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4つのとげを持つバラ

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2007/03/19
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カテゴリ: 寓話
絆



ふと、こんな話を思いだした。
今昔物語の中での話。

紀長谷雄という文人がいた。

彼は天才的な歌詠みであったらしいが、世事には疎く当時疎外されつつあった菅原道真と親交があったりして、ま、いわば「 マイペース」人間であったらしい。

その彼が、ある夜更け、道を歩いていたときのこと。

朱雀門の辺りを通りかかった時、上から不思議な男の声を耳にする。

破鐘のような声・・しかし繊細な流れるような歌の調べ。
不思議な声が朗々と歌を吟じているのを聞くうち、気がつくと彼も歌を唱和していた。
で、歌比べに発展するんだな、これが。


 時を山間に等しくし色を砂蹟に同じくす」

「地に凝っては、わづかに馬蹄を没し
 庭に満ちては、暫くに鳥跡を封ず」

・・・・。


春雪の賦のやりとり、歌と歌とのバトル・・。

鬼と長谷雄は歌比べをして、長谷雄は激しいバトルの末、鬼をうち負かす。

鬼は歌比べに負け、負けた代償に長谷雄にあるものを差し出す。

長谷雄が目にしたものは・・・。

うら若いふっくらした上品な美女が立っていた。 長谷雄は心を奪われてしまう。

彼は女を家に連れて帰る。

鬼は別れ際に一言彼に言う。



長谷雄は根気よく待ち続ける。
辛い・・(笑)

そんな長谷雄の気持ちを知ってか知らずしてか、女はかれに甘い囁きを投げかけ、彼の心を悩ます。

しかし100日は彼女をこの手で抱く事はできない。
懊悩する長谷雄。



女は、「水」となって溶けてしまった・・。

99日目の夜のことだった・・。


鬼はそれを聞いて慟哭する。
「あれは、俺の一代傑作だったのに・・。」

鬼は悔しがる。
「あの女は、死人から作ったんだ。死人の美しい部分を寄せ集め、つぎはぎしてつくったのに・・。髪の美しい女からは髪を、眼の美しい女からは眼を、熱情的な女からは熱情を。100日経てばそれは現実のものになる筈だったのに・・。」


そんな話を思いだした・・。


死人からつぎはぎされて形を、命を吹き込まれた女・・水の精。
女はそんなものなんかなぁ、って思っている。
つぎはぎ・・・色んな人間のエッセンスを糧に「今の姿」を作りあげている・・一種の作品なのかもしれない。

死人(様々な過去での出会い)の、先人の美しさを養分として、生きてきた女・・・。

私もそういう意味では「水」の精なのかもしれない。
様々な人間の美しさに触れ、感じ、自分の中にしみ込んでいった観がある。

そんな女。

100日経たないと「水」になって溶けてしまう・・・。

それは、「時機」なんだろうなぁ、きっと。

100日の猶予期間の間に、長谷雄は何をしなければならなかったか。
長谷雄は、女との間に「絆」を作らなければならなかったんだろうな。
長谷雄は、女との間に「世界」を作らなければならなかったんだろうな。
女の髪を現実のものに
女の眼を現実のものに
女の顔を現実のものに
女の手足を現実のものに
女の心を現実のものに

一つ一つ現実とつなぎあわせていく、女を抱いても「夢」として溶けていってしまわないような・・。

女を抱く・・ここでは象徴的な意味で表現。
いわば「おつき合い」すること。

言ったら、それは「スタート」であるんだけれど、どうも一般的には「ゴール」と捉えられることの方が多いと思う。

女にしてみたら、つきあってからの方がより綿密に絆作りに細心の注意がいるものだと思うんだけれど、どうも一般のお殿方は考えが違うものらしい・・。

ま、これは狭い私の中での関わった人間の類型だから、「一般的」という表現は不適切かもしれないけれどね・・。

100日という日数が象徴するものは、きっと「抱いた」後に「水」となって流れてしまう関係なのか、「生身」となって横に寄り添える関係なのか、その間の「関係」の「編み込み」期間なんだろうね。

100日も額面通りの100日ではなくて、二人の今後の関わり合い方によって、それは1ヶ月かもしれないし、10年かもしれない。


鬼の慟哭が私の心に響く。


私は、長谷雄であるかもしれないし、「女」であるのかもしれない。これまでの恋愛体験・・みんな「100日待てなかった」恋愛であったのかもしれないから。

そして100日経った後、「水」とならないような・・・そんな絆作り・・・。

そんなことをしみじみ考えている・・・。







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Last updated  2007/03/19 10:48:00 PM
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