全132件 (132件中 1-50件目)

「いつも一緒にいられないから、いつもこれをつけていてね。心だけは一緒に寄り添っているからね。」そう言われて「サトちゃん、嬉しいけど寂しいよ。いつも一緒にこうしていたいよ。」そうわがままを言いながら暖かい胸に顔をうずめた。それもかなり遠い記憶になってしまったのはどうしてなんだろうか・・・2年前にあるプロジェクトのお誘いをいただいていたが、私は彼との逢瀬でそれどころではないと断った。P社のお誘いさえ「ごめんなさい」と断るほどだったのに。それはきっと恋に「溺れていた」んだろうなぁ。何もかも捨ててもいいと思うくらい深く深く・・恋していたんだろう恋を失ってから出会いはあったけれど、そこまで夢中になれるようなものではなかった。きっとサトちゃんとの恋で私は恋を堪能しきったんだろうと思うとはいうものの、サトちゃんに対しても今はもうあまり生々しい感情は抱けないあるのは懐かしさとほろ苦い思い出とという思いを抱えながら、返事を凍結していたプロジェクトのお話を改めていただいた時、すんなり「はい」と答えられたのは、私の中で何かが変わってきているのかもしれない。すでにプロジェクトは始動しているので、私は一部担当させてもらうことにした。・・がんばらなくっちゃね^^このサイトはそれなりに役目を果たしたと思います。少し絞りたいので、これからは「ミクシィ」と「ママ」の二つで。ここも気が向けば不定期に更新していきますね。
2007/05/01
コメント(0)

昨日は友人の結婚式でした。みんなと集まるのは2年ぶりのこと。・・・しかしみんなちっとも変わっていなくて少しほっとしました。Aさんはめでたく結婚してSさんに。Aくんは不登校カウンセラーに。Yくんは彫金の勉強に。私は・・・現状維持。久しぶりの同窓会みたいになって話が弾んで楽しかったです。
2007/04/30
コメント(0)

一途さを求めるには自分も一途でないとね蜘蛛の糸を投げかけて必死に登っている間はいい下の罪人に眼を向ける余裕があったなら先に登りきってしまえばいいのに中途半端に目を向けるから『夢中になれるような恋がしたい。あなただけをずっと思っていられるなら楽しい人生が送れそうな気がします。私と一緒にあいてる時間を』
2007/04/28
コメント(0)

幸せならそれでいいこれからいい人生を生きていてねただそればかりそう思いながら私は何人の人に手を振っただろうか年老いてやがて私もいずれは手を振られて見送られる立場になるのだけれどそう思われながら手を振ってほしいといつも思うただ触れてほしくない領域には触れてほしくなかった
2007/04/26
コメント(0)

2007/04/17
コメント(0)

2007/04/16
コメント(0)

失くしたくない想い消したくないからそっと閉じ込めておこう
2007/04/15
コメント(0)

2007/04/15
コメント(0)

呼びかけて振り返った人は私が思っている人ではなかったひがおぼえ勇気を出して呼びかけたのに少し違う人だった
2007/04/14
コメント(0)

2007/04/13
コメント(0)

見えないくらい遠くを見つめちゃいけないけれど少しだけ遠くを見つめて心を穏やかにしたほうがいい
2007/04/12
コメント(0)

どうしていつまでもあの人のメールを消さずに持っているのだろう私のブログに毎日同じ時間に足跡を残しているあの人の出勤前に帰宅した後に残す足跡にそんなあの人の生活が手に取るようにわかるだけに消せない思いで私の心はまたさやさや揺れる
2007/04/12
コメント(0)

一生懸命生きている
2007/04/11
コメント(0)

この道の先にあるものに私は期待と不安を抱きながらこの道を少しずつたどりながら生きて行きたい
2007/04/11
コメント(0)

「また来年も見においで」そう桜は笑って枝をゆする来年の桜は今年の桜とは違うことがわかっているけれど私も笑いながら「ありがと」と返事する桜は桜でも去年の桜じゃない去年の桜を物悲しく思い出しながら今年の桜の美しさに心奪われる来年もまた今年の桜を思い出しながらその美しさに心奪われるのだろうそうやって生きていくんだろう桜も私も
2007/04/10
コメント(0)

青い空だから雲一つない空だから希望でさえ不安でさえ吸い込んでしまいそうなそんな青い空だから
2007/04/09
コメント(0)

雪のような花が舞う私の心にも降り積む華の雪(ちょっとブルーかけてみました^^)
2007/04/08
コメント(0)

2007/04/07
コメント(0)

毎日の水やりと毎日の日光とただそんな些細な積み重ねが今は一番嬉しかったりする
2007/04/04
コメント(0)

花は無心に咲くから美しい禅宗の言葉にそういう言葉があったのを思い出す作らない作らない自分を飾っちゃいけないそう自分に言い聞かせながら
2007/04/03
コメント(0)

一通の手紙がひっそり郵便ポストの中に入っていた中に入っていたのは桜の花色の封筒と懐かしい香り封筒をあけてみると一枚の便箋に一言だけ書いてあった「あの桜をまた見に行きませんか」この人はひとつの文章に多くの思い出を乗せるすべを知っている私は手紙を開きながら過去に遡行していた
2007/04/02
コメント(0)

梅雨と梅雨の間の中休みの日だった。久しぶりに晴天が広がりすっきりとした感覚を抱かせる。庭の沙羅双樹の白い花が開きそれが光を浴びて照り映える。夏の到来を思わせるかのような日だった。午前中来客があった。去年までこのホームに入所していたおばあさんの家族の方だった。ここを通りかかったら懐かしくなってつい立ち寄ってしまったのです、そう話された。ホームの建物を懐かしく見回しながら「ここでお世話になっていたんですよねぇ。」と仰られた。応接室に通し、暫くお茶を飲みながら思い出話をした。話をした後「また寄りますね」そう笑顔で言ってここを後にされた。私は玄関で見送りながら彼女の姿の上に彼女のおばあさんの姿を思い出していた。私は事務室に戻り机の引き出しを開けた。取り出したのは、一枚の栞。それを見るたびに先ほどの彼女のおばあさんのことを思い出す。思い出の栞だ。少し黄ばみかけた紙の向こうに彼女の笑顔が見える。この栞をくれたそのおばあちゃんとは、私がここに勤めだしてすぐの頃出会った。94歳の彼女は肺を患っていた。動くと息が苦しくなるのでほとんどベッドの上で休んでいた。限られてしまった生活に不満も言うことなく、彼女は静かに人生を送っていた。気むずかしくて我が儘だとみんなからいわれていた彼女だったが、不思議と私とは気があって仲良くお喋りをしては笑っていた。「あぁ、来てくれたのね」そういって何ともいえないいい笑顔をしてくれた。訪室すると、彼女は決まって日露戦争に出征した海軍中尉の父の話を良くしてくれた。お父さんっ子だった彼女は、地元の有志である父の晴れやかな姿を生き生きと話してくれる。女学校の来賓として出席する父の姿を見つけて小さく「おとうさん」と呼ぶと振り返りにこっと笑ってくれて嬉しかったこと。「あの方があなたのお父様なの?」そう級友に羨ましがられちょっぴり鼻高々だったこと。どんなに凛々しい父で、その父に褒められるとどんなに嬉しかったか、ぽつぽつと話をしてくれた。話すときの彼女は94歳ではなく、10歳の小さな少女に戻っていた。彼女が見せてくれた古い写真に写っている髭を生やした精悍そうな男性。直接繋がりはないのに、私はその中の男性と何回か会話を交わしていたような親しみを感じた。「本当に自慢の父だったのよ。私は大好きでねぇ、早くに亡くなってしまったけれど、たくさんの思い出をもっているわ。」ある日彼女と話していると質問をされた。「あら、可愛いネックレスね、どなたかに頂いたの?」私は、生き別れた母親がしていたネックレスだと答えた。これをしていたら、私をかわいがってくれた母の事を思い出す、と。彼女は、答えを聞くとベッドに体を横たえながら、遠くを見るような目つきをした。「いい想い出ね、私も思い出すわ・・。」静かに彼女は話し出す。「私の父は私が10歳の時に亡くなったの。当時私は悲しくて、悲しくて。よく学校の帰りにね、お墓に立ち寄ったものよ。あの頃お墓っていっても、大きな室みたいなところでね、大きな岩の扉を開けると中に入れるの。こっそり入って中の薄暗い所を歩いていくと、父のね、骨壺がおいてあるの。あれをしっかり抱きしめてね、静かに目をつぶってたわ。いつも一時間くらいだったかしらね、その間はお父さんと一緒にいられるような気がしてたわ。」お下げを結った少女が、墓室で父をしのんで骨壺を抱きしめている・・。その気持ちが私には痛いくらい伝わってきた。普段の彼女の話す父親に対する愛情を思い出したからであった。しかし一方で決して感傷的にもならず、決して後ろ向きに考えるでもなく、ふたりの想い出を純粋に懐かしんでいる。そんな感じもした。ふと彼女は、夢から覚めたように辺りを眺め、ふわりと笑った。「おかしいわね。94年間生きてきて、初めてこのこと貴方に話したわ。自分でも忘れてた位遠くになってしまった想い出だったのにね。」そんな彼女に私もつられて笑った。「私のネックレスも、おばあちゃんの骨壺と同じなのかもしれないね。ものには、魂が宿るっていうけれど、ものには、想い出も宿るものなのかもしれないわね。」天井を眺めていた彼女は、ふと思いだしたように起き上がって、たんすの引き出しを開けた。中から和紙で組まれた栞を取りだした。「私が作ったの、来たらあげようと思っていたの」赤とピンクの和紙を三つ編み状に組み紐のように編んだ小さな栞だった。「ありがとう、大切に使わせていただくわ」私がお礼を言うと彼女は照れたように笑った。その笑顔と彼女の少女の頃の笑顔が重なったように思えた。はにかんだ笑顔だった。それから夏休みで長期休暇を取り、暫く仕事から離れて楽しんだ私が久しぶりに職場に復帰したとき、初めて彼女の訃報を知った。あれから暫くして容態が悪化したらしい。眠るように息を引き取ったと聞いた。私に残されたのは、一枚の栞。栞を見ると、彼女が、彼女の父親が、骨壺のことが、今も鮮やかに思い出される。栞には、彼女の魂が、彼女の想い出が込められているんだと感じている。そう思いを巡らせながら先ほどのおばあさんのお孫さんの言葉を思い出していた。「あの頃はどうもいろいろお世話になったみたいで、ありがとうございました。うちのおばあちゃんはね、それはそれはあなたの事を気に入っていたみたいでねぇ、行くとよく話しをしてくれたんですよ。」聞くとどうやら、廊下で気分が悪くなったおばあさんを背中におぶって部屋まで連れて行って寝かせたことが嬉しくて何度も家族に話をしていたらしい。「ここにはねぇ、顔は可愛いのに怪力を持つ看護師さんがおってねぇ、私をおぶって部屋まで運んでくださったのよ。おぶってもらうだなんて・・小さい頃お父様におぶってもらって以来してもらったことはないのにねぇ。」そういっていたらしい。あなたが怪力の看護師さんですかと笑われた。私は急に胸が切なくなって苦笑いして「そんなこともありましたね」と答えた。そんなことを思い出しながら私は、人間が本当に死んでしまうのは心臓が止まった時ではなくて人の記憶から忘れ去られた時だ・・そう誰かが言った言葉を思い出す。そう・・人の心に人間は生きていられるんだ。私は寂しくなるとそれを思い出す。
2007/04/02
コメント(0)

怖い夢を見た。新しい家に住むことになる。そこの雨戸はがたがたでしまりにくい。一生懸命直しているうちに子供が外へ飛び出していってしまう。ビニール製の大きな浮き輪を持って。ふと気がつくと子供がその中に入り込んでいる。動く浮き輪が跳ねて・・風にあおられ宙を舞う。私は「あっ」と思ってそちらへ駆け出していく。子供が入った浮き輪が落ちたところは人がたくさんいるところで落ちてきた浮き輪をみて一人が拾い上げる。そして・・フリスビーのように浮き輪を投げた・・・。「やめてー!!中に子供が入っているの!!!」声を限りに叫ぶが群集の雑音にかき消されてしまってみんなの耳に聞こえない。落ちては投げられ落ちては投げられ・・・中にいた子供は脳挫傷で・・・!!!!!汗びっしょりになって目を覚ましながら、これは不安夢だと思った。今日から新学期が始まる。親子二人三脚で走るのだけれど周りにどうアピールしていったらいいか・・振り回されそうな予感に怯えているのかもしれない。
2007/04/02
コメント(0)

生きているからその美しさがありその無心の生き様は見る人に共感を覚える作り物、演出されたもの、加工されたものより自然な姿に惹かれるのは私自身が飾る必要性を感じなくなったからだろうか鎌がちぎれて傷だらけの蟷螂が夕日に向って笑っているような気がした
2007/04/01
コメント(0)
小さな四角い窓から見える空。 部屋から時には澄み切った青空が、時には黒く沈んだような雨空がその表情を変えて眺めることができる。 小さな窓からしか外を眺めることができない人がいるとしたら、その人はいつもどんなことを思い、どんなことを夢に見るのだろうか。 もうその部屋から出ることもなくこのまま人生を送っていくのだとしたら、その人は何を求めて生きていくのだろうか。 その部屋からもう45年も出た事のない人がいた。 60歳、男性、慢性関節リウマチで床上生活。自分では寝返りすらできない状態。彼は療養型の病院でずっと暮らしている。 15歳の時に発症してから45年。60歳になる今まで外にでる事なく過ごしてきた。身よりはなく、ただ親の残してくれた遺産だけがたよりの身の上である。 彼の日常は病院のベッドで目を覚まし一日をここで過ごしあたりが暗くなり一日の終わりを告げるころ眠りにつく。 彼は頭を右に振った場面と左に振った場面しか見ることはできない。 彼の右側に小さく四角い窓があった。 彼はよく窓の方を見ている。 「何を見ているの」そう訊いても面倒くさそうにううんと首を振るだけで、答えはしなかった。 彼は、いつも諦めたような表情をしていた。 しかしその表情の中にはちらりと光る火花のようなものが感じられた。 命の迸りのような熱さを感じさせるような火花だった。 彼と出会ったのは、私がその病棟に配属されて1週間目の事だった。 彼は自分の人生について投げやりな言動を繰り返していたが医療従事者に対してはかなり厳しい意見を吐いた。 体の向きの変え方が乱暴だ、体もきちんと拭いてくれない…そんな不平から、スタッフがおざなりの言葉しかかけてくれない、気持ちがちっとも伝わらない…そんな寂しさも訴えたりした。 言葉が乱暴なのでスタッフの間では密かに嫌われていた。 「体を拭きに行ったら、もうあんたなんかこなくていい、そう言われて手を振り払われたのよ、サイテーよね。」 そんなスタッフの声も時折聞かれた。 私はなんて気むずかしい人なんだろうと思い少し気が重くなった。 何を言われても受け流すしかないよね、相手は病人だし、と考えながらドアをノックした。 コンコン。 扉の向こうから返事をする声が聞こえた。 私は思いきってドアを開けた。 中にはいると黒目がちの丸顔の中年男性がベッドに横たわっていた。 「こんにちは」 そう挨拶をすると男性は私の顔をちらっと見ながら吐き捨てるように言った。 「また新人か、やだなぁ。またむちゃくちゃされそうだ」 これが初めての挨拶だった。私はむっとしながらも心のなかで「病人病人」とこっそりと呟いていた。 なんて失礼な人なんだろうと密かに苦手な気持ちを抱いたが黙っていた。 初対面の印象はお互い最悪だった。 しかし次第に話をするうちに乱暴な言葉の中に見え隠れする子供のような無邪気さが伝わってくるのが感じられた。 人に気持ちを伝えるのに抵抗がある。 人と話をしたいのに素直に話すことができずにいる。 それは、好きな女の子をからかってしまう少年を彷彿させるかのようだった。 そう・・彼はいろんな思いを伝えたいのだがなかなかうまく伝えることができずにいる。 彼にとって外とは、四角く切り取られた空が見える窓と無機質な部屋のドアの向こうでしかないのだ。 彼は40年間寝たままでただ訪れる人を待つだけの生活を送っていたのだ。 自分からは追いかける事もできず、ひたすらされるがまま、言われるがままの生活を送らざるをえなかった状況。 彼は訪れる人に対してどういう思いを抱いていたのだろう。何を望んでいたのだろう。 私には彼の思いが遠くにあるようでなかなか掴み切れずにいた。 難しい。 そう思った。 彼と知り合いだして半年くらい経ったころだろうか。 彼一流の毒舌も彼なりの親近感の裏返しであるという事、彼の「出ていけー」と拒否して怒鳴る声も実は恐る恐るで「何を言ってるの」と軽くたしなめられたがっている事の裏返しであるというに気がつきだしてから私は、彼とのつきあいに気負いがなくなったような気がした。 言葉の裏にある哀しみ。 言葉の裏にある寂しさ。 うわべだけの言葉からは決して伺うことのできない人間的に素直な感情が彼の表情の一部に見えたような気がする。 彼は子供なんだ。 彼は大人の姿をした子供なんだ。 そう思うようになった。 ある日彼は「なぁ、杏樹さん?酔うってどんなことなんや?」と不思議そうに訊いた。 私は「お酒を飲んだ事がなかったんやねぇ。酔っぱらったら、なんともいえないいい気持ちになるよ」と言った。 彼は「いいなぁ」とぽつりと言った。 彼は窓の外を眺めながら「いい気持ちになったら、いやなことも忘れられるんやろなぁ」と言った。 私は「ねぇ?今いやなことがあるの?」と訊いた。 彼はううんと首を振りながら「いや、特にない」と言ってまた思い直したかのように言った。 「僕はいつもいやな夢を見ているような気がする。醒めない夢。一生ここに縛り付けられているという夢。こんな悪夢を見ながら一生を終わってしまうのか。」 私は返す言葉を失った。 彼はさらに続けた。「酔っぱらったら夢から醒める事ができるのかなぁ。少しでも悪夢を見ているという今を忘れる事ができるのかなぁ。」 彼は私に言った。 「一度だけ酔ってみたいんだ。ねぇ、お願いだから一度だけ僕を酔わせて…」 翌日私は部屋に入り彼に目配せをした。 「いいもの持ってきたよ~なんだと思う?」 そう言いながら私は白衣のポケットから小さな缶ビールをとりだした。 彼は「あっ!」と小さく呟きにっこりと笑った。 「杏樹さん。」 私たちは秘密の隠れ家にいるような気分になった。 誰かが入ってきたら怒られるよねと話しながらくすくす笑った。 「これは絶対秘密だからね!」 約束げんまんをして私は缶ビールにストローを差し彼の口許に持っていった。 小さな缶…125ミリリットル。 彼は少し顔をしかめながら飲み干した。「どう?」 いたずらっぽく笑う私に彼は言った。 「なんだかふわぁっとしてきたよ。」 私は気分が悪くなったのではないかと心配になり彼の顔を覗きこんだ。 彼は笑った。 「ありがとう、なんだか嬉しいよ」 今まで見たことのないとびっきりの笑顔だった。 私もつられて笑った。 彼の体はほとんど自分で動かすことができなかった。 肘は拘縮しほとんど曲がった状態から動かずまっすぐに伸びなかった。 彼の日常はテレビとたまに入ってくる訪問者との会話で占められていた。 便意を感じてもそれを自分で処理することはできない。 当然ナースコールを押して知らせるのだが、来る人によっては「またか・・」というような顔をしながら面倒くさそうにおむつ交換をする人もいるらしかった。 「何回も呼ばないでよね、オムツだから後でちゃんと替えにくるんだから」 そんなことをいう人もいるんだと彼は寂しそうに笑った。 「人生そんなものさ」 そういいながら今にも泣き出しそうな表情を浮かべている彼を見ているのは辛かった。 彼のいつも遠くにある視線の行方が少し私にも見えたような気がした。 しかし何の慰めの言葉も彼にとっては気休めとか嘘にしか聞こえないという気がして私は何にもいえなかった。 「まぁ、しゃーないことなんかなぁ。」 そういうしかなかった。 そんなやり取りをしていて彼と何だかもっと話がしたいと思った時のこと。 私は彼の部屋を訪れた時彼が泣いているのを発見した。 一人で静かに泣いている・・。 布団だけが小刻みに揺れている。 音もなく身じろぎもせず、ただ声を殺して泣いている・・。 暫くして彼の大きな体はふぅっと力が抜けたように静かに動かなくなった。 何か、魂のようなものが抜けていったような、そんな感じだった。 そんな姿に私は声をかける事ができずにいてドアをそっとまた閉じた。 何か悲しいことがあったのだろうか。 彼はドアに背を向けて頭は窓のほうを向いていた。 彼の姿はシルエットのようになって布団の形だけが妙に私の脳裏に焼きついていた。 どうして泣いていたんだろう・・。 そんな疑問が私の心の中で渦巻いていた。 数日して私は彼の部屋で検温をしていた。 すると彼は小声で私を呼んだ。 「杏樹さん?」 どうしたのと私は彼に訊いた。 「便が出てしまったみたいなんだ。」 そう彼は恥ずかしげに言った。 「ん。分かった。いいよ。お湯を持ってきて洗おうか。」 私は彼に言いながらお湯の準備をした。 「便なんて毎日出なきゃいいのに」 そう悔しそうに言う彼に私は言った。 「何言ってるの。毎日出さなきゃだめよ、生きているんだもの、仕方のないことよ。こんなことで遠慮しないでよ・・あ・・でも気を遣っちゃうよねぇ。」 私は便をふき取り、お湯でお尻を洗おうとした。 お湯をかけてそっと洗い流す。 ふと目に入ったものに私は軽く息を呑んだ。 見る間に中央に存在するものが硬く大きくなっていたのだった。 私は知らない振りをして、あまり触れないようにお湯だけをかけるようにした。 「もういいよ・・。」 弱々しげに呟く彼に私は無言で簡素に作業を続ける。 内心私も早く終わらせたかった。 このままではまずいことになるのでは、そう思った。 そうこうしているうちに突然彼は叫んだ。 「あ!い、痛い!お、おしっこがもれる!」 そう叫んだ瞬間彼の顔は真っ赤になった。 「あ・・だめだ・・。」 するとその瞬間大きく屹立したものの先から白く透明な涙がでた。 「う・・」 大きな吐息の後に彼の肩が小刻みに揺れる。 彼はうわごとのように「おしっこが・・」と繰り返し叫んでいた。 私は何も言わず涙をティッシュでふき取った。 彼も無言になる・・。 なぜだか数日前に眺めていたかれの布団の丸い山の揺れ方を思い出した。 ひっそりと、しかし小刻みに揺れている・・。 あれは・・。 私は黙って部屋を後にした。 少し頭が混乱していたのかもしれない。 あれはきっと・・・。 衝撃的だった。 慣れていなかった・・といい訳したくはないがしかし驚いた。 変な話これまで彼に「男性」をほとんど感じなかったというのもあったからかもしれない。 私にとって男性でも女性でもない性を超越したかのような人間であったのだから。 私は自分の心の動揺が抑えきれなかった。 今見た自分の中の映像が繰り返し脳裏を掠める。 真っ赤な彼の顔。 「痛い・・」そう叫んだ彼の声。 彼が涙を流した後の萎えていく様子。 「ねぇ、聞いて・・。」 私は思わず同僚に今しがたの光景を話したのだった。 翌日出勤すると同僚がニヤニヤしながら私の傍に来た。 「おはよう。昨日は災難だったね。ちゃんと言っておいてやったよ、変なことを考えてやらないでやってくれってね。」 そういって同僚は私の肩をたたいた。 私はその言葉を聞いた瞬間目の前がすーっと暗くなっていくのを感じた。 あの話を彼女は彼にしてしまったんだ・・。 私は気持ちが深く落ち込んでしまうのをどうすることもできなかった。 彼は知ってしまったのだ、あの場面でのことを他人に喋ってしまったということを。 迂闊に他人に話してしまった自分の浅はかさを呪った。 彼の信頼を踏みにじったかのような自責の念にかられた。 彼の寂しそうな表情が浮かんできた。 申し訳ない・・心が痛んだ。
2007/03/31
コメント(4)

「今何時」 そう聞かれて 「ビーフ味」とか「ちょっとまってってって~」 そんな風に答えてしまう自分が空しい。 歩きながら 「私はかわいいタマゴメン~」 などと歌ってしまう自分がやるせない。 おやぢギャグを連発して 「はあ?」 廻りにそんな顔をされて 焦りながら笑う自分が哀しい。 おやぢな自分。 僕はいつのまにおやぢになってしまったのだろう。。。
2007/03/30
コメント(0)

あなたが生まれてきてくれて嬉しかった死んでまた生き返ったらきっとまたあなたを産みたいと思います私を親に選んでくれてありがとう障害を持つあなたはこれから生きにくさを感じるかもしれないけれど精一杯応援します生まれ変わっても私の子供でいてね・・・
2007/03/29
コメント(0)

気を張ってがんばっていますけれど・・・もう限界体は元気なんですけれど、精神的にかなりきつい・・この3ヶ月で残業だけで150時間越えそうです次から次へと起こるトラブル、クレーム処理王様うぬぼれ男呑み助実業屋点灯夫探検家・・・きつい状況だ・・・だからたまに現実逃避してお姫様になりたくなったり知恵の足りないぶきっちょさんになりたくなるもんだわさ
2007/03/28
コメント(0)

あなたは‥ あなたは今頃どうしているのでしょうかしら あなたへと続くこの青い空をぼんやりと眺めています しみるような空の青さに私はは少し眩暈を覚えました あなたは相変わらず 元気に働いていることでしょうね 日に焼けてつぶされたような帽子を被って うなじの髪が絡むタオルで汗を拭きながら いつものように はじけそうな笑い声をたて こぼれそうな笑顔を浮かべ 太陽の申し子のように・・ね。 あの頃は・・ お互いが若すぎて見えませんでしたよね。 お互いが若すぎて歩み寄れませんでしたよね。 駆け足で遠ざかっていった二人の恋は 代わりにやるせなさを置いていってしまいましたけど。 あなたは別れる時笑顔をみせたでしょう? 私は哀しくてどうしても笑えませんでしたのに・・ どうして笑えたのですか?あなた・・・。 あれからもう10年以上たつのですね・・。 二人で歩いた景色も建物もみんなみんな変わってしまいましたのよ・・。 でも・・・やっと 感じることができましたわ、今になってやっと、ね あなたの笑顔に隠されたあなたの真剣な想いに、ね 桜吹雪が舞い降り別れ色の空気が春着を纏うなか 恋が骸に成り果ててその花の下に埋もれゆく予感に怯える そんな幽玄世界の海原に崩れ去る二人の想いの行方は 今も眠りながらその目覚めを夢見て幻を浮かび上がらせているのでしょうね・・ あぁ、どうして別れをいわなくてはいけなかったかが あぁ、どうしてあなたがその笑顔を私に見せたのかが ようやく分かったような気がしますわ。 やっとあなたの心にたどり着いたような気がします。 やっと私も笑顔でさよならを言えるような気がします。 ありがとう そして さようなら、と 恋の骸が見せる夢 桜のつぼみを眺めながらあなたのことを思い出しています
2007/03/27
コメント(0)

突然意思を持ち始めた着せ替え人形ちゃん
2007/03/26
コメント(0)

光を追えば影を追い越すことができる光を追って光のあるほうへ私は私の影を従え光を求め続けていたい
2007/03/25
コメント(0)

星影のワルツって歌あるでしょう。 「君のために別れるんだ」 あれってなんだかなー、って思います。 シチュエーション的にはよく分かるんですよ。 こう解釈すれば切ない思いを歌っているんだなぁ、と。 でもさ。 「~のために」 っていうのん、イヤやねんわぁ。 「あなたのために~したのよ」 「きみのために~言ったんだよ」 あたかもそうすることが、全く自分の本心からじゃなくて、廻りのせいに100パーセントしてるみたいじゃない。 なんかずるい(笑) あれもこれもしたが最終的にその判断を下したのは「自分」なんでしょう。 「~のため」 という言葉は、他人のせいにしてしまいかけないような勢いがある・・それだけじゃないけれど。 それがなんとなく胡散臭く感じるのは私だけなのでしょうか。 結果が相手の本意に染まない。 言ったらありがた迷惑な話。 あなたのためにしてやっているんだから 感謝こそすれ恨まないでよ なんかそんな感じ。 「~のためを思ってやってあげてるんだから」 この言葉には有無を言わせないような押し付けを感じる。 「君のために別れたんだ」 相手にとっては甚だ迷惑千万な話。 勝手なことしないでよ、自分の人生自分で決めるわ、別れなければいけなかったら自分で別れを切り出すわよ・・・。 そんなことを言おうものなら、 「感謝もなしなのか」 そう逆切れされそうだにゃ~^^; 現代っ子なんです、あたし。 そうはいうものの、優しい別れ方ってあるのかな。 例えば・・相手がきっぱり思い切れるように自分が悪役を引き受けることができる人・・うーん、優しい人だ(笑) 別れること 別れなければいけない状況 それは誰が悪いかなんて一概には決められないもの。 いろんな要素が絡み合って 次第に関係が崩れていく そして破綻。。。 お互いの気持ちのずれ。 流れていく状況。 誰が悪いか 誰も悪くはない 全てがずれなのだから 悪いとすればみんながそれぞれ少しずつ悪いのかも。 だから尾を引く だから根にもつ だから念が残る しかたないこと 諦めなければならないこと そんなだれも悪くない状況で みんなの鬱積した感情を一手に引き受ける 「悪いのはオレだー」的な。 「オレがおまえを捨てたんだ」 「おまえと自分の人生天秤にかけたら人生のほうが重かったんだ」 そんなことを鮮やかに言ってのける男性。 いいですねぇ(笑) 完璧な悪人。 いまどきそんな人いませんて。 でもあえて悪役ぶる人は素敵なのかもしれない。 自己保身に走り勝ちになっている人が多い今では決してお目にかかれない。 振るならきっぱりと振ってくれ。 切るならすっぱり切ってくれ。 そのほうが傷口は早く塞がりやすいのです。 優しい別れ方。 それができる人って強い人だと思う。 逆に女もそれができるひと いいと思うんだけど。
2007/03/25
コメント(0)

いつの間にか転寝をしていたらしい。 風を孕んだ窓際のカーテンが行ったりきたりして私の頭を撫でていた。 あれは夢だったのか・・。 ぼんやりと外の日に当たって輝いている青葉を眺めていた。 夢にしては切ないような気がする・・。 青葉を眺めながら涙ぐんでいる自分に気がつき苦笑した。 「約束だからね、忘れたらいけないよ。」 にっこり微笑んだ優しい表情に私は、こくりと頷いた。 「うん、今度は3日後の金曜日ね。」 「たくさんお土産買ってくるからね、おもちゃも一杯買ってあげる。」 そんな会話をして私達は別れた。 バイバイと小さく手を振りながら私は、その姿が小さくなるまでじっと見送っていた。 オカアサン・・・。 小学校の校門の前の2本目の電柱が私達の待ち合わせの場所だった。 3日に一回の間隔で会っていた。 「杏ちゃん?」 そう呼びかけられ振り向くと母が立っていた。 母は私が5歳の時突然いなくなった。 「ちょっと買い物に行ってきます」 そう言って出かけたっきり帰って来なかった。 その母が今ここに立っている・・・。 「一緒に喫茶店に入ろう」 そういわれて連れて行かれた小さな喫茶店。 しばらく話をして別れていく。 それがきっかけで何度か待ち合わせをするようになった。 お茶を飲みながら母は色んなことを喋った。 「ごめんね。急にいなくなって。仕方なかったの。お父さんに追い出されてね。」 「杏ちゃんだけでも連れて行きたかったのよ、本当よ、しんじてね。」 私は小さく頷き、困ったように笑うしかできなかった。 「代わりにおもちゃ一杯買ってあげる!何でも買ってあげる。」 そういって母は笑った。 私はおもちゃもほしかったが、おもちゃを買ってくれるという母が家に帰ってきてほしいと思った。 「お母さん?もうお父さんと一緒に住めないの?」 そういうと母は困ったような顔をした。 「うん。」 あるとき母におもちゃを買ってもらった。 「ありがとう」 そういって母に笑いかけた。 私の顔を見ながら母はニコニコ笑い、私に訊いた。 「ねぇ、お母さんとお父さんどっちが好き?」 私は困った。 父の穏やかな顔を思い出したからだ。 母・・とはいえなかった。 おもちゃを買ってくれる母も好きだったが、「早く寝ろよ」と布団をかけてくれる父が恋しかった。 答えを逡巡していると母は言った。 「おもちゃを買ってもらって嬉しくないの、あっそう・・。」 私は言葉を失った。 校門の前での待ち合わせする約束が数ヶ月続いた頃だったか。 「じゃ、今度金曜日にね。」 そういって母は去っていった。 私はいつものように小さく手を振って、バイバイをした。 母の背中は心なしか曲がっているように感じた。 そして待ち合わせの日になった。 私は電柱の影で待っていた。 3時。 ランドセルのもち手の部分を握りながら待っていた。 4時。 まだ母は来なかった。 どうしたんだろう。 少し夕暮れの影がさして少し寂しくなった。 5時。 母は来ない。 来ないのだ、今日は・・・。 ようやく諦めて帰った。 自宅でテレビを見ながらぼんやりとしていた。 翌日もしかして金曜日と土曜日と言うのを聞き間違えたのかと思って同じ場所に言ってみた。 3時。 しかし母は来なかった。 もしかして来週の金曜日なのかもしれない。 そう思って待っていた。 その次の金曜日も。 その次の金曜日も。 ずっと待っていた。 しかし母は現れなかった。 5歳の時「ちょっと買い物にいってくるね」と言い置いて、突然消えてしまったあの時のように。 何にも言わずに消えてしまった・・・。 「杏ちゃん、あなたが好きよ」 「杏ちゃん、あなたと一緒に暮らしたいのよ」 「杏ちゃん」 「杏ちゃん」 ・・・・・。 言葉を信じていた私は、あんなに優しい言葉をかけてくれた母がもう二度と現れないわけがない、また会いに来てくれる、そう思った。 小学校からの帰り道電柱の影を覗き込む癖がついた。 いないと分かっているのに・・・。 しかし母が立っているような気がしてならなかった。 そんな日が数日、数週間、数ヶ月たち・・学年の変わる頃になってようやく・・電柱を覗き込まなくなった。 もう母は来ないのだ。 そう思った。 大きくなって風の便りにあれからすぐに年下の男性と再婚したらしいと聞いた。 そうか、もう私は要らなくなったと思われたんだなあ・・そう思った。 高校生の時。 「約束」という言葉を聞くと昔のことが思い出される。 この年になって母も好きで約束を破ろうと思ったわけではないのだろうと考えられるようになった。 仕方のなかったことなんだと。 しかしその一方で「もうこれで来ないから頑張ってね」といってくれてたらなぁ、と思う。 子供にも「別れ」と言うのは分かる。 しっかり別れを意識させてほしかった、宙ぶらりんな状態で「待って」なんていってほしくなかった。 叶うことのない約束を待ち続けるのもしんどいものであるから。 転寝をしていたとき 「またね」 という約束をして母と別れる夢を見た。 夢から醒めて少し切なくなったのは・・。 まだあの時の寂しさを私は持っているからなのだろうか。 母に怒りも恨みもない。 あるのは寂しさだけだと思う。
2007/03/25
コメント(0)

多分あれ以上の恋愛はもうできないだろう・・と多分あれ以上の・・・無防備な捨て身な思いつめた深い深い一途な恋愛はもうこの先ないのだろうとしみじみ思いながらそっと空を見る
2007/03/24
コメント(0)

探してくれてありがとう見つけてくれてありがとう
2007/03/24
コメント(0)

思い込んだらまっしぐらです決して後ろを振り返らないのがコツ後ろを振り返ったら必ず失敗します・・なんてね(笑)
2007/03/24
コメント(0)

ソフィア・ローレンのひまわりを思い出すひまわりに想い出を託して私も列車に揺られていこう一つ違うところは過去より今が輝いているから今が幸せだから列車に乗り込めるのだと思う
2007/03/23
コメント(0)

2007/03/23
コメント(0)

2007/03/22
コメント(0)

ミキさんは、いつもほっこり笑うおばあちゃんでみんなから好かれていた。 人懐こいおばあちゃんで「ありがとう」というのが口癖のおばあちゃんだった。 人の世話を焼くのが好きでいつもみんなからも「ありがとう」と言われていた。 ある日ミキさんがテーブルの隅のほうでしゃがみこんでいるのを職員が見つけた。 見ると冷や汗を流しおなかを押さえて苦しんでいる。 「だいじょうぶですかっ」 様子がおかしいので救急車で病院に連れていかれた。 検査をして医師が苦い顔をして現れた。 「末期がんです。よくここまでお元気で過ごされていましたね。かなり悪い状態です。よくもってあと一週間くらいです。」 一週間! ミキさんは、入院することになった。 結果を持って帰って職員に伝えたとき一斉にため息がつかれた。 「どうして・・・」 みんな思いは同じだった。 ・・あのミキさんがあと一週間だなんて!?・・ ミキさんの誕生日はその2週間後だった。 満90歳の誕生日。 みんなでお祝いして楽しいときを過ごすはずだったのに・・・。 みんな落胆した。 そんな時ミキさんの家族さんから連絡が入った。 「あと一週間の命、せめて住み慣れたホームで過ごさせてやりたいんですが受け入れてもらえませんか。」 どうやらミキさん本人も自分の死期を悟ったらしくここに帰りたい・・といっているらしい。 私たちは「帰ってきてください。いたらないかもしれませんけれど、できる限りのことはさせてもらいたいです」と答えた。 3日後ミキさんはホームに戻ってきた。 やつれてはいるもののあの笑顔は変わらなかった。 ミキさんに何か想い出を・・・。 そう考えたとき誰かが言った。 「お誕生日会、早めにしましょう。2週間後じゃなくてもいいじゃないですか。」 急遽翌日になった。 お花を取り寄せて、厨房に無理を言って、ケーキを作ってもらって、ミキさんのお祝いの準備に取り掛かった。 誰も何も言わない。 でもみんな知っている。 ミキさんはあと数日の命だということを。 おそらくミキさん本人も・・。 みんな変に明るかった。 でも誰か一人泣いたらみんな「わー」っと泣いてしまいそうな緊張感も漂っていた。 当日。 ミキさんを真ん中にして誕生会が開かれた。 ハッピーバースデーの歌をみんなで合唱した。 ミキさんは嬉しそうに笑っている。 私たちも「おめでとうございます」と口々に言って拍手した。 みんな心の中で涙ぐんでいるのに誰一人泣く人間はいなかった。 ミキさんは「ありがとう、よくしてもらったね、ほんとうにありがとう」と笑った。 単にこの誕生日会のお礼を言っていただけなのかもしれないが、数日後の彼女の運命に際してこれまでのお礼を言っているかのように思えてみんなの心を揺さぶった。 数日後。 安らかに息を引き取られた。 微笑んでいるかのようなその表情を浮かべたミキさんを目の前にして、私たちは初めて泣くことができた。 心置きなく。
2007/03/21
コメント(0)

初めて朝までぐっすりと眠ることができました。目覚めたらそこには夢のことをあまり気にしなくなる自分がいていました。
2007/03/20
コメント(0)

ふと、こんな話を思いだした。 今昔物語の中での話。 紀長谷雄という文人がいた。 彼は天才的な歌詠みであったらしいが、世事には疎く当時疎外されつつあった菅原道真と親交があったりして、ま、いわば「 マイペース」人間であったらしい。 その彼が、ある夜更け、道を歩いていたときのこと。 朱雀門の辺りを通りかかった時、上から不思議な男の声を耳にする。 破鐘のような声・・しかし繊細な流れるような歌の調べ。 不思議な声が朗々と歌を吟じているのを聞くうち、気がつくと彼も歌を唱和していた。 で、歌比べに発展するんだな、これが。 「雪の春に逢える、深きこと尺に過ぎず 時を山間に等しくし色を砂蹟に同じくす」 「地に凝っては、わづかに馬蹄を没し 庭に満ちては、暫くに鳥跡を封ず」 ・・・・。 春雪の賦のやりとり、歌と歌とのバトル・・。 鬼と長谷雄は歌比べをして、長谷雄は激しいバトルの末、鬼をうち負かす。 鬼は歌比べに負け、負けた代償に長谷雄にあるものを差し出す。 長谷雄が目にしたものは・・・。 うら若いふっくらした上品な美女が立っていた。 長谷雄は心を奪われてしまう。 彼は女を家に連れて帰る。 鬼は別れ際に一言彼に言う。 「100日の間女に手を触れてはいけない。手を触れてしまったら、『水』になって溶けてしまうぞ。」 長谷雄は根気よく待ち続ける。 辛い・・(笑) そんな長谷雄の気持ちを知ってか知らずしてか、女はかれに甘い囁きを投げかけ、彼の心を悩ます。 しかし100日は彼女をこの手で抱く事はできない。 懊悩する長谷雄。 そんなある夜・・彼はとうとう堪えきれなくなって、女を抱いてしまう。 女は、「水」となって溶けてしまった・・。 99日目の夜のことだった・・。 鬼はそれを聞いて慟哭する。 「あれは、俺の一代傑作だったのに・・。」 鬼は悔しがる。 「あの女は、死人から作ったんだ。死人の美しい部分を寄せ集め、つぎはぎしてつくったのに・・。髪の美しい女からは髪を、眼の美しい女からは眼を、熱情的な女からは熱情を。100日経てばそれは現実のものになる筈だったのに・・。」 そんな話を思いだした・・。 死人からつぎはぎされて形を、命を吹き込まれた女・・水の精。 女はそんなものなんかなぁ、って思っている。 つぎはぎ・・・色んな人間のエッセンスを糧に「今の姿」を作りあげている・・一種の作品なのかもしれない。 死人(様々な過去での出会い)の、先人の美しさを養分として、生きてきた女・・・。 私もそういう意味では「水」の精なのかもしれない。 様々な人間の美しさに触れ、感じ、自分の中にしみ込んでいった観がある。 そんな女。 100日経たないと「水」になって溶けてしまう・・・。 それは、「時機」なんだろうなぁ、きっと。 100日の猶予期間の間に、長谷雄は何をしなければならなかったか。 長谷雄は、女との間に「絆」を作らなければならなかったんだろうな。 長谷雄は、女との間に「世界」を作らなければならなかったんだろうな。 女の髪を現実のものに 女の眼を現実のものに 女の顔を現実のものに 女の手足を現実のものに 女の心を現実のものに 一つ一つ現実とつなぎあわせていく、女を抱いても「夢」として溶けていってしまわないような・・。 女を抱く・・ここでは象徴的な意味で表現。 いわば「おつき合い」すること。 言ったら、それは「スタート」であるんだけれど、どうも一般的には「ゴール」と捉えられることの方が多いと思う。 女にしてみたら、つきあってからの方がより綿密に絆作りに細心の注意がいるものだと思うんだけれど、どうも一般のお殿方は考えが違うものらしい・・。 ま、これは狭い私の中での関わった人間の類型だから、「一般的」という表現は不適切かもしれないけれどね・・。 100日という日数が象徴するものは、きっと「抱いた」後に「水」となって流れてしまう関係なのか、「生身」となって横に寄り添える関係なのか、その間の「関係」の「編み込み」期間なんだろうね。 100日も額面通りの100日ではなくて、二人の今後の関わり合い方によって、それは1ヶ月かもしれないし、10年かもしれない。 鬼の慟哭が私の心に響く。 私は、長谷雄であるかもしれないし、「女」であるのかもしれない。これまでの恋愛体験・・みんな「100日待てなかった」恋愛であったのかもしれないから。 そして100日経った後、「水」とならないような・・・そんな絆作り・・・。 そんなことをしみじみ考えている・・・。
2007/03/19
コメント(0)

夢の中に彼が出てきた。 昔付き合っていた男性だった。 久しぶりに顔を見たわねと笑った。 「俺、今から葬式に出なきゃならないんだ」 「誰が亡くなったの?」 「俺だよ、俺。」 「え!?」 いっぺんに目が覚めた。 また過去が逆流していたようだ。 見ても仕方ない夢。 思い出しても仕方ない過去。 でも思い出しても不思議と懐かしさだけが蘇ってくる。 そんな優しい夢だった。 彼に今度逢ったらいっぱい言いたいことをお葬式のときに考えていた。 前の椅子のシミをじっとにらみつけながら。 私は「一般参列者」の席だった。 何で急に亡くなっちゃったんだよ。 もっと楽しいことも もっと嬉しいことも 一緒に経験したかったのに。 今度花を見に行こうねって約束したじゃない。 今度おいしいもの食べに行こうねって約束したじゃない。 私のスケジュールみんな空けて待っていたのよ。 逢える日には大きな赤丸をつけて待っていたのよ。 そんな取り止めのないことを考えながら 思うことはひとつだけだった。 「生きてくれていさえすれば」 それから季節は何度も巡った。 しかし彼は夢の中にも逢いに来てはくれなかった。 いぢわる。 言いたいことをいっぱい抱えて待っていたのに。 そんな彼が昨日ひょこっと顔を覗かせた。夢の中で「ひさしぶりよね」と笑った。 私は何にも言わなかった。 私は、もはや手に何にも持っていないことにはじめて気がついた。_______________________________________今となっては懐かしい思い出になっている。 彼がなくなって思い出に変わるまでは、彼はとうとう一回も出てきてはくれなかった。 あれも言ってやろう。 これも言ってやろう。 いっぱい言ってやろう。 そう思って待っている間は逢いに来てはくれなかった。昨日彼が、ひょこっと夢に現れた。 本当に久しぶりに。 本当に唐突に。 でも、なんにも言えなかった。ううん、言うことがなんにもなかったのかもしれない。きっと、言葉が私の手から離れていってしまってたのだろう。想いが飛んでいったのだろう。夢から醒めた後 彼は「思い出の国」に行ってしまったんだ・・・。 そう思った。だから最後に私に逢いに来てくれたのかもしれない。 お別れを言いに。思い出の国に行く前に。
2007/03/19
コメント(0)

穏やかな一日。寒さを殆ど感じないでいられる。 さすらいの旅人、4つのとげをもつバラことあんじゅちゃん。 自分の始発点は、イメージ的に言うとトルナトーレ作品に出てくるあんな感じだった。 「ニューシネマパラダイス」「マレーナ」の背景が私の育った景色とよく似ている。 貧乏だったから。高価なものとは全く縁が無かった。 全てが素朴素朴素朴・・・。 自然は私の呼吸する空気に一致していて、今みたいに「目的」を持たせた自然ではなかった。 「癒しのための」とか「観光のための」という形容詞とは無縁だった。 土、泥、均されていない道、ぬかるみの畝。 整然さとはかけ離れた風景。 舗装されかけのアスファルトの亀裂から伸びているナズナ。 自然と呼吸していた。 あの頃。 いつのまにやら私は切り取られた空間に住むようになった。 服に「泥」がつくのを嫌うようになった。 自然へは、意識しないとふれあうことがなくなった。 自然はどこにでもある。 道歩きいく途中にも。 ベランダからそっと夜空を眺めた時も。 あるのに、私の心はなかなか反応しないでいる。 昔、蟻の歩く姿を見て一心に見とれたあの気持ちはもう薄れてしまっている。 心が鈍っているのだろうか。 そんなどこかに置き忘れた心を探しに、取り戻したくて、当てもなく彷徨い歩いてるのかも知れない。 人の心から心へ。 近い表現ならそれは「寂しさ」なんかも知れない。 旅人は私。
2007/03/19
コメント(0)

庭に出てみるとソメイヨシノのツボミがかなり膨らんでいた。 鈍色の雲の隙間から時々太陽が顔を覗かせてその間だけ周りを春めいた空気にさせてくれるかのようだ。 灰茶色の桜の幹に手を当てて見るとじんわり暖かさが伝わってきた。 花の開花ももう間近いのだろうか。 そんな事を思いながら、庭に佇んでいると裏の木戸を開ける音がした。 誰なんだろう。 視線をやると、懐かしい姿が飛び込んできた。 「菊田さん?いや、お久しぶりやないの・・。」 彼は会釈を返しながら、表戸を叩いたのだが返事がないので庭を覗いたら貴女の姿が見えたんだと言った。 私の覚えている彼の姿からは大分やせ細った様に感じられた。笑うと深い皺が刻まれ、痛々しげに見えた。 「どないしてはりましたんな?」 一年前に妻に先立たれ息子と二人で暮らしているのだと言った。 仕事一筋で家庭的な事はあまりしたことがなく、息子とどう過ごしていいのかわからない、暫く悩んだが最近はどうにか暮らせる形になってきたのだと話した。 淡々と話す彼の口調からは推し量る事ができないほどの苦労があったのだろうと思った。 彼の気性はよく知っている。 真面目で几帳面だが融通がきかない。 感情の表現がほとんどなかった。 そのため人に誤解される事も多くトラブルも多く抱えていた。 表現の頑なさで人間関係に悩みを持つ人だった。 「マサオ君は大分大きくなりはったんでしょうな、もう成人式迎えはったんかな?」 そんなとめどもない会話をしていると彼が昔を思い出すかのように言った。 「杏樹さんは、昔とちっとも変わっていませんね。突然訪ねてきた私を何の違和感もなく受け入れてくれはる。最後にお逢いした時もそうでしたよね。『いつかまたお逢いできると嬉しいですね、便りのないのは元気な証拠だと思っていますからね』って言ってくれはったものね。」 私は微笑んだ。 「縁があれば何らかの形で必ずつながりができますもの。ですから、突然いらしても何の不思議も感じませんでしたわ。」 彼は私を愛しむような優しい目つきをした。 「そう、縁があるもの、続いていくものであるという貴女の言葉を思い出したから…だから私はここへ来たのですよ。貴女と魂で繋がっていると言いたかったから。」 彼は続けた。 「杏樹さん…昔貴女を手放してしまった事をずっと心に残してきた。私と逃げて、と泣いた貴女をごめんと遠ざけてしまった罪悪感を今でも感じている・・。あの時何もかもが捨てられなかった私の弱さを許してくれたね。貴女は諦めたような目で私にむかって微笑んでくれたよね。」 私は笑った。 「そんな昔の話もう忘れてしまいましたわ。」 彼はそうだねと遠い目をした。 「しかし心というものは残ってしまうものなのだよ。縁があればという貴女の言葉がなぜだか記憶にずっと焼きついていた。忘れられやしなかったんだ、貴女の事が。」 一瞬二人の間の時間が止まり、私は懐かしさと愛しさとで胸が一杯になった。 あの頃に逆戻りしたかのようだわ・・。 これまで思い出してはいけないと自分に禁止をかけていたこと、思い。少し流れだしたような気がした。しかしその瞬間、周りの空気をかき乱すかのように奥の間にある電話機がけたたましく鳴り響く・・。二人ははっと夢から覚めたかのように顔を見合わる・・。 「すみません、こんな話をするつもりじゃなかったんだけど、じゃ、これで・・・。」 謝りながら彼は庭を後にして立ち去った。相変わらず影の薄い後姿だった。 彼を見送った後、私は受話器を取った。 「もしもし…?」 電話の主は今さっきまで話していた菊田さんのご子息からだった。 「あぁ、今しがたね、お父さんがいらして…」 そう言いかけて私は凍りついた。 それは彼のお通夜の告知を知らせる電話だからだった…。 庭で桜のツボミが風に揺られている。 切れ間から覗かせていた日差しは影を潜め、鈍色の黒っぽい雲が今も泣き出しそうに広がっていた。
2007/03/19
コメント(0)

傾聴トレーニングを受ける。 「人の話を聴く」にはその瞬間だけ自分を捨てて相手の中に入り込んでいかなければできないこと、なんだって教えてもらった。 そのためには、「捨てる」自分を自覚しておかなければならない。 では自分とは・・・? その自分を直視するのがこんなにも厄介で不快で苦痛だとは思わなかった。 一時「これが私なの?やだやだ」と真剣落ち込んだこともあった。 今でもたやすく落ち込めるくらいいやな部分を見ることもある。 でも前ほどには落ち込まなくても済むようになった。 私ってものすごく防衛反応がきつい。 守りが完璧に近い。 でもそれで他人との交流の時にある一定の障壁のリズムが作り出されてしまうんだって事も何となく感じるようになって来た。 感じることはできるけれど、実際まだそれを打ち破ることはできないでいる。 あ、また「悪い癖」が出てる、って自分でも思う。 いつも私は他人の世界に入っていくのがへたくそなの。 入り方もへたくそだし、勇気を持っておずおずと入っていくと「攻撃しに来た」んじゃないんだろうかと思われて拒否されたりして、そんなことが一回でもあるともう恐ろしくなって次からは入っていけない。 「心の海」に飛び込むことができずにいて、浅瀬で足だけ浸かっていたらもういいかな、って思う。ほんと、不器用だなぁ、って自分でもつくづく思う。 最近言葉が出てこないときは、自分の中でものすごくブレーキがかかってる状態なんだって自覚してる。 小学生の頃「選択性緘黙症」になってたときのことを思い出す。 あの時も回りを見渡して「喋らなくっちゃ・・」と思うんだけれども口が麻痺したようになって言葉が出てこない。 胸には重たい石が乗っかってるかのようで。 人と話していて自分の発した言葉に相手が笑い(嘲笑、鼻で笑う)を乗せてきた時や否定した時に、ものすごくプライドが傷ついているのを自覚する。 自意識過剰とでもいうんかな、相手はきっと何にも意識してないんだろうし、傷つけよう、馬鹿にしようとは思っていないんだろうけれど、私には「そんなつまらない言葉を発するなんて笑うに値する」と表現されたように感じてしまう。 被害妄想かな、これって(苦笑) しかもその笑われたことをなぜかずーっと覚えているから始末に悪い。 私も笑顔で接しながら、「もうこの言葉はつかえないなー」と思う。 それが積もり積もって相手の言葉にだけ「うんうん」と頷くだけの首振り人形と化してしまってる自分に気づく、あー、何してるんだろう、私って・・・とため息をついてしまう。 そういうところが甘え下手なんだなぁ、って自分でも思うよ。 そんな性格の子だった。 あぁ、そういえばこんな出来事を思い出した。 小学校2年生の時だったか、義母がうちにやってきたとき私は「お母さんができたんだ」 ってものすごく嬉しかったんだよ、でもねなんだか妙に気恥ずかしくてね、なかなか声を掛けられずにいたなぁ。 声かけるときどきどきしながら深呼吸して「嫌われたらどうしよう」なんて思いながらいたのを思い出したよ。 馬鹿だよな、って今の私なら思えるけれど、その当時の私は「義母に声をかける」なんて事は、断崖から飛び込むくらい勇気が要ったのよ。 一回「抱きしめて」もらいたくなってそれこそ勇気を振り絞って「お母さん」とおずおずと腕を伸ばして義母の背中に飛びついたことがあったんだけれど・・・。そのとききっと具合が悪かったんだろうね、母は。 「暑苦しいね、いい年して子供みたいにまとわりつかないでよ」 そういわれた。 私は自分が大きな子供なんだって、なんてつまらぬ事をしたもんだと恥ずかしくて恥ずかしくて顔を赤らめながらそっと腕を引っ込めた。 大きな子供といってもあの当時7歳だったんだけれどね(笑) あれから余計に自分で壁を設けてしまって、母を拒絶してしまったんだろうね。 心が通じていないから虐待されて殴られてつねられても絶対私は泣けなかった。 泣いたら自分がつぶれてしまうとさえ考えていた。 そんなところが母には「子供らしくない」「私にちっともなつかない」「こ憎たらしい子」と思えたんだろうね。 母には私の心の叫びは伝わらなかったんだろうね。 しかし不器用な私だよ、全く(苦笑) 今ならもっと泣いたり叫んだり甘えたりしたらその後の虐待は起こらずに済んだんじゃないのかと思うんだけどね。 ま、いまだからそう思えるんだけれど。 話が変なとこに行っちゃった・・・。 今思うこと。 素直に甘えたいなぁ、って。 誰にでも素直に甘えられたらなぁ、って。 特に自分の好きな人に笑われるのが一番衝撃が走るから、素直に甘えられない。 構えてるんだろうな、これって。 かわいくない女だなぁ、私って。
2007/03/19
コメント(0)

そこは静かな場所だった。 京都駅から電車でいくつか行ったところで町中であるはずなのに、そこだけなぜだか一切の騒音が遮られ、空間が切り取られてしまっているような錯覚を覚えるほどの場所だった。 少し歩いて寺院に入った。 その寺院の中には美しい屏風絵があって、じっと見ていると今にも動き出しそうな若武者が描かれていたのが印象的だった。 そこから庭園がぐるりと見渡せるようになっていて縁側の内側に一点張りの真っ赤な毛氈が敷かれていた。 「なほ?座ろうか」そう言いながら都築は隅の木の腰掛けを指し示した。 なほは、ゆっくり座りながら目の前に広がる景色を見つめた。 竹藪の緑が目にしみる。雲がそこからわいてでたような形で上に広がり青空の中に溶け行くようだった。 「8月もあっという間に終わるわよね、今年は梅雨が長かったから、夏が短かったような気がするわ」 そう言いながら、なほは目の前に置かれている竹筒の中に差しているうちわを一本取り出して扇ぎ始めた。 柔らかい風が汗ばんだ肌に心地よく靡いていく。 蝉がもの哀しげに鳴き、岩の隙間から清水が迸りでるように流れている。 ‥きれいな場所ね‥ なんとはなしに、そう思いながらその風景を眺めていた時だった。 「あの、失礼ですが。」 そう呼び止められぼんやりしていたなほは、ふと我に帰った。 「はい?」 振り向くと60代くらいの温厚そうな男性が立っていた。 男性はカメラを両手に持ちながらこう言った。 「今そちらの方で写真を撮らせてもらったんですが‥いえ、あのお二人の並んでいる姿が余りにもよかったので‥つい。しかし肖像権という話もあるでしょうから、ご了解願いたいなぁと。あ、もしご希望ならば、おたくの方へ郵送させて頂きますが。」 初老の男性はなほの顔を見つめた。 なほは「あ」と言いかけて、都築の顔を見た。 都築はしばらく考えて「その画像を見せて頂くことはできますか」と問い返した。 男性は笑顔を見せながら「どうぞどうぞ」とカメラの液晶部分を二人に向けた。 二人が映っていた。 都築が池の方を眺め、なほが団扇で扇ぎながら同じようなところを見つめている。 鶴のような二人に見えた。 画面の中にも静寂さが広がり、何の違和感もない、仲の良さそうな二人が映っていた。 なほは、微笑みを浮かべながら「綺麗にとれているわよね」と言おうとした瞬間、都築が言った。 「すみませんが、消してくださいませんか。」 初老の男性は驚いたようになほを眺めた。 なほは、さっと顔が赤くなったが何も言わずうつむいていた。 慌てたように男性は、「消します消します。無理にとはいいません。すぐに消せるんですから、ほら、すぐにね。」と言いながら目の前で画像を消した。 その男性が立ち去りしばらく二人は無言で池を眺めていた。 鯉が悠々と泳ぎ清水が池に流れ込み水紋を描いている。 しばらくして都築は「そろそろ行こうか」となほに言った。 なほは、立ち上がりながら向こうで違うものを撮っているさっきの男性を眺めた。 蝉のもの哀しい鳴き声が泣き声のようにも聞こえてくる。 なほは一点張りの赤い毛氈に沿って歩きながら、「私の人生もこんな毛氈のように真っ直ぐだったらよかったのに」と思った。 少し目頭が熱くなったが、気を取り直して靴をはいた。 この人には奥さんがいる‥帰る家もある。 現実に一緒にいられない間柄だから。 でも‥。 写真の中にでさえも一緒にいることはできないのね。 足跡を残せない。 二人が一緒なのを誰からも知られてはならない。 私たちはみんなの目に触れていながら、実は一緒にいてはいけない存在なんだわ。 誰からも祝福されない、存在してはいけない間柄‥。 そう考えるとなほは、寂しくなった。 たかが写真に映るか映らないかの話なのに、今のなほには妙に象徴的な出来事のような気がしてならなかった。 「見う見うゼミ」 ‥逢いたい逢いたいと鳴くセミの泣き声。 なほは暑いはずの京都の町並みを眺めながら妙な寒気を覚えた。 そんななほの気持ちを知ってか知らずしてか都築は肩を引き寄せ「行こうか」とだけ呟いた。 なほは、過去か未来か分からぬ残像をまぶたに残しながら「はい」とだけ答えた。
2007/03/19
コメント(0)

この駅に降り立つのは久しぶりだった。最後に駅を後にしてから既に20年以上もたつだろうか。親友の葬式に出るということさえなければ、もうここには来ないつもりだった。思い出の街。ここは思い出したくない思い出や、思い出せない思い出がぎっしり詰まっている街。そう。この街は僕には辛すぎる街なのだ。この街で僕はかけがえのない人と巡り会い、そしてその人を失った。将来を約束した仲だった。しかし彼女は流行病にかかり、あっけなくこの世を去ってしまったのだ。寡婦で小さな女の子を育てながら朝から晩まで働きつづけた人だった。「働くのが好きなのよ」そう言って白い歯を見せてにっこりと笑う表情がすてきな人だった。「私はアナタのことが大好きよ、ずっとずっと一緒にいたいわ」その仕草が何ともいじらしく、働きすぎで痩せてしまった体を僕はそっと抱きしめたことがあった。彼女はただ微笑んでいた。僕は彼女の荒れた手を握りながらもう辛い思いはさせないと思ったものだった。しかしあんなに愛し合った恋人同士だったのに、死は残酷な靴音を高らかに鳴らしながらやってきた。あっけない死だった。亡くなる前の日に彼女と電話で話したばかりだった。「今度梅を見に行きましょうよ、見頃ですって、綺麗よ、きっと。」それが彼女の最後の言葉になった。突然の死に私は暫く何にも考えることができなかった。この世から彼女がいなくなってしまった‥。ようやくそのことについて考えてみようと思えるようになったのは、僕がこの街を引き払う日の行きの列車の中でだった。彼女を思い出すものからひたすら逃げたかった。仕事も、家も何もかも捨てて見知らぬ街で暮らしたい、そう思って出発したのだった。それほど彼女の存在は僕にとって大きかったのだった。‥あれから20年。違う街で必死になって生きてきた。全ては彼女を忘れるために。しかし。忘れることなんてできなかった。心の中から追い出そうとすると、心の中で彼女の頬がふくれて怒ったような表情が浮かぶ。夢の中に彼女が出てくるので「辛いからでてこないでくれ」と頼むと夢の中の彼女はホロッと涙をこぼしていたりする。どうにも忘れられないでいた20年間だった。忘れられない彼女はよく夢にでてきた。「アナタは遠い街へ行ってしまうのね。でも必ず逢いにいきますから、待っていて下さい。」涙をためながら彼女は僕に言う。「必ず、必ず逢いにいきますから。」特にこんな夢を見た後は辛かった。夢であってもこうして逢いに来てくれる彼女がいじらしく愛しかった。降りた駅から暫く歩くいていくと懐かしい公園が見えてきた。彼女とよく観梅した公園だ。薄曇りでまだ寒さの残る空気の中僕は立ち止まって暫く梅を眺めていた。亡くならなければ、彼女と梅を一緒に眺めていたはずだった。幻の彼女の声が柔らかく聞こえる。「太宰府の『飛び梅伝説』って切ないわよね、ご存知?この話?」飛び梅伝説。菅原道真公が太宰府に下るよう命じられた時、自宅の庭のたいそう愛しんでいた紅梅をしみじみ眺めつぶやいたそうだ。「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」その道真公の心を感じいってか、太宰府に下っていった彼の後を追って庭の紅梅が空を駆け飛んでいった‥という。彼女は僕の顔を眺めながらいたずらっぽく笑った。「アナタがどこかへ行っちゃったら私も道真公の梅のように飛んでいくわ。」梅の香りがそこはかとなく漂ってくる。追想に浸りながら僕は梅の花の凛とした咲き具合を眺めていた。・・忘れたくても忘れることなんてできなかった。アナタの言うとおり僕は20年してここに引き寄せられたかのようにして帰ってきた。飛び梅はアナタではなく僕の方なのかもしれない・・そう思いため息をついた。ふと時計を見ると親友の葬儀の時間が迫っていた。僕は慌ててベンチから立ち上がった。その時ふと前の土産物屋が目に入った。和風の土産物がたくさん並べられている。店の女の子が前の道路をホウキではいている。その様子をボンヤリと見ていた僕は、はっとした。あの土産物屋の女の子。‥彼女にそっくりだ‥心が高ぶり、思わず早足で土産物屋の方へ近寄った。女の子を見つめる。・・似ている・・じっと見つめている僕の視線に気がついた彼女は僕の方に目をやり、ニコッと笑顔を見せた。「いらっしゃいませ」笑うとこぼれるように見える白い歯ならびもそっくりだった。僕は震える声で彼女に話しかけた。「あの・・つかぬことをお伺いいたしますが‥アナタのお母さんはもしや‥馨さんと仰いませんか」彼女はビックリした表情になった。「どうして母の名前を‥。」間違いなかった。この女性は彼女のお子さんに違いない‥。僕は訝しむ彼女に昔の友人ですとだけ伝えた。彼女はニコッと笑った。「そうでしたか」もっと話をしていたかったが、感情が押さえきれそうになく、僕は静かに挨拶をして立ち去ろうとした。2、3歩進んだところで呼び止められた。「あの‥傘をお忘れですよ」女の子から傘を受け取り礼を言った。「ありがとう」「いいえ」女の子の顔の中に突如として彼女の顔が重なった。「ねぇ、言ったでしょ、私はアナタに逢いに行くからって。あの道真公の紅梅のように。ようやく逢えたわね。でも再会するのに20年かかっちゃったわね。でも逢いたかったのよ‥。」彼女は笑った。「ようやく逢えたわね。」これは夢か幻か。慌てて首を振ると彼女は既に消えていて目の前には女の子が立っていた。‥女の子の姿を借りて逢いに来てくれたのだね‥。僕は心の中でそっとつぶやくと、女の子に手を振って歩き始めた。少し霧が出てきて視界が悪くなった。僕は歩きながら彼女に手を合わせた。
2007/03/18
コメント(0)

春を予感させる小春日和の冬のある日枇杷の花が咲いていましたね白色の目立たぬ小さな花をひっそりとその佇まいに暫く言葉もなく立ちつくしていましたね「この花が実を結ぶ頃どうしているかしら」「花に祈ってみようよ、きっと教えてくれるよ」花は落ち季節は巡り樹は実をつけそしてあなたは・・・あなたは・・・旅立ってしまったわ言葉なく立ち尽くす私を枇杷の実も何も言わず黙って私を見ていましたそうもうあれから何年経つだろう・・・今年も枇杷の実が膨らみ始めました実の中にあなたの面影が宿っていますこの枇杷は何度実をつけたことでしょう今年も静かに確実に実ってその実も私もいま生きていて私は実がなるのを静かに眺めています
2007/03/18
コメント(0)

「イヤだ、助けてくれ、苦しいよー」心からの叫びだった。怯えていた。動揺していた。震えていた。私はしっかり抱きしめながら囁いた。「大丈夫よ、大丈夫」しかしそんな言葉が嘘の過ぎないというのを私は知っていたし・・彼自身も知っていたと思う。背中をそっとさすりながら落ち着くのを待って私は彼を寝かせた。血圧・・異常なし。体温、呼吸、脈拍・・異常なし。末梢循環指数・・異常なし。他覚的所見・・腹部膨満感、緊満、四肢冷感、チアノーゼ・・異常なし。なんら変わった所見はなかった。私は安定剤を筋肉注射して部屋の外にでた。彼は54歳、末期肝臓ガン。体中に転移している。職業は新聞記者。入院して2ヶ月。抗がん剤点滴の治療をするにはしたが、もうそれ以上しても仕方ないと途中からは途絶していた。食欲がなく中心静脈栄養で何とか栄養を補給している状態である。彼は看護師の間では評判が悪かった。「そんな検査の説明じゃわからん」「何のためにそんなことをするんだ」突っかかっては怒鳴り散らす日々が続いた。「あの人、最悪よねぇ」そう言われていた。そんな評判の悪い彼だったが、私はなぜだか憎めなかった。怒鳴ってしまった後に、「はっ」とした表情をする彼の顔を見ていたし、何にも言わない彼の瞳に時折浮かぶ深い諦めの色を見てしまっていたからだ。彼は自分の病気のことをどこまで知っていたのだろう。直接的な病名は誰からも聞かされてはいなかったはずだし、彼の口から病気について話を聞くこともなかった。しかし彼の表情を眺めていると何だか自分の状態を知っていたように感じた。彼に慰めの言葉をかけるのは、元気な私達がかけると侮辱に聞こえるかのように思えた。彼に励ましの言葉をかけるのは、未来が続くかのような自信を持つ私達がかけると傲慢に聞こえるかのように思えた。私は淡々と説明をして、静かに話を聴くことしかできなかった。「杏ちゃんはな、なぜだか好きやな。」「うるさいことも、中途半端な慰めもせんやろ、そこがいい」そういってくれた時嬉しかった。しかし心も痛んだ。彼はもう長くはない人なのだ・・。そういう無力感と諦念に心満たされてしまうからだった。彼は仲良くなってからもたくさんは喋らなかった。しかし視線の先に私がいるのに気がついた時「おっ」と視線が緩んだり「あぁ」と気の弱いところをチラッと見せてくれたりした。それが私には貴重な想いであるかのように感じた。彼に何かしてあげたいと思った。彼が少しでも安楽になれるにはどうしたらいいかと思った。しかしほとんどできないのが現状だった。肩を落とし小さくため息をつく私に「ええねん。あんたが落ち込むことないやろ」・・・かえって慰めてくれたりした。それがまた私の心を揺らした。何にもできない・・・これほど無力感を味わったこともなかった。そんな日々が続いたある日のことだった。彼の部屋に入ると彼は大声で泣きじゃくっていた。体全体が震えていた。「どうかしたの」私が声を聞くと彼は振り返った。「杏ちゃん・・怖いんだよ、何だかものすごく怖いんだよっ」私の腕を掴んだ。ものすごい力だった。「イヤだ、助けてくれ、苦しいよー」泣き叫ぶ彼の体をぎゅっと抱きしめた。「どうしたん、いったいどうしたん、なにがあったの」彼はただ泣いていた。「怖いんだ怖いんだ怖いんだ、助けてくれ助けてくれよ」尋常でない彼の興奮した様子に一抹の不安を感じた私は、主治医に連絡を取った。しかし他覚的な所見でおかしいところはどこにも見つからなかった。「様子見といてよ、とりあえずセルシン5ミリ筋注しといて。」主治医はそういって部屋を出たのだった。安定剤を筋肉注射して暫く背中をさすっていると彼はうとうとしだした。顔についた涙の痕が切なかった。さぞかし怖かったんだろう。さぞかし怖かったんだろう。そう思うと心が痛んでいつまでも抱きしめていてあげたいと思った。私は準夜勤務の看護師に申し送りをして帰宅した。帰りの電車で彼の顔が、彼の泣き顔がふと浮かんで自分も泣きそうになった。・・どうしてこんな病気が存在するの・・・。思いながら悔しくなった。その日の夜うとうとしていると夢の中に彼が出てきた。「ごめんな、さっきは。」「何言ってるんです。気持ちは治まりましたか。」「あぁ、ありがとうな、しゃあないもんな。」「怖かったんですよね」「でも君の顔を最後に見ておきたかったんだ。」そういわれた瞬間えもいわれぬ思いがして私は飛び起きた。深夜1時過ぎ。妙にリアルな夢だった。あまりにリアルすぎた。私はなぜだか、この瞬間彼が逝ってしまったのだと確信した。言葉では説明できない予感を感じた。・・あぁ、今彼は亡くなったんだ・・・。その思いが自然に私の中に流れた。翌日出勤して黒板の患者名簿から彼の名前が消えているのを知った。夜勤者に訊くと夜中に腹腔内出血を起こしてあっという間に亡くなったのだと教えてくれた。「早かったわぁ。」そうため息をつきながら夜勤の看護師は言ったのだった。死を直感した彼の恐怖感はどんなに怖ろしいものであったろう。目には見えない「死」がじわじわ彼の体を蝕んでいく・・。また一人この世界から違う世界へ旅立っていくのを眺めなければいけなくなった
2007/03/17
コメント(0)
全132件 (132件中 1-50件目)

