ユーカリの木陰で里の行

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2018.04.06
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カテゴリ: チベット仏教




翌日、メルボルンに帰る前にアティーシャセンターに寄った。

ポーポーとチャールスにも

何かリトリートの恩恵に与らせてあげたかった。

昨日リンポシェは動物や生き物の輪廻転生についても話してらした。

動物たちも転生を繰り返しているが、

なかでも犬や猫などペットになる動物は人間にとても近い存在なので、

人に転生する日もそう遠くはいから、

できるだけ功徳を積ませてあげるといい、みたいな。

リトリートの事務所にいた僧侶に、

犬連れで来たので、愛犬たちにも

グレート・スチューパの周りを歩かせてあげたいのだ、と頼んでみた。

リトリートの邪魔にならないように手綱を付けて、

グレート・スチューパのゴンパの中には入れないように、

と言われたものの、快く承諾してくれた。

ポーポーとチャールスは

普段はお散歩ともなると興奮してしまって、

ヒステリックなほどキャンキャン吠えまくるのだけど、

この日は来る前にもベンディゴ市内を散歩してきたせいか、

あり得ないほどおとなし~~~く車から降りてくれた。

晴れ渡った、美しい初秋の青空が広がっていた。

早くも秋色に色づき始めた木々や

ユーカリの木々のそよぐ広大な敷地をのんびりと歩いた。


アティーシャセンターの平和な空気を乱さないように

ひっそりとお散歩 しようと努めた。

グレート・スチューパの中では、

ラマ・チョパ行が続いているようだった。

スチューパの周りを半周くらいしたころ

向こうに大きな黒い犬がいるのに気がついた。

スチューパの傍に立ち、こちらを睨み付けていたのだ。

そんなはずはないのだけれど、

一瞬、野生のディンゴかと思った。びっくり

周りに飼い主の姿はなかった。

繋がれてもいなかった。

身じろぎもせず、ただ真っ直ぐにこちらを見つめている。

威圧的なほど超然として、ほとんど1匹狼のような威厳でもって。

ディンゴではなさそうだけど、野良犬かも…

「マズイよ、ママ、帰ろう」と、息子。

「ポーポーとチャールスと喧嘩になっちゃうよ」

私も、引き返そうかと思った。

うちの犬たちはフレンドリーな犬とはとても言い難く、

他の犬を見ると(チビ犬のくせして)

牙を剥いて吠えかかってしまうから。

思い返せば、
この子たちをロストドッグホームから引き取ったとき、

オスのチャールスの方は腕白坊主のような犬だったけど、

メスのポーポーの方は可愛そうなくらいに怯えて震えている

神経質な犬だった。

散歩のときなど私の足元に隠れるように歩いていたものだ。

それがだんだんとリラックスして、
愛嬌のある犬になってきた。

同時に態度もでかくなって、

いつの間にかポーポーときたら、出会う犬すべてに

ギャンギャン吠えかかるようになってしまったのだった。

まるでそれまでのジンセイのリベンジに出たかのように…

吠えても所詮は臆病犬なので

噛みついたりすることはないのだけれど、

つられてチャールスも吠え始める。

するとこちらはオスのせいか、
勢い余って噛みつきそうになったりする。

獣医の話では、
メスのポーポーを守ろうとしているらしいのだけれど…。

ドッグトレーナーの講習を受けたこともあったけど、

私たちは未だにトレーニングできずにいる。。。

つーか、
小型犬であることを幸いに、ほとんど諦めている。

向こうから犬が来たら、

ひっそりと進行方向を変えるか、抱き上げてしまうって感じで。(^^;

ただ手綱がついていない犬で

飼い主もそこにいないとなると、厄介なことになってしまうかも…。

相変わらず黒い犬はそこに立ち、じぃっとこちらを見ていた。

私たちのいる位置が1段低くなっていたので、

背の低い、うちの犬たちからは見えていないようだったけど、

2匹が気づいて、ヒステリックに吠え始めたら…?

ゴンパの中、リトリート行者たちの静寂は…?

だけどせっかくここまで連れて来たのに、

肝心のグレート・スチューパを廻ることなく退散 っていうのも…
決めかねて、ぐずぐずと立ち往生してしまった。

と、飼い主らしき人物が現れた!

途端にディンゴは愛らしく尻尾を振って、

おとなしく手綱をつけられる。
ほっとした瞬間、

甲高い笑い声が聞こえてきたのだった。

「ヒーヒー」と、あのユニークな笑い声が。

ラマ・ゾパ・リンポシェだった。

偶然にも
行を終えたリンポシェがスチューパから出てきたのだった。びっくり

なんてタイミングなんだろう!

リンポシェがここを通ることが日に数回、

悪くすると1度もないことを思えば、奇跡的タイミングだった。

リンポシェは黒い犬に気づくと、足を止めた。

犬の頭を撫で、なんとマントラを唱え始めたのだった。

どうしてあのとき、この犬を恐いと思ってしまったのかわからない。

5分前のディンゴの面影はどこへやら、

その子は従順で聡明な犬然とお座りをして、

微動だにせず、おとなしくリンポシェの祈祷を受けている。

リンポシェはかなり長いこと祈祷をされていた。

いつのまにか、その周りに人だかりができていた。

祈祷を終えたリンポシェは5、6人の僧侶たちに囲まれて

ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

そのときは気がつかなかったのだけど、

私たちはちょうど僧院へと続く道沿いに立っていたのだった!

あの黒い犬があのときこちらを睨み付けていてくれなかったなら、

何分も前に通り抜けていただろうポジションだった。

だぶんリンポシェが出てきたことに気づくことさえなく、

スチューパを廻り終えていたことだろう。

「あら、ここにも犬がいるわ。

こんなちっこいのが2匹も」と

ポーポーとチャールスに気づいた、お付きの尼僧が笑った。

黒い犬に祈祷をした後だったので、

また足を止めることはないだろうと思っていた。

だけどリンポシェは立ち止まってくれたのだった。

不自由な体を折り曲げるようにして

ポーポーとチャールスを撫でてくれた。ぽっ

ポーポーの手綱は私が引いていたので、

リンポシェが撫でやすいように抱き上げた。

チャールスの綱を引いていた娘も同じように抱き上げた。

するとリンポシェは犬たちの頭上で印を切り、

ぶつぶつとまたマントラを唱え始めたのだった。

幸運にも、うちのポーポーとチャールスまで

リンポシェから祈祷を受けることができたのだった!大笑い

2匹分のせいか、さっきよりも長く祈祷をされていた。

その間、私はずっとマントラでも唱えるかのように

「 Thank you, thank you, thank you …」と呟いていた。

私の腕の中で、人見知りの強い神経質なポーポーが、

吠えることも震えることもなくおとなしく祈祷を受けていた。

祈祷を終えると、リンポシェが私に尋ねた。

「どこから来たのか?」と。

初めてリンポシェと言葉を交わしたときと同じ質問だった。

それから名前を尋ねてくれた。

日本人だけどメルボルンに住んでいるのだと答え、

自分の名前を告げてから家族を紹介した。

リンポシェはダディンの名前を
「
Deity デイティ」と聞き間違えた。

奇しくもそれは「神仏」という意味なので、

僧侶も私たちも吹き出してしまった。

私とダディンとオージーの尼さんが夫の名前を言い直したが、

リンポシェはにこにこと言ったのだった。

「 Never mind, you’ll become a deity.
気にしないで、君は神仏になるから」、と。

そうして「ヒーヒー」笑いながら行ってしまったのだった。

半ば呆然として

半身を引きずるようにして一歩一歩、

だけど楽し気に歩いてゆく、臙脂色の後ろ姿を見送ってしまった。

冗談にしても、リンポシェから「神仏」と表されるだなんて、

夫はなんてラッキーなんだろう!

それから、

ポーポーとチャールスを引き取る前に見た夢のことを思い出した。

それは、飼い主がおらず殺処分されてしまう犬を

ロストドッグホームから引き取ってくるという夢だった。

夢の中で、

私は夫や子どもたちと一緒に引き取って来た小さな白い犬を

(なぜか)自転車の籠に入れ、家に帰るところだった。

はっきりと天空から声が聞こえてきた。

「そういう過酷な境遇にある犬を引き取って

大切に育てるということは、

その犬にとってだけでなく、

あなたたち飼い主にとってだけでなく、

宇宙的なプロジェクトにも叶う、

宇宙全体に恩恵のあることなのですよ」、と。

そうしてその朝、当時飼っていた愛犬ムムが

突然、逝ってしまったのだった。

肺癌だった。

ムムは3匹いた犬の最後の子だった。号泣

昔、ダディンと私は3匹の犬を溺愛していた。

なのに、子どもが生まれてからは子育てに追われて

昔ほど愛犬たちのことを構ってあげられなくなった。

それが不憫で申し訳なくて、子どもたちが大きくなるまで

もう2度と犬は飼わないと思っていたのだった。

私はその夢見を、偶然だとは思えなかった。

突然ムムが亡くなった数時間前に見た夢なのだ。

天からアドバイスを授かったような気がしたのだった。
そうして年が明けてから引き取ったのが、
この子たちだったのだ。

あれから8年が経ち、ポーポーとチャールスが今
こうしてリンポシェに祈祷をしてもらえたことを思えば、
感慨もひとしおだった。
良かったね、ポーとチャー。


(よろしければ、
​ ⇒「ムム、ありがとう」 2009 年 10 月 18 日の日記 ​ 、

​ ⇒「ムムが逝った朝に見ていた夢」2009年10月23日の日記 ​、
​ ⇒「2匹がウチに来た日」2010年1月15日の日記 ​をご覧ください)。

気がつくと、
私たちを遠目に囲むようにして人だかりができていた。

地元のチベット仏教センターで通訳をしてくれている

M僧が近づいてきた。

愛犬たちがリンポシェに祝福してもらえた!と 喜ぶ私に
M僧は言ってくれたのだった。

「リンポシェはあなた方の犬たちだけじゃなく、

あなたたち家族みんなを祝福されたのですよ」、と。

「 Wonderful, Wonderful, Wonderful ! 」と

向こうから仏友、ヘレさんが駆け寄ってきた。

自分のことのように喜びながら私をぎゅっと抱き締めてくる。

ヘレさんは泣いていた。号泣

ダディンの病気のことを知っているから、私たち家族にとって、

リンポシェの祈祷に特別な意味があることを感じていたんだろう。

ヘレさんが泣いているので、私の涙腺まで緩んでしまった。号泣

白く聳え立つスチューパの向こうに
真っ青な空が広がっていた。

ポーポーとチャールスにも少しでも…と思っていたら、

2匹のお陰で、
私たちまで祝福を授かってしまったのだった。手書きハート


写真は我が家の愛犬、ポーポーちゃん(左)とチャールスで君です。

―続きは⇒​ 「山の行より里の行・・・④」 ​へ―



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Last updated  2018.05.05 16:01:20
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