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うつくしいものはほんのすこしもうつくしくはなくかなしいばかりでほどけてゆくのはあわいはかないきぼうにもにてぜつぼうでもありひとしくだれにもふりそそぐはりのね
2008年05月06日
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おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。またしても2ヶ月も放置してしまっていたので昨日から今日にかけて、一気にアップしてみました。でも良く考えたら新年早々ダークなものばかりアップしてしまいもう少し明るいものにすれば良かったかなぁ…とちょっと反省しています。えーと、以下に一応解説?を載せておきます。「イノチノ果テ」は「イノチノ水」ともう一つ小説を書いて3部作にしようと思っていたのですが未だ書いておらず…設定が厨っぽいので、大人になってしまった私にはもう書けないかもしれません(苦笑)「You enjoy, I'm happy.」タイトルは去年グァム旅行に行ったときに現地の方に言われた言葉です。「イノチノ果テ 弐」2を書くつもりはなかったのですがひとりではなくなってしまったので書くことにしました。「還る、罠」高校の文芸部でホラー特集だったときに書きました。
2008年01月05日
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けしゃけしゃと、ゴムだかプラスチックだか分からないちゃちな車輪がアスファルトと擦れてそんな音を立ててる。超音波で撮った写真ではオンナだったが、何処でどう間違ったのか弟として生まれてきた赤ん坊が、俺の押すベビーカーの中で平和そうに寝ていて、それをやけに穏やかな気持ちで俺は眺めてる。人間とは――俺だけかもしれないが――現金な生き物だ。この世から不快なものがたった一つ無くなっただけで、これ程までに満ち足りてしまうのだから。逆に言えばKはそれだけ俺に不快を与える存在だたわけだが、まさか殺すわけには行かないと思っていた(誰にも分からないようなイヤガラセは何度かしたが)。陰に篭っていた俺の願いを開放したのは、悪魔だったのだろうと俺は思う。あるいは死神だったのか。だが、堕天した天使だということだけはないだろう。「堕とされた」のではなく、始めからそこに「居た」者のにおいが彼にはしたから。『その代わり――…を……ぞ』聴き取れはしなかったが、彼は消える前にそう告げた。ただでは動かないということだろう。あの時は全ての感覚が麻痺したようで何も考えられなかったが、(「何」を)俺は足を止めた。(「どう」するのか)Kが「事故」で死んだ場所。何も感じない訳にはいかない。俺は確かにここでKを「呪い」「殺し」たのだから。それでも――薄皮一枚分の罪悪感より、押しつぶされたKの死体を見た瞬間に、僧帽筋の辺りから這い上がってきた寒気のような興奮の方が遥かに勝っている。いま、踏みつけてやりたいほど真っ白なカラーとカーネイションが立て掛けてある、ガードレールの脚にKの血が跳ねてた。幾つも。それを思い出すだけでゾクゾクする。あの血痕はKのものでなければならなかった。他の誰のものでも俺は満足できなかっただろう。まるで屈折した愛情の行方のように。あの、「傾命」の死神が、(「何」を)(「どう」したいのか)投げ遣りにやった視線の先、カラーの花の付け根がまだ蒼い。(どうせも……イイ)しびれて目眩のするような頭がそう結論付けたとき、きしゅん、という音を俺は聴いた。きゅ、きゅしゅしゅ、き、きききぎぎ、ぎし。ちゃちな車輪のきしんで回る音だ。頭を返すと、ベビーカーがゆっくりと転げ落ちていくのが見えた。――何時の間に俺は手を離してしまったのだろう。(危、ない)そこには赤ん坊の姿をとった、俺のささやかな幸せのカタチが乗ってる。向かう先に突っ込んでくる真っ赤なフェラーリ。『……を…らおう』忘れようもない美声が直接的に響き、触発されて、脳裏に長い長い濡れ烏色の髪がうねりつつ、はためく。(ま、さか)『いのちを……貰おう』(弟を)大地を、勢い良く俺の左足が蹴った。必死にベビーカーに追い着いた俺は、ねじきるようにしてその進行方向を捻じ曲げる。血走った俺の眼は、奇跡のような刹那に弟の項に在る筈の無いものを捕らえた。(あの、アザ――…!)途端に流れ込んで来た、意識。走馬灯を超える高速の回転で。 ――……されたい……――おれはアイツに愛されたいKの望み。その想いが俺にどうしようもない嫌悪感をもたらしていたのだとしたら、身を挺して庇われるほど愛されるには、肉親にでも生まれ変わるしか方法はなかったのだろう。それを叶えて、『命を、貰おう』Kは、艶然と微笑む「傾命」に、『そなたの』ころ、された。そして――――俺も。 キ、キキキキ、キィィ――ッ――――どん。存在ごと消し飛ぶ程の、衝撃。しろ、い、花、が――、舞う。ちらばる、朱。奇妙な形のアザだけを網膜に焼き付けて、おれはどす黒い鉤爪に攫われるように深淵に飲み込まれていった。――――――――――〔了〕
2008年01月05日
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引出しから小学校の頃世話になっていたコンパスを引っ張り出す。錆びかけてたその針で、机の上に置かれた写真を執拗に突き刺していく。俺の日課。下敷きにした週刊少年漫画雑誌の、表紙に穴が開かないように最初の4、50ページめくって使っている自分の姑息さも気にならないほど、気持ちがイイ。こんな事を始めたキッカケは妊娠中のハハオヤが、結構高齢だったために大事をとって入院したことにある。そのせいで家事やらなんやら押し付けられた俺のストレスの捌け口が、この、陰険な日課だったわけだ。俺は――Kが嫌いだった。心地よく響く声も、流れるようにしなやかな動作も、当り障りのない人格も。どれもが骨髄の辺りを這うささくれた指のように、俺の神経を逆撫でる。白い項に浮かぶ奇妙な形のアザまでが、俺の憎悪の対象だった。それが、一突き」ごとに醜く抉れていく――快、感。『……い…か…?』囁きは、そのとき、鼓膜ではなく、俺自身を揺るがすかのように、震わせた。憎い、かと。低い低い美声で、(な…に…?)聞こ、えた。肩に置かれた手の重み。振り返ろうとして、俺は、左頬に当たるひやりとした感触に気付いた。それを確かめるべくそろそろと伸ばした指が、しっとりとした細い糸の束のようなもの、に、触れる。(これ、は)カ、ミの、ケ……?(――!)首筋から腰まで一気に総毛立つ。耳の付け根が張りつめて、次の瞬間には躰中の毛穴から冷や汗が噴き出した。『その者が、憎いか?』左肩に在った重みが滑り降り、さびた針の深々と突き刺さる写真の上をどす黒い鉤爪が、這う。『憎い、か?』冷気のような吐息が耳朶をなぶり、干上がった喉からは掠れた悲鳴も上がらない。0℃以下に違いないと思わせる指が下顎を捕らえたときには、俺は既に抵抗を放棄していた。揺るやかに捻られる、首。光沢なくうねる黒髪に縁取られた紙色の美貌を、俺は見た。『そなたの歪みが、我を呼んだ』言葉は、紫と黒の間の整いすぎて酷薄そうな唇から発せられていた。彫刻のような鼻梁の上、美しい曲線で構成された切れ長の双眸に射干珠が、二つ。なぞるように視線を上げればそこに、程よく濃く、釣った眉。傾国、という言葉を唐突に俺は思い出した。国を傾けるほどの美女を形容する言葉だ。だが、それなら目の前の美貌は世界どころか運命さえも傾けるだろう。だったら傾命、と言うべきか。そして――俺は正しかった。『その者を呪うを、願うか?』首を縦に振る動作一つで、彼は俺の望みを叶えてくれたのだから。
2008年01月05日
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左ナナメ前、青く透ける花瓶の中で真っ白なカサブランカが揺れてる。Kの席だ。正確には、Kの「だった」席。皮膚を焦がすどころか、ぢりぢりと剥がしてくような日差し(だからエアコン入れろよ私立なんだから)の中、そこだけ涼しげに温度を中和してる、白。窓際の前から三番目で揺れ続けるその色を、よそよそしい色だと、俺は思った。白は、あらゆる色を反射する(はねつける)から白いのだという。それでいて全ての色をもっているとか言われてる。だとしたらこれ以上傲慢な色はない。Kと同じ。三日前に「事故」で死んだ俺の「親友」と同じ。(「事故」で……)剃刀とか、そういう薄い刃物で引いたような笑みが、唇に浮かんでるのを俺は自覚していた。同時に目は微塵も笑ってないことも。(死んだ)(俺の)完全犯罪というものが、この世にあるなんて俺は知らなかった。激しく強く願うだけで叶う夢があるなんて、誰が信じるだろう。ぐちゃぐちゃに裂けた腹。そこからこぼれたピンクの濃淡の腸、臓腑。(――「親友」)救急車なんか呼びに行かずに、ずっと眺めていたかった。散らばった朱。妙な具合に折れた右手の人差指。そこだけ奇麗に残った端正な蒼い顔。坂の上から滑り落ちてきた無人の大型トラックに轢かれてKは死んだ。原因がサイドブレーキがきちんと引かれていなかった為とか、なんとか。そういえばあのトラックの持ち主はどうなるんだろう。業務上過失致死とかで罪に問われるのか、それとも賠償金だけで済まされるのか。なんにせよ仕事は首だろう。可哀想に。Kを殺したのは持ち主のミスじゃない。あいつの運の悪さでもない。真犯人なら――ここに居る。あの日。(俺が)Kを、――――「呪っ」た。
2008年01月05日
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様々な情熱が退化して蒼鉛色の大地に未練のようなしらけた焔が散らばっている空は低く帯状の希薄な雲が地平近くを幾筋も這い蹲っているあらゆる瑞々しさは失われかたちあるものを求めて残骸を踏みしめてみたけれど足裏で抵抗なく砂へ還った何という空しい光景だろう私の望んでいたものはあなたにあげられるものは何もありはしないのだとあなたが欲しがる私とは私というかたちをした空洞なのだとどう伝えたら伝わるだろうあなたの背中を美しいと思ったあなたの言葉を苦しいと思った支払えない対価の代償は薬指ひとつで足りるだろうか
2008年01月04日
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てらいのない太陽光みたいな言葉が 私という形ごと抜けていった あらゆる青と碧をみた
2008年01月04日
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ひからびてゆく自分をただ手をこまねいて見ているのは完全に水分を失ってぱりぱりになったものを掌でつぶしてすり鉢に移してゆっくりとひいて粉にしたら理想の形態に近いと思うから。そうして毎日確実に望める形に近付いていっているというのに心臓の端が時折ちりちりと焦げるような心地がするのは何故だろう。私はいまだに何か求めるものがあるのだろうかこの冷砂の果てで永眠し続けたいと口先だけではいいながら。
2008年01月04日
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というわけで番外編と最終話を一気にアップしちゃいました。肩が凝りましたwそれにしても、ルビがふれないとやっぱりちょっと不恰好な文章になっちゃうので分かってたことだけどちょっと残念でした~。小説のストックはまだあるのでそのうちまた少しずつアップしたいです。ただどの小説も基本的にみんな病んでる感じです。ごめんなさい。(先に謝ってみます)生暖かく見守っていただければ幸いですw
2007年11月07日
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しんぞうが。(ふたつになったら、きっとこんなかんじ) あつい。 したたる。(とろとろ)(たらたら) ひだりこしが、あつくて。(どくどくしてる) ああこのままうしなわれていけたら、 しあわせ? ☆ ……透明がおちてくる。 それは、くらい空の下でふちだけを銀いろにひからせてあたしの頬にはたりと、おちて伝わってさいごにくちびるに、とどいた。(生まれるまえにいた海の) 味がする。 潮の味がつよいのは泣いている硝がかなしいからだった。「……沙子…」 ユキが、『ユキの』喉かき切ろうとしてふりかざしたナイフは、飛び出したあたしの左腰をえぐってすべっていった。「…沙子……」 だけど硝がかなしいのはあたしが血を流してるからじゃなく、ましてや、ユキにそんなことをさせてしまったからでもなく、「――どうして」 ただあたしが起き上がれないことが嫌なのだった。それが硝のどうしようもなくろくでなしでひとでなしなところだった。「ト いダノ よ」 ユキが言う。 しびれるように現実感がなくてさむかった。あぶら汗が全身からにじみ出ているのに『なかみ』はこごえるようだった。表面のうす皮いちまい分だけが焼けるようにあついその中はぜんぶさむくて、心臓と切り口のところだけにふかく、溶岩が食い込むように熱がとぐろをまいていた。「ま いにチマイに ちなンドもな んどモダッ てしョう くんガクレ たコロサ なきゃキ れ なクテもこ レデ」 そんなふうだけど大した怪我じゃないのもわかっていた。こころの、(ユキに) 望みが、そうなだけで。(ずたずたにされたい) ぐちゃぐちゃの肉片にされてそのうちどろどろにとけて油のすこし浮いたアスファルトに吸収されつくしたらきっと本望だった。 だけどそういうかたちの幸せを、こばんでいるのは硝だった。「沙子」「なぁーにー」 いつまでもずっと地べたにへばりついてそのままでいたいあたしをやさしく無理矢理にひきずり起こして、「タクシー、呼んだから」『生かして』る。「んー」「救急車の方が良かった?」「おーげさだよー」 硝がいなければあたしはただのタンパク質のカタマリで、そうあることこそがあたしの正しい、本当にあるべき姿だから硝がしてるのはかぎりなく無意味なことだった。カエルの脚を切って電極をさしこんで筋肉だけ痙攣させてまるで生きてるみたいですね、ってやるのとほとんどいっしょだった。 なかない、ひからびた眼でこっちをみて。「でもしょうくんがいらないのはわたし」 ひらがなでなめらかにいった、今のユキこそがあたしの、今度こそ真実の鏡(だけどユキはそれでも綺麗)なのに。 小首をかしげて、ばらばらになった心のもちぬし特有のせかいを見とおすちからでユキが、「あなたにとってしょうくんはなに」 核心をつく。「空気」 するっと、くちびるだけ別の人になってユキの催眠術にかかって、「ないと死んじゃうの」 摩擦力ゼロの床におおきな氷の箱をすべらすみたいにいいながらそれは少しちがうと思った。 空気みたいに。 水みたいに必須アミノ酸みたいに一日10g以下の塩化ナトリウムみたいに。硝はあたしがいきてくために必要不可欠なものだけどいなくなってもあたしは別に苦しまない。苦しむより先に鼓動とか呼吸とかそういう、生きている証拠みたいなものがとまるから。硝は、(あたしを苦しめない) たとえばいま、すぐに。「硝にすてられてもいー、よ」 苦しむよりかなしむよりうらむより狂うよりさきに、「きえるから」 ユキがおおきくふたつ瞬きする。「いら ないのはわたし」「いらなくない」 だっていのちを賭けたってよかった。ユキが、死なないのなら。ものすごく簡単であたりまえな、いちたすいちがに、てくらい当然の、こたえが、目の前によこたわってた。「ユキが好き」 あいしてるから。しなないでしなないでいきていて。それはものすごく獰猛な欲求だった。どんなに、苦しくて苦しくて苦しくてくるしくても、「いきてて」 ユキが、ナイフをけっして硝には向けなかったように、硝があたしを何度でも起き上がらせるように。(『あたしが』、)(ユキに刺された) タクシーの足音がきこえた。 ユキは息をとめてあたしを見てる。 だけど行くよって硝がささやいてあたしをだきあげたから眼をとじてそのあとはぜんぶ、まかせた。 ☆ 一階の、個室じゃないけどゆったりめの四人部屋の、窓際のしろっぽいパイプベッドに、『念のため、今晩一晩だけ泊っていってください』 て、言われてあたしはけっこう大人しくよこたわってる。三針ぬって(けっこう雑にぬわれててアトぜったい残りそうだけどあたしはもう売れちゃってるからたいしたことじゃない)クスリも、熱発しないようにっていろいろ、飲んだり打ったりしたから、ねむい。 外はもう、夜真っ盛りでしずかで、もちろん消灯時間もすぎててみんなもうとっくにねてる。 のに、まっくろい窓の外に蒼鉛いろにひかって彼はいるのだった。 手の甲と指のさかいめの、筋のところでちょっと鈍い、こんこんって音をあたしにだけ聴こえる絶妙な大きさでたてて、わらわない、夜系の眼をしたまま、 サッシに手指をかける。(引力) 風、が、――吹いた。 こおれる月。 なまあたたかさがぬうっとなだれこんできたのにそこだけ、屶のように、とがって照らしてる。 硝を。 硝だけを。(『あいしてる』…?) ぬめる風をはらんでふくらんだシャツごしに一瞬だけ、透けたからだのラインが痛々しくて欠けてる、たりてないうつくしさだといまさらに思った。 そうして、月あかりに青くひかる白いシャツをひるがえしてリノリウムの床にすたんと、さも当然って顔をして降りてきたからいちおう、「あのねーヒトコトぉーいっとくけどここ個室じゃないからー」 忠告したら、知ってるよでも関係ないからってしれっと。 硝はいった。 ☆ ……透明がおちてくる。 硝はもうないてなかったけどあたしはそう思った。暗がりで、重力のせいで切断面が真円になれない、ひきつれた球体がさっきとおなじくあたしの頬におちて伝う。ひえた、くちびるが見えない涙のすじをたどってあたしの口端に到達して、軽くかさなって一瞬はなれてから今度は深くからまってああ硝はサクランボの茎をぜったいにむすべる、ておもった。「……してもいい?」 硝は、あたしのこと好きです愛してますといったけど、あたしに自分を愛してくれとはいちども、ひとことも言わなかった。「ここでー?」「そう」「いまー?」「そう」「うー」 もしかしたら、硝もあたしのことそれほど好きじゃないのかもしれない。焦げつくような地球への嫉妬から、硝はあたしにしばられているだけなのかもしれなかった。「いーよ」だけど『付き合おうときめた』。「ねつ、あるといーんだってークスリも、飲んだし。クスリもねーイイ、んだって別人、みたいにー」「どこで覚えてくるの?」「しゅーかんしー」「思春期だから?」「うん」 そこでもういちどキスしてから硝は本格的にのしかかってくる。「じゃあ、お言葉に甘えて」 ちらっと笑う、うすっぺらくて酷薄そう(てゆうかそのもの)な、(くちびるが)(きれい) 爪先からふくらはぎからあたしの躰のうらがわをとおって脊椎と、神経の交錯する首のうしろのところにぞくぞくがはしってく、その一方で硝の右手はあたしのひだり側面をなでおろして指先で、たどりついた腹帯をはがしはじめた。「お代官サマー?」 きいたら、眼は前髪でかくして、「そう」 喉だけくく、とならして硝がわらう。さいごのガーゼを外して舌先で傷に、(さわる) て、おもったけど縫い目のきわぎりぎりをていねいに慎重になめただけだった。傷口をなめるのは衛生上よくないから本当はしたいけどっていってまた喉だけでわらう。「でも傷が塞がったらいい?」「うーん」 またしても丸め込まれてるなぁっておもったけどまぁいいやって結論づけた。そんなこと考えてるより硝のせなかの、真中にとおってる背骨の爬虫類のウロコみたいなてざわりのごつごつをさわってるほうがぜんぜん、ずっと有意義だった。 痛み止めのつれてくる浮遊感とけだるさと皮膚のあわせめのなめらかさと、(『よろこび』) すうっと、沈んでた硝が『いったんもめん』みたくのびあがって、『くる』。 抵抗なくのみこんで天井をあおいだ。(楽園(パーフェクトワールド)) もう行けない。 だってあたしたちはユキをたべてしまった。(蛇に) そそのかされて。 だけど聖書とはちがってふたりいっしょに、「『いこう』」 永遠、とか、そういう。ながいながいながい始まりも終わりもない絶対に永久に『果てない』、(久遠) そういう時間を、大地の中心からひきよせるちからに忠実にたれてく泥に同化してねむりつづけていたい、 あたしを。 引きずり出して、荒野へ。(ネオ・パーフェクトワールド) 欠けたところだらけの。あるくたびにざくざくと足を切って血をながすだれかを殺して食べながらいきていく『ここで』、 ゆくから。――泡(キス)を、(なみを)(水を) ……あたえて。 end
2007年11月07日
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窓際から三列目の一番後ろの席で沙子はいつも、『だれて』る。 メリークリスマス良いお年をと担任が言って二学期が終わったのでおれは立ち上がった。「沙子」 指先で長い髪の間を縫って頬と首筋の境目の辺りを擽ってもぴくりともしない、「……沙子?」 沙子に、なつかれてる机を叩き壊したいとおれは瞬間的に思う。「ねてるの?」(そんなわけない) 証拠に、深海に眠る豪華客船からこぼれた宝石のような銀の眼が黒髪の間からこちらを見ている。 鉛色だよ濁ってるんだよと沙子は言ったけれどそれは紛れもなく光の加減で銀に見えるグレイだった。プラチナやホワイトゴールドのように不快にきらめいたり(不透明なくせに)澄んだりしていない、世界の果てによこたわり続ける砂の。 その砂のつくる光景の、(いぶされてる)「……うー」 眠気に掠れたアルトで、「ねーてーなぁーいー」 唸って泡の中から誕生したアプロディーテのように勿体つけて(るわけじゃなくて単に面倒くさいんだろう)沙子が、(うまれる) 立ち上がり踏みしめるリノリウムの。(床、)(潰してやりたい) そうして沙子が触れるものすべて片端から破壊しつくして真空の宇宙にふたりきりになってもおれはエーテル(そんなもの実は存在しないけれど)にさえも嫉妬する。 のが、分かっているからしない。それじゃ生活が成り立たない。 どこまでも重力に忠実にいつまでも『だれて』いたい、この世界で生きていない沙子をやさしく無理矢理に起こして生活をさせることこそがおれの自己主張で抵抗で挑戦だった。「きょう、何の日か知ってる?」「ホテルがー、いっぱいにーなる日」「即物的だね」「獣(ジュウ)、だーかーらねー」 つないだ手の指を絡めて覗き込んできた沙子が言ったからおれもだよと応えてやわく噛み付いた唇は肉の味がした。
2007年11月07日
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あたしは、硝の眼も髪も鼻もくちびるも首筋も肩も腕もひらべったい背中も、背骨のごつごつも鎖骨も脚もつま先も指も爪も声も匂いも吐息もうめきも体温も心臓の音も肌ざわりも噛みごこちも、そういう、硝として表れる現象のすべてが好きだけど、硝そのものを好きなのかどうかは良く分からなかった。 あいしているのかは分からなかった。 ☆ 鏡がものを『反対に』映すものなら、ユキはまさにあたしの鏡だった。うらみの熱にうるんだ黒い眼がとくに別ものだった。本物の、正確にそっくりそのままを映す鏡で見るあたしの眼はどろっとにごっていて伸び放題のかみのけが頬や首や胸にまとわりついていてそれこそ泥のようで老婆のようで、硝がどうしてあたしを好きになったのか分からない。きれいな顔をしているねと言われたことは何度もあったけど、こんな眼をした人間はどんなにきれいな顔をしていたとしても無意味だと思う。(だってユキは)(生きてくるってるめをしてて) ……『綺麗』 地球でさいごの雌豹のように。 銀色にかがやくナイフはただのナイフじゃなくて、ペーパーナイフだったから殺傷能力はほとんどないけどユキはあたしをころす気だった。だからきっとそれは硝にもらったものなんじゃないかとあたしは思った。硝にもらった(ペーパー)ナイフで、硝をうばった、硝の(今の)恋人のあたしをころすならなにもかも硝ずくめでいわゆる(イミよくわからないけど)予定調和っぽくて感傷的でユキらしくて納得がいくから、勝手に。 おもった。「キえテきえテキえて」 どんなにしたら。 ひと一人をこんなに憎めるんだろう。そんなちからはあたしの中のどこにもない。特別な、つよい力だからきっと他のひともそんなには持ってない。どうしてこんなに特別で綺麗なユキを硝は捨てたんだろう。 捨ててあたしみたいな無意味な人間を選んだんだろう。「カエししシてきえ テしンでき えてつぐナ ッてききキキエテしん デ」 どんな字を。書いたら、『ユキ』になるんだろう。どうしたらこんなふうに綺麗な、手負いの獣みたいな少女に。(なるんだろう)(ユキ) ゆき、雪、由紀―――、「幸」唐突に。 つめたさが背中にことんとぶつかってああそうかしあわせ、て書くんだとあたしはわかった。似合わないなとあたしは思った。ユキに、幸せという字も、その意味も。 だけどそれは呪いの言霊のように『うらはらに』ユキにまといついていた。「沙子は」 つめたさはあたしの左肩と腰にもからまってこころもちあたしを、ひき上げる。「おれのだよ」 『てこ』みたいにどこかを支点にしていた。 ひとより体温のひくい。「触ったり壊したりしたら、ゆるさないよ」 あたしの。(あたしの?) ユキがおおきく眼をみひらいた。「……しょ、ウく、ん…」 ★ ひらひらと。 本当にひらひらと、淡いピンクのグロスの光沢をなくしたような色の花びらがカラカラ音のする安物くさい教室の窓からいくつも、すべりこんできてあたしのだらしなくのびた髪にからまってた。『モリムラ、サン』幽霊みたいに透明度のたかい。『モリモラ、サコ、サン』 肉のそげて指ばかりながい手が、目の前におりてきて水底の泥みたいなあたしの髪を花びらごとひとふさ、すくっていく。『きれいだね』そのままに引きよせてゆっくりくちづけてすぐにはなした。『髪、てー』 紳士的にとじられてたまぶたの端が、痙攣して、『ほんとはすごいキタナいんだよーバイキンとかいっぱいーついててークチなんかつけちゃだめじゃん』 唾液にまみれた飴玉みたいに表面のなめらかなすべらかな瞳がゆっくり、あらわれる。『好きです』(静電気)0.002〔V〕ぐらいのものすごく微量な、『圧力』 だけどそれだけでひたすらに平面だったあたしの世界を三次元に進化させてしまった。 もうひとつの。(重力)『おれのこと好きにならなくていいから、おれだけのものになって下さい』さからう気にはならなかった。 ★ とろけたガラスのむこうの、蒼が赤よりも赤とくらべることもできないほど熱いことをあたしは忘れていた。 アルコールランプの炎とバーナーの炎とどっちが熱いのって訊かれるくらい簡単なことなのにたやすく忘れていた。(……硝) 分かりきってはいたけどななめ右上に首をねじってみたらそうだった。むし暑い、真夏の西日がまともにあたっているのに全然関係ない温度でいるから他のひとであるはずがなかった。反則みたいにきれいな、あたしの好きな顔がオレンジの陰影をつけてちょっとこの世からはみだしかけてたけどつくりはいつものままだった。(なのにどうして)(たしかめたくなったの)『……しょ、ウく、ん…』 言葉は、ほとんどすべてカタカナまじりのユキだけどそれだけは特別できちんと丁寧に把握することができるようだった。「何」(つめたい)「何の用」 ユキがなきそうな顔をするのが背中ごしにわかった。「…ショ……」 たとえば、茶いろの。「……う…ク」 ガリガリのごわごわでだきあげたらすかすかに軽くてひろってもすぐに死んじゃう、仔ネコが、よれよれのダンボール箱のなかから見上げてくるのとおなじ眼で硝をみてるのがわかった。(すてないで) かしゃ、と音が、して振り向いたらユキの手からかがやく凶器がうしなわれてくたびれたアスファルトにころがっている。(すてないで)(すてないで) いますぐに。 硝の腕をふりはらって、かけだしてふるえてるユキをだきしめたい、うごきを、あたしのからだがものすごく自然にかってに、しかける。(神経、が) ずっと、麻薬とか麻酔とかうたれまくったみたいにバカになってた。「沙子」 とがめるように硝があたしのからだを引く。「だめだよ」(ユキ) 軽いちからだったけど蜘蛛の糸にからまったみたいに動けなくなった。どこかに内在する。異常な、異様なうねるような獰猛な手ひどい、(引力)(つめたい) いま、絶対零度の氷壁のむこうにあおじろい恒星が燃えてる。「いかせない」 極限まできたえた刀のようにまじりけのない分厚い氷にすけてきらめく青い星のうつくしさにめまいがして、ひえきった硝のからだのなかみは焼けただれているのだと思い知った。「沙子は」 くりかえす、「おれのだよ」 無味無臭無色透明の糸であたしはがんじがらめにされてる。「幸にも渡さない」 ユキにとってはものすごくひどい、的外れな勘違いなことを平気で、わざと硝がいう。 そのことばでもしユキが壊されてもひとかけらも気にしない残酷さで。「ふ」 ひきつるようにユキがゆれた。「ふふフフフフフフふふふフフフふあハハハハははふふふふふふふふ」 くちびるだけ歪めてふるわせて嗤いながらぐらぐらとゆれつづけておぼつかない脚が、からまって枯れかけのススキみたいにたやすくおれてそのまま、「ふふふアはフフフ」 へたりこんだユキがひどく、無造作にだん、と落ちてたナイフに平手をたたきつけてわしづかんで振りかぶった。「幸…?」 いぶかしんだ硝の腕がゆるむ。 ペーパーナイフだからそんなに危なくないはずだけど(だから硝もなにするんだろうと思ったんだろうけど)急速におちてく陽が刃をなめてくそばから朱金にひかっていくのがなんだかイヤだった。 予感がした。「ふふフふふふふ」 大地を、「沙――」 けった。(たぶんこのときのためにいままであたしは人生をなまけてた)
2007年11月05日
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約3ヶ月ぶり(!)の更新です。本当にごめんなさい。というのも詩は殆どアップしてしまったので次は小説を…と思っていたのですがブログだとルビがふれないのでどうしようかなぁ…と、悩んでいたら月日が経っていました…(遠い目)というわけでルビは()とか『』とかで乗り切ることにしましたwこの小説は私がまだ彼氏いない暦=年齢だった二十歳くらいの頃理想の恋愛を書いてみようと思ったらこうなりました…orzというものです。きっと思春期末期で病んでたんでしょうねw恥ずかしいけど今更なので割り切って晒していきますw番外編も含めて全4話となってます。完結しているものなので今度はなるべく早めにアップしたいと思います。
2007年11月04日
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「地球に愛されてるんだよ」て、硝(しょう)はいった。 ☆〔N(ニュートン)〕が、9.8〔kgw(キログラム重)〕だって知ったのは期末テスト最終日の、最後の物理が終わったすぐ後のことだった。「えーなにソレー」 あたしは、机に突っ伏して顔だけひっくり返すみたいにしてうらめしげな上目づかいに、硝を見てちょっと眉をしかめておまけに唇までとがらせてみせた。「きーてないよーそんなことーなにソレ超カンタンじゃんあーもぉすっごいソンしたー」 ひといきに、 いったら、ふ、て硝が笑った。「沙子(さこ)のは、自業自得」 前髪が、長すぎて眼はここからじゃ見えなくて、薄くて色が悪くてきれいなカタチの、くちびるのハシがちらっと上がったのしか見えなかったけどあたしは硝のその笑い方が好きだった。「なぁんでー?」「だって。教科書の1ページ目に書いてあるよ」「いちぺぇじめはぁー中表紙だもん」「はいはい」 ワガママ、とか。ヘリクツとかいくらゆっても苦笑いひとつしないで硝は、ハイは一回でいいのに二回もいって何度も。「じゃあ、帰ろうか」 何度でもあたしに手をさしのべる。「んー」 厚みのない、骨と筋とあおじろい血管のめだつシラカバの枝みたいな硝の手を網にたとえるなら、あたしはわかめとかのりとかそういうだらしない海藻みたいにしてでろんと引き上げられた。(つめたい) 硝の肩は、舟のへり。 網にからまったわかめのあたしが仕方なく顔を上げたらふたり、眼が合った。(……とけた、アイスノン) みたいなでも恐ろしいくらいに透明度のたかい真っ黒い眼を硝は、していて、溶けた後とろけたかたちのまま固まったガラスみたいだとあたしは良く思う。でもガラスは炎に突っ込んで良くは知らないけどたぶん1000℃くらいにならないと溶けなくて、そういう灼熱に一度でも通されたことのあるものの『すごみ』みたいのが硝にあるのかは分からなかった。 ただ、あたしは。ぬるま湯みたいな、だけどあんな風ににごってない硝の眼が好きだったからからまったまま伸び上がって茶色っぽいやわらかい髪の毛に包まれたあんまりおおきくない頭を抱え込んで、(あたしから見たら、左の)まぶたの上にキス、した。「……沙子?」 教室にはまだけっこうヒトいたけど公衆の面前だったけどべつに露出狂じゃないけど。どうしたの、てやさしく訊くみたいな、低すぎない硝の声があたしの首のあたりで響いたらもっとしたくなって舌先でまぶたをこじ開けてなかみの瞳の表面をするっとなめて、はなした。「こんにゃくゼリー」「おいしかった?」「んんーあじないーけど、硝はー?」「?」「め、て性感帯なんだよねぇねぇきもちよかったー?」「変なことばっかり知ってるね」「だって女子こーせーだもん思春期だもん」「もしかして、欲情してる?」「してるー」「じゃあ、うちに来る?」「いく」 めずらしくのばさないで短くきちっといったら背すじも伸びたからようやく一人で立ってでも右手は硝の左手にぜんぶの指交互にからめたまま、 歩き出した。 ☆ おと。 あんまりしない静かな、空調と熱帯魚の水槽ポンプだけひかえめに大気をゆらしてる青っぽい暗い、(硝の) へや。(ゆれてる) のは部屋じゃなくてあたしでしかも正確にはゆれてるんじゃなくてゆさぶられてるんだけどそんなことはどうでもよくてはやくはやくおそく、切れ切れのいきがたくさんちらばってて苦しくてあつくてさむけがして、(きもち、)(いい) 早くはやくおそくやさしくつよくとおくたかく、 かなしく。(うちゅう、が) 倍になっていく。(つよく) 沈んで。(やさしく) いのちがないて、 ……硝がからだをひいた。 ごろんと、あたしの横に転がってこっち見てしずかにいたずらっぽく、笑う。「ごちそうさま」「んーどおいたしまして」 長くて肉のついてない指の先が腹がてのひらがあたしのからだをなぞっていく。「やわらかいね」「体脂肪率がぁ、たかい、てゆわれた」「でも沙子はやせてるじゃん」「だからぁ、かくれ肥満てーないぞぉに脂肪がついちゃってるのやばいの」「それなら」 いった硝の眼がカチリと光った。(確信犯) みたいに。「今度は沙子が上になってよ」「えーめんどくさいぃー」「動けば脂肪も減るよ」「うーん」 いかにもこじつけがましい下心みえみえの台詞だったけど硝もあたしがそんなのにのせられるわけないって知ってていってる、言葉アソビみたいなものだったから、『のった』。「高いーねー」 立ってるのよりはひくかったけど感覚として。葦とか蔦みたいにひょろりと伸びた先にいるはずの硝のアタマがしたにあるせいかもしれないし、「逆らってるから?」 かもしれなかった。「なーぁにーにー?」 ゆれ、ながらきいた答えは硝の喉も大気もふるわせなかったけどくちびるを、読んだ。 ……『地球に。』 ☆ 川島ユキ、がいたのは送らなくていいよといって出た硝の家の真正面の狭い路地のむこうがわで、燃えるような黒い大きなあたしをころしてしまいたい眼をしていてこんなふうに感情を剥き出しにした人間というのはほとんど例外なくみにくいはずなのにどうしてか彼女はひどく可愛かった。「――返シ、テ」 さくら色の、花びらみたいなかたちの唇とか。「返シテ返して よ しょうくん ヲかエシテ」 上気した頬のバラ色とか。小さくきゃしゃなまるい肩とか折れそうにほそい足首とか栗色の、どこまでも素直にまっすぐな髪の毛とか。「おにあく マ キちくインランク ズゴミひトデなシしょうク んをゆうわクし テあタシからぬすン ダヒドいひどイひドいヒドイ」 ひとよりおおきな光彩が黒めがちにみえるひとみの。 オニキスの切り口とか黒水晶の破片みたいにキラキラした水晶体のおくにちかちかした緑色。(嫉妬(グリーンアイズ・モンスター)) 川島ユキは硝がすてた女の子だった。 もっと正確にいえば硝の幼馴染のおむかいさんで(だから今こんなところにいる)元彼女、というか硝の感覚ではSFだったらしいけどユキにとってはそうじゃなくて、硝があたしを好きになったから別れてくれといったらこんな風に遠い国のことばでカタカナまじりにしゃべるようになってしまった。被害者だった。 て、いうのをきいたときあたしは硝を外道だなあと思ったけどそれで硝をきらったりユキにもうしわけなく思ったりしないあたしも外道だからお似合いでイイ、んじゃないかと思う。「ゆルサなイ」 まだなにかしゃべり続けてるユキの、緑色にもえる瞳はあたしのまだちゃんと着なおしてない制服の襟元やすそや袖口からのぞく硝ののこした転々とした充血のあとをこがすように映していて、 ユキは。 硝をうらんでも良かったけれどあたしをうらむことを選んだらしかった。 あたしに向かってまっすぐに突きつけられた銀色のナイフがゆるがないその答えで、ユキの命と願いと祈りと怒りと涙そのもののようにユキのからだと一体化してて美しくて、 それは健気でかわいそうなことのように思えた。
2007年11月04日
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高校生の頃の詩をさらに3つアップまだあるけどもうこれが限界です…イタイ…イタイよう…orz高校生の頃、文芸部で個人誌を出したときにタイトルを「支離滅裂」にしたのですがいや~、自分でも分かってたんですねw
2007年08月18日
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呼吸が止まるほど愛した 貴方にごめんなさい と言った ――臆病すぎて愛される 自信どころか愛し続ける 自信すら無かった卑怯すぎて哀しい いのちたすけて欲しいと叫んでみても浅ましいから 救えない涙が笑えるほど鳴いた こころが壊れることすら放棄するまでずっと前から狂って いたのに知らないふりをして“普通に” ――生きてた価値が無い意味が無い何も無いだから早く…… わすれて ください
2007年08月18日
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見たことは一度もないけれどひとの精神というものは青い球体をしているような気がしますたとえるならば、地球のようなきれいな青い色だと思いますその表面がどす黒く変色してしまったとしてもまっしろになってしまったとしても紅く染まってしまってもだきしめて、強くだきしめてやれば元の色を思い出すような気がするんです愛してる、とか信じてるとかそんな笑っちゃうほど嘘くさい言葉はそれでもやっぱり一番きれいな言葉でだから欲しい言葉でそれだけで幸せになれる人もいて信じられないひとや愛せないひとは孤独にしかなれなくていつか壊れてしまう追いつめないで下さい苦しくて狂しくてくるしくて息をするのもつらいんですこのままもう何もしないで泥のようにねむってしまいたいこの世の果てまで、そうしていたい
2007年08月18日
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しかくい 硝子の むこうには遠くて遠い きのこぐもしかくい 硝子の むこうにはいかりにふるえる 語り人その痛ましさと苦しみを 頭で理解していても心が ついていけなくて目のまえがゆらゆらしている理由がわからなくて傷み哀しみもにくしみもしかくい 硝子の むこうがわ理解なんて出来ない分からない知らないそんなもの見た事も聞いた事もない知らない分からない分からない分かったふりをすることも出来ない重みがない傷みがないそう言っている自分が一番信じられないかみさま もしも いるのなら――かみさま わたしは はくじょうでしょうかかみさま わたしは――あなたよりも ひきょうでしょうか
2007年08月18日
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あらかたの詩はアップしてしまいました。高校生の頃までさかのぼればまだストックはあるのですが今読み返すと思春期の頃だけに(?)なんというか、あれなので蓋をしておこうかとwここ数年の私の詩は殆どフィクション性はなく自分の思ったこと自分の身に起こったことのみをものすごくそのまま書いているのですが高校生の頃はまだまだ背伸びをしてフィクションの詩も書いているのがちょっと微笑ましくも痛々しいのですw次は小説をアップしようかなぁ…でもネットだとルビを振れないのでどうしようかなぁ…
2007年08月07日
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ひとが火星人を探すのはきっとさみしいからだろう前足を大地から突き放してしまった瞬間にひとは世界でいちばん孤独な生き物になってしまったトリに「モモタロウ」を暗唱させサルの背中をS字に曲げてtwo-leg walkingさせてみてもまだ たりないそうして同じ傷をなめあう仲間欲しさにひとは 暗い空へと銀の機械を飛ばすのだろう
2007年08月07日
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砂になりたい化石ではなくて私というかたちひとつ残さないいしきのないものになりたい砂になりたい土ではなくて朽ちたあと何もうみださないせかいいち無意味なものになりたいいつか私にこびりついたすてきれないものを残らず風化して誰にも何にも欲しがられないものになり たい
2007年08月07日
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どうして怒りはたやすくとけていくのだろう永く恨むことはできないのだろうあなたを愛しいとすら思えてしまうそれはあきらめるというきもちに良く似ている「赦す」ことはあまりにもやさしくてあなたに見切りをつけるということでぱっくりとあいた口が傷んだらすっぱりと切り落として踏みつけてなかったことにするということで傲慢なことでたったひとつの嘘もつかないで生きていくことはできないのかたったいちども折れずに挫けずにのびてゆくことはできないのか永遠の怠惰をのぞんでいたいのにあなたがどこにもいないことをすら認めがたいのは生々しい気持ちが死なずに生き残っていることを思い知ったからだった(2001.10.2)
2007年08月06日
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君という青い硝子が海をたたえ銀のちいさな魚を宿すくるくるくるくる回遊する月のように銀の背びれと鱗がきらめき海が輝く君が輝くひとを愛すということはきっとこういうことなのだ
2007年08月05日
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心がからだをなみなみと充たしているものなら劇薬を三回打ってふやけたからもう何も体表面からは受け取らない。薄くて継ぎ目のなくて半透明で浸透圧ゼロの細胞膜がくるんでるそのなかみは分離して溶液じゃなくなって胸のあたりで沈殿している。しけった導火線に火をつけて一瞬だけ火花を散らして煽って鞭打って乖離してるからだの両眼だけ世界の端とつながっててなみなみの心がこぼれそうになるのを呼吸といっしょに止めてあなたを搾取しながら生きてる。……くるしいというきもちがわからない。泥になって澱んで川底に堆積してそのままでいたい塊をすくい上げたら背中がごっそりと欠けててようやく私が傷ついていたのだと思い出した。(1999.12)
2007年08月04日
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薄藍の空の 底はまだ淡くひかっていて 陽を追うように低く瞬く 一番星は 凝縮された満月のように あからかだ この静謐な光景に 鉄線越しに射抜かれて 芯まで凍えてしまいたい 私を溶かしてしまいたい 望みはきっと それだけなのだ(2007.3.17)
2007年08月04日
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折り目正しく折られた鶴を黒い水に浮かべて流すように決別した餞のような橙色の尖り真綿で絞められるように生々しい私を否定されて苦しかった殉じる覚悟もないあなたを狡いと思った碧の底やわらかいしかくいたゆたいの葬列哀しみは零さないあなたの前では決してあなたに私の真実はあげない(2006.1.1)
2007年08月03日
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此処は大地の端なのだひとつの世界の果てなのだ此処がこの世の果てならばと思えるほどには狂えずにこのまま時が留まればと思えるほどには無邪気でなく言えない言葉が咽を焼き胸を焦がし瞳に満ちる躰はふたつで融け合えない心はなおさら触れられない音に出来るほど確かでもない言葉は呑むのが正しいのだろう(2004.12.31)
2007年08月03日
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その肌は意外なほどにきめ細かくなめらかだった小さく白く萎んでやわらかに発光する躰は触れると温かく爪先は桜貝色をして凛と生きたひとは命の際まで美しいのだと教えてくれるようだったこのひとは、起点なのだ私という存在の起点なのだいままでたくさん交わした言霊が震えて溢れてひとすじだけ零れた(2004.5.9)
2007年08月03日
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やさしくてあたたかな気持ちが胸の真中から湧き起こってくるもうすっかり汚れたと思っていたのにこのどこまでもやさしくてきれいなきもちはどうして確かに在るのだろうとても賢い黒猫の話を聞きながらまっすぐに前を向いて私は泣いた遺言だと思った透明な、やさしい光を放つかたちを持たない遺言鱗のように薄碧く透けてきらめくかなしさを佩いている魂を信じるのはこわいことだったそれは宗教と紙一重だった私は私を誰かに預けっ放して救われた気になったり酔ったり甘ったれたりしたくないだけど命はどうして硝子の欠片が降るようにきららかで美しくて胸を打つのだろう愛したい気持ちは無尽蔵に生まれてくるのだろうそしてこのひとはゆくのだと悟った。(2000.6.15)
2007年08月03日
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ためらわずに汚れてしまう烏の行水でも全部落ちると思っている太陽の光に毒なんてないと思っているあなたが好き。(2000.7)
2007年08月03日
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すくいどころのない泥水垂れていく下で、波立たずにゆるくうずまいていくアイ止血された先の、生け贄にされた細胞の作る手で触ったら熱くなくてひどい火傷だけ残って爛れたあかい肉しおれたサザンカみたいな生のアイいたくないからねほら息をゆっくり吐いてやさしく、するからね(2000.3.26)
2007年08月03日
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永遠に反転しない砂時計があるなら滑らかな曲線が緩やかにねじれた分厚い硝子のそこに永遠に絶え間なく吸い込まれていくザリザりとした砂、人工物でない(なぜかというと人工物は好きだけどこの場合はちがうから)そのままのグレイ、粒のそろってない適度にまるく尖った消毒済みの(破傷風になったら恐いから)、そういう砂、時折きらきらした硝子質の欠片もまじって落ちてくるのを弾きながら見下ろすんじゃなくて見上げられる、始まりとか終わりとかあるとか無いとか区切りの無い(それって涅槃じゃんと友達はいった)ちょっと眠たいとこにずっと、はヤだけど二日に一度はいたい、ような気もする。(2000.3.26)
2007年08月03日
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零れたあかどこへいくのかなみだみたいにあとからあとからなみだみたいなあなたのくちびる零れたことばでなにを切るのかさいごに残ったひとひらの、あか(1998.11)
2007年08月03日
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そんなにたくさん燃やしたら尽きてしまわないのと思ったことがある何故かすとんと腑に落ちてだけど夢だと思いたい恒星のような人だと思っていた自ら輝く蒼い星は美しくて胸が痛いと触れられない温度で高速回転するあなたを少し遠くに見つめながら生きることは苦しいそれがあらゆる喜びに繋がっているのだとしても苦しいそれは命を啜るということだされこうべを踏んでいくということだ夜の雨と光あなたへと収束していく今日はたしかにあなたのハレの日なのだあなたは美しいあなたは真白いあなたは静かだ私はせめて笑わなければ(2007.8.2)
2007年08月02日
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光らない青い目で私を見てかなしい素振りは見せないで大地のままでいて(2001.11)
2007年08月02日
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HPを放置しっ放しなので(^^;ブログに移行してみようと思いとりあえず開設してみました☆日記はmixiに書いてしまうのでここにはたまに詩が更新されるのではないかと思われます。
2007年08月02日
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