朝、目が覚めてからの麻衣の態度がおかしい。
いつもならどんなに早い時間だったとしても、
俺の顔をみつけると上機嫌にはしゃいで、
少し邪魔だと思えるほどにまとわりついてくるっていうのに。
「麻衣?おはよう。」
今朝の彼女は、俺から覗きにいっても返事すらしないで、
ただ気まずそうに視線をそらしていた。
「パン焼こうか?それともごはん?」
ベットのへりに腰をかけて、わざと小さな体を抱き寄せた。
夕べの出来事のせいで、
もしかすると俺は嫌われてしまったのかもしれない。
「ん?」
まじかにある彼女の耳元に聞いてみる。
こわばってはいるけど体の感じでは、
さほど拒絶されているような気はしなかった。
「お兄ちゃん・・。」
つぶやいた声は弱々しい。
抱き込んだ胸の中で、麻衣の細い両手が軽く俺の服をつかむと、
間に自分の顔を埋めて瞳を閉じていた。
「麻衣、すごく気持ちよかったの・・。」
表情は見えないけれど、それならよかったんじゃないか。
「そうか、じゃあまたしてあげような。」
あやうく思い出しそうになりながら、
麻衣のサラサラの髪をなでている。
深く考えると期待が高まってしまうに違いない。
俺のほうはなにも消化できていないので、
それだとまずい状態に陥ることが予測された。
「・・・でも、お兄ちゃんの顔みるの恥ずかしいよ。」
目元だけで俺を見上げてくる麻衣の顔は、
たしかによく見ると、頬がかなり赤みをおびている。
そんな彼女を見ていると、俺までが照れてきてしまい、
「なんでだろう、でも俺もちょっと恥ずかしいな。」
といって麻衣の頬に手を触れて、
いっそう彼女の顔が見えるようにあげさせてみた。
まんまるに目を見開いたままで、
麻衣の顔はますます赤みがましていく。
「本当?」
決まりが悪そうに目を泳がせて、
かわいい瞳は上目づかいに俺を見ていた。
「うん、でもちょっとだけだよ。
麻衣みたいにつらくなるほどじゃない。」
「・・・つらくないもん。恥ずかしいんだもん。」
ぷぅっとふくれてまた俺の胸に抱きついてゆく。
「キスのことはもう大丈夫?」
俺は昨日、麻衣がされたというキスのことが気になっていた。
かなりへこんでたけど、その後気はまぎれたのだろうか。
「キスのことってなに?」
麻衣は赤い顔のままキョトンとしている。
「ほら、あの男の子に・・・されたっていってたろ?」
彼女はみけんにシワをよせてから一瞬首をかしげると、
「そうだった・・・。
そんなこと全然忘れてたよ・・・。」
寝起きのままの髪に手をやって、驚いた顔をしていた。
「ちゃんと断るんだぞ?」
このまま押し倒してしまいそうな衝動を抑えながら、
俺は麻衣のコメカミにキスをする。
「お兄ちゃんヤキモチ妬いてくれてるの?」
うれしそうに笑う彼女と、
どうしても夕べの声などが重なってしまい、
俺の頭の中では行われていないはずの、
その先の行為までもが鮮明に映像化されていた。
毎晩一緒なのはとてもありがたいことであり、
楽しみであるのだけれど、
無理強いするようなことにはならないだろうかと、
俺はとても心配している。
こんなに素直なかわいさの前では自信がもてない。
お兄ちゃんの称号を守り通す自信が。
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