シュタイナーから読み解く神秘学入門

シュタイナーから読み解く神秘学入門

2010年11月16日
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カテゴリ: 神秘体験空間
 人間の記憶は、場所に結びついた記憶という第1段階から、それとは異なる第2段階のリズム化された記憶へと移行した。つまり第1に場所化された記憶、第2にリズム化された記憶となっていく。

 人間は、直接の意識から生まれた技術的行為からでなく、自身の内なる本質から、リズムのなかに生きようという欲求を発達させる。

 当時の人間は、何かを聞く度、聞いた音から、あるリズムが生じるように自分の中で再生しようという欲求を発達させた。

 例えば、牛の鳴き声のモー(Muh)を体験すると、単にモーではなく、モーモー(Muhmuh)と呼んだ。あるいは、もっと古い時代になると、モーモーモー(Muhmuhmuh)と呼んでいた。つまり、知覚した音から、あるリズムが生じるように積み重ねた。

 今日でも、リズム化された記憶を辿ることのできる言葉の形成が幾つか残っている。例えば、ガウガウ(Gaugauch)、もしくはカッコウ(Kuckuck)、といった言葉である。或いは、直接順次に並ぶ言語形成だけでなく、幼児の話言葉のなかに、少なくとも、このような繰り返しを形成する欲求がまだあることでわかるだろう。

 (昨今でいう、ラップ音楽なども、このリズム化された記憶にあてはまる。)

 リズム形成された言葉は、まだ、リズム化された記憶が蔓延っていた時代の遺産なのである。体験だけのものは記憶されず、リズム化することで、つまり繰り返し、リズミカルな反復のなかの体験だけが記憶されていた時代の遺産である。

 (詩や歌等で、韻をふむなどは、リズム化された記憶の時代の名残といえる。)

 従って、リズムになるように、並ぶもの同士の間には、少なくとも類似が必要だった。マン(Mann;人間)とマウス(Maus;ねずみ)、あるいは、シュタック(Stock;杖)とシュタイン(Stein;石)というように。言葉を、リズム化するのは、様々な場所で、体験をリズム化しようとする、当時の古代人の高度な憧れを表すものの、最終的な名残である。



 (俳句の季語は、場所に結びついた記憶で第1段階、詩文の韻などは、リズム化された記憶で第2段階と分類できる。俳句の場合、575の字句の数等で、リズムを取っているともいえる。)

 次いで第3段階となって、ようやく、今日知られている時間的な記憶が形成された。現代人は、もはや空間としての外界に、記憶の手掛かりを持たず、リズムにも頼ることがなく、時間のなかに配置された体験を後から再度呼び起こすだけである。時間的記憶という、現代人の抽象的な記憶は、記憶進化のなかの第3段階にあたる。

 (第1段階;場所化された記憶「体験」、第2段階;リズム化された記憶「体験」、第3段階;時間化された記憶。もし、人間を一種の情報データベースと考えるなら、第1段階は、体験の場所に目印を建てる情報集積に相当し、第2段階は、リズム化して体験を情報集積する、いわゆる音楽化に相当し、第3段階は、時間系列で、情報集積することに相当する。)

 さて、人類進化のなかで、リズム化された記憶が、時間による記憶に移行する時点に注目する。現代人の悲痛な抽象性のなかで、自明である時間による記憶が最初に現われる時点を取り上げる。

 現代人が、時間による記憶から、呼び起こす体験は像として表れ、古代人のように、再度体験したければ、無意識的活動のなかで、リズミカルに反復し、体験を呼び起こす、というようなことをする必要もない。このリズム的記憶から時間的記憶への移行の時点を想定すると、古代の東洋が、ギリシアへと植民する時点、歴史上、アジアからヨーロッパへと創設された植民地の成立として記述される時点に相当する。

 (リズム化された記憶の時代、古代人は歌を謡うことで、体験を呼び起こしていたようである。これは、日本でも、平安時代の貴族が、短歌や詩のやりとりで、恋愛等の日常生活の感情を表現していたことでわかる。)

 古代アジア、或いは古代エジプトからきて、古代ギリシアの地に居を定めた英雄たちについて、古代ギリシア人たちが語る物語は、本質的には、以下のような事実を意味していたはずである。

 「かつて偉大な英雄たちは、リズム的記憶が存在していた国を去り、リズム的記憶を、時間的記憶へと移行させることのできる風土を探し求めていた。」

 この記憶の移行から、古代ギリシアの精神が出現した時点が正確に示される。というのも、古代ギリシア精神の母なる地、もしくは源泉となる地は、東洋であり、根本的にいって、リズム的記憶を発達させていた地域だからである。

 その地では、リズムが生きていた。そもそも、古代の東洋は、リズムの地として思い浮かべるときにのみ正しく理解できる。そして聖書が、楽園(パラダイス)として記述する場所へと遡るなら、つまり楽園を、古代のアジアに想定するなら、純粋なリズムが宇宙を貫いて響きわたり、当時の古代人のなかで、リズム的記憶が再燃して、リズムの体験者としてだけでなく、リズムの創出者として、宇宙のなかに生きていた地域が思い浮かぶだろう。





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Last updated  2010年11月24日 16時48分26秒
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