駆け出し記者の一期一会

駆け出し記者の一期一会

2008年06月28日
XML
カテゴリ: 音楽
日本を代表するショパンのスペシャリスト、河合優子。

今日はその第6回だった。

河合さんの演奏を初めて聴いたのは、 先日の東京ニューシティ管弦楽団のコンサート の時。
コンサートの冒頭に、音楽監督の内藤彰氏のトークがあり、
「河合さんは、このあいだ名古屋のリサイタルで、この協奏曲をピアノ一人バージョンで
演奏されました。今日も、オーケストラの部分も自分で弾いちゃうんじゃないかなぁ
と思ったりしますが(笑)・・・」


協奏曲をピアノ一人で、とはどういうこと?
オケパートをピアノ用に編曲してソロパートを弾く人と連弾するのはよくあるが、
全部一人で弾くというのは聴いたことがなかった。

6月28日のリサイタルのチラシに、東京ニューシティ管と共演したばかりの
「ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調」のショパン自身による1台ピアノバージョンを東京初演、
と書いてあったのを見て興味が湧き、土曜の午後、浜離宮朝日ホールに出かけたのである。

プログラムにあった河合さん自身の解説によると、
ショパンは、このヘ短調の協奏曲の全体の構想を最初にピアノ1台バージョンで書いた。
オーケストラとの協奏曲の手書きのスコアも残っているが、
ソロパートはショパンの自筆であるのに、オーケストラのパートの大部分は筆跡が違う。
当時二十歳そこそこだったショパンは、直接オーケストレーションの作業をしておらず、

(そうだとすれば、ショパン作曲の協奏曲と言うよりは、ほとんど共作ということになるが)

様々なバージョンが氾濫したショパンの作品だから、なおのこと、
原点(原典)である「ピアノ1台バージョン」によって、
「ショパンが本当に聴きたかった協奏曲の響き」を再確認できると言うのだ。
ということで、ショパンの2曲のピアノ協奏曲両方について、


さて、舞台に毅然と現れた河合さん、今日も清楚な白のドレスがよく似合う。

冒頭は、バッハのインヴェンションの14番 変ロ長調。懐かしい曲だ。
ずいぶんしっとりしたバッハ・・・彼女の持ち味なのだろう。
左手と右手が語り合う。男女の会話のようだ。

以下、すべてショパンの作品が続く。
最初期の作品、ポロネーズWN1は7歳で作曲。
7歳!? しかも、ある意味モーツァルトより複雑な楽譜だ。なんという早熟!
10代で作曲したマズルカは弾んでいる。こんなトリルや装飾音符を誰に教わったのだろうか?
キラキラしたトリルは、若い美形の男性バレエ・ダンサーが跳躍中に両脚を
目にも止まらぬ速さでパタパタ打ち合わせて着地してポーズを決める、あれを思わせる。

「さあ僕の(または私の)練習の成果(または芸術)を聴いてちょうだい(または聴きなさい)」と言われているようなコンサートで、気合いの入ったピアノ・リサイタルは苦手だ」
と、ある音楽ライターさんのブログに書いてあったが、確かに聴き手も緊張する。

しかし、ソロ・リサイタルというのは大変なことだと思う。
「仲間と力を合わせる」オーケストラや合唱と異なり、ソロの演奏家は舞台上にただ一人。
その日の調子の良し悪しが、ミスタッチ一つにいたるまで否応なくバレる。
もちろん、プロの演奏家の道を選んだのだから、そんなことは当たり前かもしれないが、
身一つで舞台に立つ一人の人間が、目の前で渾身の芸を披露するとき、
聴き手も一人の人間として、畏敬の念に打たれつつ、同時に応援するような心持ちになる。
だから、多少のミスタッチは許せてしまう。機械じゃないんだから。
(あんまりひどいとプロとは言えないが)
それより、演奏者が全身全霊で打ち出してくる音色や調べを受け取ろうと思う。

とくに、今日のコンチェルトのピアノ1台バージョンのような「チャレンジ」には、
思わず「最後までがんばれ」と祈るような気持ちで固唾をのんで見守ったのだった。
大団円で上昇するパッセージを鍵盤の左端から右端まで駆け上がった手が高らかに上がり、
ラストの低音がずしんと鳴り響いたとき、演奏者と達成感を共有したような気すらした。
いや、協奏曲を全部自分で弾くのは大変だ。40分間弾きっぱなしだもの。
普通はソロパートを弾いた後、しばらく「休める」ところであるはずの
オーケストラ部分まで、引き続き自分で弾くのだから。

ソリストと指揮者とオーケストラのコラボレーションによる
掛け合いの妙と音色のバリエーションが協奏曲の魅力だとすると、
一人バージョンはやや単調になるが、それでも一人でこなせるのは、ピアノならではである。
一人であるから、指揮者と趣味が合わないとか、オケとテンポがずれる
といったことは起こらず、すべてをピアニストが完全に支配して、
「ショパンはこう言いたかったんだと思います」
というメッセージをあますところなく伝えてきた。

とくに、今日の2楽章のラルゲットはすばらしかった。
オケへの気兼ねが不要なバージョンだからこそ、河合さんのペースで思う存分歌い上げる
まさに天界のラブソングである。冒頭のバッハよりさらにしっとりと、
それこそ、ショパンの意思が、河合さんを霊媒にして降りてきているのか
と思うほどの旋律だった。

アンコールには再びバッハのインヴェンション。今度はハ長調の会話だ。
そこで、静かに終わるのかと思いきや、さらにもう一曲。
このあいだの東京ニューシティ管のコンサートのアンコールと同じく、
怒涛の「革命エチュード」が来た。彼女の十八番なんだろうか?
ピアノに乗りかからんばかりに激しくうねるアルペジオとたたきつけるようなアクセントは、
「私は一生をショパンに捧げています」
という決意を示しているように今日は聴こえた。

次回第7回は、2009年の1月24日。同じく、浜離宮朝日ホールにて。
今度はピアノ協奏曲第1番ホ短調のピアノ1台バージョン(これもショパン自身による)を
演奏する由。また聴きに来よう。















お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008年06月29日 22時50分24秒
[音楽] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

harvestみのり

harvestみのり

カレンダー

お気に入りブログ

ガムザッティの感動… gamzattiさん
ライターかあさんと… プチプチゆっきーさん
ほよほよ部屋 ほよほよぴょんさん

コメント新着

harvestみのり @ Re:やけど(09/02) みなさん、温かいコメントありがとうござ…
ユニ育しようよ♪/重度脳障害児のママ/こがに @ Re:やけど(09/02) あ・・・「ヤケド部分にアロエを切ったも…
ユニ育しようよ♪/重度脳障害児のママ/こがに @ Re:やけど(09/02) すっごくヒリヒリしませんか?私もよく、…
ハハ@ 病院に行った方が? 大きなやけどですね。水ぶくれが破れたあ…
らんこ@ お大事に! もう遅いアドバイスだけど、やけどをした…

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: