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2013.02.24
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カテゴリ: 海外生活
義母の80歳のバースデーパーティー

メルボルンに移住して間もないころ 、
感心したことの一つに、
オージーの誕生日に対する姿勢 があった。
もちろん個人差はあるだろうけど、
往々にして オージーは誕生日を派手にお祝いする のだ。

当時、日本では、 子供のお誕生会 はともかく、
社会人
お祝いしても、せいぜい友達か恋人、家族と祝うくらいなもので。
同僚や友人、家族や親戚縁者を招いてパーティーを開くなんて方は滅多にいなかった。
つーか、私の周りではいなかったな。

それがこちらに移ってからは、
親しくなった友達のみならず、親戚や
友達と呼ぶより知人といった方がいいような方からまで時折
バースデーパーティーやディナーのお誘いを受けるようになった。
とりわけ30歳とか40歳、50歳、
区切りの年齢ともなると大きなパーティーを開かれる方が多いようで。

忙しいからといって決して誕生日をおざなりにしない 、
あたかも基本的人権かなにかのよう に誕生日を祝う、


義母も今年は80歳の誕生日ということで、
いつもなら子供たちの家族を集め、自分の家でカジュアルにお祝いするところを、
ホテル(と言っても、宿泊施設ではなくパブレストランね)の
ファンクションルームを借り切って、
家族や友人たち50人ほどを招いて、盛大にお祝いした。

大輪の花 で飾られ、
演台 の前に
整然と並んだ丸テーブルの一つ一つにも白い花が活けられていた。
それぞれの席には名前を記した 手書きのプレート と、
メニューが優雅に置かれている。
義母の両親や兄弟姉妹、子供たち、孫たちの写真を飾った
思い出のコーナー までが用意されていた。

これを、活ける花から食事のメニュー選び、
客席のネームプレートに写真、
何から何まで、 すべて義母自身が手配し用意したのだそう だ。

こ~んなにたくさんのエネルギーとお金をかけるくらいなら
バースデートラベルの方にしたい 、なぞとつい考えてしまう私としては、
ただただ そのパワーとホスピタリティ精神 に脱帽してしまった。

そういえば昔、祖母も 米寿のお祝い をしたことがあった。
けど仕切っていたのは祖母自身ではなく、私の両親の方だった。
祖母は、お祝いをしてもらう側、
こちら流に言えば「 バースデーガール 」として余所行きの和服を纏い、
ちょこんと 料亭の、床の間の前の席に収まっていたっけ。

義母の方は、 スピーチもちゃあんと用意 していた。
だけど80回目の誕生日。
パーティーの挨拶も、 7年前に亡くなった義父 をはじめ、
亡くなったり、病気だったりして
この場に来られなかった方々への想い から始まったのが、
切なかった 。
それが「 生きる 」ということなのだと意識せざるおえないような。

そういえば、こんなハプニングもあった。
オードブルのメニューは3種類から選ぶようになっていたのだが、
私たちのテーブルでは、
ダディンのサーモン料理だけが、なぜかなかなか運ばれてこなかった。
同じものを頼んだ私や他の人たちのサーモンは既に届いているのに。

おかしいねぇ、どうしたんだろうねぇ? と皆で首を傾げつつ
ウェイターに尋ねるも、彼の方は
「 それより 、このチキン・シーザーサラダをご注文になった方は?」と
サラダを手に うろうろするばかり で、 さっぱり 運んでこない。

十分ほど経って、やっと戻ってきたウェイターの 手には、
サーモン料理はなく、
 え~、この人、まだチキンサラダ運んでるの~
この私の心を読んだかのように彼は主張してきた。
このチキンシーザーサラダは 絶対に このテーブルからの注文で、
サーモンのブリュセッタは既に届けている、と。

 そ~んなこと言っても実際、届いてないじゃん!
あたかもこちらに非があるように詰め寄ったウェイターにムッとしかけたとき、
それまでダディンの隣で 黙々と サーモンを食していた、義母の友人がぼそりと、
「 そういえば、私、シーザーサラダを頼んだわ 」

一同、 絶句 ……
瞬間、思わず 彼女の皿に 目が行った。
サーモン料理は、ほとんど 食べ尽くされていた 。
重苦しい沈黙 が続くこと数十秒―
ウェイターも、 かといって シーザーサラダを彼女の前に置くわけにもいかず、
彼女の方も 今更 、ダディンのと自分のを交換するとも言えず…。
「あ、じゃ、ぼくがシーザーサラダを…」と、ダディン。
チキンは苦手であることを知りつつ、
「あ、美味しそうじゃん、それ」と、私。

メインコースでも彼女は自分の頼んだものを忘れてしまい、
隣に座っているダディンに小声で ぼそぼそと 尋ねていた。
こう書くと微笑ましいけれど、そのときは心底驚いた。
彼女は義母の友人で、私たちも家が近いこともあって、
一緒にディナーをしたりとか親しくさせてもらっていた。
だけど、そんなに 物忘れ がひどくなっているとは思ってもいなかった。
二十年ほど前にご主人に先立たれてから ずっと一人暮らし をされている。
一人で大丈夫なのだろうか?
正直かなり心配ではある。

一方、義母は演台から
自分の80歳の誕生日を祝うために集まった人たち一人一人に
感謝を込めた挨拶をしてくれた。
瞳を潤ませながら、胸に残る思い出 を語っていた。

ふだんは年齢を感じさせないクリアで力強い義母の声が
涙に震えるのを聞きながらふっと思った。
80歳の誕生日、私はどう祝うのだろうか?

バースデー旅行 を夢見たとしても、
足腰がどれくらいしっかり しているかわからないし…。
慢性的運動不足 という現状から察するに、
未来はかなり暗澹としていそうだ。
祖母のことを思えば、 認知症 になっていないとも限らないし…。
たとえ 運よく 海外旅行ができるような 強靭な肉体 に恵まれたとしても、
見当違いな飛行機 に乗ってしまって、
突拍子もない国 に飛んで行ってしまいそうで、 危うい 。
あ、さすがにそれは移民局とか飛行機会社の方が止めてくれるか(笑)。

そのとき―隣に、誰かいてくれるのだろうか?
ダディンはまだ元気なのかな?
子どもたちはどこでどんな人生を送っているのだろう?
両親はもうきっと、この世にいないよね。
でも、妹は?
友人は?
何より私自身の意識は?
生前、祖母は自分の名前さえも忘れてしまったけれども、
まだ自身を保っていられるんだろうか?
そんなことを思えば、楽しみよりやはり切なさを感じてしまう。

80歳の誕生日―
義母はきちんとお祝いできて良かった。

Happy 80th Birthday!

写真は、私たちのテーブルを飾ってくれたお花です。









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Last updated  2013.03.09 15:02:36
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