野菜が、料理になる。
それはまるで魔法のように。

そしてまたその魔法を工夫して改良することもできるーーー時に失敗もあるけれど。

今年、ベランダのプランターを増やして、朝顔と向日葵の種を植えた。
固い種から緑の芽が出る不思議。
それがニョキニョキ、天を目指し日ごとに伸びていく驚き。
支柱のてっぺんまで到達したから、今度は麻紐を張って…。


あるいは自分の手慰みに物語を書くこと。
このブログだってそうだ。
ぱちぱちとキーボードを打ち付けて、そこに浮かび上がる文字列。
それが誰かに届く。
今まで世界になかったもの。

「何かを生み出してみましょう」と、辻さんは言う。
それは、試行錯誤が許される喜び。
日進月歩を楽しむこと。あるいは一歩進んで二歩下がる日々でも。

世界は私の手に負えなくて、日常は土石流のように私を押し流す。
ただただ必死にしがみつきーーーけれどある意味では怠惰に流されて、ただ漫然と日々を送る。
焦燥と後悔があふれる。そんな時。
コツコツと何かを生み出していることは、それに抗う術となる。
だいじょうぶ、息ができる。

「自分を盛り上げる天才になろう」
と、辻さんはスローガンに掲げている。
面白かったのが、「一人インタビュー」。
部屋を暗くしてライトをあてて、マイクかわりの鉛筆を手に「辻さん、今回はおめでとうございます…」から一人芝居を始める。
部屋を明るくすれば、インタビューに答えて悦に入った自分がいる。
元気になった自分が。

辻さんは、キッチンの電気スイッチに「消えろ」と張り紙をしているのだそうだ。
嫌なことがあったら、押しに行くんだって。これいいなあ!
よく、悩みや苦しみを紙に書き出してビリビリ破って捨てる、というアドバイスを本で見かけるけれど、物理的に「行為」として身体に認識させることが脳を納得させるんだろうな。
消えろ、消えろ、さいなら!
そして、辻さんは「はい、次!」と言葉にするのだそうだ。
気持ちの切り替えが下手なので真似したい。

自分が徹底的に無価値で駄目でどうしようもないと落ち込む時。
どうして自分はこうなんだろう、とグルグル考え出して止まらない。
けれど最近愛着障害のチェックをした時、自分が「愛着回避(人と親しくしようとしない)」けれど、「他者からの見捨てられ不安はない」という結果で、「私って実は自分に自信があるんやな…」とびっくりした。
それってなぜかというと、やはり「何かを生み出す」ことの連続が、私を私としてすっくと立たせているのだと思う。
しっかりと水を吸って立つ向日葵の茎みたいに。
嵐の中でも、曇の日でも。
流されていく毎日のなかで、色々なものを見失いそうなときも。
自分にとってのおひさまの方を向いて生きていけたらな。
自分流、光る個性の道を行く。

*この本で知らなかった言葉
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)
…太平で安楽な生活を喜び楽しむさま。 善政が行われ、人々が平和な生活を送るさま。 満腹で腹つづみをうち、足で地面をたたいて拍子をとる意から。(goo辞書)


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最終更新日  2023.06.26 00:00:15
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