駆け出し記者の一期一会

駆け出し記者の一期一会

2008年05月17日
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カテゴリ: 音楽
4月9日のオープニング・ナイトからスタートした東京交響楽団の今シーズン、


今シーズンは徹底してシューベルトの交響曲を聴かせてくれるスダーン、
今夜はまず1番と4番というシューベルト10代の作品をダブルで。
その間にプロコフィエフのピアノコンチェルトでちょっと新しい時代にもワープ、
という面白いプログラムである。

ウィーン少年合唱団の前身である宮廷少年合唱団の一員として、
思春期の5年間をコンヴィクトと呼ばれる寄宿学校で過ごしたフランツ・シューベルト。
息子が堅実な教師になることを望む父親は、音楽の学校には入れたものの、

それでも、どうしても音楽家になりたいフランツ少年は、
兄や友人の助けでなんとか五線紙を手に入れて作曲に励む。
ゆたかなメロディに美しいハーモニーは泉から溢れる如く、誰にも止められない。

そんなフランツ少年16歳の初々しい作品が明るいニ長調の交響曲1番。
そして、父との決定的な軋轢から家を飛び出した18歳の頃に書かれた4番「悲劇的」。
父の反対を押し切ってわが道を行こうとする青年の心を映し出すような
短調のメロディがどんどん展開してたたみかけてくる4番が特に印象的だった。
ゲルマン魂の一番美しい部分を汲み取った美しいメロディやハーモニーがちりばめられ、
しばしば琴線に触れてくる。

作曲当初は、どちらもコンヴィクトの学生オーケストラが演奏したらしく、
マエストロによれば、「シューベルトは演奏のクオリティには満足しなかった」そうだ。

バイオリンやビオラが歌えば、チェロとコントラバスが答える掛け合いも見事だった。
そして、毎度感心するのは管楽器の安定感。

4番は1815年作曲か・・・江戸時代だ。幕末にもまだ遠い。
最近シューベルトに「フランツさん」みたいな親しみを感じていたので、
そんな昔の人だったんだと改めて気づくと、ちょっと驚き。


プロコフィエフと言えば、「ピーターと狼」とかバレエの「ロミオとジュリエット」ぐらいしか
知らないが、難解な現代曲になる手前の「まだメロディのある音楽」というイメージがある。
ピアノコンチェルトを聴くのは初めてだったが、なかなか迫力のある曲だった。
なにしろピアニストが素晴らしかった!!!

モスクワ生まれのリーリャ・ジルベルシュタインはロシア人にしては小柄な女性で、
黒のドレスに黒のジャケットというシンプルな装いで、長い栗色の髪を豊かに波打たせて登場。
スッとさりげない一礼に、地味な人なのかな…と思いきや、
ピアノを弾き始めたらもう凄い凄い凄い!
まず、圧倒的なテクニックと信じらないパワーで鍵盤を端から端まで駆け巡り、
「鋼鉄のピアニスト」とも呼ばれた作曲者のプロコフィエフ自身がソリストとして初演した
「目の詰まった音塊を強烈に叩きつける」ようなこの曲を完璧に弾きこなす。
まあ、プロのピアニストなら、そういうテクニック自体は珍しくないのかもしれないが、
音色の美しさやメリハリ、そして、緩やかなところでは情感たっぷり、といった表現力。
これはテクニックだけでは到底出せないものである。
これまでの人生経験に裏打ちされているのか、あるいは、ロシアの情念というものだろうか。
「こんな演奏、若いコには絶対できないわ~ やっぱり女は年じゃないのよね~」
と妙に励まされるのだった。
このあいだ聴いたジャズメンの達人技にも感服したが、今日のピアノにも度肝を抜かれた。
どんなジャンルでも、優れた才能を長年の修練で鍛え上げてきた達人の
円熟の境地は素晴らしい。ただただ仰ぎ見る。

パンフレットによると、
「長年にわたりマルタ・アルゲリッチとのデュオ・コンサートをおこない世界各地で好評を博している」
とのこと。
アルゲリッチとのデュオか~~どんなに凄いことだろう!聴いてみたいもんだなあ

そんな一流ソリストの渾身とマエストロ以下東響チームのハイパーコラボレーションであった。

コンチェルトだけではない。
これまで、リハーサルも含めて何度か聴いているが、スダーン&東響はいつも熱い。

スダーンは指揮棒を使わない。でも、全身を使う。
しばらく背を丸めて両手を胸元に寄せて小さく動かしていたかと思うと、
パッとボールを投げるようなしぐさでトランペットに指令を出し、
コントラバスのほうには槍を突くような仕草で合図。
バイオリンに向けては左肘が回る。確か左利きだったっけ?
リズミカルな曲想になると、マエストロ自らが一番踊っている。
動作の一つ一つにパワーが満ち満ちている。

そんな熱血指揮者にオケが一丸となって食らいついていく様は、
熱血監督の指導の元、快進撃を続ける中高生のサッカーチームとちょっとダブる。
やっぱり、人間の持つ可能性を最大限に引き出すのは
ポジティブな「情熱」なんですね。

そして、コンサートホールのよさを改めて感じた。
音響のよさももちろんだが、これがクラシックの適正規模なのだと。
フォルジュネの時の国際フォーラムの大ホール2階席の後ろでは残念ながら遠すぎた。
今日は、指揮者やピアニストやオーケストラの気迫がビンビン伝わり、
大切なメッセージを受け取って帰った気がする。

お客さんの惜しみない拍手に何度も応えるマエストロの笑顔がとてもよかった。
オケのメンバーもそそくさと立ち去ったりせず、
今夜のコンサートマスター、高木和弘さんが客席ににこやかに一礼して、いい雰囲気だった。

「クラシック音楽は、ロックのコンサートのように、何万人も集めることはできませんが、
ホールに来てくださった2,000人のお客様の心に届くことはできるのです」

日本オーケストラ連盟の理事長がおっしゃっていた言葉が思い出された。
それでいいのだ。

















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最終更新日  2008年05月18日 22時46分02秒
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