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2023.09.22
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テーマ: 読書(8559)
書名


ふたり 皇后美智子と石牟礼道子 [ 高山 文彦 ]

目次

序 章 天皇の言葉
第1章 二人のミチコ
第2章 会いたい
第3章 精霊にみちびかれて
第4章 もだえ神様
第5章 闘う皇后
終 章 義理と人情

感想


(2022.02.06「 2022年1月に読んだ本まとめ/これから読みたい本 」)
かつ、2023.01.03「 2023年の課題図書48冊 」の1冊。

どうしてこの本を選んでくださったのかなあ、と思いながら読んだ。
タイトルからは内容がいまいち分からず、皇后と作家?の交流?比較?みたいな本なのだろうか、と開いたらまったく違った。

2013(平成23)年10月、天皇皇后の水俣訪問。
「全国豊かな海づくり大会」への出席という名目だったが、ノンフィクション作家である著者は、水俣病患者と会うことに真の目的があったのではないかと思う。
水俣病患者の言葉を綴った『苦海浄土』を著した石牟礼道子と皇后の交流、そして胎児性患者との極秘裏の面会ーーー。
同じ名前をもつふたりは、国策会社が齎した国家による毒殺ともいうべき歴史的出来事に、どう向き合い、何を思うのか。

私は「水俣病」というと、教科書で学んだあれね、という程度の認識だった。

終わったこと、と思っていた。
当時お母さんのお腹の中にいて、生まれながらにして重い障害を負い(しかし生まれてきたこと自体が、また生きている事自体が奇跡のような状態で)、今も生きている人がいるんだって、思わなかった。
水俣病患者たちがどのように国と戦ってきたかも知らなかった。

そしてまた、天皇皇后の訪問というのは、こうも人の心を慰撫するのか。
私は現代に天皇制は要らないのでは?と思っているくちで(人の上に人を作ることは、人の下に人を作ることの肯定でもあるのでは?それに何より本人らが可哀想すぎん?)、仰々しく訪問してただ哀しみ慈しみ心を寄せる様子を見せる、ということに意味なんてないと思っていた。

この本でも、繰り返し繰り返し「こうではないか」と著者は述べる。
きっとそこには、都合の良い見方もあるだろうし、穿った見方をする人もいるんだろう。
曲解も解釈違いもあるだろう。

それでもこの人たちが来るということは、「自分たちが認められた(見留められた)」ということを意味するんだろう。
象徴としてでも、「国」が、「国民」が、自分たちを見つめているのだと。
そして一方で、天皇皇后という存在は、「国」の罪を背負わされている。

身体がつらく、十年以上浴槽に入れなかった胎児性患者の方が、天皇皇后と面会した後、チャレンジする気持ちが湧いてきて、ハンモック式の装置に乗ってお風呂に入れるようになったのだという。

「天皇陛下さんたちも頑張ってるから、私たちも頑張らなくちゃならないと思った。失敗してもいいと思ったから、やる気になった」


また、患者のひとりは言う。

私は日本人に生まれてよかったと思いました。左でも右でもなく、古代から営々とつづいてきた大いなる存在があるということが、非常に幸せだなと思います。


私はこの本を読んでいて、よくわからなくなってしまった。
天皇制って、天皇という存在って、なんというか、「救い」になっているのだ。
私はそれがたまらなく嫌だったはずなのに、読んでいる内に「でも、そうじゃなければ、どうなるんだ?」と思った。
国は顔をもたない。国は非を認めない。国は手を握り、泣いてはくれない。
象徴としての存在が、それを可能にしている。
それは日本が宗教的に帰依するところを強く持たないから、その代替として機能しているのか?
というか、もうこの存在が信仰であって(信仰だったし)、「日本人としての共通の根底」みたいな幻想を担保しているのか?

と、ぐるぐる考えていた。
この本を読み終わった頃、ちょうど今年の「全国豊かな海づくり大会」が開かれたというニュースを見た。
令和5年9月16日(土)・17日(日)、第42回全国豊かな海づくり大会 北海道大会。
処理水放出で「日本の海」についてニュースで耳にする機会が多くなったこの頃。
この海は昔と繋がっているし、世界と繋がっているし、未来と繋がっているのだと思った。


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最終更新日  2023.09.22 08:22:50
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