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ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)第2回■聖なる水の僕■(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第2回 彼らは遠くに存在する宇宙溝から飛来してきた。ここへ到着するまで、かなりの距離だった。時間の概念は彼らにはあまり重要ではない。その間、星の生物への接触方法については、彼らの間で、議論されていた。宇宙の闇は深く、彼らの心の中にもまた深い悩みがあった。今回の任務は特殊だった。使命感だけが彼らをつき動かしているのかもしれない。 彼らの体はまた飛行体そのものであった。金属、非金属でもない特殊な物体。それゆえ、いかなる星の探知装置にも発見されなかった。 この生物の取り扱いについては注意を要する。彼らのとりあえずの結論だった。太陽系近辺で停止して、まわりを観察する。 飛行物体中に含まれる、意識体同士が会話をしていた。彼らは多くの意識体の結合体である。『このあたりかね』『指令書によると、そのようです』 目の前を、極めて幼稚な飛行体が動いていた。『何か、飛行体が通過します』『かなり、原始的なものだねえ』『ひょっとして、あの飛行体は、目的星の所属物かもしれませんね』『一度、調査してみよう。生物体が存在するかもしれん』 彼らはその飛行体に乗り移った。 タンツが緩やかな眠りから目覚める。もう、到着したのか、いつもながら、冬眠からの目覚めはけだるかった。あたりがはっきりと見えない。変にゆがんで見える。長い宇宙航行で、私の視覚がおかしくなったのか。 タンツは、おかしなことにきずく。私は、ここはカプセルの中ではない。おまけに、ここはどうなっているんだ。 たしかにウェーゲナー・タンツ、宇宙連邦軍大佐は、ウァルハラ号の中にいた。この船は恒星間飛行中のはずだ。 が、タンツの体のまわりは水だった。おまけに、水の上にいるのではない。水の中にいるのだ。なぜ、私は呼吸ができるのだ。タンツは不思議に思った。とりあえず、その事実を受け入れざるを得ない。ともかく、息をしている。 それに、このウァルハラ号はどうなっているのだ。タンツは航行装置のチェックをしょうと思い、コックピットに向かう。 ウァルハラ号の中は、どこもかしこも水で満杯のようだった。空気がまったくない。タンツはようやくのことであ、コックピットへたどり着く。行く先の方位座標は地球となっている。「地球だと」タンツはうめく。さらに地球暦の日付をチェックする。2020年8月15日。 タンツがニュー・シャンハイの宇宙空港から飛び立った日が2020年3月10日。冬眠状態のまま、恒星タンホイザー・ゲイトにむかうはずだった。タンホイザー・ゲイトにつく時期まで、タンツは目覚めることはないはずだった。が、今タンツは目覚めていて、ウァルハラ号は再び、地球へ向かっている。ロケット一杯の水をつめこんで。「くそっ、一体どうなっているんだ」 タンツは毒づいて、地球司令室へ連絡しょうとした。タンツの肩をその時、誰かがつかむ。ギョッとしてタンツは後ろを振り向く。誰もいない。当たり前だ。この船の生命体はタンツだけなのだから。 しかし、何かがいる。タンツは心の中でだれだ、と叫んでいた。『タンツ、我々の存在にようやく気がついたようだね』タンツの耳に、声が響いてきた。「誰だ。何者だ」『姿をあらわしてほしいかね、タンツ』 タンツはトラブルを望んでいなかった。彼はこの恒星間飛行を人類初めての飛行を、ともかく、成功させたかった。名誉を得たかったのだ。が、タンツの前の水中に、不透明な何者かが、複数、姿を取り始めた。「おまえ達は、いったい」『聖なる水』彼らはそういう意味の言葉をタンツの頭にイメージとしてほおりこむ。その瞬間コックピットにある通信機器がつぶれるのが、タンツの目にはいった。地球本部との連絡は不可能になった。自分で解決せざるを得ない。『マザー、どうすれば』タンツは心の奥でさけんでいた。マザーコンピュータのことである。「聖なる水、聞いたことがない」タンツはひとりごちる。『タンツ、今、君に説明してもわかりはしまい。時間がかかるだろう。ただ、言えることは、君たち地球人類をカイホウしに来たのだ』「我々をカイホウする。何からカイホウするというのだ」『タンツ、怒るな。我々に協力してもらえないかね』「協力しろだと。笑わせるな。俺は宇宙連邦軍大佐ウェーゲナー・タンツだ。君達、侵略生物になぜ、協力しなければならんのだ」『我々は、いわば宇宙意識なのだ。その宇宙意識で、ひとつになろうという提案だ』「それゆえ、私のロケットを占領したのか」『ちょうどいいところに、君の船がとうりかかったのだ。中を透視すると、地球人の君がカプセル内で冬眠していたのだ。我々は、君さらにこの船のコンピューターから、地球の知識を読み取った』「私は宇宙連邦軍のウェーゲナー・タンツだ。侵略者である君たちのいうことを聞くわけにはいかん」『我々は侵略者ではない』「使節というつもりか。それなら、正式の手続きを踏め」『どうやら、聞き分けのない個体をえらんだようですね』水人のひとりが言った。 タンツは壁のボックスに装着してある銃をとりあげ、水人をめがけ撃った。が、熱線はむなしく水中に消える。『我々にはそんなものは通じない』『しかたがない』『我々の命令を、しばらく黙って聞いてもらおうか』 「何だと、お前たちのいうとうりにはならん」タンツは自殺しょうとした。このままでは、自分の知識が悪用されると思ったからだ。が、この生命体の反応の方が早かった。タンツは気を失った。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009.04.02
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕 第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」ウオーター・ナイツー聖なる水の僕 第1回 クルツはおびえていた、自分自身でもそれがよくわかった。誰でも、いつかは通過しなければならない同化儀式だと、自分自身にいいきかしていた。自分自身を破壊しかねない恐れだった。クルツは町中へ来て、ウォターステーションへむかっている。今日の朝、彼は決心したのだ。地球人類にとっての決断の時、通過儀式。地球人類の一人一人が、自分で決心しなければならない儀式だった。 聖水が飛来した時から、地球の歴史が変わったといっていいだろう。新しい歴史の幕開けだった。「聖水に受け入れられるかどうか」混乱と騒擾。新しき者への生まれいずる悩み。そんなものを地球人類が体験したといっていいだろう。クルツは、わきがじっとりとぬれているのにきずく。怖い。想像を絶するモノとのコンタクトなのだ。恐怖を感じない人間などいるだろうか。聖水が彼Kを受け入れてくれうかどうか。もし受けいれてくれなければ。 ああ、そんな事はありえまい。考えたくもない。消極的な考えは捨てなければ。クルツは思った。 冷や汗がひどい。手のひらがじっとりとしていた。季節はもう冬が近いというのに、クルツの体は、真夏の太陽に焼き付けられたかのようにじっとり汗ばんでいる。おまけににおう。恐怖ゆえのアドレナリンの分泌。自分の歩みが、いつもより、ゆっくりとしているのにきずく。 もしだめだったら、自分はこの地球にむすびつけられたままだ。この地球から逃げ出すこともできない。宇宙に飛び立つこともできない。この地面にむすびつけられたままなのだ。自由に移動することもできない。 ウォーター・ステーションの前に来ていた。いよいよだった。ウォーター・ステーションの略WSのデザイン化された文字が芽に飛び込んでくる。いよいよだ。運命の一瞬だ。生死を決めるのに等しい。アールヌボー風に飾られたウォーター・ステーションの、地下に向かう階段の手すりを持つ。冷たい。その冷たさが、クルツののぼせ上がった頭のシンに変に響く。廊下が奥の方につずいていた。壁に昔の広告のビラがまだ残っていた。すばらしき時代、資本主義のなごりだ。大きなビルボード(広告看板)の美少女の顔がほこりだらけだった。たしかTVタレント。今はどうしているのだろう。彼女たちも、今のクルツと同じ様に、この通過儀式を受けたのだろうか。そう、TV。クルツがTVをみていたのは14、5年前だが、もう大昔のような気がした。 ゆっくりと、ビルボードが続くWSの奥へとクルツは進んでいく。 突然、クルツは記憶が蘇ってくる。このWSは昔、地下鉄の駅として使われていたのだ。クルツは両親に連れられて、ここに来たことがある。 地下鉄。聖水記以前の交通機関。今はもう使われていない。現在はこの張り巡らされた聖水ルートが、いわば交通機関なのだ。 聖水に受け入れられるかどうか。 それが、今の人類個々人の最大の問題だった。クルツは昔のチケットゲートの跡を通過する。ロッカールームにたどり着く。が他の人間がロッカールームにいた。クルツは、名前を知らないが、エーアイだった。 驚きがクルツの心を襲う。きまずい雰囲気だ。お互いに眼を合わせないように、部屋の隅にあるロッカーに陣取る。 クルツは一人でいたかった。だから、他の人にはいて欲しくなかった。失敗した時のことを考えると。 がウォーター・ステーションのゲートをくぐったものはあともどりができない。自らの待つ運命を静かに受け入れざるを得ないのだ。 クルツは服を脱ぎ、ロッカーにほうり込む。このロッカーは処理機になっている。服は自動的に処理された。 クルツが、人間として生きていたという証拠はロッカーの中に服をほうり込んだ瞬間に消えていた。クルツの服には、彼のパーソナルヒストリーが読み込まれていた。服は個人のデータファイルなのだ。コードが自動的に消滅した。 聖水プールが広がっている。このプールは地中深くの聖水ルートとつながっている。20m平方の部分だけが、夜行灯でライテイングされていた。 遠くの方は、聖水の流れる音と暗渠が待っているだけだった。 クルツはプールの端にあるステックバーをつかみ、右足から聖水にはいっていった。 生命波を感じた。そうとしか言いようがない。自分の体が、少しずつ生命の中で溶けていくのが、クルツにもわかった。 個人の記憶。クルツの記憶がまるで大きなボウルの中にほうりこまれたような感じだった。人類数千年の記憶、そんなものかもしれない。自分が地球人類の一人であり、また全体であるような感じもする。 聖水プールはDNA情報プールだ。 人間の記憶、また細胞の記憶。DNAのひとつひとつが分解されていく。それが収斂し、別の生命体となる。クルツの意識は、その儀式で自分以上の上位の概念と結び付いていた。 クルツと同じウォーター・ステーションで、成長の儀式をうけていたエーアイの反応は異なっていた。エーアイは聖水に対する刺客である。体の成分が聖水に対する毒素であると創造者から言われていた。自分の氏素性が聖水に読み取られるのではないか。その恐れの方が大きかった。 が、エーアイの体も、クルツと同じように少しずつ溶けていった。『彼を受け入れるかね』『彼を受け入れて、創造者・タンツとマザーの現在の居場所を探るという手があるね』『創造者が、彼も大仰な名前をつけたものだ』『彼もはやく、我々のことを理解してほしいね』『いやはや、彼には、理解するのは無理かもしれないがね』 水人の意識レベルの会話だった。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009.04.01
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