ユーカリの木陰で里の行

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2018.04.07
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カテゴリ: チベット仏教




こうして4月5日から8日まで

3泊4日の密教リトリート家族旅行 に出ることになった。大笑い

当初、夢見ていたリトリートとは

だいぶカラーが違ってしまったけど(苦笑)。

実際、 道中はただのウカレた家族旅行 だった。

犬連れの旅 は久しぶりだったので
子どもたちはテンションも高く、

お菓子を食べながら後部座席で犬たちと戯れていた。

つーか、息子などしきりにポーポーにちょっかいを出しては、

鬱陶しがられていたし ( 笑 ) 。

ホリデーハウスにチェックインしてからは

子どもたちは すっかりホリデーモード に入ってしまって、

とても密教リトリートの気分ではなくなった らしい。

ゆっくりここでホリデーを楽しみたいと言う子どもたちに
犬たちを頼んで、

ダディンと二人でリトリート会場へ。

アティーシャセンターに到着したのは7時近かった。

1本道沿いに延々と続いていた雑木林や、

牛や馬がのどかに草をついばんでいた枯れた牧場からは、

別世界。
真っ暗な敷地に(建設中の)

グレート・スチューパがライティングされて、

ブッシュに不時着したUFOを思わせ、浮かび上がっていた。

なんだか異世界に迷い込んだ旅人にでもなったかのような気がした。




巨大なテントを張った仮設食堂では
ちょうど夕食が振舞われていた。

地元の仏教センターの仏友たちも何人か来ていた。

異国の地で思いもよらず懐かしい友と出くわしたかのように

再会を喜び合ってしまった。

殆どが先週の金曜、

リトリートが始まったときから参加しているとのことだった。

けれどリンポシェが実際に現れたのは月曜からだとか…。

私は、リンポシェは祈祷や瞑想の行はさておき、

法話はしてくれるのだろうと思い込んでいたのだけれど、

どうやらそうでもないらしい。

みんなの話では、日によって。

早朝6時の祈祷にいらしたり、

朝食後の行に参加されたり、

今日は無理かと思ったら夜の法話に突如現れたり、と

相変わらずの マイペース 。

リンポシェの行動は誰にも予測不可能なのだ、と笑っていた。

どうやらリンポシェには

会えたらラッキー! とでも考えていた方がよさそうだった。

リトリートというのは
現世から自身を隔離して行うわけだけど、

会場になっているグレート・スチューパのゴンパは、

浮世離れした不思議な静けさ に包まれていた。

仏像やタンカが花々で飾られ、レリックが展示され、

壁には巨大な 「21 Tara 菩薩」のタンカ が掛けられていた。
(トップの写真に写ったタンカです)

余談だけど、これは

高さが5階建てのビルに相当するほど巨大なタンカだ。

去年フランスから、私もお世話になっている
地元のチベット仏教センターに贈られたのだけど、

その あまりのデカさゆえ、そこには掛ける壁もなく 、

この2月に初めてビクトリア州立美術館に

ホワイトナイト祭の一環として展示されたという代物である。

なにしろ、ラマ・ゾパ・リンポシェに頼まれ

これを 描いたフランス人のアーティスト本人でさえ、

完成した全体画を
その日まで1度も見たことがなかった!?びっくり
そうだ。

大きすぎて、自分のスタジオでは広げて描くこともできず

布地の両端を巻いたまま、
少しず~つ広げながら描いていったという。

とてもそんなふうに描いたのだとは思えない、

素晴らしいタンカに描かれた

多羅菩薩たちの微笑みを前に、瞑想した。

リンポシェの到着を待った。

だけどその夜、残念ながら

リンポシェは現れなかった。。。

代わりに、別の高僧の指導で

Vajrasattva 金剛薩垂の瞑想 をした。

リトリートには大勢の尼僧や僧侶が参加されていたので、

彼らの打ち鳴らすドラムやベル、

祈祷や読経、マントラの詠唱を聞きながら

浄化の瞑想をした。

ドラムやベルの音が鳴るたびに、その振動で

心にこびりついた垢や汚れが弾け落ちてゆくかのよう だった。

うっとりするほど本格的な金剛薩垂の瞑想をすることができた。ぽっ

その夜、街灯もない真っ暗な夜道で、

夫と私は帰りの道に迷った。

来たときとは違う道をちょっと不安な気持ちで走りながら、

車窓から見た風景は忘れられない。

今にも大地に落ちそうなほど低い夜空に、

とてつもなく大きな緋色の半月が浮かんでいた。

スーパー・ハーフムーン。

今年1月に見たスーパー・ブルー・ブラッド・ムーンよりも

もっと大きく、その月は垂れ込めていた。

その怪しく神秘的な輝きを眺めながら、

私はその特別な夜の空気を噛みしめていた。


翌日。

来る前は、早朝6時から始まる祈祷や瞑想、

Lama Chopa 行から参加しようと思っていたのだけれど、

止めた。

リトリートには午後4時のリンポシェの法話から参加することにして、

それまでは家族でゆっくりホリデーを楽しむことにした。

久しぶりの愛犬も一緒のホリデー旅行に

はしゃぐ子どもたちと一緒に過ごしたいと思った。

考えてみれば、上の子は高校2年生になったのだ。

親と一緒の旅行を楽しんでくれるのも時間の問題だろう。

ともすれば今の生活が、この日常生活が

延々と続いてゆくかのような気がしてしまうものだけど、

決してそんなことはないのだから。

今この瞬間も子どもたちは成長しているし、
いつかは家を出てゆく。

ダディンと私も年を取って、

家族がバラバラになる。

その日は必ずやって来るのだから。

Emptiness ―無常について瞑想してから、

Mindfulness ―家族旅行を、心をこめて楽しんだ。


家族揃って、いつもと違うキッチンで食事をして、

愛犬たちを連れて、いつもと違う通りを散歩した。


19世紀に金鉱で栄えたベンディゴの街には

当時の名残りを留める優雅な建築物がたくさん残っている。

通りに並ぶ豪華な家々を楽しみながら歩いた。

それから子どもたちとゲームをしたり、
本を読んだり、日記を書いたり―

気を抜くと、

慌しい日常生活に心が流されてしまいがちだから、

ゆっくりと寛いだのは久しぶりのような気がした。


ラマ・ゾパ・リンポシェの法話には家族全員で参加した。

といっても、犬たちは置いて。

午後の部と夜の部と2日間。

昨夜リンポシェは現れなかったので、

もしかすると今日も会えないかも…と心配したけれど、

いらしてくれた!

午後も、夜も、翌日も。

幸運にも4回全て法話をしてくれたのだった。大笑い

リンポシェは国外の法話では英語のことが多いのだけど、

今回も英語だった。

7年前の脳梗塞で一時は話すこともままならなかったそうだけど、

今ではかなり明瞭な発音で、早口で。

とはいっても訛りもあるし、
私のヒアリングも怪しいものだけど、

同時タイプで英文の字幕スーパーがスクリーン上に流れるので、
大丈夫。

私はもっぱらそれを読んでいた。

リンポシェの英語はユニークだ。

まず、リズムと抑揚。

英語は日本語と違って、強弱アクセントの強い言葉だけれど、

リンポシェは、モゴモゴ話されているかと思いきや

突然、怒鳴るような大声になったりする。

それでハッと、
うとうとから目が覚めたりして(って、ダメだろ、それ)。

また、形容詞や副詞をことさら繰り返して

話を聴く者の心に残してしまう。

「 amazing, amazin​​​g, amaaaaaaaazing! ―

アメージング、アメーージング、アメーーーーーージング!」とか、

「 forever, foreeeever, not just for one day or two years,

forever, foreeeeeeeever ―

フォレバー、フォレーーバー、ノット オンリー ワン デイ

オア ツー イヤーズ、フォレェバー フォレェーーーーーーバー」とか。

他では聴けないユニークさ。

何よりも私はリンポシェの笑い声大笑いが好きだ。

ダライラマ法王の笑いも一種独特だけど、

リンポシェは「ヒーヒー」と引き攣ったような、

オランウータンでも彷彿させかねない甲高い声で笑う。

でもってスクリーンには
「Hee hee hee hee… 」とかタイプされるのだ。(^^;

そんなユニークな英語で、

リンポシェは悟りを開くために絶対不可欠なエッセンスや、

菩提心、カルマについて話してくれた。

リトリートの独特の雰囲気の中で、

リンポシェの不思議な英語で語られる法話は

活き活きと、しみじみと心に迫ってくるのだった。

とはいえ子どもたちには退屈かなぁ…とも思った。

とりわけ字幕映画を見ることにさえ慣れていない

小6の息子には難しいか、と。

けれど意外にも二人とも真剣な顔で耳を傾けていた。

息子など時に隣の私に質問までしながら

最後の最後まで熱心に聞いていたのだった。

リトリートの法話の1部が
​ ⇒こちらでご覧いただけます。 ​

法話の後、リンポシェはたっぷりと時間をかけて

功徳の廻向をしてくれた。

祈祷して、読経して、マントラを唱え、
タンバリンを打ち鳴らし―

タンバリンやドラムやベルの奏でるリズムに

僧侶たちの野太い詠唱が重なる。

心が、魂が震えてしまうような場で瞑想をすることができた。



リトリート最後の夜は、
後ろ髪をひかれる思いで
グレート・スチューパを後にした。

とぼとぼと真っ暗な夜道を、

懐中電灯の灯りを頼りに駐車場まで歩いていたとき

突如、息子が歓声を上げた。

「ねえ、見てよ!

星がすっごくキレイだから!」ぽっ

見上げれば、満天の星空が広がっていた。

街灯もない田舎の夜空には

メルボルンの数倍の星々が瞬いていた。

「ねえねえ、南十字星はどこなのっ?」と興奮する息子に、

「あれがミルキーウェイで」とタディンが説明し始める。

懐中電灯を消して、家族4人で暫く夜空を眺めていた。

来たときの、木曜の夜空に浮いていた

神がかったほど大きな緋色の半月ではなかったけれど、

うっとりするほど神秘的な星空に圧倒されていた。
そうして振り返れば、

ブッシュに不時着したUFOような

グレート・スチューパが青白い光を放ち建っていた。

―​ 「山の行より里の行③」 ​に続く―


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Last updated  2018.05.22 09:41:31
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