出かけることがわかると、ワン蔵がさみしがるので、
あたしは何事もないかのようによそおいながら、
すばやく用意をしていた。
今日はデートなのだ。
せめてクリスマスの音楽をかけて、
悟られないようにそのまま家を出た。
さりげなくワン蔵を横目で見て、心の中で謝りながら。
カズくんと外を歩く時は元気に手をとられて、
ひっぱりまわされているという印象がする。
嫌いではないけれど、
その点に躊躇するあたしは年齢を意識してしまう。
彼は若いのだ。
歩きながらひとつだけ買ったクレープを一緒に食べて、
人ごみに混ざっていろいろ見て歩いた。
「はい、どうぞ。」
疲れてウッドデッキの隅っこに二人して座ると、
カズくんはポケットからかわいくラッピングされた、
小さな箱を出してあたしにくれる。
少し照れくさそうな顔に思わず、
彼氏みたいね。といいそうになって言葉を飲み込む。
かわりににっこりと笑いながら。
「ありがとう。」
と答えた。
せかされて箱を開けて、
入っていたイアリングを耳につける。
片方をつけてくれながら彼は、
「邪魔だったらはずしていいよ。」
と優しくいってくれていた。
待ち合わせ場所まで連れてきてくれたカズくんは、
シンをみつけると、
「お。」
といって手を上げ、バトンタッチっていうことなのか、
同じく手を上にあげたシンと手のひらをたたいた。
それ以上はなにもいわずに後姿で手を振り、
人ごみの中に消えていく、
「じゃあ、行こうか。」
うれしそうに笑っているシンに、
あたしもあわててつくった笑い顔でうなずいた。
シンからのプレゼントはペンダントだった。
食事が終わった後、そっとテーブルの上に置かれた紙の袋には、
落ち着いた包装の箱が入っている。
「今、つけるね。」
あたしはすぐにそれを開けると、
自分の首にかけて、手探りで後ろをとめた。
今日の服にも、耳につけたイアリングにも、
それは調和のとれたデザインの、
シンプルできれいなペンダントだった。
シンは自分の耳を触って、
「それも、かわいいね。」
と口だけの動きであたしに伝えていた。
カズくんからもらったイアリングを、
あたしはシンの前でもはずさなかった。
諌山さんの会社の下まで送ってもらった後、
普段着では訪れたことがなかったそこに入っていく。
もう遅い時間なので大丈夫。
あまり人もいないし、外はもう暗くなっていた。
「クレハ?おつかれさま。」
社長室からちょうど出ようと明かりを消したところに、
あたしは一瞬間に合わずに、はいってしまう。
「諌山さん・・・。」
暗い部屋の窓からは、とても綺麗に夜景が見えていた。
そばまで寄っていって、下を覗き込む。
イルミネーションに飾られた町並みが、
いつもの夜景以上にとてもキラキラしていた。
なにもいわない諌山さんがいつのまにか近くに居て、
あたしの手をとると、左手の薬指に指輪をすべらせる。
「今日でクリスマスもやっと終わりだな。」
一緒に外の明かりを見ながら、
諌山さんの大きな手があたしの頭をなでてくれた。
クリスマスがこれほどまでに特別な日だって、
いったい誰が決めたんだろう。
「もう帰るか?」
低い声に、
「もうちょっと。」
と返事をして、あたしはいつまでも、
恥ずかしいくらいに輝く外の景色を見つめていた。
もしかすると木々や町並みは、
今日のプレゼントで飾られたあたしと同じように、
自分では滑稽だと気が付いているのかもしれない。
身動きできない私達は、望まれるままに流されて、
ただこの身をゆだねているしかないのだから。
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