ユーカリの木陰で里の行

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2012.03.20
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カテゴリ: 子育て


事の起こりは、今年1月。
日本の冬から、珍しく暑い日が続いていたメルボルンに戻るや、
ムゥの両腕は、ひどい汗疹にかかった。

掻かないようにと言っても、5歳の子には、難しい。
掻き防止で両腕に包帯を巻いていたのだが、
左腕の方が炎症を起こしてしまった。

それでもGP(オーストラリアで医療全般をあつかう、
アメリカでいえばホームドクターのような存在)から

先週久しぶりにまた真夏日となるや、 汗疹パワー 再燃 。

左腕は、火傷でもしたかのように一見ケロイド状となって赤黒く、
通常の2倍くらいにも腫れ上がってしまったのだった。

GPから大病院の救急に回され、別の抗生物質を処方され、
今朝はその経過見ということで、ダディンが病院に連れて行ったのだった。


暫くしてダディンから電話がかかってきた。

なんでも、息子は重度のアトピー性皮膚炎で、救急入院が決まった。
2泊くらいになりそうだから、
パジャマとか宿泊グッズをもってすぐに来てほしい、ということで。


びっくり


寝耳に水!?のニュースに、頭をグルングルンさせながら、
息子が大切にしている ビクティニ のぬいぐるみや、
暇つぶし用お絵描き帳や本、
とりあえずの子どもと自分用宿泊(?) グッズなんかをバッグに詰め込む。


ベッドが開かないそうで、まだ救急にいるとのこと。


救急のベッドで、ムゥはダディンの膝に坐って、テレビを見ていた。
今や両腕とも、一見ギプスかと思うほど強固にぐるぐると包帯で巻かれていて、
痛々しい。

それでも、息子の方は案外おっとりと飄々としていた。
喘息の発作で、既に何度かここに担ぎ込まれたことがあるからだろうか。
ダディンに代わって付き添った私に、
トイレやファミリールームの場所なんかを教えてくれたりして。

救急のベッドは、
カーテンで仕切ろうと思えばある程度のプライベート空間、
つーか死角くらいなら確保できるものの、
基本的にオープンスペースなので、落ち着かない。

3時ごろ隣に運ばれてきた高校生くらいの女の子は、
骨折でもしたのか、ずっと呻き続けていた。
カーテン越しに時おり悲鳴まで上がって、痛ましいのだった。
誰か、お願いだからあの子を早く助けて、何とかしてあげて!
治療待ちなのはわかっていても、思わず看護師さんを呼び止めたくなってしまう。

一方、息子の方は、両腕を強固に巻かれてはいても、
酷い痛みや高熱があるわけじゃあないので、暇を持て余してしまっている。
テレビの子供番組も終わってしまったし、
私が持ってきた本も読み終わってしまったし。
私は焦って、お絵描き帳なんぞをパッキングしてしまったのだが、
包帯で両手の自由が効かない今、ペンなど握れるわけもなく。


それにしても、いつになっても病室に移れる気配がないので、
検温に来てくれた看護婦さんに尋ねたところ、
小児科の空きベッドがいつになっても見つからないのだ、とのこと。

それでも提携先の病院をいろいろと当たってもらって、
夕方、ようやっとここからもっと郊外の、別の市の病院に空きベッドが見つかった。
どうやら小児科の手が足りないのは、万国共通事情であるらしい。

その際、医者から、必要ならば救急車を手配してあげる、と言われる。
 救急車送迎 、ですか?
日常を逸した移動手段に、不謹慎にもちょっと胸が高鳴ってしまったものの、
やはりダディンに連絡して送ってもらうことにした。

というのも、私は昔、大学生のころに友達と深夜の長電話をしていて、
耳かき棒で鼓膜をブチ破ってしまい、
スプラッターな血しぶきにパニックを起こして、救急車を呼んでしまった、
という過去があるから。そのとき女医さんから、
鼓膜が破れたくらいで救急車を呼ぶとはけしからん!
国民の血税を何と心得ておるのか!的お説教を受けたもので…。
オージーの血税(むろん私も払っているのだが)を無駄にはできんかナ、と。
だが、後で聞いた話じゃ、こちらでは後からしっかと 請求書 が来るらしい。


ダディンと娘が駆け付けてくれて、目指す病院に辿り着いたのは7時過ぎ。
この病院は全室パブリックなので小児科に個室はなく、4人部屋である。
ちょうど面会時間なのか、病室は見舞客で賑わって(?)いた。

窓際のベッドも一つ空いていたのだが、私たちは通路側のベッドに通された。
メェは、弟の入院という事態に動揺しまくっていて、
帰り際など「明日もきっと来るからねっ」と涙ぐみつつ、ひしっとハグ。号泣
たかが2泊とはいえ、別離を惜しむ姉弟の姿に思わず胸が熱くなる。
やはり子どもたちにとってはダメージも大きいんだろうな。

二人を見送り、慌ただしく荷を解き、寝る用意をするも、
ここの小児科の夜は案外遅いらしく、
9時近くなっても皆さん、バタバタされている。

そこで寝る前にムゥと二人、小児科内を探検(?)をしたところ、
プレイ・ルームを発見する。
小さなテーブルが配置され、本や遊具が並んでいた。
広めのバルコニーには人工芝が敷かれ、子ども用スクーターまでもが。
「明日は、きっとここで遊ぼうねっ!」スマイルと、見る間に瞳を輝かせるムゥ。

4人部屋の明りが消えたのは、9時過ぎ、半ごろであった。
ソファベッドとしても使える付添い用のカウチもあったのだが、
息子と一緒にベッドで眠ることにした。
息子は、やはり不安なんだろう。
ビクティニを両腕にしっかと抱き締めて、身を固くして眠ろうとしていた。
でもムゥ、そんなにがんばっちゃったら眠れないよ…。

病院では良く眠れない、とは聞くけれど、
実際、眠るのは難しい。
とりわけ小児科では、子どもの悲鳴や赤ちゃんの泣き声なんかが
夜通し聞こえてくるから、あまりに不憫で、居たたまれなくて。
もう祈りながら寝るしかないって感じ…。

後で看護婦さんから聞いた話では、
両親の都合で誰からも付き添ってもらえない子どもも案外いるそう。
大人でも病院に一人はしんどいのに、
幼い子どもが独りぼっちで夜を過ごさなければならないなんて、
どれほど心細いことだろう。

夜中、空いていた窓際のベッドに、
父親に付き添われて、男の子が担ぎ込まれてきた。

夜通し、看護婦さんは来てくれて、
検温をしたり、湿布を変えてくれたり、点滴まで付けてくれた。
息子はそのたび目が覚めてしまって、なかなか寝付けないようだったけれど。

とりわけ点滴をつけられてからは、痛いのと、
ビクティニを抱きしめて眠るのが難しくなってしまったことで、目を覚ますたび
「朝になったら、これ取ってくれるよね、ね、ね」、と聞いてくる。

とりあえず、「取ってくれるといいね」と宥め、
ムゥがまた眠りに落ちてくれるのを待っていた。

なかなか明けない夜だった。








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Last updated  2012.04.10 08:39:12
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