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こうした中、独自の仕組みや工夫によって
障害のある従業員の定着やキャリア支援に
取り組んでいるのがまいばすけっとです。
同社では2021年以降、
入社1年後の職場定着率が97~100%
という高い水準を維持しています。
背景には、
採用前の実習やコミュニケーションの工夫など、
現場の業務に根差した取り組みがありました。
同社の障害者雇用をリードする、
まいばすけっと 管理本部
人事戦略部の石田康晴部長と吉田稀春氏、
障害者採用枠で入社し、
現在は正社員となった板倉信也氏、
現場で障害のある従業員の
チームリーダーを務める方に話を聞きました。
聞き手は人事業務や法制度改正を研究する
Works Human Intelligence総研リサーチの研究員で、
社会保険労務士の井上翔平。
井上: 障害のある従業員が担当する業務について教えてください。
吉田氏: 以下の3つのチームで分担して進めています。
中でもメインとなるのがキャラバン隊です。185人(2026年8月現在)が在籍し、65店舗をカバーしています。3~8人のチームで各店舗を巡回し、商品の陳列を行っています。ランドリー隊、クリーニング隊にはそれぞれ6人が在籍しています。
井上: さまざまな業務がある中で、障害のある従業員に店舗の品出しを任せることになった経緯を教えてください。
吉田氏: きっかけは店舗の負担軽減でした。 午前中に商品の荷下ろし、開店作業、品出しが集中するため、従業員にとって大きな負担になっていました。これを解消するため、障害のある従業員で品出し専門のチームを立ち上げました。
石田氏: 品出し以外にも、事務職や物流センターの業務も候補に上がっていました。しかし、将来的に雇用規模を拡大することを考えており、業務の拡張性などから店舗作業が最も適していると判断しました。
品出し業務はもともと、
パートやアルバイト向けに標準化・マニュアル化が進んでおり、
業務の切り出しや習得がしやすいという利点もありました。
さらに、当社は
ドミナント出店というビジネスモデルのため、
店舗間の移動がしやすく、
チームで店舗を巡回するキャラバン隊
という仕組みがマッチしました。
こうしたキャラバン隊の実績が社内で評価され、
その後のランドリー隊、
クリーニング隊の立ち上げへとつながっています。
井上: 長く働いてもらうための工夫や取り組みについて教えてください。
吉田氏: 入社後のギャップや不安をなくすため、正式な採用前に職場見学会と実習の機会を設けています。
職場見学会では、社員と会話する時間を用意しています。
熱心にメモを取る方、じっくり話を聞く方など、
一人一人の個性やコミュニケーションの傾向が見えてきます。
事前に特性を把握しておくことで、
実習時にもそれぞれに合わせた関わり方ができるようになります。
まいばすけっと 管理本部 人事戦略部 吉田稀春氏
井上: 実習はどのくらいの期間、どのような内容で行うのでしょうか。
吉田氏: 期間は3週間で、実際の店舗業務を体験してもらいます。以前は5日間でしたが、無理なく働ける環境かどうかしっかり確かめられるよう、現在の期間に延長しました。
実習では、商品の荷下ろしや賞味期限の確認、陳列といった作業に加え、お客さま対応やチーム内での相談など、コミュニケーションも含めて実際の業務をそのまま体験してもらいます。
リーダー: 私もこの実習を受けて入社しました。当時のチームのリーダーが親切に教えてくれたので「まずは先輩たちの真似をすれば大丈夫だ」と思えたことが安心感につながりました。実習のおかげで、入社後も不安なく業務へ入れました。
実習を設けることで、入社後のギャップを減らす
井上: 実際の現場で、業務を進めやすくするための工夫はありますか。
吉田氏: 例えば飲料は白、お菓子は黄色というように、商品分類と色をひも付けています。色で店舗での作業場所、つまり商品の陳列場所を表現しています。
【訂正:2026年10月2日17時4分 一部事実と異なる箇所があったため、追加取材により事実に合わせ記事初出時から表現を改めました。】
井上: どのようなサポート体制を構築しているのでしょうか。
吉田氏: 専任担当者が定期的に店舗を訪問してメンバーの状況を確認・共有しています。フォローが必要な場合は人事の担当者も現場へ出向いて対策を講じています。入社後3カ月間のトライアル期間中は毎月、それ以降も定期的に面談を実施しています。
井上: キャリアアップの仕組みについて教えてください。
吉田氏: 入社半年が経過すると「リーダーを目指すコース」か「メンバーとして働くコース」か選択できます。 リーダーとして1年経験を積むと、正社員登用試験の受験資格が得られ、これまでに4人の正社員が誕生しました。
正社員になるとキャラバン隊の採用や勤務シフトの調整など、現場全体の管理業務が中心になります。複数の業務を並行して進めるマルチタスクが求められるため、登用選考の段階でそうした業務への適性をしっかりと見極めています。
板倉氏: 私は10年の現場経験を経て、正社員登用1期生となりました。自分が現場で経験してきたことをメンバーに伝え、誰もが安心して働ける職場を作っていきたいです。
障害者採用枠で入社し、現在は正社員となった板倉信也氏
吉田氏: 正社員登用制度を導入して以降、職場見学会への参加者が年間200人から300人に増加しました。また、3週間の実習を導入したことで、以前は約80%だった1年後の職場定着率が、現在は97~100%に向上しています。
石田氏: キャラバン隊が品出しを担うことで店舗スタッフの作業時間が削減され、店舗全体の生産性向上につながっています。
今回の取材で見えてきたのは、
まいばすけっとが
高い定着率を維持できる背景にある3つのアプローチです。
採用前の3週間の実習を通じて、
業務適性や職場の雰囲気を事前にしっかり確認できるようにし、
入社前のミスマッチを防いでいます。
入社後も作業手順だけでなく、
職場のルールや細かなコツをチームリーダーが
現場で指導することで不安を取り除き、
業務に取り組めるようにしています。
業務中は商品カテゴリと色のひも付けや、
写真付きマニュアルなどの工夫を用いて
感覚的な業務理解と効率化につなげています。
さらに、専任担当者や人事担当者が定期的に巡回することで、
困りごとを一人で抱え込ませない環境を作り、
心理的安全性を確保しています。
また、全員に一律の道を敷くのではなく、
それぞれの目指す姿に寄り添った柔軟なキャリア設計も重要です。
正社員登用という次のステップに挑戦できる環境に加え
「現場メンバーとして長く働き続ける」
という選択も尊重されており、結果として
「この会社で長く貢献したい」
という前向きな定着につながっています。
まいばすけっとのような、働く人の感情に寄り添い、
一人一人が活躍できる環境を整えるアプローチは、今後の障害者雇用に取り組む
多くの企業のヒントになるのではないでしょうか。

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