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2018.01.14
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カテゴリ: 探訪 [再録]
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京都市伏見区の府道35号線と深草直違橋通が交差する 直違橋一丁目の交差点を北に上がった西側に「西岸寺 (さいがんじ) 」があります 。​ 地図はこちらをご覧ください。

冒頭の画像は、現在は 浄土真宗本願寺派に属している西岸寺の山門 です。
山門の左側に、寺名を刻した石標が立ち、上部には 「親鸞聖人御旧蹟 玉日姫御廟所 九条関白兼実公遺蹟」 と刻されています。
旧伏見街道を自転車探訪した日にまず最初に訪れたのが実はこの西岸寺です。ここと藤原俊成の墓のある場所を訪ねた後に、思いつきで始まった探訪記が前回再録したシリーズでした。 西岸寺を訪れたときのまとめを再録しご紹介します。


梅原猛著『親鸞「四つの謎」を解く』 (新潮社) という本を読んだことにあります。 著者は四つの謎の一つに、「親鸞の結婚の謎」を取り上げ 、諸研究者が親鸞の正式な妻と認める 惠信尼の前に、当時の関白九条兼実の娘である玉日姫と結婚していたのかという点に論及していたのです。
著者は玉日姫の存在を論及する際に、 文献『親鸞聖人正明伝 しょうみょうでん 』の見直しにより考究 しています。この書に関連して、
佐々木正著『親鸞始記 隠された真実を読み解く』 (筑摩書房) を先駆的な本として参考にしたと紹介されています。
これらの本に出てくるのが、この西岸寺にある「玉日姫御廟所」なのです。


駒札 には、寺伝によると、 ここは藤原忠通が建立した法性寺 (ほうしょうじ) の小御堂 (こみどう) が建っていたところ と言います。 親鸞聖人は六角堂での夢告体験の後、忠通の子である九条兼実の娘・玉日姫を妻として迎えたとされているのです。

承元元年(1207)、いわゆる 「承元の法難」 により、専修念仏禁止が朝廷より出され、法然は土佐に、親鸞は越後に配流となります。 (駒札、資料1,2,3)




山門を入ると南側に、建仁寺垣を背景とした細長い庭が作られています。
親鸞聖人像 が小庭の西端に建立されています。

                            正面に本堂が見えます。
 本堂正面の 「法性寺小御堂 西岸寺」の扁額



向拝の左側に掲示板があります。 玉日姫御廟所の修復に伴う発掘調査が行われた際の記録写真 が参考に掲示されています。ここで一部引用し、ご紹介します。
発掘調査は京都市埋蔵文化財研究所によって、2012年4月4日~13日に実施されたそうです。


本堂のすぐ左側に 「親鸞聖人御裏方 玉日姫君御廟所」の碑が建立された廟所 があります。

これは当寺に安置されている玉日姫の木像写真 だそうです。掲示板の左上角にまず掲示されています。

この銘板碑が合わせて設置されています。
以降では下段に掲示板の掲載写真を撮ったものを引用します。

上記の佐々木氏の本には、『親鸞聖人正明伝』の原文と訳が掲載されています。その中に、法然上人が九条兼実に説明した事に対し、さらに「念仏の功徳に差別がないのであれば弟子の中より一人、一生不犯の僧を差し向けて頂いて末代の在家の者が、男も女も差別なく往生できる模範にされたらどうでしょうか」と問いかけたのです。それに対し、救世観音の霊夢の文を知っていた法然が、綽空(=親鸞)に「貴方が今日から兼実公の仰せにしたがいなさい」と即座に言ったそうです。その結果、親鸞が兼実の娘・玉日姫を娶ることとなった経緯が記されています。『正明伝』には、兼実は綽空を同じ車に乗せて帰り、五条西洞院の邸宅を新居にして、玉日姫(18歳)を綽空(29歳)と結婚させたと記すのです。 (資料4)


廟所の正面。廟所は東面しています。  廟所の修理前の写真が掲示されています。
北東側からの廟所

「着手前元況」の写真 。基壇側壁が修理されたようです。
基壇の上の御廟

「一次鋤取」の写真 では、 この場所に桜木が植えられていた ことがわかります。

石造廟の中に安置されているのは、樹木の根の部分のように見えます。
この樹木が上掲の「約40年前の桜木」じゃないかなと勝手に推測しています。 間違っているかもしれません。

                掲示板には発掘調査中の写真が掲載されてます。



      骨壺と骨があったそうです。

御廟所の北側に境内の墓域の境界としてのフェンスがあります。
そこにもう一つの石標が目にとまりました。

正面から見ると 「祖師聖人御𦾔蹟 玉日君御廟所 小御堂 西岸寺」 と刻されています。説明はありませんので推測ですが、ひょっとするとこれが以前に門前に建てられていた石標かもしれません。
傍に安置された石塔は誰を供養するものでしょうか。この石塔だけがフェンスのこちら側に安置されているのも何か不可思議・・・・。この位置に安置されていたままで維持されているということなのかもしれませんが。私の推測は未確認の印象にとどまります。

一点補足しておきたいと思います。 明治以降においては、玉日姫と親鸞聖人の関係を実証史学の立場からはほとんど論じられずに来ているようです 。近年ある本に出会い、知ったことからスポット探訪した結果をご紹介したわけです。その後、ネット検索で 『拾遺都名所図会』 を見ていて、西岸寺の項目が記載されているのを見つけました。次のとおり説明が記されています。
「深艸 (ふかくさ) 中之村町にあり、真宗にして西本願寺に属す。開基は九条殿下兼実公の息女玉日君 (たまひのきみ) なり、則ち親鸞聖人の御台所なり。聖人北国左遷の後、玉日君此地に止住し給ひ、家臣村田采女に譲り往生し給ふ旧跡なり。采女聖人の教法をうけ剃髪し、有阿弥と名乗、当寺を建立す」 (資料1)
この書は、江戸時代に出版された『都名所図会』の続編的な位置づけの書です。当時の史跡案内書、観光ガイドブックの類ですが、 江戸時代の人々には、玉日姫が親鸞の御台所(妻)だったという考えが伝えられていたということでしょう。

境内の掲示板には 松尾剛次著『知られざる親鸞』 (平凡社新書) のカバーの紹介もありました。この玉日姫について論及されています。この掲示を見て、後日拝読しました。
一方梅原著に出て来ますが、研究者グループのペンネーム・ 西山深草著 とする 『親鸞は源頼朝の甥 親鸞先妻・玉日実在説』 (白馬社) という書も出版されています。
これらは未読ですので、いずれ読んでみようと思っているところです。
補遺に載せましたが、西岸寺のホームページには、西岸寺について書かれている書籍として、その他にも紹介されています。

玉日姫のことは、親鸞の生涯における謎の部分の一端なのかもしれません 。それは歴史資料の読み方とも関係していて、実証主義歴史学では解けない領域に位置するようです。
親鸞の実像に迫る上で、やはり無視できない遺跡の一つであることには間違いないと思います 。だからかもしれませんが、若き日の親鸞を想像する上でロマンを感じます。

ご一読ありがありがとうございます。

参照資料
1) ​ 第12回 承元の法難 ​  :「真宗高田派本山 専修寺」
2) ​ 承元の法難 ​  :ウィキペディア
3)​ あいつぐ法難 ​ :「浄土宗」
4)『親鸞始記 隠された真実を読み解く』 佐々木正著 筑摩書房 p178-185

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
西岸寺 ​ ホームページ
 「京都西岸寺玉日姫御廟所の発掘とその意義 玉日姫は実在した?  
   山形大学 松尾剛次教授」という玉日姫御廟所発掘記念講演の要旨が
 「BOOKS」のページに掲載されているのを見つけました。
玉日姫の実在説に新史料 ―「親鸞と結婚」話に真実性 ​  :「中外日報」
     山形大教授 松尾剛次氏  2013年2月21日付 中外日報(論・談)
本願寺 ​  :「公家類別譜」
○結婚 ○非僧非俗 ​  千葉昭彦氏 :「安楽寺」
親鸞実像研究に想う ​ :「人生いろいろ 余生を愉しむ」

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読後印象記のご紹介兼覚書として開設しています。そして読後印象の拙文を載せています。上掲書の読後印象を載せていますので、そちらもお読みいただけるとうれしいです。
『親鸞「四つの謎」を解く』 ​  梅原 猛  新潮社
『親鸞始記 隠された真実を読み解く』 ​  佐々木正  筑摩書房






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Last updated  2018.01.14 22:26:00
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