ユーカリの木陰で里の行

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2016.03.23
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IMG_2155.jpg

カフカの主人公は朝目覚めると昆虫になっていたけれど、
目覚めたら、お多福おばさんになっていた。
!?

ことの始まりは前日16日水曜の朝だった(少なくとも私の認識上では)。
洗顔後、額の左側に深い皴ができているのに気がついた。

あれっ、こんな皺あったっけ?
暫く自分の顔見てなかったから気づかなったのかナ?と初めは思った。

というのも、この週末は友達4家族と田舎のホリデーハウスを借りて
3泊4日で旅行に行っていたのだが、
そのホリデーハウスというのが
寝室は6部屋もあったのに、バスルームは2つしかなかった
しかも トイレ、シャワー、洗面所が一部屋にまとまっているうえに、
それを14人でシェア
。
とにかく速攻使用 が求められたので、
自分の顔を悠長に眺めている時間なんてなかったのだった。

ちなみに、一緒に行った友達とは
上の子のマザーズグループからのお付き合いである。
思い返せば、彼女たちと出会ったころは
子どもにミルクを飲ませながら
昨夜は6時間もぶっ通しで眠ってくれたの~大笑い!?とか
ママ友話 で盛り上がっていたのだった。
しかし当時は新生児だった子どもたちも、今や14歳
いやあ、月日の流れるのは早い。
自分も年を取るハズだよねぇ…

としみじみ件の皺を眺めてしまったのだけれども、
よく見れば、皺の下が丘のように盛り上がっている。
眠っている間に虫にでも刺されたかナ?




その夜、
「ママ、瞼がちょっと変だよ」と息子に言われた。

鏡を見れば 確かに 瞼が少し腫れている。
額も、ちょっとした丘のようだったのが広がって腫れ、
ぶつぶつと発疹のようなものも浮き出ていた。
左の首の辺りにもうっすらと発疹ができていて、痒い。

昔、医者をしていたことのあるダディンに見せたところ
「それ、 Sunburn じゃない?(sun-tanではなく 炎症を起こした方の日焼け ね)
旅行中、ビーチや砂丘に行ったとき焼けたんじゃないの?
特に 砂丘は日差し、強い から」

そうか、サンバーンか。
確かに。
シビアなバスルーム事情から
旅行中はずっと すっぴん で出歩いていた
からな。

しかも仲間内でもっともアクティブなデビちゃん(仮名)が、
勤め先の私立高校1週間キャンプから戻ってきたばかりとあって
そのハイテンションさを引きずっていたため、
休むことなくハイキングや、砂丘でのサンドサーフィン、
海辺でのピクニック、バーベキューにパブパーティとかを企画してくれたため
かなり慌ただしかった。
私も朝ちゃちゃっと日焼け止めクリームを塗っただけで
一日中太陽光線を浴びまくっていた のである。
で、行先は砂漠やビーチ だったし…。
今思えば恐ろし過ぎるゾ…しょんぼり

慌ててその夜は、日焼けにもいいというアロエベラのジェルを
たっぷりと 塗ってから眠ったのだった。


そうして翌朝―
目覚め、ベッドから起きだしたとき 異変 に気がついた。
顔中が何かに引っ張られるように重かった。
視界が妙に狭くなっている。

バスルームに駆け込んで鏡を覗き込むや
我が目を疑ってしまった。

鏡の中から、 見知らぬお多福顔のおばさんが
怯えたような目で、こちらを見つめている
ではないかっ!?
びっくり

パンパンッに膨れ上がった顏は、
ぶつぶつと発疹に覆われて、真っ赤だ。
瞼が赤く腫れ上がっているせいで
目の大半は皮膚に埋まってしまっている。

昔見た「エレファントマン」という映画が思い出された。
パッと見、
女版エレファントマンか、ヘリウムで2倍に膨らませたお多福か、
いずれにしろどこかモンスター顔のおばさんが、
哀しそうな、縋るような、でもどこかひょうきんな目をして、
こちらを見つめている
のだ。

ひえぇぇぇぇぇ~~~
恐いよぉぉぉぉ~~~

だけど
この人ってば、
自分…
なのね。。。

信じられなかった。
一晩眠った だけ で、自分の顔が
こんなにも変わり果ててしまった
だなんて!?

けれど 朝方5時前に叫んでしまってはハタ迷惑 なので、
とりあえず毎朝の瞑想と行をいつもより念入りに行って、
心を鎮める。
このショッキングな状況を周囲に訴えられる機会 を待った。


息子を起こすとき、
こんな変わり果てた母親の顔を起き抜けに見てしまったのでは
9歳の子どもにはトラウマかもしれない と、予告を入れることにする。

「ママ、こんな顔になっちゃったんだけど…
ビックリしないでね(ふつー驚くだろ、そりゃ)。
でも今日医者に行くから大丈夫だよ(全然大丈夫じゃないけど)」と。

私を見るや、息子は一瞬ギョッと固まってしまった。
それから「ダディ、ダディ」と父親を呼びに行く。
「ダディのバカ~~~、
ママは日焼けなんかじゃないじゃないか!
ダディが日焼けだなんて言うから、ママも医者に行かなかったせいで、
ママの顏がおかしくなちゃった よ~~~~~」怒ってる

夫も、発疹が浮き赤く膨れ上がった顏を見て、
確かにこれは日焼けなんて 生易しいものではない と思ったらしい。
アレルギー反応か、感染症の可能性もあるから
直ちに病院に行った方がいいだろう、と勧めてくる。

近所のクリニックに行こうと思っていたのだけれど、
前回、膿瘍を発症してしまったときのことが思い出された。
あのときは、開業医たちの対応があまりにのろく結局
大病院の急患に駆け込み、緊急手術ってハメになってしまったのだった。
こぉんなに顔が膨れ上がっているのに、GP(ホームドクター)行って、
専門医への紹介状なんてものを呑気に書いてもらっている場合ではない
だろう。

その日、午前中は娘の三者面談が入っていたのだけれども、
やむなく ( つーか、先生たちもこの顔で面談されたらシンドイかも… )断念。
夫一人に任せることにした。
まず息子を小学校に送ってから私が病院に、
その後娘と夫で中学校に向って、などとこれからのことを話し合っていたら、
息子が「今日は学校には行かない」と言い出した。

こんな忙しいときにまたワガママを、と一瞬カッとしてしまった。
息子は押し問答の後、真剣な面持ちで聞いてきたのだった。
「 じゃあ、誰が病院でママについているの? 」、と。

え、私のこと心配してくれてるの?ぽっ

「ムゥもこれでなかなか頼りになるからな」とかダディンに言われ、
頷くように俯く息子の様子に、
号泣涙が零れそうになった。

とはいえ、目の周りは湖を取り囲む山脈のように腫れ上がっているせいで、
涙はどこに流れることもできず、ただ目の際に溜まってしまったから、
実際に零れるという現象は起きなかった のだけれど。

早速、夫は息子の学校に欠席の連絡を入れた。
母親に付き添って病院に行くから欠席する、と馬鹿正直に話す夫を横目に、
そんな欠席理由じゃ…と訝ったけど、
学校側の方はすんなり納得しているらしい。
なんとなくお国柄 を感じてしまった。


大病院の急患待合室はやはり今日も混んでいた。
今度は娘の方が面談はキャンセルしてここで一緒に待つと言い出した。
母親が一晩でこんな顔になってしまったのに
面談なんかしている場合じゃないだろうと涙ぐんでいる。
娘の気持ちはありがたかったけど、
先生方との三者面談を今更ドタキャンしてもらいたくなかったので
説得して送り出し、息子と二人待合室で待った。

それにしても、
子供たちをこれほど動揺させてしまう私の顏って…
そう思ったら、
人目が気になってきて、顏をあげられなくなってしまった。

なにやら変な呻き声 がすると思ったら、
二十歳くらいの男の子が脇腹を抑え、泣いていた。
ブロンドの長髪でストリートファッションに身を包み、
付き添った男の子は黒づくめ。
街角にいれば、俺らってクールっしょってタイプの兄ちゃんが
脇腹を押さえ、 身も蓋もなく呻き、泣いている のだった。

よほど痛いに違いない。
そう思ったら、その兄ちゃんが ほんのいたいけない子ども に見えてきた。
思わず駆け寄って、「Can I help you?」と声をかけたくなってくる。
その脇腹に手を翳し、霊気でも してあげたくなって堪らなくなってしまった。

けれど見ず知らずの、
それも顔が真っ赤にパンパンに腫れ上がったおばさんから
手など翳されてしまったら怖いだろう
と思い直す。

そうこうする間も彼の呻き声は高くなり、
息子まで「どうしてここは病院なのに誰も来てくれないの?
苦しんでいる人たちを助けてくれないの!?」と動揺しだした。

「ママ、声かけてこようかな?
せめて霊気でもしてあげようかな?と思うんだけど、どう思う?」
と、息子に聞いてみたところ、言葉に詰まった後おずおずと答えた。
「 やっぱり、ママは、止めといた方が良い ・・・と思う」

だよね。やっぱ 逆にビビル よね…。
病院のスタッフか、健康な付添人か誰かが
代わりに声をかけてくれないかと思ったけれど、
やはりスタッフは忙し過ぎて、
待合室で待つ人たちは、たぶん私同様 どうしていいのかわからない のだろう。

気の毒に、今や彼は固いベンチの上でのたうちまわり、
息子も怒りを堪えるあまり小さな拳を握りしめガクガクと震えている。
「どうしてなの、ママ?
ぼくのときはいつもそんなに待たずに病室に入れてもらえるのに、
どうしてあの人はあんなに苦しんでいるのに放っておかれるのっ?
なんで誰も手当てしてあげないのっ!?」

それでムゥが子どもであることと、
喘息の発作は生命に関わる危険があるため
プライオリティ扱いで、優先されていることを説明する。
あの人の場合、苦しそうだけど、
命に別状はないと判断されたのかもしれないね、と。
いずれにしても、
ここでムウが怒っても悲しんでも彼の助けには全くならないし、
自分にも良くないから、とにかく今は天に助けを頼もうと言い聞かせた。
私もせめても祈り、遠隔で霊気を送っていた。


ようやっと名前を呼ばれ、診察室へ。
看護師に聞かれ、症状を説明する。
ここまでくればもう一安心 って気がした。
この人たちは前回、どんなに痛みを訴えても悠長に腸の検査などを勧めていた
呑気な近所の専門医からは一線を画し、
直ちに病名を当てた緊急医療スタッフのメンバー なのだ。
きっと今回もずばりと病名を言い当て、
適切かつ迅速な対応をしてくれるに違いない
、と。

それから待つこと数分。
今度は専門医が現れた。
診察ブースに連れられ、 早口で矢継ぎ早に問診が始まった 。
ここでは、 患者たちは耐えて待つのが仕事 のようなものだけど、
スタッフはめちゃめちゃ忙しいので、
何もかもが猛スピードで行われてゆくのだ。

私は、何かの原因で皮膚が炎症を起こしてしまい、
真っ赤に腫れ上がってしまったのだろうと思っていたのだけれど、
アレルギー反応 だろうと診断された。

今までどんなアレルギーがあったか?と問われ、仰天してしまった。
自分にアレルギーがあっただなんて…、
長いこと生きてきたけれど、今の今まで知らなかった。びっくり

「でもママ、花粉症は? 
あれもアレルギーなんじゃないの?」と息子が、
動揺する私を見兼ねたのか、横から口を挟んでくる。

そうだ、
思い返せば、去年初めて花粉症だと言われたのだった。
それだって 寝耳に水 。
それまでアレルギーの類とはとんと無縁だと思って生きてきたから
驚いてしまったのに、それが…

そのアレルギー反応の原因を探るべく、早口で質問は続く。
最近、何か変わったものを食べたことは?
新しく使い始めたクリームや化粧品とかは?
何か珍しい野生の種とかに触れましたか?

何も思い当たることはなかった。
でも もしかして 、野生の種子とか虫刺され?
この週末に田舎を旅行して国立公園に行ったことを告げたけど、
月曜の昼には発っていたので、
症状が出るには期間が長すぎるだろうと言われた。
それに砂丘は初めてだったけど、
そういう場所に行ったのは初めてではなかったし…。

結局、原因と思しき要因は 何も見つからなかった 。
とにかく後日、詳しいアレルギー検査を受けることにして、
まずは応急手当てにアンチヒスタミン剤を服用するようにと言われた。

「それを飲めば、 とりあえず 痒みや痛みの症状は和らぎます。
顔の腫れは そのうち自然に 引くでしょう。
ただし呼吸が苦しくなってきた場合は非常に危険ですから
直ちに言ってください」、と。

「え…、 腫れは自然に引くのを待つしかないんですか?
顔の腫れに効く薬とか処方してもらえないんですか?? 」しょんぼり

「ですから、腫れの方は自然に引くのを待つしかありません。
とにかく、生命に関わる問題ではなさそうなので大丈夫です。
ただしこれから症状が悪化しないよう1、2時間様子を見るために
このまま病院に残ってください」

大丈夫って…、
こんなエレファントマンかお多福マン顔なのに、
全然、大丈夫なんかじゃな~~~い!怒ってる
正直、私的には呼吸よりも、
この恐ろしい顔の腫れを何とかしてもらいたかった。。。

訴えても埒が明かなそうなので、診察ブースを出て、
看護師さんが薬を持ってきてくれるのを待つ。

それにしても、アレルギー反応だなんて、
いったい何にアレルギーを起こしてしまったんだろうか?
ぐるんぐるん回る頭で考えていた。

そのとき受付スタッフの会話がす~っと耳に飛び込んできたのだった。
「 カルマよ 」と女性が呟き、
「 バッド・カルマね 」と、もう一人が頷いた。

ふっと旅行中、帰る間際に怒りを爆発させてしまったことを思い出した。

月曜日、メルボルンはLabour’s Dayで休日だったのだが、
ダディンは日本のカレンダーで仕事をしているので早めに帰ることになっていた。
それでも午前中は国立公園に戻ってビーチピクニックにでもして、と
朝食をとりながら皆で話し合っていた。
けれどダディンがそのうち焦ってきたので、
私たちは近くのビーチにちょっと寄ってからメルボルンに帰ることにして
結局、先にホリデーハウスを出たのだった。

それが、ダディンときたら
子どもたちと一緒に巨大な砂の城を作り始めるや、
動かなくなってしまったのだった。
ちょこっとどころか、かれこれ1時間。
行こうと言っているのに、
もうすぐ完成するからと いつになってもグズグズ している。
寒いし、ビュンビュン海風は容赦ないし。
こんなことならみんなと一緒にビーチピクニック行って、
記念写真も撮ってくれば良かった(まだ全員写真は撮れてなかった)。
などと、
じりじり待っていた私は遂に夫に 切れてしまった のだった。

後から考えてみれば、そんな怒りまくるほどのことでもなかったのだけど、
自分でもびっくりするほどの激しい怒りが湧いてきた。
どこから来たのだろう?と訝ってしまったほどの獰猛な怒り。
ビッキー(仮名)たちが私たちを追ってビーチまでやって来なかったら、
私は浜辺で拳を振り上げ怒鳴りまくっていたかもしれない。
さすがに彼らの前で怒りまくることは抑えたものの、
初めに来たハリ君(仮名)などは怒る私を目の当たりにしてしまったようで、
母親の陰に隠れるようにして私のことは見ないようにしていた のだった。。。


あのとき、怒りの対象はダディンだったのに、
私は子どもたちや、
全く関係のないハリ君を傷つけてしまったのだろう。。。

「カルマよ」
「バッド・カルマね」
受付の女性スタッフの会話に、そのときのことを思い出していた。

唐突に思った。
もしかして、あのときの怒りが原因で?
いぃや、まさか 。
調べれば、もっとフィジカルな何かがあるハズだ。
だけど思い返してみれば、
私は ひどく怒った後に体調を崩してしまうことが多い 。
もしかして、自分は怒りにアレルギー反応がある、とか???

怒りは有害 である。

仏教の根本的心理学。
実際、自分が怒ったとき、
それを分析すればするほど有害だとは思う。
有害だと認識している。
だけど怒りの衝動はあまりに強い。
私たちは怒っているとき、その怒りの感情に振り回され、
理性や英知の声に耳を傾けようとしない、無視してしまう。
それも怒りの本性だ。


薬を飲み、待合室に戻されるとき、
ダメ元で 看護師さんに、
あの泣きながら呻いていた男性のことを頼んでみた。

間もなく彼が呼ばれたときにはホッとした。
けど、脇腹を抑え、呻きながら足を引きずる青年を見るや
看護師さんは呆れたように言ったのだった。
「 あなた、また戻ってきたの~ 」

出戻り?
いったい彼は前回、何をしでかして戻ってきたのだろうか???
いずれにしても、
見てもらえてよかった。
息子も安心したらしく「良かったね~」と俄かに寛ぎ始めていた。

その息子なのだけど、
自分は学校を休んでまで母親に付き添っているという責任感 からか、
いつもはだら~っとしているのに、今日はびっくりするくらい神妙だった。

診察室に行くときには荷物を全部持ってくれたし
(中に入っているのはほとんど息子の漫画本とお菓子だったけど)、
問診では、 私の英語のアクセントをフォローしようと、
私の言うことを いちいち 言い直して医者に 再度 伝えてくれた
し(苦笑)。
そのあまりの真剣さがかわいくて、思わず吹き出しそうになってしまった。
て、そんな場合じゃないだろ。

この続きは『目覚めたら、顔ハレ…(後編)』でお読みください。

写真は、ホリデー最終日に少しのつもりで立ち寄った「怒涛のビーチ」で(苦笑)、
ダディンと子どもたちが作り始めた砂の城デス。
城はこれからますます増設されてゆくのでした。






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Last updated  2016.03.24 07:16:34
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