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昼間バイクで馴染みの無い街に「あても無くフラリ」と走って来たんです天気がとても良くターンするきっかけも探す必要も無いような温度町外れに出ると空気のカーテンを突き抜けたような瞬間から少し肌寒くなり「調子に乗ると帰る頃には痛い目に会うな…」と家路を外れて1時間を過ぎたあたりで休憩いつの間にか建物も少ない山道のような場所まで来てしまっていたんです小さな「道の駅」の自動販売機で120円で買える温度を握ってようやく周りを観察出来る余裕が出来る頃バイクに座り山の方を見上げる男が一人それと少し離れた所に車を囲み世間話を楽しむ三人組トイレに向かって流れて行く家族達あとはまばらに車の中で休憩してる人達の車が4台ほどそれなりに賑わってる方なのかもしれない。そんな中で奇妙な事に気がついたんです。最初に意識した山を見上げてバイクに座っている彼…彼の周りだけ時間が止まってるように見えるのだしばらくしてバイクを彼の近くに移動すると音に気がついた彼が僕と目が合ったついでに軽く会釈をする人柄が充分に伝わる会釈で、返事がてらに彼に近付き「今日は暖かい方ですね、ツーリングですか?」と聞いてみる「ええ、一人でここまで来るのは久しぶりでなんとなく気の向くままです。」「僕もそんな感じで、」とても明るい方で少しバイク雑談していると突然寂しげな表情で「本当はいつもは四人で来るんです…」あっ…さっきの彼に戻った…って思ったんです「今日はどうしたんですか?」と質問してみると「実は…」話を整理すると彼(Aさん)は二年くらい前にバイクを購入して初めてのバイクの為しばらくは週末に家の近くをぐるぐる走るだけでそれでも充分楽しかったそうですやがてもっと離れた場所に行ってみたくなり恐いので国道を避けて山の方に向かって走ってる内にこの道の駅を発見したそうです道にも慣れ毎週のように通っているといつもお決まりの三人がそれぞれ駐車場に長居している事に気が付く同じバイク乗り。Aさんからそれぞれに話かけると意気投合購入時期や知識や初心者一人で走ってる不安も同じで運命すら感じた仲になったそうです毎月一度必ずここで待ち合わせて一緒に走る約束を守り人生こんなに楽しくなる物なのかとそれぞれ思っていたそうですそんな四人組の付き合いが一年を過ぎた頃少しおかしな事になって来たと言うのですそれまでノーマルで走ってた四人でしたがある日一人が「ミラーを変えてみないか?」って話になり、初カスタムに挑戦する事になりました四人それぞれ社外品ミラーを購入みんなで一緒に恐る恐る作業を始めたそうです途中ヤマハの逆ネジでてこずってダッシュで店に戻ったり今までに無かった新しい楽しみにみんな興奮してたそうです。そんな日々がしばらくするといつの間にか次の待ち合わせに装着した状態でみんなをビックリさせるような流れに変わって来て「凄いね一人で出来るんだ」などみんなで英雄を讃えるように自分の事のように喜び合ってたそうです。それぞれのカスタムの好みがハッキリして来た頃本格的におかしな事が会話に見えるようになって来たそうですまず付けてきたパーツを「これ付けてきたよ」と言わなくなり周りが気が付くまで不機嫌に知らん顔周りも気が付いているのに本人から言わない限り知らん顔そしてあんなに誉め合ってたのに「うん、ちょっと微妙かな」とか「まぁ定番だよね」などの台詞ばかりになり揚句は口論になる事も増えて来たそれぞれが知識を得るにつれて「仲間」から「ライバル」へ「ライバル」から「敵」になって行くような感覚を感じて来たそうです。Aさんが連絡係だったようなのですが「今月はやめとくよ、〇〇君が少し変だから」などそれぞれが理由を付けて来なくなり始めてついに連絡も途切れ今日にいたるそうです。「こうなっちゃうと、もうダメなんですかねぇ、楽しみたくて集まってたはずなんですけどねぇ、」ドラマのようなため息を横目に僕も今まで何度も同じような光景を見て来てるので沢山の言葉が溢れてきましたが「彼は大丈夫だな…」って思ったんです。彼は既に「バイクと人と自分の幸せ」と言うこれから長い間お世話になるであろう自分が何よりも気持ちが良くなれる為の公式のような物が出来上がってるように見えたんです。大好きなバイクがあって同じ温度の仲間が居てその上にポンと幸福を乗せる。それが揃わないと本当の意味では気持ち良くなれない。「バイクなんて実はお金を払えば誰でも手に入る物じゃないですか?バイカーなんて別に特別な人種な訳じゃないんですよね、人前で偉そうに語るような理屈や知識なんていう不純物は入れずに、ただ楽しむ、それだけでいいんじゃないですかね。」とだけ答えて何度も会釈され「今日はありがとう」と言われお別れしました。彼にまた楽しい日々が戻ってくるといいな…そしていつか彼の口から後日談が聞ける日が来たらいいな…なんて考えながらトップまで上げたギアに1センチ程度のアクセルを乗せてのんびり家路に戻るのでした。多分また僕は数週間後、それとも数ヶ月後、フラリと彼を意識しつつそして大きな期待は持たずに、あの場所に訪れるんじゃないかと思います。熟練ライダーがよく言う「あても無くフラリ」の「あても無く」は実は 人に話す程でも無く例え何も無くても構わない程度の一握り程度の小さな「あて」ならあったりするんですよね。そしてその「小さなあて」が僕ら「あても無くフラリ」をベースにしているバイク乗りにはとても大事だったりするんですよね。もちろん人に話す程の物では無いんですけどね。
2010/07/24
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