ちゃむのバレエとオペラと海外TVドラマの日々

ちゃむのバレエとオペラと海外TVドラマの日々

2008.12.01
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とりあえず全部観にいくと決めているから行く、という感じで出かけた。
しかし、そんなスタンスで観たのが申し訳ないほどの大作だった。


オッペンハイマー博士/ジェラルド・フィンリー
キティ・オッペンハイマー/サーシャ・クック
パスクワリータ/メレディス・アーワディ
エドワード・テラー/リチャード・ポール・フィンク
ロバート・ウィルソン/トーマス・グレン
グローヴズ将軍/エリック・オーエンズ
アーリー・パトリアルコ/フランク・ハッバード

指揮/アラン・ギルバート
演出/ペニー・ウールコック


「現代ものは音楽に感情移入しないなぁ」とか、「脚本がピーター・セラーズだから奇をてらっていないだろうか」とかそんな懸念は、観たあとはどこかへ行ってしまった。


日本に投下する予定の原爆を、アメリカで実験するまでの数日にわたるドラマ。

マンハッタン計画は、確かもともとはナチス・ドイツの原子爆弾開発計画に対する対応策として進められたはず。そのナチスが降伏したので、その時点でまだ降伏していない(しかし原子爆弾を開発していないということはわかっていた)日本に向けて使用する前提での、アメリカはニューメキシコ・ロスアラモスでの原子爆弾実験場が舞台。


すごく緊迫感があり、原爆の責任者オッペンハイマー博士の心の葛藤が痛いほど。
ジェラルド・フィンリーはこの役にぴったりで、1幕最後のアリアは息を詰めて聞いてしまうくらい心情が伝わってきた。

科学の真理を追究しようとしてきたけれど、違う領域に加担しつつあることへの苦悩。

ハイビジョンで顔がアップになるこのライブビューイングの手法は、女性歌手には酷なこともあるけれど、それはまた歌手に演技力も要求する。つまり感情表現に優れていれば、さらに劇的効果は増すということ。今回のフィンリーはいい方に働いたと思う。


幕間のインタヴューは、主役のジェラルド・フィンリーと作曲家のジョン・アダムス。
この選択はグッド。


もともとはサンフランシスコ・オペラからの委嘱でとりかったのだけど、依頼されてから6年かかったとか。資料収集だけでも4年と聞いたので、ある程度まで事実に基づいた取材がされたのだと思う。

インターミッションではオッペンハイマーに関するドキュメンタリーも流される。
こういう構成は気が利いている。
全世界に放映するときには、確かに必要な情報かもしれないと思った。


オッペンハイマー博士は極めて教養の高かった人らしく、数ヶ国語を駆使したし(ヒンドゥー教の聖典「バガバァッド・ギーター」もサンスクリット語で読んだらしい)、詩にも造詣が深く、ちゃんと取材した原作者によって、博士のセリフにはボードレールやジョン・ダンなどの詩人の言葉や聖典から引用されたものがたくさん使われている。それがどこか哲学的な印象を与えるが、博士の心情を説明しすぎず効果的だった。





子ども心に、それは大勢の人に多大な被害を与え、何世代にもその影響を及ぼしてでもなおかつするべきことだったのかととても疑問に思ったし、事実だけでなくその評価を植え付けようとする教育に反発を覚えた。(従順だったので、そう感じたまま何をしたわけでもなかったけど)

怖いなあと思ったのは、先日何らかのTVを見ていて、年代の異なる私の母までが、「原爆投下がなければ終戦は・・・」と言ったこと。
それって、どこかで刷り込まれないと、うちの母の価値観では口にしないのに。

オペラの中でウィルソンが「原爆投下の前に、日本にそう告知して降伏の機会を与えるべきではないか」と言っていて(これは実際の発言だったらしい)、私はああそうか、そういうワンクッションもなかったのかと、子どものときに違和感をどこに感じていたのか今頃気づいた。


こういうオペラを作ったアメリカという国のリベラルな一面に感謝するが、あの国がやっぱり今でも好きでないのは、傲岸さを感じるからだと思う。

オペラ自体はインパクト強く、作品にも歌手にもオケにも満足。
指揮した日米ハーフのアラン・ギルバートは、何を感じただろうか。


(↓原爆のセットもホンモノそっくり)

アトミック1.jpg





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Last updated  2008.12.03 01:01:38
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