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「ありがとう こうへいくん 」
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『 不登校になると にんげんが見えてくる 』
バックナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000098424
● 第2回 "陣痛"としての不登校
思えば、あの4年目の3月、自分について考える機会を持てたことが、
私の人生の転機でした。高校最初の4年間は、心配してくれたクラスの
仲間たちの友情と、待ち続けて下さった先生方の信頼を裏切り続けた、
弁解の余地のない時代でした、しかし、この4年間があったからこそ私
の心に転機が訪れた、と理解すれば、私にとって登校拒否は、自己変革
と成長のための"産みの苦しみ"であったとも言えると思います。
「登校拒否を卒業して」
<「登校拒否児とともに歩む父母の会」会報『あゆみ』1987.7(一部修正) >
解 説
この文は、私にとって登校拒否がどのような意味を持っているか、と
いう点についてまとめた部分です。すなわち、登校拒否を、新しい自己
に生まれ変わるための"陣痛"ととらえているわけです。
言い換えれば、私には登校拒否が必要だったのです。決して、損失で
も不幸でもありません。むしろ、私にとって登校拒否は、人格形成のた
めには不可避な、そう運命づけられた出来事だったと思われるのです。
なぜそう断言できるのか。登校拒否の前と後では、自分がまったくの
別人だからです。
登校拒否になる前の私は、消極的で自ら友人を求めることもないほど、
人間関係を軽視する尊大な子どもでした。ところが、登校拒否になって
から、たまに登校したとき、クラスメイトや担任の先生が、じつに温か
く気遣ってくれたことにショックを受け、私は生まれて初めて、友情や
人間関係の素晴らしさや大切さに気づいたのでした。
そんな体験が積み重なってきた3年目、その年の担任の先生の示唆に
より、私は「自分を変える」という課題に取り組み始めました。そして
その結果、翌年には、自ら友人を求め、人間関係を大切にする人間になっ
たと、自負できるまでに変わりました。立ち直ったのは、その年の3学期
です(前号で詳述)。
そのようなわけですから、私は、あのとき登校拒否にならなかったら、
と思うとゾッとします。登校拒否になったからこそ、人間の持つ優しさ
や温かさ、そして友人の大切さや人間関係の大切さを知ることができた
からです。
東京大学病院の石川憲彦氏は「ある小学生が、登校拒否の後"登校拒否
になって人格ができたような気がする"と言ったのを聞いて、それまで
納得できなかったことが納得できた」*1) と述べておられますが、今の
私は、まさにこの小学生と同じ心境なわけです。
以上のように、登校拒否経験者が皆、登校拒否を人格形成の過程の一部
として、後から肯定的にとらえることができるようになることを、切に願っ
てやみません。しかし、難しいことです。
*1) 石川憲彦「人間を矯正しようとする治癒」(『登校拒否』太郎次郎者)
丸山 著
『こうざつうしん』(1991) より転載
●
〔 今補足したいこと 〕不登校で自分らしさをゲット!
思春期を"第2の誕生"と表現することがあります。それをもじって言
うと、不登校は私にとって"第3の誕生"でした。つまり、現在の私は、
不登校が終わった日に生まれたわけです。
最近、私と同様「不登校になったから、今の自分がある」と語る不登校
経験者が増えているようです。逆に言うと「不登校にならなければ、今の
自分はなかった」ということです。これは重要な点だと思います。
「今の自分」という言葉は「自分らしい自分」「何の違和感もない自分」
と言い換えることができます。それは「自分の生き方が、自分の個性や感
性に合っている状態」を指しているのでしょう。
反対に「自分らしく生きていない」という「違和感」を自分に感じたとき、
人は"自分さがし"を始めるのでしょう。しかし人は、通常の生活を送っ
たまま「自分の個性や感性に合った生き方」を発見できるほど単純な生き
物ではありません。
子どもにしても、それまでの自分に違和感を持ったとき、通学を続けな
がらそれを調整し「自分の個性や感性に合った生き方」に変わっていくこ
とは、並み大抵の努力でできるものではないはずです。
不登校になり、毎日通学する生活をリセットすることによって、初めて
"自分さがし"が可能になり、その結果「自分らしく生きていない自分」
に別れを告げ「自分らしく生きていられる自分」に変わることができるの
なら、不登校も大いにけっこうなのではないでしょうか。
(続)
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