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2008年01月05日
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カテゴリ: 高校生の頃の小説
引出しから小学校の頃世話になっていたコンパスを引っ張り出す。錆びかけてたその針で、机の上に置かれた写真を執拗に突き刺していく。
俺の日課。
下敷きにした週刊少年漫画雑誌の、表紙に穴が開かないように最初の4、50ページめくって使っている自分の姑息さも気にならないほど、気持ちがイイ。
こんな事を始めたキッカケは妊娠中のハハオヤが、結構高齢だったために大事をとって入院したことにある。そのせいで家事やらなんやら押し付けられた俺のストレスの捌け口が、この、陰険な日課だったわけだ。
俺は――Kが嫌いだった。
心地よく響く声も、流れるようにしなやかな動作も、当り障りのない人格も。どれもが骨髄の辺りを這うささくれた指のように、俺の神経を逆撫でる。
白い項に浮かぶ奇妙な形のアザまでが、俺の憎悪の対象だった。
それが、一突き」ごとに醜く抉れていく――快、感。

『……い…か…?』


憎い、かと。低い低い美声で、

(な…に…?)

聞こ、えた。
肩に置かれた手の重み。
振り返ろうとして、俺は、左頬に当たるひやりとした感触に気付いた。それを確かめるべくそろそろと伸ばした指が、しっとりとした細い糸の束のようなもの、に、触れる。

(これ、は)

カ、ミの、ケ……?

(――!)

首筋から腰まで一気に総毛立つ。耳の付け根が張りつめて、次の瞬間には躰中の毛穴から冷や汗が噴き出した。

『その者が、憎いか?』

左肩に在った重みが滑り降り、さびた針の深々と突き刺さる写真の上をどす黒い鉤爪が、這う。



冷気のような吐息が耳朶をなぶり、干上がった喉からは掠れた悲鳴も上がらない。0℃以下に違いないと思わせる指が下顎を捕らえたときには、俺は既に抵抗を放棄していた。
揺るやかに捻られる、首。
光沢なくうねる黒髪に縁取られた紙色の美貌を、俺は見た。

『そなたの歪みが、我を呼んだ』

言葉は、紫と黒の間の整いすぎて酷薄そうな唇から発せられていた。

傾国、という言葉を唐突に俺は思い出した。国を傾けるほどの美女を形容する言葉だ。だが、それなら目の前の美貌は世界どころか運命さえも傾けるだろう。だったら傾命、と言うべきか。

そして――俺は正しかった。

『その者を呪うを、願うか?』

首を縦に振る動作一つで、彼は俺の望みを叶えてくれたのだから。





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Last updated  2008年01月06日 00時12分08秒
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藍・ @ Re[1]:「イノチノ水」 subhead one:泥と硝子(11/04) >aozora ruiさん いつもありがとうござ…
aozora rui @ Re:「イノチノ水」 subhead one:泥と硝子(11/04) お帰りなさい(笑) じっくり読ませてい…
藍・ @ Re:とっても(08/05) この詩は蒼ちゃんがおなかの中の姫のこと…
藍・ @ ありがとうございます(>_<) aozora ruiさんが仰ってくださらなければ …
園村蒼@ とっても 愛子ちゃんらしい表現と言うかきれいな言…

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