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名作・ 海と毒薬の続編 だったのですね。
モチーフは似ているなと思いましたが医師の名前まで同じとは途中まで気がつきませんでした。
戦時下の人体実験という重いモチーフに
戦後この勝呂医師がどのように生きてきたのか、
心の痛みをどのようにかかえているのかを垣間見、
その周囲の人々のそれぞれの立場からのこの医師へのかかわりを
描いています。
この小説の中で印象に残るのはポナバルト・ガストン。
宣教師でもなくヒッピーでもなくただ悲しんでいる人を笑顔にしたくて
無償の行いをするフランス人ですが最後のほう、
勝呂の夢の中でガストンはイエスと名乗るように
小説中、ガストンは著者のイメージするイエスとして描かれているようです。
でも私がイメージしたのはイエスというより宮沢賢治の "アメニモマケズ"。
何も出来なく困った人と一緒にオロオロし、
悲しんでいる人と一緒に悲しむけれど
決して問題の解決など出来ない 無力の人。
無力でおバカと思われるほどのお人よしでなければイエスの愛には近づけないってことなのでしょうか。
遠藤氏のほかの作品にもおおきな愛を描かれた小説にはこのような人物がよく出てきますしね。
ガストンが主人公の"おバカさん"という小説も未読なので是非読んでみたいです。
ところで!
このガストンなんとモデルがいるそうです。
ジョルジュ・ネランという歌舞伎町にスナックを開く謎の神父。
この人の自叙伝もあるようなのでこちらも是非読んでみたいです。
ちなみにこの方、ついこの間米寿のお祝いを迎えられたそうです。
エポぺ
と言うお店だそうですが、行ってみたいな。
話を戻して小説ですが。
信心のない私には神様なんて偉すぎて一人一人にはかまってられないような
イメージの存在よりもただ一緒にいてくれる存在のほうが
ずっと親しみが持てるような気がします。
あともう一人印象的だったのが
正義を振りかざし勝呂を追い詰める新聞記者。自分は正しいと信じきっているある意味純粋だけれど同時に
残酷なこの記者には若さゆえのものを感じました。
この記者のその後の小説などあったら読みたかったですが、遠藤周作氏なきあと、続編は望めないですね。
残念です。
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