シュタイナーから読み解く神秘学入門

シュタイナーから読み解く神秘学入門

2008年09月24日
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カテゴリ: 神秘体験空間
 シェークスピアの劇では、自我は、内密性から歩み出て、他の魂の中に入っていく。ゲーテの場合には、歩み出た自我は、自身をファウストに代表される人間全ての魂生活に沈める。

 また、自我が、自身の魂の力を発達させ、自らを別の精神性へと沈潜させれば、自身から出て、別の魂を理解できるが、ゲーテが、外界での物質的行為や経験だけでなく、精神世界へと、自我を開けば、誰でも経験できる精神的出来事をも記述するように導かれたのは、芸術的な創造活動の絶えざる進歩と符合する。

 詩は精神世界から来て、人間の自我の中に入った。詩は、ダンテにおいて、自我を、その内なる生活の最も深いレベルで捉えた。ゲーテにおいては、自我が再び、自身から歩み出て、精神世界への道を見い出す。

 太古の人類がもつ精神的経験は「イリアス」と「オデッセイ」の中に反映され、ゲーテの「ファウスト」において再び現れた精神世界が人間の前に立つ。

 このように、「ファウスト」の偉大な終幕に、つまり、人間が深みへと下った後、内なる力を発達させることで、精神世界が再び、我々の前に広がるように、その上昇への道を、苦労して進むという終幕に相対すべきである。それは主旋律の合唱のようだが、どこまでも前進する形態を持ち、どこまでも新しいものである。

 精神的視界に代わって人間に付与され、人間の天才達により、滅ぶべき創造行為の中に形態を与えられた想像力が不朽の精神世界から響きわたる。不朽のものから、ホメロスやアイスキュロスによって詩の中で創造された、滅ぶべき登場人物たちが生まれた。詩は滅ぶべきものから不朽へと再び上昇し、「ファウスト」の最後の部分で歌われる神秘的な合唱を聞く。

移ろいゆく全ては、比喩にすぎない・・・

 そして、ゲーテが示すように、人間の精神力もまた物質世界から精神世界へと再び上昇する。

 芸術的意識が、代表的詩人たちの中で、世界を大股で進んで行くのを見てきた。芸術は根本的認識の源泉である精神世界から現れる。精神的視界は、感覚世界が益々広く注目を集めることで、自我の発達を促すにつれ、益々退く。人間の意識は、世界進化の経過を追って、精神世界から自我と感覚の世界へと旅しなければならない。



 想像力は人間と同じ道、すなわちダンテの場合のように、最終的に、自意識へと入っていく道に従わなければならなかった。しかし、人類を精神世界に結びつける糸は、芸術が下降して人間の自我の中に閉じ込められるときでさえ、断ち切られることはない。人間は想像力を携えて、人間の道を行く。そして、「ファウスト」の出現によって、人間は、精神世界が、想像力から新しく創造されるのを見る。

 このように、ゲーテの「ファウスト」は、芸術の起源を有する精神世界に、人間が再び入って行くべき時代の始まりに位置している。だから、芸術の使命とは、高次の訓練によって、精神世界に至ることができない人々のために、遥かな過去の精神性と未来の精神性とを結びつけるべき糸を紡ぐ、ということなのである。

 実際、芸術は既に、「ファウスト」の第二部に見られるように、精神世界に関する視界を想像力の中で与えることができるまでに前進している。人間が精神世界に再び入り、その意識的認識を獲得できる力を発達させることを学ぶべき地点に立っている、ということに関する示唆が、そこにある。

 芸術は、想像力の助けをかりて、人間を精神世界へと導くだけでなく、十全なる自我意識に基づき、精神世界についての明晰な視界を持つことを、前提とする人智学への道を準備した。人智学の仕事とは、芸術の領域から、紹介してきた例の中で見てきたように、あの世界(人間が憧れる、あの世界への道)を指し示すことで、それは、これまでの連続講義の仕事でもあった。

 このように、いかに偉大な芸術家たちが、精神世界の反映こそ、人類に提供すべきものであると、感じてきたということを正当化できるかを、見ることができる。そして、精神世界の直接的顕現が、もはや可能でない時代では、これらの顕現を仲介する、というのが芸術の使命なのである。

 だから、ゲーテは、昔の芸術家たちの作品について、

「そこには必然があり、神がある。」 と言えた。

 それらは、そうでなければ、決して発見されることがなかったような、隠された自然の法則に光を当てる。そして、リヒァルト・ワーグナーもまた、第9交響曲という音楽の中に、別世界(主として知的意識では決して到達できないような世界)の顕現が聞こえる、と言えた。

 偉大な芸術家たちは、過去から現在、そして、未来に向けて、あらゆる人間の源泉である精神を担っている、と感じてきた。だから、深い理解を持って、自身が芸術家であると感じていた一人の詩人(シラー)によって話された、「人間の尊厳は、汝の手に渡された。」という言葉に同意できるだろう。

 このように、人間進化の過程での、芸術の本性と使命について記述し、芸術が、今日、人々が軽々しく想像するほどには、真実に関する人間の感覚からは、かけ離れていない、ということを示そうと試みてきた。



 詩人や、その他の芸術家のなかでは、人間存在の精神的基礎は、芸術において、その言辞を見い出す、という考えに対する同意がみつけられる。或いは、芸術家の中には、芸術作品が、精神世界からのメッセージを、人類にもたらすと信じることを可能にする、と言えるような深い感情をもつ者もいる。

 だから、芸術家が、その表現において、最も個人的であるときでさえ、彼らは、芸術が普遍的な人間のレベルにまで上昇させられ、そして、芸術の性格と顕現が、次のようなゲーテの神秘的な合唱によって語られる言葉を効果的にするとき、真の意味で人類のために語っている、と感じる。

移ろいゆく全ては、比喩にすぎない・・・

 そして、人智学的な考察力の上に、次のような言葉を付け加えることができる。

「芸術は、一時的で、滅ぶべき存在に、永遠で不朽なる光を吹き込むために必要とされる。束の間の生命に永遠の生命を与えることが、芸術の使命なのである」、と。


 だから、プラトンは自らの学院の門前に、「幾何学を志さぬ者は通るべからず」という表札を掲げたという。)





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Last updated  2008年09月24日 19時53分50秒
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