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久々の「家で出来る」シリーズ。今回は寒い時期に飲みたくなる「ホットカクテル」について書いてみたいと思います。実はホットカクテルはそんなに難しくありません。お好みのホットドリンクにお好みのアルコールを加えるだけ。「こんな組み合わせはどうだろう?」と思ったら、手持ちのお茶やコーヒーにお好きなアルコールを入れてみるくらいの感覚でも作れるのです。とはいえ、絶対的なルールがひとつだけあります。それはグラス(もしくはカップ)に入れる順番は1にホットドリンク、2にアルコールということ。例えばウイスキーのお湯割り。「ホットウイスキー」として海外でも親しまれている飲み方ですが、ウイスキーを先に入れて上から熱々のお湯を注ぐと、せっかくのウイスキーの香味成分が揮発してしまいます。せっかくホットカクテルを作るのであれば、アルコールの味や香りも楽しみたいところ。ホットドリンクを先に注ぐことで僅かに温度を下げ、そこにアルコールを足すという順番にするだけで、香りや味わいがグッと深まるのです。なので、この順番だけは「鉄則」として覚えておいて下さいね。では、「家で出来るホットカクテル」をご紹介していきましょう。今回はご家庭にある材料で出来るホットカクテルということで、「コーヒー編」と「紅茶編」の2つを一気に紹介していきます。ちなみホットカクテルのレシピは全て、ホットドリンク150ml、アルコール30mlで作ることを前提として書いてありますが、アルコールの量はお好みでOKです。【コーヒー編】温かいコーヒーにアイリッシュウイスキーを注ぐと、Bar Opus 冬の定番「アイリッシュコーヒー」になりますが、このアイリッシュコーヒーはとても兄弟の多いカクテル。アイリッシュコーヒー:アイリッシュウイスキー+ホットコーヒーゲーリックコーヒー:スコッチウイスキー+コーヒーノルマンディーコーヒー:カルバドス+コーヒーフレンチコーヒー:ブランデー+コーヒーこのあたりは名前は違えど、みんな茶色いお酒+コーヒーというシンプルなもの。名前はついていませんが、ジャパニーズウイスキーなどでももちろんOKです。カフェ・オランジェ:グランマニエ+コーヒーカリプソ・コーヒー:コーヒーリキュール+コーヒー他にも名前は無いですが、コアントロー+コーヒーカカオリキュール+コーヒーなんかも美味しいですね。当店でアイリッシュウイスキーを飲んだことのある方はご存じかと思いますが、スタンダードなアイリッシュコーヒーにはホイップした生クリームがのせてあります。しかし、今回は「家で出来るホットカクテル」なので、細かいことは気にしなくてOK。砂糖の量もお好みで調整して下さい。生クリームは面倒くさいけど、乳成分は欲しいという方はミルクを少し入れてもいいですね。【紅茶編】紅茶を使ったホットカクテルと言えば、ブランデー+紅茶この組み合わせが王道中の王道。かのヤン・〇ェンリーも愛飲していた組み合わせですね。個人的にはコニャックに少しマールを加えて紅茶に垂らすと、得も言われぬ香りが立ち上って幸せになれます。ですが、それだけでは芸がないのでバリエーションを少し。ピーチリキュール+紅茶アプリコットリキュール+紅茶マスカットリキュール+紅茶コアントロー+紅茶グランマニエ+紅茶などなど。紅茶も懐が深い飲み物で、大概のアルコールはしっかりとカクテルとしてまとめ上げてくれます。ちなみに上記の組み合わせを見て気付いた方もいるかもしれませんが、フレーバードティーに含まれることのある材料は大体何でもOKです。アップルリキュールとかぶどうリキュールなんかも組み合わせ可能ですので、家で余っているリキュールがあったら、とりあえず温かい紅茶にひと垂らししてみるのもいいかもしれませんね。ストレートティーのフレーバーを強調したい方は紅茶リキュール+紅茶なんていう組み合わせもアリですね。というわけで、「家で出来るホットカクテル」今回はここまで。「この材料はウチにもある」という方も多かったのではないでしょうか。寒い日が続きますが、時にはホットカクテルで心と身体を温めてみて下さいね。Enjoy your Bar life!
2021.02.05
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サウナがブームになって久しい昨今、風呂上がりの1杯にも変化が訪れつつあります。かつては風呂上がりと言えばビールか牛乳が定番でしたが、最近は「イオンウォーター」の有無がサウナのポータルサイトに掲載されていたり、銭湯協会がビールフェスをやったりと、新しい動きが生まれています。中でも最近、俄かに話題になっている「オロポ」というドリンクのことはご存知でしょうか?「オロナミンCのポカリスエット割り」略して「オロポ」(もしくは「オロポカ」)。一部のサウナやスーパー銭湯の飲食コーナーで供され、昨年、ドラマ「サ道」で一気に知名度が上がったサウナー御用達の風呂上がり専用ドリンクであります。今回はそんな「オロポ」をバーテンダー目線で考察してみたいと思います。そもそもカクテルとは何か。2種類以上の材料を混ぜ合わせたドリンク。それはその通りです。ですが、カクテルをカクテルたらしめている最も大切な要素とは、2種類以上の材料を混ぜ合わせることで「新しい味を生み出すこと」なのです。つまり「材料のどれか1つの味が突出してはいけない」ということですね。ネットで「オロポ」について検索してみると、多くのサイトで「オロナミンCとポカリスエットを1:1で混ぜたもの」という記述が見られます。この「1:1」という比率が本当に「オロポ」という「カクテル」のベストミックスなのか、検証してみましょう。暇人とか言うな。カクテルは、甘味・酸味・辛味のバランスを調整することで新しい味を生み出します。この場合、ポカリスエットの「甘味」とオロナミンCの「酸味」の両方を最もバランス良く感じられる比率が「オロポ」のベストミックスということですね。まずは定番の「1:1」から。オロナミンCの酸味を強く感じ、ポカリスエットの甘味が押し負けているイメージ。次に「1:2」。ポカリスエットをオロナミンCの倍量入れてみます。当然のように炭酸は弱まりますが、甘酸のバランスはかなり良くなりました。では「1:3」だとどうでしょうか。これだとかなり甘め。少し酸味のあるポカリスエットというか、違うメーカーのスポーツドリンクでありそうな味です。ということで、カクテルとしてみた場合、オロナミンCとポカリスエットを「1:2」で混ぜるのが「オロポ」のベストミックスレシピという結論になりました。ちなみにハイボールの話でも書きましたが、人間の味覚は温度によって知覚する味わいが大きく変化します。「オロポ」の場合、温度が高いほど甘味を強く感じ、低いと酸味を感じます。これを踏まえ完成した、より美味しく飲める「Opus流オロポ」レシピがコチラ。①氷を詰めたグラス2/3までポカリスエットを注ぎます。②ポカリスエットをよくステアして、温度を下げます。③グラスの残り1/3をオロナミンCで満たします。④炭酸が抜けないよう軽く1回転ステア。これで完成です。材料は全て冷蔵庫で予冷してありますが、混ぜる前にポカリスエットだけを氷とステアして、更に温度を下げてあげることで、より爽やかで輪郭がクッキリとした味わいに仕上がります。たまにはノンアルコールで肝臓を休めつつ、温かいお風呂と冷たいオロポでゆっくりと身体を癒してあげましょう。Enjoy your Bar Life!
2020.08.22
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Bar Opusで人気のカクテルに「モスコミュール」があります。生姜から手作りした自家製ジンジャーエールを使ったカクテルなのですが、なぜわざわざジンジャーエールから作っているのかと言うと、現在市販されているジンジャーエールは、ジンジャーエールであってジンジャーエールではないからなんです。試しに有名ブランド品の原材料を見てみましょう。材料のどこにも生姜が使われていないのが分かると思います。モスコミュールが生まれたのは、1940年代。一説にはジンジャービアが使われていたという話もありますが、いずれにせよ今のようなライトな生姜風味飲料では無く、しっかりと生姜が効いた古式ゆかしいジンジャーエールを使っていたことは確かです。そして、ここは個人的な考えになりますが、材料の数が少ないクラシックカクテルは、材料ひとつひとつの味が濃い時代だったからシンプルな方が美味しかったというのがOpus流のカクテルメイク。故に、材料がウォッカ、ライム、ジンジャーエールのみで成立するシンプルなモスコミュールには、昔ながらの強烈な風味のジンジャーエールが必要だということですね。前置きが長くなりましたが、今回はそんな「自家製ジンジャーエール」の作り方をお教えしたいと思います。用意する材料はこちら。【材料】生姜 150g(皮を剥いた状態。スーパーの2個入りパック換算で3パック)グラニュー糖 150g蜂蜜 20gシナモンスティック 1本クローブ 4個鷹の爪 1本レモン汁 20ml(ポッカレモンなどでも可)【作り方】①生姜の皮を剥き、グラニュー糖と一緒にフードプロセッサーにかけ、5分置く。②生姜の水分が出てきたら、もう一度フードプロセッサーを回す。(生姜の水分が加わることで、1回目よりも細かく生姜を挽くことが出来ます。)③蜂蜜、シナモンスティック、クローブ、鷹の爪を加え、30分置く。鷹の爪は片側を切って、中の種を抜いておく。④全てを小鍋に移し、弱火で10分火にかける。⑤全体に粘度が出てきたら火を止め、シナモンスティック、クローブ、鷹の爪を取り出して、レモン汁を加える。⑥消毒した容器に移して冷蔵庫で保管する。工程① 生姜とグラニュー糖は重さが同量であれば、厳密に150gで無くても大丈夫です。工程② 2回目のフードプロセッサーにかけた状態。回転速度を調整出来るタイプの場合は、最高速に設定して下さい。工程③ ハーブと蜂蜜。ネット上にあるジンジャーエールレシピも様々なので、お好みでハーブを変えても◎。鷹の爪の種は抜かないと辛口になります。工程⑤ 煮詰め終わったらハーブを取り出して、工程⑤ レモン汁を加えます。レモン汁は味を引き締める効果がありますが、保存料としてのクエン酸の代用でもあります。工程⑦ 消毒した小瓶に保存します。生姜150gのレシピだと、150~200ml程度の保存瓶がちょうど良い大きさ。消毒は煮沸消毒かアルコール消毒で行います。アルコール消毒の場合は、高濃度の飲用アルコールを使い、乾かしてから使いましょう。これで出来上がり。飲むときはグラスにティースプーン2杯程度のジンジャーエールの素を入れ、氷とソーダで満たせば、いつでも手軽に自家製ジンジャーエールが楽しめます。マドラーがあると、生姜が底に沈んだときも簡単にかき混ぜられて良いですね。もちろんウォッカとライムを入れて「モスコミュール」で楽しむのもOK。寒い日には、ジンジャーエールの素をお湯で割ってジンジャーティーとして飲むめば風邪予防にも。他にもジン、ライム、自家製ジンジャーエールで「ジンバック」など、楽しみ方は無限大。暑い夏に「自家製ジンジャーエール」と「モスコミュール」是非お試しを。Enjoy your bar life!
2020.07.29
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カクテルの王様と言えば「マティーニ」。バーで最もよくオーダーされるショートカクテルです。ジンとベルモットをステアして、オリーブを飾る。シンプルであるが故に、バーテンダーの腕が問われるカクテルでもあります。実際、マティーニは店ごと、バーテンダーごとに違うレシピを持っているのが当たり前で、そのバリエーションも非常に豊か。海外ではあまりにも派生系が多すぎて「パーソナルティーニ」などと呼ばれることもある程です。そんなマティーニですが、家で作ろうと思うと意外と面倒くさいのが悩みどころ。ミキシンググラスが無い。カクテルグラスが無い。冷蔵庫にベルモットを入れるスペースが無い。etc...今回はそんな専用の道具を使わずに、ご自宅で、いつでも気軽にマティーニを楽しめる方法をご紹介します。用意するのはこちら。・マティーニを詰める瓶・100均の小型計量カップ・ジン・ベルモット・オレンジビターズ・オリーブ今回はこれらを使って、誰でも作れる「ステアのいらない」マティーニを作っていきたいと思います。作り方は非常に簡単。ジン、ベルモット、オレンジビターズを好みの比率で瓶に入れ、冷蔵庫で一晩寝かせます。仕込みはたったこれだけ。大事なのは、飲むときにロックで飲むこと。なぜか。ステアという技術は「3つの目的」をもって使われます。1.材料の混合2.温度の調整3.水分量の調整要は、材料を混ぜ、そのカクテルを最も楽しめる温度に冷やし、カクテルに少しの水分を加えるという3つの作業を同時にするのが「ステア」なんですね。1と2は分かるけど、3はどういう意味?という方も多いと思います。実はカクテルに使う材料はそれぞれ比重が違います。比重が違うお酒やジュースは、そのまま混ぜるだけでは見た目には混ざっていても、味そのものはバラバラのままの状態になのです。実際、氷を入れずにステアしたマティーニは、ジンとベルモットがそれぞれ強く自己主張し、多くの方が「アルコールがキツイ」と表現する味になってしまいます。しかし、そこに氷から溶け出した僅かな水分が加わり、比重の違う材料を融合させる接着剤の役割を果たしてくれることで、ジンとベルモットが「マティーニ」というカクテルになるのです。つまり、材料を事前に混ぜ、冷蔵庫で冷やす → 1.材料の混合 2.温度の調整ロックで飲む → 3.水分量の調整という工程で、バーテンダーが使う「ステア」という技術の代用をしている訳です。ベルモットの置き場が無い問題が解決してないって?それもご安心下さい。Bar Opusでは、ベルモットやオレンジビターズをお好きな量だけ量り売りでお分けしています。(ダイレクトマーケティング)自宅で誰でも簡単に出来る「マイ・マティーニ」作り、是非挑戦してみて下さいね。Enjoy your Bar Life!追伸マティーニのレシピは千差万別。お好みの比率で結構なのですが、参考までに基準となるレシピを書き記しておきます。なお、200ml程度の小瓶で作ることを想定して、各レシピは3杯分(=約180ml)で書いています。全体の比率が同じであれば、各ご家庭の状況に応じて量を増減しても大丈夫です。オリーブは中に入れても良いですし、小皿に盛って、おつまみとして食べながら飲むのも良いですね。【マティーニ】ジン 135mlドライベルモット 45mlオレンジビターズ 小さじ1(5ml)【ドライマティーニ】ジン 150mlドライベルモット 30mlオレンジビターズ 小さじ1/2(2.5ml)【エクストラドライマティーニ】ジン 165mlドライベルモット 15mlオレンジビターズ 小さじ1/2(よりドライがお好みなら無し)
2020.07.15
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良いホームバーライフを送るためには、良い氷が欠かせません。せっかく良い酒と良いグラスを用意しても、すぐに溶けてしまう氷では美味しく飲むことはできないからです。だからと言って、製氷業者さんから氷を買ってくるのも、普通の方にはハードルが高いと思います。スーパーやコンビニで売られている「ロックアイス」ならいいんじゃないか?確かに悪くはありません。しかし、市販されているロックアイスは氷ひとつひとつを小さくカットしすぎていて、意外と溶けるのが早いのです。ということで、今回は家庭で「簡単に」できる氷の作り方を書いていきたいと思います。用意するものは2つ。100均で売られている蓋付きの製氷皿と同じく100均で売られている袋状のエアパッキン(梱包用のプチプチ)を用意します。氷ひとつひとつが大きい方が良いので、製氷皿を選ぶ際は中が8つに分かれているものを選んで下さい。(もっと大きい氷が作れる製氷皿があれば、そちらでも可。)後はいつもと同じように製氷皿に水を入れ、蓋をします。今回のポイントはここから。冷凍庫へ入れる前に製氷皿をエアパッキンで包みます。冷凍庫に1日置いて出来上がった氷がこちら。これだけ見ても効果がよく分からないと思いますので、エアパッキンに包まずに作った氷の画像と比較してみましょう。左がエアパッキンで包んで凍らせた氷、右は一般的な作り方をした氷です。製氷皿は全く同じ8つ切りのものを使っています。これだけで2つの氷は硬さの全く違う状態に仕上がっています。注目して欲しいのは、氷全体の透明度と白い部分の大きさです。なぜか。水道水やミネラルウォーターの中には、空気をはじめ、いくつかの不純物が混ざっています。その不純物が抜けきらないままの状態で氷になると、透明度が落ち、特に不純物が多い部分が白く濁るのです。実際にバーへ氷を納品してくれる製氷業者さんは、大きな製氷缶を使い、家庭用冷凍庫よりも高い温度でゆっくりと水を凍らせていきます。そうすることで、軽い不純物は大気中に抜け、重い不純物は底に沈んで白く固まるのです。家庭用冷凍庫の一般的な温度はー18℃前後。対して、製氷業者さんが使う冷凍庫はー10℃に設定されています。この8℃の差を埋めるためのアイテムがエアパッキンなのです。常温の状態のエアパッキンと、そこに包まれた空気は、ー18℃の冷気から製氷皿を守り、温度変化の速度をゆっくりにしてくれます。そうすることで水が氷になるまでに不純物を排出する時間を与えてくれるのですね。ここでもう一度、先ほどの画像を見てみましょう。赤く印を付けた部分の大きさが全く違うことが分かると思います。エアパッキンで包んで凍らせた氷は不純物が抜けて少なくなり、氷の反対側が透けるようになっています。対して、通常通りに作った氷は不純物を全体に取り込んだまま凍ってしまい、透明度も低い状態です。氷の溶ける速度の違いは、取り込んだ不純物の量と比例します。透明度が高くて、白い部分が少ない=溶けにくい氷になるというわけです。良い氷は良いホームバーライフの基本。しっかりと硬くて溶けにくい氷を作って、良いお酒と良い時間を楽しみましょう。Enjoy your bar life!
2020.05.17
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「本場スコットランドでは、ウイスキーはストレートで加水しながら飲む」という話を聞いたことはあるでしょうか?確かにスコットランドでウイスキーを頼んだとしても、日本のように飲み方を聞かれることはありません。当然のようにウイスキーのストレートが入ったグラスが出てきます。そして、それと共に必ずテーブルに常備されているのが、水の入ったジャグとスポイトです。しかし、「なぜ加水しながら飲むのか」ということについて詳しく知っている方は少ないと思いますので、今回は「ウイスキーと加水の意味」について詳しく書いていきたいと思います。まず、ウイスキーを加水することによって得られるメリットとは何か。「度数が下がって飲みやすくなる」それもひとつです。しかし、もっと大事なメリットがあります。それは「自分好みの味にアレンジすること」なのです。水を加えても、元の味が薄くなるだけじゃないのかって?その疑問はもっともです。様々な研究がありますが、一般的なウイスキーの香りを成分分析すると、1本のウイスキーの中には80~130種類もの香りが含まれていると言われています。ですが、これらの香りは加水によって均等に増減していくわけではありません。アルコール度数が高い状態で顕著に出てくる香り、アルコール度数が低くなった方が感じやすい香りなど、香りによって性質が違うのです。ウイスキーの香りが度数の加減によって、どのように変わるかのイメージを図にすると以下のようになります。(注)以上の図は説明用のイメージであり、実際の加水によってそれぞれの香りが図のように変化するのが一般的という訳ではありません。「蜂蜜」「樽」「パッションフルーツ」「アルコール」「若草」という5つの香りが、20°~60°のそれぞれの度数の中で、それぞれに顕現しやすい度数、しにくい度数があるのが見て取れると思います。60°では、アルコールの刺激が鼻にきて、パッションフルーツの甘味と若草の爽やかを感じる「パンチのある、爽やかに甘いウイスキー」という評価になるでしょう。40°では、樽由来の木の香りを強く感じ、蜂蜜、パッションフルーツ、若草の香りが複雑に絡み合う「熟成感があり、重層的な甘味が魅力のウイスキー」となります。20°では、アルコールの刺激はほとんど感じず、ウイスキーが持つ個性を詳細に分析出来るようになります。この段階では「蜂蜜様の甘い香りが主体の食前酒向きウイスキー」という感じでしょうか。これは一例ですが、このように度数の変化によって様々な表情を見せてくれるのが、ウイスキーの魅力なのです。「スモーク香が主体のウイスキーだと思ったが、加水したら意外とフルーティだった」とか「フルーツっぽい甘いウイスキーだと思ったら、加水すると爽やかだった」なんてこともあるのです。せっかくウイスキーをストレートで楽しむのであれば、時には加水してウイスキーの「新たな一面」を探してみてはいかがでしょうか。そうすれば、今まで苦手だと思っていたボトルが気に入ることもあるでしょうし、今までお気に入りだったボトルをもっと好きになることもあるでしょう。せっかく家にいる今だからこそ、「加水」を使って1本のボトルとじっくり向き合ってみましょう。Enjoy your bar life!追記今回は、話を分かりやすくするために60°、40°、20°というキリの良い度数で説明しましたが、実際にはほんの僅かな加水でもガラッと味わいが変わることが多いです。スコットランドで加水用にスポイトが使われるのは、1滴ずつ水を加えることで、最も自分好みな味に調整できるようにするためです。自宅でスポイトを使いたい方は100均のもので充分です。加水用の水は、軟水のミネラルウォーターを使いましょう。
2020.05.14
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バーで最もよく飲まれるカクテルと言えば「ジントニック」をおいて他にないでしょう。しかし、ジントニックを家で作ると困るのがライムの取り扱い。くし切りにするとして、ひとつのライムから8カット=ジントニック8杯分のライムが取れるのですが、一晩に8杯もジントニックを飲むことなんて、早々無い。でも、せっかく買ったライムを1、2切れ使って捨ててしまうのも勿体無い。今回は、そんなお悩みを解決しつつ、家飲みジントニックのクオリティを上げる方法をご紹介します。【方法その①冷凍カットライムを作る】家で「ジントニックが飲みたい」と思った時に、いつでも手軽に使えるカットライムがあれば便利ですよね。そんな便利な冷凍カットライムの作り方、実はとっても簡単。まずは通常通りライムをくし切りにします。両サイドのヘタを落として、8つ切りにしたら、真ん中の白い部分をカットします。柑橘類の白い部分はエグみがあるので、ジントニックには不要です。カットしたライムはジップロックに入れて冷凍するのですが、ここからが大事なポイント。カットしたフルーツを家庭用冷凍庫で凍らせると、表面に霜がついたり、冷凍焼けを起こして味が悪くなります。そこで冷凍する前はしっかり空気を抜くことが大事。ジップロックの口を少しだけ開いている状態にして、捻って空気を抜きます。空気が抜けたら冷凍庫へ。霜や冷凍焼けは凍らせる過程で最も多く発生するので、しっかり凍った後は、通常通りジップロックから出し入れして大丈夫。この状態で3~4週間は保存できます。(それ以降は徐々に冷凍焼けが発生します。)グラスに冷凍カットライムとジン、トニックウォーターを入れ、マドラーで潰しながら飲めば、ホテルスタイルのジントニックの出来上がりです。【方法その②ライムジンを作る】こちらはもう少し凝ったやり方。その分、味はグッと良くなります。まず、適当な空瓶を用意します。瓶は何でも大丈夫。1本丸ごとライムジンにするのであれば、ジンのボトルに直接ライムを入れても構いません。漬け込み用にライムをカットします。皮の白い部分が残らないように、かつら剥きにして、輪切りにします。(ジンのボトルに直接入れる時は、くし切り。)瓶の中にカットしたライムを入れたら、ジンを注ぎます。後は、適当なテープに仕込んだ日付を書いて、瓶に貼れば出来上がり。1週間後から、トニックウォーターで割るだけで、いつでもジントニックが飲める「ライムジン」の出来上がりです。ちなみに飲めるようになるのは1週間後からですが、1か月以上置くと、より味が深く、美味しくなります。1週間、1か月、3か月、半年と、時間が経つごとにジンとライムが馴染んで美味しくなるので、ジンラバーの方は是非お試しを。(柑橘類の漬け込み酒の変化が大きいのは半年まで。それ以降は大きくは変わりません。)「半年以上漬け込みたいけど、そんなに待てない」という方は、大きめ(1L以上)のボトルにライムジンを作って、「中身が半分まで減ったら、ライムを新しいものと取り換えて、ジンを継ぎ足す」という方法を続けていけば、飲みながら熟成させることができます。漬け込むライムの量は、ボトル1本(750ml)に対して、ライム2個を目安にして下さい。自家製ライムジンで作る自分だけの「ジントニック」。ベースに選ぶジンは自分の好みでOKです。お好きなジンにライムを漬け込んで、バーで飲むのとはちょっと違った「自分だけの」スペシャルな「ジントニック」を楽しみましょう。Enjoy your bar life!セラーメイト 密封びん1L 取手なし【cellarmate ガラス瓶 ガラスジャー ガラス保存容器 保存瓶 果実酒びん ジャーサラダ 密封びん テラリウム 硝子瓶】
2020.05.08
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ホームバーを楽しむのであれば、やはりカクテルを作りたいという方は多いのではないでしょうか。しかし、一口にカクテルと言っても厖大な種類があって、スタンダードなものを一通り作れるようにするだけでも何十本ものお酒を揃える必要があります。そこで今回は、誰でも気軽にカクテル作りを始められるように、家庭にある材料だけで楽しめる「梅酒のカクテル」に絞って紹介していきたいと思います。ちなみに今回紹介するカクテルの中に、シェイクなどの技法を使うものは出てきません。全てビルド(グラスで直接混ぜる)だけで作れるものにしています。ベースに使う梅酒は、できるだけエキス分の多い、味の濃そうなものを選んで下さい。濃味の梅酒をさっぱり飲むのは簡単なのですが、薄味のものを濃く飲むのは材料が増えてしまうので、今回は扱いません。エキス分は何%以上などと厳密に気にしなくてもスーパーや酒屋で手に入るものでOKです。今回は近所のスーパーで売っていた「萬歳楽 加賀梅酒」を使います。梅酒アイスティー梅酒 30mlアイスティー 90mlラズベリーティーなどの酸味のあるフレーバーティーのような味わい。ホットでもOK。梅酒グリーンティー梅酒 30ml緑茶 90mlアルコールが苦手な方でもスッキリ飲める軽めのカクテル。しっかり濃い目の緑茶を使うと、お茶の渋味と梅酒の甘味、酸味が複雑に混ざり合い、軽いが奥深い味わいに。梅酒ビア梅酒 30mlビール 適量最近流行りのフレーバードビアに似た味わい。柑橘系IPAなどがお好きな方は是非。梅酒キール梅酒 30ml白ワイン 120mlカシスリキュールを使ったスタンダードなキールよりもサッパリ。爽やかな甘味と酸味。食前酒にもおススメ。梅酒カーディナル梅酒 30ml赤ワイン 90ml甘口のシェリーや軽めのポートのように楽しめる食後酒。自宅で葉巻を吸える環境の方は、葉巻とあわせても◎。梅酒ゴッドファーザー梅酒 15mlスコッチウイスキー 45mlカクテルでありながら、ウイスキーのロックを飲んでいるような味わい。ラム樽熟成のスコッチにも似た甘味が特長。スタンダードなゴッドファーザーやラスティネイルがお好きな方は、梅酒とウイスキーの比率を1:1でどうぞ。梅酒の焼酎割り梅酒 お好きな比率で焼酎 お好きな比率で梅酒そのものの味を楽しみたいけれど、ただのロックよりはサッパリ飲みたい時に。お好きな濃さになるまで焼酎を足して飲むだけ。甲類焼酎や麦焼酎なら梅酒の味を邪魔せずに。芋焼酎ならより複雑に。ウォッカやジンでも応用できます。いかがでしたでしょうか。他にも各種のジュースで割ったり、余っているお酒と適当に混ぜてもOKな懐の深さが「梅酒」の魅力。どんな材料と混ぜてもカクテルとして成立させてしまう、世界に誇れるジャパニーズリキュールです。今回はレシピに細かい分量も記載しましたが、好みで変えても大丈夫。家の棚で眠っているお酒と「梅酒」を合わせて、カクテル作りの第一歩を楽しんでみて下さい。Enjoy your bar life!
2020.05.02
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日本において最も消費されているアルコール飲料といえばビールをおいて他にないでしょう。その証拠にバーで働いていても、居酒屋で誰かと飲んでいても、「どの銘柄のビールが好きか」という話題は常に酒飲み達の熱い議論を巻き起こします。昨今では国外のビールも以前より容易に手に入るようになり、苦味の強いIPAや個性豊かなフレーバーが魅力のベルギービールなど、様々な種類のビールが酒屋やスーパーマーケットの一角を占めるようになっています。しかし、これだけ日本人に愛されているビールですが、実は「鮮度」がとても大事だということ、ご存じでしたか?「新版」バーテンダーズマニュアル(柴田書店刊)には以下のように記述されています。「ビールは、何年置いても微生物の繁殖はないが、タンパク質を含むので、風味のバランスが崩れやすく、早めに飲んだ方がおいしい。賞味期限は長くても半年、できれば3か月以内にフレッシュな風味を楽しみたい。」ここだけの話、かつて某ビールメーカーが大々的に自社ビールのキャンペーンをやった際は、営業担当が定期的に飲食店や小売店を巡回し、製造から1か月を超えた商品を自主回収していました。それだけビールにとって「鮮度」は命というわけです。実際にビールが時間経過とともに、どのように劣化していくのかをグラフにすると、以下の図1のようになります。イメージとしては出来立てから3日以内が最も美味しく、その後1週間経つと風味が落ち、1か月経った所で更に大幅な風味の抜けが発生する…。まぁ、簡単に言うと「ビールは製造から1か月以内に飲め」ということですね。で。最初の話に戻りますが、皆さん、ビールを買うときに「鮮度」気にしてますか?何も考えずに製造から日にちの経ったビールを買って「これは口に合わない」などと言っていませんか?それではビールがかわいそうです。ビールの鮮度の見分け方はとっても簡単。6本パックなら、ここ(赤枠)を見れば一目瞭然。1本単位で購入する際は、缶の裏を見てみましょう。多くのメーカーが「製造年.月.上・中・下旬」という区分で製造時期を印刷しています。「2020.02中」なら「2020年2月中旬製造」「2020.03下」なら「2020年3月下旬製造」ということですね。この表記を確認して買えば、いつでもフレッシュなビールを手に入れることが出来るのです。実は日本のビールは世界的にもとても高い評価を得ています。その人気の国産ビールを、いつでも新鮮な状態で買うことが出来るのに、「鮮度」を気にしないなんて勿体無い!スーパーや酒屋に行ったときは「鮮度」をチェックして、いつもよりワンランク上のビールを楽しみましょう。Enjoy your bar life!追記 細かい差はありますが、メーカーによっては製造日まで特定できるようになっている製品もあります。気になった方は検索してみて下さいね。
2020.04.02
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世の中にカクテルは多々あれど、最もご家庭で作られているカクテルといえば「ハイボール」をおいて他にないでしょう。実際、「ハイボール 作り方」で検索してみても、「黄金比」とか「氷のつめ方」とか「マドラーを回す回数」とか、出てくる出てくる…。でも、バーテンダーとして最初に問いたいことは、皆さん「自分の好きな」ハイボールのレシピで作ってますか?ということ。ハイボールと一口に言っても、「暑い日に飲むキリッ冷えたハイボール」と「ゆっくりウイスキーを味わいながら飲むハイボール」は別物なのです。何が違うか。ウイスキーが違う。こだわって選び抜いたウイスキーで作るハイボールは最高だ!それもそうです。ですが、このブログは「誰でも」「簡単に」「美味しく」楽しめるホームバーライフのお手伝いをすることを目的としています。ですので、手に入りにくり材料で作るのはNG。誰の自宅でもあるものでできる工夫で最大のもの。それは温度なのです。温度がレシピなのかって?そういう本では出てこない所が本当の「バーのレシピ」なんです。実は人間の舌はとても繊細で、同じウイスキー、同じ炭酸水、同じ比率で作っても、温度が違えば、舌の感じ方はまるで変わります。簡単に言うと、温度が高ければウイスキーの風味を強く感じる代わりに飲み口がキツくなり、温度が低ければ飲み口が軽くなって爽快感が増す代わりにウイスキーの風味が弱くなるということなのです。実際にBar Opusで温度を測りながら実験した時のデータがこちら。(図1)これらのハイボールは全て「デュワーズ12年」というスコッチウイスキーを使い、氷水で1.8℃に冷やした「ウィルキンソンタンサン」で1:3の割合で割っています。違いは温度だけ。たったそれだけなのに、この研究会をした時に参加した全てのバーテンダーが「全然味が違う」という感想を言っていました。お好きなウイスキーをスッキリハイボールが好きな方は冷凍庫で、パンチの効いたハイボールが好きな方は常温で、バランス重視の方は冷蔵庫で冷やして使うだけ。後は同じく冷蔵庫でよく冷やした炭酸水で割れば完成です。氷のつめ方とか、バースプーンの回し方とか、そういった細かい話は後回し。何ならマドラーで混ぜる作業もいりません。(知りたい人がいれば、細かく説明するかもしれませんが…。)気軽に楽しめるのがホームバーの魅力なのです。グラスに自分好みのハイボールを作ったら、後はお好きな音楽か映画でもかけながら、ゆっくり時間を楽しみましょう。Enjoy your bar life!
2020.03.30
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