ネットの中の空き地
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「もののけ姫」は越えたと思います。前評判が悪かった理由は見てわかりました。でも、私はこの映画、「よくぞ挑戦した」と思う所がありました。なので私の評価はかなり上です。この映画は、子供が見ても、まずわかりません。バブル期(から現在まで)の日本を知っている人、それもその時代を10代(~20代?)に体感して来た人でないとわからない所があるのでは、と思いました。その時代に、社会や周囲に対して何を感じてきたかで、この映画がわかるかわからないか、割れる所だと思います。この映画には、言葉で表しきれない感情表現が多々出てきます。ですから視聴者が、その感情表現を受け止められるだけの情報量(経験、感覚等)が無いと、わからないかもしれません。見ていて、宮崎駿監督作品と最も違った所は、同時代性とその共感度です。常にメッセージと社会風刺を込めた作品を作ってきた宮崎駿作品の意志は、私は上手く繋がったと思うし、それどころか、ここ数年の駿監督の作品と比べると、そのメッセージ性は、むしろ復活したと言って良いと思いました。個人的には、その共感がとにかく嬉しかった、という思いが残りました。私はこの映画を見ていて、バブル期から世紀末(1988年~1999年頃)の日本を思い出しました。それと司馬遼太郎さんの本に「日本人の顔が変わった」というような事を書いていたのも思い出しました。90年代頃からか、東京・上野などで、イラン人などが麻薬などを売っているのを目にした頃。ジュリアナ東京とかが流行っていてやたらと華やかだった頃。そしてテレビの向こうで湾岸戦争が行われていた頃。学校内でのいじめがやたら陰湿になり、社会問題化されつつあった頃。政治改革と言われながら政治が空回りしていた頃。マスメディアから流れてくる情報や批判と、自分で身近に起きていることへの矛盾。華やかな街の裏で行われている闇業への不安。この映画には、宮崎駿監督に対するささやかな?反逆もありました。私はそこにも新監督の心意気を感じました。「ゲド戦記」には、完璧な善人は誰一人出てきません。悪人が善人へと変わることはないし、また善人と悪人が全く別物として描かれてもいない。嫌なやつが出てくる。でもそういうキャラの言動はリアルでした。何故なら同級生や街中に、そういう言動をする奴らが少なからずいたから。この映画で善人は少数派。でもそこがリアルでした。キャラの気持ち悪い動きや表現は、駿監督より上手くて面白かったです(笑)嫌悪感が残らない感じでしたwそして、食事の場面。駿監督ではかならず美味しそうな食事が描かれてました。しかしここでは、貧しい食事しか出てこないし、しかも美味しそうでもない。同じスープが繰り返し出てきて、食事に変化も無い。私はこの場面を見て、昔「清貧」という言葉が流行ったのを思い出しました。主人公の少年が泣く時、理屈抜きで共感して泣きそうになった場面が2回ほどありました。何故泣くのか、映画に理由は全く出てきません。でも、わかる。そう思いました。声優さんもみな違和感がありませんでした。特に新人で挿入歌を歌った手嶌葵さんが素晴らしかったです。あの挿入歌は、この映画の重要なキーポイントでした。・・挿入歌を作曲したのが谷山浩子さんというのはすごいサプライズでした。久々に谷山さんの歌を聞きました。独特の世界観で歌を作っているシンガーソングライターさんです。この映画がつまらないという意見の人は、おそらく、娯楽性が少ない。主人公が暗く大人しい。と言った理由だと思います。そのほかに欠点を挙げれば、駿監督と比べて、映画のクオリティーが落ちている、というかアンバランスです。背景のリアルさに対して、妙に人物や動く絵がアニメチックすぎていました。主人公の怒りの顔など、感情表現の動き・表情が物足りませんでした。ああいう怒りの表情というのは、今までのアニメにはあまり出てこない表現なので、まだまだ研究不足という印象でした。あと、場面展開も、妙に安っぽいシーンで引いてしまう所もありました。物語性も弱いです。一体どういうストーリーなのかというのが、イマイチしっくりこない所もありました。主人公の内面の変化も、今ひとつ踏み込んで描いてもらえればもっと良かったのに、という所もありました。でもたぶん、それは現段階ではまずできないだろう、とも思いました。なのに何故私がこの映画の評価が良いのかというと、その欠点は、全て今後の努力次第で良くなる所だと思ったからです。主人公が暗くて弱弱しいのも、娯楽性は乏しくなったけど、でも、あれは6、70年代以降に生まれた日本人の等身大的な一つの姿だと思いました。娯楽性より、社会的メッセージを先に取ったと思いました。この映画の主張は、挿入歌の詩にとても良く現れていると思います。ああいう歌詞は、いままでありそうで、どこにもありませんでした。私はこの映画を見て、10代の頃に自分が感じてきた事が、自分だけではなかったのだと思わされ、とても嬉しくなりました。挿入歌を家で聴きながら、80~90年代に自分が感じてきたいろんな感覚、その時に感じていた孤独な感覚が蘇ってきました。そしてそれが、自分だけではなかったと思えた時、安心して、しばらく涙が止まりませんでした。身体の中に残っていた石が、溶け出てきた感じ・・かな・・?なんだかとても、安心したんです。自分の中に押し込めていて、自分でも忘れていた感情が、自然に出てきたみたいでした。この映画はとても重いです。でも、今までの映画には無かったものがある、「挑戦」が込められた映画だと思いました。
2006.08.06
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